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社会不適合なまいむちゃんのそれっぽいブログ。
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ここ暫く更新がご無沙汰。性交渉もご無沙汰。ということで折角存在するブログ、どうせネタで書けんのなら建設的な日記を書いてみようじゃないかと。

ここ暫く一年くらいずっと小説を完成させて公募へ出してみようかと思っているのにも関わらずなかなかどうして何も進んでいないのが実情。書いては止めて、止めては思いついてを続けているうちに長いこと小説を書いていられん体質になったのではないかと思う程である。そういえば過去小説を作品として完成させたのは1,2作品くらいの気もしてやばい。二次創作中心でしかも実験的な文章演出でばっかやってたもんだから普通にある小説の書き方が寧ろわからん。こりゃ大変だ。プロットとか立てたことねーよ。そのままいっつも書き出しだもの。

勉強しようと思って宮部みゆきのクロスファイアを購入も

上巻がなぜ二冊ある・・・

間違えて購入してしまいました。古本屋おそるべし。400円は痛いです。

ま、そいつはサテライト、もといさておいて、とか特に意味もなく親父ギャグが浮かんでくるあたり終わってる感ただようわたくしでございますが、現在幾つか小説の発想が。整理の意味も込めて思いついた限りを掲載してみる。前にもそんなことしてなかった?というのは気にせず。初めての方ははじめまして。

1、主力候補、犬と猫の物語。
以前に書いたとある詩をあるとき再び読んだ時にこれを小説にしてみたらどうなるだろうと思ったのがきっかけ。
そういえば読み飛ばしつつで読んでしまった「我輩は猫である」をもっかいきちんと読んでみようかとか思った。

2、戦うのがすきなので。
昔からバトル物が好きなのでよくこういう動きとか構図とかポーズとか格好いいよなぁと妄想することがありその延長線上のアリアで。あ、アリアはいらない、そしてG線。今のところのキーワードは、鍵、剣、不死鳥、愚者(クラウン)自分でもなんとまぁ取り留めのないと思うもののモノ書きとしての基本が人形遊びにあった自分としては取りとめなく取り合えず格好いいと思ったものを詰め込むのが話の作り方になっておるのでございます。

3、男の子の真剣(ホンキ)見せてあげる!
バンb(ry
という訳ではありますが、剣道モノ(というよりは剣道部モノかと)もいつか書いてみたいなぁとは思っていたもの。きっかけは二つあり、一つは無論バンブーブレード。もう一つは何故かかみちゅ。わしの中で主人公のCVは津村まことに決まりました。話も決めてないうちから妄想CVを決めるのが好きです。

4、こんな奴に成長しました
タイムリープモノ。しがない日々を暮らしている男があるときタイムリープする、とかそんなんでいーんじゃねーのと。家族モノも意識の根底にあって自分のその家族観を上手く昇華できたらなぁと。何故か同時に犬が出てくるという非常に曖昧模糊とした抽象イメージが。

5、学園バトル物という定番設定
雪の中、校舎に入った僕はそこで剣を持つ少女の姿を見た。
ってどうみてもKanon。ピクサス。真っ先に攻略しました。Keyのエロシーンは別にいらないと言われた理由がよくわかりました。でもえっちなシーンは妄想の元になるので欲しいです。エロはいらないのです。Mr.自家発電。

6、ロボっていいよね
ロボゲーはもっと操作が複雑でいいから複合した動きとかできないかなぁと。いやまぁそれでも大好きロボゲー。なんか特殊な力を使うロボとかやりたいなぁと。とか思って考えたものが全く持ってATフィールドだったときには自分でも吃驚しました。序は見てないけど破は見に行きたいです。そういえばエヴァなのにはだめきいち(何故か漢字を覚えてない)名義じゃないのかサトジュン。ARIAかカレイドの続編、あるいはOVA出してくれないのか。でもたぶんイメージはフルメタに近い。

7、未来視
女の子が主人公の作品しか書きたくない。そう思っていた時期が私にもありました。嘘です。なんとなく女子一人称というのが書いていて楽しいのでやりたくなる時が。超能力モノというか日常にちょっとした異常を組み込むのが好きなのでやってみたいなぁと。

8、生れた意味を知る
まぁイメージはアビスなんですがデジモンでファンタジーを扱ってた身としてはそういうのも形にしたいと。歌は世界を救うということで歌が意味を持つアビスの世界感は個人的に好き。でもこのままいくとアビスとバンプのカルマを足して2で割ったような感じになります。ようするにアビスです。どうでもいいですがカタカナで書くと割とポジティブなイメージがない?アビスって。

家畜にルビスはいないッ!!

あ、ルビスですねドラクエの。ちなみに出展は今お気に入りの勇者の代わりにバラモス倒してみたシリーズより。もっというと元ネタはFFT

さて、こいつをどう処理しようか。そして一日目からこんなに書いたら後持たないだろうという不安が早くも。というかこの文章量を何故小説に活かせないのか。というか文章書いてるとすげぇ落ち着く。あぁ、定位置という感じがするわぁ。
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 一行は黙って差し出された紅茶を啜り目を伏せて身を縮こめていた。よりによって宿題を忘れた日の授業でやたらに宿題の答え合わせをする教師に指名されぬ様にアルケニモンから目を逸らしていた。しかしそんな時大抵は目を伏せたものから順に指名されるものだ。

 アルケニモンは顔も全身の雰囲気も全て恐ろしげで、座って紅茶を飲んでいるだけでシュン達を怯えさせるオーラをぷんぷん漂わせていた。特にコテモンの反応はあからさまで、先程まで興味津々で部屋の中をうろついていたと言うのに今はファングモンの後ろに隠れて丸まっていた。当然立場が下のシェイドラモンとクワガーモンも同様でアルケニモンの座る椅子の後ろでビシッと立っていた。


「黙ってないでなんか言いな」

「…えっと、上手い紅茶っすね」

「そういうこっちゃねぇだろ」


 緊張の中アルケニモンに話す様促された大輔は直ぐには何も考えが浮ばず答えに窮して適当に目の前の紅茶で誤魔化そうとした。得意の天然かと判断した一美は反射的につっこみを入れた。


「上手いかい?そりゃそうさ、家に置いてある物は何でも上等なもんだからね」

「これだったら俺はセイロンティーの方が好きだけどな」

「…ヒヨっ子に味なんて分かるのかい?」

「上等なもんは痩せた味がしないからな」

「痩せた味なんてガキが使う言葉じゃないね。まぁいいわあんた気に入ったよ」

「気に入られても別に嬉しかねぇよ」

「いいじゃん、人に気に入られるに越したことはないよ」


 アルケニモンはふっと微笑みを見せ紅茶を一口啜った。一美は祐梨の肩を叩いて笑った。祐梨はあまり気にせずふてくされた顔のままだった。他一同は相変わらずの定まらない顔のままだった。


「人身売買が成立してるようなところの奴とは別に知り合いになりてぇと思わねぇってこったよ」

「はっ?」

「へっ?」


 祐梨の声が聞き取りにくくて聞き返した訳ではない。質問の内容が分からなかった訳でもない。ただその質問の意図が分からず唖然として一行は声を出した。シュンが目を見開いて祐梨を見た。一美も同じ様に祐梨を見た。大輔は何の事だか分からぬ様子で全員の様子を窺った。義貴はアルケニモンの方を見た。アルケニモンは直ぐ口を開いた。口元は笑っていた。


「そんなとこも知ってんのかい?裏の話が分かってるなんて益々気に入っちまう」

「よくある話だろ。驚く程のことじゃねぇ」


 祐梨は組んでいた足を組み直し紅茶のカップを置いて腕を組んだ。含み笑いで挑発するようにアルケニモンを睨んだ。

 一行の視線は状況が読めずに二人の間を行ったり来たりした。全員に動揺が見られた。そしてそれは一行よりもシェイドラモンとクワガーモンの方が顕著だった。あからさまに身を乗り出して表情は引き攣っていた。その様子が祐梨の言葉がいかに重要なものかを示していた。


「何故、その様な事を…」

「何処で仕入れたネタだ」

「止めなアンタ達」


 アルケニモンは驚きの色から任務に忠実な兵士の顔に戻っていったシェイドラモン達を手で制した。今にも飛び掛って来そうな彼等は目の前に広げられたその手を見て戸惑いながらも一歩下がった。それでも合点がいかずに言葉が口を突いた。


「しかし、姐御」

「いいんですかい?」

「黙りな」


 アルケニモンは手を下ろして首だけ後ろを向いた。シェイドラモン達はそれに一瞬身震いし更に一歩下がった。アルケニモンはそれから笑って祐梨の方を見た。アルケニモンが口を開いた笑みを見せると其処には尖った歯が見えた。シェイドラモン達は元の様にビシッとした姿勢を保った。


「何処まで知ってるんだい?」

「ちょっ、待ってくださいよ。一体どういう話なんすか?」


 堪らなくなって大輔が口を挟んだ。祐梨はちらりと大輔を見た、それからアルケニモンを見た。それでアルケニモンには祐梨の言いたいことが伝わった。


「別に言っても構わないよ。あたしには全く関係ないしね」

「…でもアンタがここの頭なんだろ。そしたらアンタも関わってるってのが自然な筋だろ」

「まぁ、玉虫の坊やがなんて言ってるかは興味ないけどね、あんたが知ってる事をしてるのは坊やに付いてる奴と金が欲しい小僧共だよ。あたしは坊やがやる事には興味ないよ」

「成る程、な」


 祐梨は組んでいた腕を解いて紅茶を飲んだ。


「それでこれに毒も入ってなきゃ俺がデジヴァイス構えたのも無視したって訳か。じゃぁそれは信用してやるよ。…尤も、だからと言って此処に転がってる希少石の入手経路はどうなってるんだか分からねぇがな」

「そこはあんたが思ってるよりも色々手に入れる方法があるんだよ。全く、坊やと一緒にするんじゃないよ」


 アルケニモンは呆れ顔で髪を掻き上げた。祐梨のふてぶてしい態度は変わらず片肘をテーブルの上に乗せた。かなり挑発的と取れる態度にまたもシェイドラモン達が姿勢を緩め一歩前に出た。


「いちいちあんた達反応すんじゃないよ。このヒヨっ子はあんた達の反応を見て笑ってんだから。男だったらビッと立ってな」


 たった一歩の足音で真後ろに位置する二人の表情を読んだかのように軽い口調でアルケニモンは言い手を顔の横でヒラヒラさせて元の位置に戻るように促した。二人は出した足を引っ込めた。表情はそのままだったが。


「ちょっと…いい加減いいっすか?俺達も話、聞きたいんすけど」


 また置いてけぼりになった一行を代表して大輔は尋ねた。目線はアルケニモンだったが気持ちは祐梨の方に向いていた。出来ればこの目の前の恐ろしげな風体のデジモンが説明するよりもまだ人間の姿をしている人に言って欲しかった。

 他の一行は違うがかつて大輔は今と同じくらい印象の強いアルケニモンに出会った事がある。そちらは明確に敵として出会った相手で、性悪そうな顔をして性質の悪い事ばかりをしてきた。しかしそれにしてはどこか恐ろしさを感じられない間抜けなところがあった。

 目の前のアルケニモンはそれよりもずっと人間っぽく、言葉遣いは兎も角すっきりとした態度だ。しかし前のアルケニモンと違い、とげとげしい感じがないのにも関わらずとても脅威を感じる威圧感があった。究極体のデジモンに感じるそれに近いとも思った。大輔は自分が賢くない事を自覚していた。だからその感覚は正しいものだと思っていた。


「ひょっとして…その話ってのは研究所なんかに実験体としてここで捕らえたデジモンが売られるとかそういう話?」

「なんだい、あんたも知ってんのかい?」

「知り合いにそういうのに詳しい奴がいるんだよ」

「姐さん、それ如何いうこと?」


 一美に便乗してそれまで黙っていた義貴が口を開いた。身を乗り出しシュンの向こうにいる一美を見た。一美は義貴を見返した。義貴の目はとても真面目だった。


「そんなに、詳しくは分からないんだよ。そこはユーリィに任す」

「俺かよ。ったくあんま分からねぇならでしゃばってくんなよ」


 祐梨は面倒くさそうに舌打ちをして頭を掻いた。


「早い話、此処の連中は森の中に侵入されるのを嫌って警戒してるんじゃない。寧ろ歓迎してるんだよ、金になるから」


 指で円を作る。それを見せびらかすように振って懐に仕舞う素振りをして手を広げて肩を竦めた。


「こんな原始的なところで特産物もそれどころか他との表立った交流もねぇのにあの集落にある程の物をそろえるとしたらヤバイところに人手を貸すか売るかのどっちかしかないんだよ。そんで丁度良くここは迂回して回るには広いし、裏のルートに繋がりやすい道の上にあるし侵入者が後を絶たない。そしたらそれを捕まえて売っちまえば五月蝿い小物も厄介払い出来るし金も入る。


 更に言えばこんだけ多種のまとまりのない団体がいるのにも関わらず侵入者を一致団結してまで捕まえようとしてるってのは、多分小さい団体じゃ信用度が足りなくてデジモンを売れないからか、あの集落の自衛団がその辺りのことも仕切っているかのどちらかだ。だろ?其処の赤いの二人」


 祐梨はどかっと背もたれにもたれかかり顎でシェイドラモン達を指した。これまでの行動で分かる通り二人はかなり素直で実直な性格だ。今度もまた明らかに小さく抑えようとした動揺が見られた。動揺を抑えようとしたのはアルケニモンに一々反応するなと言われたからだろう。


「それは…ですね」

「答えるのを期待したわけじゃねぇから無理に何か言わなくてもいいぜ。グダグダ言われるのは嫌いだしな」


 自ら話を振りながら祐梨は手を翳してシェイドラモンが口を開くのを阻んだ。祐梨はデジヴァイスを取り出した。スライド式の携帯の様な形状の真っ赤なデジヴァイス。祐梨は画面を開いた。デジモンの反応を示す分布図だった。


「多分侵入者を捕まえた奴には一定の褒賞金が支払われるんだろうな。面倒な事なしに金が手に入るってのは魅力だろうしよ。んで、だから今問題が起きてるんだろ?金で繋がってる関係な訳だから金で断ち切れる。

タマゴ泥棒が金で匿うように言ってたら今の自衛団の人数では対処出来ねぇ。というか十中八九今はその状態だと思うぜ。ちょっと反応を見るだけでこれだけ夥しい様になるんだからこれで全員がチームワーク取れてるんだったらもう確実に何処にいたって情報くらいは入ってていい筈だからな。

だから本当に力を持ってて顔が利くっつーのこの婆さんに人手を貸して貰うように頼んだ。自分らで行かないのは多分威厳が無くなるからだろうな。要するに自分で解決出来ないのを広めるような事なんだからよ」


 祐梨は含み笑いでシェイドラモン達を睨んだ。はっきりと挑発していた。虫の持つ特徴のある口をカタカタと震わせていたがそれでも飛び掛っては来なかった。やはり実直である。


「アンタ、それは聞き捨てならないね」

「事実だろ」

「あたしゃまだ婆じゃないよ。二百ちょっとしか生きてないんだから」

「そっちかよ!人間の方からしたら婆だっつの」

「ったく生意気なヒヨっ子だよ本当に」


 アルケニモンは紅茶のポットを取って自分のカップに注いだ。


「ちょっと待てくれ。売られたデジモン、ってどうなるんすか?」


 大輔は急に立ち上がって食いかかる様に言った。テーブルがガタっと揺れ紅茶に波が立った。感情の昂ぶりからか不慣れな丁寧語に可笑しい点も見受けられた。それに気付いているのか分かっていないのか祐梨はその事には触れなかった。


「なんだ、聞きたいのか?後悔するぜ」

「俺は後悔しない性質なんです」


 祐梨の問いかけに胸を張って親指で自分を指して自信有り気に大輔は返した。一美が小さく阿呆かと呟いた。


「殺されるんだよ」


 間を置かず呟く様に言った。一行の顔が一気に凍る様に固まった。


「武器の試し撃ち、毒の耐性の検査、強制進化、研究実験体との対戦。それに賭け格闘技とか強制労働もだな。もっと詳しく話しするとかなりエグい事になるぜ?それでも聞くか?」


 下世話な笑顔で身を乗り出し祐梨は大輔を指差した。大輔は小さく言った。


「なんだよ、それ…」


 大輔は目を伏せ拳を握った。祐梨を睨んで歯噛みした。


「なんでそんな事すんだよ…」

「勘違いするなガキ」


 口の端が吊り上がったままの祐梨が立ち上がり直ぐ隣の大輔に顔を近づけ睨みを利かせる様に下から睨め上げた。シュンは其処に参加して止めるかどうか迷ったがその決断を出す前に祐梨が続けて言い放った。


「人から見たら悪いことなんてのは何処にもあるんだよ。そういった事をするクズを俺は嫌いだがな、何もしてねぇ手前が怒るんじゃねぇよ」

「デジモンが大勢死んでんだ!腹立つに決まってんじゃないすか!」

「そこで殺されたデジモンが大量に人を殺してるとしてもか?」


 大輔の憤慨した表情とは対照的に何でもない冗談でも言うかのような祐梨は右手で左手を切る仕種をした。大輔は祐梨の言葉に息を飲んでたじろいだ。そしてそれは他の者も同様だった。次々と自分の知らなかった事がテーブルの上に並べられていく。その衝撃に一行は混乱気味に祐梨を眺めた。


「此処を通り道にする人間は二つに一つ。よっぽどの世間知らずか、此処の連中の様にデジモンを売る様な奴らか。馬鹿が馬鹿を駆逐してんだよ。どこもかしこも腐ってるんだよ。一つ流れを止めたからって他も止まって全部よくなるって訳じゃねぇんだよ。そうやって滞って腐った水がまた他の土地も腐らすんだよ。止めたいなら根本から如何にかしてみろ。自分の立った場所がどんなところも知らねぇで粋がってんなガキが」

「んなこと分かんねぇよ!それに目の前にある危ねぇことを放っといて他の事をするなんて俺には出来ねぇ。出来る訳ねぇ」


 一層声を荒げる大輔の言葉を祐梨は鼻で笑った。目線は見上げていたが態度は見下していた。しかし一行には決して祐梨が間違っているとは思えなかった。それは確かに正しい事で的を射た意見だった。しかし感情論とはいえ大輔の言う事も理解出来た。どちらが正しいとも一行には言えなかった。


「まぁ二人共さぁ…」

「グルルルゥ…」


 一美が仲裁に口を開いた時にファングモンが一際大きな声で唸った。それまで伏せて様子を窺っていたのに、側にいたコテモンが驚く程の勢いで立ち上がり瞳に野生の獣らしい色を浮かべてテーブルの方を見て唸っていた。一行は一斉にファングモンの方を見た。穏やかに閉じている様な印象すらあったファングモンの目が今は大きく開かれて一行の姿を捉えていた。


「ファングモン、どうした?」


 義貴は長いソファを越えてファングモンに駆け寄った。大人しいファングモンがこれだけ牙を剥き出して威嚇することは普段ない。それがこれだけ牙を剥くというのは義貴の知る限りある一つの事がある時にしかない。それは即ち、


「デジモン反応?」

「周囲にある反応は全部点滅してッスよ。それに此処にもあるッス」


 そう、敵のデジモンの存在を感知した時だ。元々が群れで暮らす種族のファングモンは他のデジモンよりも索敵能力の精度が高い。群れを危険に晒さぬ為には何より先ず敵の襲来をいち早く知る事が大切である。先手を打てれば敵を退ける事も此方が引く事も幾らかは容易くなる。生き残る為に磨かれたその能力をしっかりと受け継いで生まれたファングモンは仲間の中では誰よりも早く、風下等場所によってはデジヴァイスよりも早くデジモンの存在を感知することも出来た。

 一行は一斉にデジヴァイスを取り出し画面のデジモン反応を確認した。夥しい数の赤い点が点滅し画面を埋め尽くすように広がっていた。アルケニモンは紅茶を啜っていた。


「ファングモン?」


 唸るファングモンに近づいて義貴は些か不安げな声をファングモンに掛けた。ファングモンは義貴が近づいてくるとブルブルと頭を振って義貴を遠ざけようとした。デジモンの反応を感じているとはいえ此処まで激しく反応する事などそうはない。異常なまでにファングモンが反応していることが義貴には不安だった。経験が無い故に内心は余計に不安になっていった。差し伸べた自分の手を振り払ったファングモンの動きに義貴は自分が思っている以上に退いた。

 冷静に考えればそれが極近くに脅威が迫っている事をファングモンが言っている事に気付いたが義貴はそれまでの会話を聞く中で少なからず困惑していてそれに気付かなかった。

 祐梨の話は義貴を混乱させた。本人にその狙いは無いにせよ義貴の思考を鈍らせるには十分なものだった。

 祐梨の言った事はそれまでQDCで言われてきたことと全く逆の事で義貴が信じていたものにまさに直撃するような事だった。ナスティフォレストが治安の悪い場所だという事は当然知っていたがその中に中立的な立場の自衛団は提携を結ぶべき存在で共に力を合わせるべきものだと思っていた。

しかしその実質が世界を混乱に貶める行為に加担しあまつさえ多くのデジモンを死に至らしめている。盗まれたデジタマを取り戻す為とは言えそんな集団に力を貸すのは自分も世界を混乱させる行為に加担する事になるのではないか。そういう思いがその時に義貴の頭の中を駆け巡っていた。

 聡明であるという事は同時に苦しい事でもある。物事の本当の部分というものは大抵は苦痛に満ちた物であり知らなくていい物だった。しかし賢い人間は直ぐにそれを分かってしまう。そして義貴は聡明だった。祐梨の言った事の殆どを理解出来た。そして祐梨が一行を見る目つきで祐梨の行動に一つの疑惑を抱いた。

祐梨はただ不満を延べているのではなく、自分達にそれでもこの自衛団に力を貸すのか、と。確信は無かったがこれまでではっきりしている祐梨の性格を考えるとそう思っていても不思議ではないと感じていた。

 大輔はあっさりと自分の信念を貫くと言ったが、義貴はその言葉を聞いて漠然とした不安を感じた。何故そう感じるのか、そもそも感じているのかももしかしたら分かっていなかったのかもしれないが何か自分の中にもやもやとしたものがあるような気がしてならなかった。


「ガウワッ!」


 困惑したままの義貴の頭を飛び越えファングモンはテーブルにストッと乗った。そして目の前に大きく吠える。そして一行がその行動の意味を分からぬままファングモンは牙を剥き飛び掛った。


「ファングモン!」


 ファングモンの牙はシェイドラモンの腕を捉えた。先に襲い掛かった爪をガードした腕を噛みつかれたファングモンはしかし表情を変えぬまま腕を振りファングモンを地面に叩き付けた。ファングモンはシェイドラモンが腕を持ち上げた瞬間に攻撃の予兆を悟り噛み付きを止めシェイドラモンの腕を離れようとしたが完全に脱しきれず背中から地面へ激突した。それでも次の瞬間には猫並の三半規管の能力の高さを見せ一瞬にして体勢を天地入れ替え部屋の脇の方へ着地した。

 ファングモンが顔をあげる前にその耳にクワガーモンの大袈裟な羽音が届いた。ファングモンは天井近くまで跳びあがった。貫くようにクワガーモンの二本の角がファングモンの影の上を通過しアルケニモンの糸で形造られている小さな棚諸共壁に突き刺さった。室内に収まるにはやや巨体なクワガーモンが薙ぎ倒した棚やテーブルの上の品が散乱した床に着地した。


「お前等伏せろ!」


 目の前の光景を理解できずただ傍観していた一行に一美の怒号の様な叫び声が飛んだ。年長者の経験の功か一美は精神が混乱した時に起こる浮遊感を感じながらもクワガーモンの動きに惑わされる事なくシェイドラモンがエネルギーを両腕に溜めているのを認識した。そして無意識のまま叫び自分は机の下へと潜り込んだ。


 一美は気付かなかった。否この状況では自分の後ろの事になど気付ける筈がなかった。一美の声で目の前の景色に気付いた一行は揃って机の中に潜り、またその場に身を伏せた。しかしただ一人義貴だけはそこに立ち尽くしていた。義貴には殆どファングモンの動きしか見えていなかった。

ファングモンの起てる足音しか聞こえていなかった。シェイドラモンの腕が一層光るのを義貴は認識していなかった。一美がシェイドラモンの様子に気付いた時は後ろを振り返る余裕は無かったし、伏せてからは三百六十度が死角で当然気付けた筈がなかった。


「ガキこの野郎!」


 シェイドラモンの腕から放たれた炎はレーザー状に放たれ熱を拡散させながらテーブルの上のコップやティーポットを砕き壁に衝突した。砕けたコップの破片は高い熱で表面が溶けかけていた。


「なんだいアンタ達」


 炎を放ちきったシェイドラモンの真後ろからアルケニモンはその頭を大きな手で掴んだ。シェイドラモンが振り向こうと抵抗の意思を見せるとアルケニモンは頭を地面に押し付け手の甲の蜘蛛の紋章の中心の赤い紅玉から水が湧き出るように糸が溢れシェイドラモンの全身に絡みついた。それはあっという間にシェイドラモンの全身に広がりさながら簀巻きの様にシェイドラモンを包んだ。

そして余っていた片手をクワガーモンの方へ翳し糸を放った。その糸もシェイドラモンの時と同じく一瞬のうちにクワガーモンの全身に絡みついた。

 アルケニモンは腕を引いて自らの四、五倍はあろうかというクワガーモンを自分の方へ引き寄せた。アルケニモンは真っ直ぐ自分の方へ引き寄せたつもりだったが壁に突き刺さっていた角が突っ掛かりアルケニモンの意図していた方向からずれ天井と床へバウンドする様に二往復ほどぶつかりながらアルケニモンの糸により手繰り寄せられた。

アルケニモンはクワガーモンの首と胴体の接合部の隙間を目掛け手刀を叩き込んだ。クワガーモンは殆ど抵抗する間を見ることなくそのまま床へと倒れ込んだ。


「暴れるならもっとマシに暴れなよアンタ達」


 状況はあっさりと打開されることになった。一美が周囲の状況に気付きそれでも様子を窺う為にゆっくりとテーブルの下から顔を覗かせた時にはもう床に伏せっているシェイドラモン達と手の甲から発せられる糸でコップの破片等を片付けているアルケニモンの姿が窺えた。

 一美が分かる限りアルケニモンはファングモンがテーブルの上に飛び乗った時も、シェイドラモンに飛び掛った時もシェイドラモンが炎を放とうとした時も、自分がテーブルに隠れるまでは椅子の上で紅茶に口をつけているだけだったように感じる。殆ど意識なく動いていたためそれが確かだという確信はないが少なくともテーブルから離れていなかっただけだった筈だ。

 一美が気付いてからシェイドラモンの炎が放たれるまで二、三秒あるかないか、その程度の時間だったにも関わらずアルケニモンはダメージを追った様子もなく更には今彼等の動きを封じていた。一美からしてみればそれは殆ど瞬間移動に近い速度だった。流石に自衛団の隊長であるジュエルビーモンが適わないと言うだけのことはある。

 そう考えたから一美ははっと気付いた。とっさの事で忠告するだけで精一杯だったが先の一撃を避けきれず負傷した者がいるかもしれない。一美は机の下の仲間を見た。祐梨と義貴がそこにはいなかった。一美はテーブルの横に出て立ち上がり周りを見た。椅子の後ろ側で義貴とその上に覆いかぶさる様にして祐梨は伏せていた。


「びびったぁ、マジびびった」


 机の横から這い出し呟くシュンを無視して一美は祐梨と義貴の元へ駆け寄った。


「ヨッシー、ユーリィ大丈夫?」


 祐梨の背中には大量のコップの破片が降り注いでいた。白衣の裾は炎を掠ったのか三分の一程が無くなり端が黒く縁どられていた。一美は祐梨の背中の破片を裾を持ち上げて払い祐梨を抱き起こした。


「ユーリィ怪我はないかい?」

「あの程度で怪我してたまるかっつんだよ」


 祐梨は一美を押し退け身体に残っている破片を払い


「それよかよ、ガキこの野郎」


 祐梨は起き上がろうとしていた義貴の胸倉を掴み自分の方へ引き寄せた。義貴は急に引っ張られて膝立ちのままよろめき祐梨の近くへ引き寄せられた。


「なんだよユーリィちゃん、ヨッシーがどうしたのさ」

「ボケッと突っ立ってねぇで周りを良く見やがれ。お前の脳みそは腐ってんのかこの野郎」

「ちょいちょいユーリィ、どういうことさっての」

「どうもこうもあるか!この野郎自分の相棒に気を取られてお前の忠告も耳に入って無かったんだよ。俺が飛び掛って無理やり倒さなきゃ今頃はこの破片みてぇになってたんだぞ!惚ける奴はな、戦場じゃ真っ先に死ぬんだよ。どんなに強くてもだ。分かってんのかこのクソガキ!」


 祐梨は義貴を揺すり怒りを露わにして叫んだ。部屋中にびりびりと響くほどの大きさで義貴の耳を劈く様に飛び込んできた。


「すみません」

「謝るんじゃねぇ。俺の問題じゃない、手前の問題だ。生きていたいなら考えるのを止めんな。馬鹿になるな」


 祐梨は義貴を突き放して苛立たしそうに床を殴りつけた。床は祐梨の拳と受け止めて沈み、拳が離れてからゆっくりと元の平坦な床に戻った。


「なんだ、じゃぁユーリィがヨッシー助けてくれたんだ。あんがとねぇ」

「おわっ、止めろ手前」


 一美は祐梨と義貴の間に入って両者の肩に腕を回して抱え込んだ。義貴は無抵抗でされるがままだったが祐梨は一美を振り払おうと一美を腕を掴んで暴れた。


「一々絡んでくんなお前は」


 一美を振り払って祐梨は溜息を吐きながら呟いた。それから白衣を脱いだ。そして短くなったそれを見て渋い顔をするとポケットを探り棒付き飴と赤いパッケージの煙草を取り出した。そして暫く両者を見比べ迷った末飴の包みを剥がしてそれを口に放り込んだ。そして煙草はデジヴァイスを取り出しその中に収納した。


「ところでこれ一体どういう事なんすか?」


 机から這い出して周囲を見回した大輔が周囲を見回して呟いた。祐梨はそれを聞いて頭を掻いて飴を口から出して言った。


「このチームは馬鹿しかいねぇのかよ」


 そして頭を抱えて再び飴を銜えたその手つきはまるで煙草を吸うかの様だった。






⇒ 続きを読む



集落を出てから五時間の地点で一行は漸く本当の村長住まいらしき場所に入った。上空を覆う葉や枝が多く一層光の入らないその場所は明らかに他とは違う空気が漂っていて、一面には白い糸が張り巡らされていた。ただ無秩序に、しかし愚かな侵入者を捕らえるには最適の形で張り巡らされているため巨体のサイクロモンはまたもその入り口でお留守番となった。

 白い糸の網目をすり抜けて進むとその先の暗がりに明るい光が見えた。その光に近づいていくと次第に糸は少なくなってゆき一本の道を示すように左右に蜘蛛の巣がびっしりと並んぶようになっていった。

 道の先には白い家があった。光はその中から漏れている様子だったが、一見するとそれはその白い家自体が発光している様に見えた。一行が近づいてみると何故そう見えるのかその理由が分かった。その家は見た目は普通の真っ白な家の様だが、実際のそれはここまでで散々見てきたような糸を集めて出来ている物らしく、中の光がその薄い壁を貫通して外へ漏れているだった。


「姐御、いますか」

「つーか姐御起きてんですか?」


 道案内のシェイドラモンとクワガーモンが共に家の壁を叩きながら中に呼びかけた。そこにはチャイムの類など一つもなくそれどころか入り口すら無かった。どうやって中に入るのか想像が付かなかったが一行は取り敢えず二人に任せる事にして成り行きを見守った。


「これは寝てるな」

「ドクグモンもいねぇなこりゃ。どうするよ」

「取り敢えずもう少し呼び掛けてみるぞ」


 たっぷり二、三分は呼びかけを続けてみたが中からの応答は一切何もなかった。次第にクワガーモンの方は面倒に思ったのか呼びかけるのを止めたがシェイドラモンの方はそれから暫くも呼びかけ続けた。しかしそれでもなかなか返事が返ってこない為一度その手を止めた。


「駄目だろ、こりゃ熟睡だ」

「姐御の事だから狸寝入りって事も在り得るからもう少しやり続けたら起きるとは思うんだが、あまり客人を待たせるのも困るしな」

「いや、俺たち別に構わねぇっすよ」

「少し遅れるくらいなら、別に」


 シェイドラモンがちらっと一行を振り向くと大輔と義貴がフォローを入れた。しかし後ろには待つことが嫌いな一美と同じくそういった雰囲気のある祐梨が居るためにその目に一行の姿が如何映ったかは分からなかった。

 案の定シェイドラモンは眉を顰めた表情を浮べクワガーモンに目配せをした。クワガーモンはそれに応えるとこくりと一つ頷いた。


「いえ、やはりお待たせは出来ませんので」

「ちょいと荒っぽい様に見えっけど黙って見といて下せぇ」


 そう言ってクワガーモンは一行を少し下がらせた。そして自身も下がり合図を送るとシェイドラモンは右手を前に構えた。そして右手が発光した次の瞬間にその腕から炎を発射させた。

 一行が目を見張る中目の前の白い壁はめらめらと燃え始めた。シェイドラモンはそのまま炎を撃ち出し続けた。火の手は目の前の壁を殆どを覆い熱風を手前の方に送り込んで来た。


「ちょ、ちょっ。あれいいんすか?」

「ひゃぁ、派手に燃えてるねぇ」

「ねぇレオ、凄い燃えてるよ」

「見れば分かるだろコテモン」

「だぁから黙って見といて下せぇって」


 口々に騒ぐ一行にクワガーモンが諫めの言葉を投げる。それを尻目に壁は一層燃えていた。一面に火が広がりきったところで漸くシェイドラモンは手を休めた。中々エネルギーを使ったのかシェイドラモンは少し疲れた様子で二、三歩下がった。


「ちょっとまだ見てて下さいよ」


 シェイドラモンは片手を一行の前に広げると黙って炎の様子を眺めた。炎は壁を焼き続けまさにその一面だけはまさしく炎の壁となっていた。そして一行は気付いた。

 始めにそれを理解したのは祐梨だった。落ち着いた風の義貴でさえ現状をあまり理解していなかったが祐梨はそれをきちんと分かっていた。
目の前の壁は一面炎の壁となっているのにも関わらずその横の壁や屋根には一切炎が移っておらず冷静に考えてみると明らかに不自然だった。炎が局所的過ぎるのだ。しかもそれは次第に小さくなっていた。そうなってから漸く他の面々もその不自然差に気付いてきた。

炎が小さくなって消える間一行は完全に言葉を失っていた。炎は小さくなってあたかも燃焼させ尽くしたかのようになっているのに白い家の白さに変わりはなく一切燃えた形跡などはなかった。それはまるで襲い掛かってきた炎を白い糸が無理やり押し戻したかのようになっていた。

炎は消えた。それと同時に目の前の壁には大きな穴が開いていた。それは炎で焼けてあいたとは思えない綺麗な半円になっていて、それはたった今自分を破壊した者を自らの中に招き入れるかの様に開いていた。


「穴が小さいな、アンタ入れるか?」

「まだお前もこの程度ってことか」

「五月蝿いよ」

「まぁ入れないことはねぇな」

「それじゃあ先入って姐御起こしてくれ」

「そういう役回りはいっつも俺って訳か。立場がお前の方が少し上って事がなかったらぶっ飛ばしてるところだぜ」

「悪いな、第二部隊長殿」

「しっかり客人持て成せよ、第一部隊長さん」


 第一部隊長さんと第二部隊長殿は少しだけ言葉を交わしクワガーモンはのそのそと穴の中へと入りシェイドラモンはそれを見送った。


「如何…なってんすか?」

「あ、失礼。説明がまだでした」


 シェイドラモンの背中に大輔は尋ねかけた。シェイドラモンは素早く声に反応して振り返って一礼した。


「此処はこの家の入り口なんです。仕組みは俺にもよく分からないんですけど一定以上のダメージを与えると認めて中に入れてくれるんです。というかそれ以外にこの家に入る方法はないんです。中から開けるときも姐御が一撃して開けるので、あんまり気にしないで下さい。本当は一撃で全部壁一面開くんですけど俺じゃそれだけの力は出せないですから。少し入り口狭くてすみません」


 頭部の装甲が細かい表情を伝えないが、その奥のはにかんだ顔が見えるような声でシェイドラモンは言った。続けて口を開こうとした時に目の前の光景に興味をそそられた一行が一斉に口を開いた。


「あれ俺も出来るかなぁ、なあどうだ大輔っ」

「出来るさ、やってやれねぇことなんかねぇ!」

「ねぇレオ、ボクはどう?」

「出来る出来る。お前がその気になれば壁全部斬れるぞコテモン。ねぇ一美先輩」

「こら、あたしに振るな。なぁユーリィ」

「どうでもいいからさっさと中入らねぇのかよ。たらたらしてんじゃねぇっつの」

「まぁいいじゃん」

「よかねぇだろ。急ぎの用なんだろ」

「コテモンちゃんなら出来るって。こら、だからあたしを見る時怯えんなって」

「急げよ!」


 その様子にシェイドラモンは戸惑い一瞬二の句を次ぐのを躊躇ったが気を取り直して少し声を張り言った。


「あの、俺が開けると結構早く閉じてしまうんで早めに入って頂けますか」

「あ、はいすみません」


 一切話が聞こえている様子のない一行に代わり義貴が頭を下げた。シェイドラモンはそれに恐縮した様子で、いえ、と気のない返事をして開いている穴の間に入りそれが閉じるのを防ぐように縁に身体を掛けた。その様子も気にせずにあれやこれやと話を続けていた一行だったが、義貴の説教と祐梨の堅いブーツの蹴りによって漸く中へと入る事になった。当然ブーツの一撃を喰らったのが誰かは言うまでもない。

 その家に一歩足を踏み入れたところで既に分かっていた特殊な家の構造がよりはっきりと分かる事となった。そこはまるで昼時の通販番組で見かける寝心地が売りの低反発素材を使ったベッドの様に踏み締めた足元がぐっと数センチ凹んでいた。部屋の何処を歩いてもその足元の感触は続き廊下だろうがトイレだろうが何処でも寝られてしまいそうなくらいだった。

 案内された居間らしき場所は外の気味の悪い薄暗さを忘れてしまう程綺麗にインテリアが飾られた高級なホテルの一室の様だった。クワガーモンくらいのデジモンなら楽に活動出来る広さがあり、豪華そうなテーブルの上にはシャンデリアがぶら下がっていてこれでもかというくらい眩く輝いていた。そして輝くと言えばシャンデリア以上に光を受けてまぶしく反射しているものがあった。

それは部屋のいたるところに飾り付けるとは言えぬ程乱雑にばら撒かれた宝石の類だった。あたかもそれは石ころの様にテーブルの上に放り投げてあったり、壁に埋め込まれていたりして静かに佇んでいた。デジタルワールドも当然宝石類の価値は現実においてのそれとさして変わりはない。

ましてやデジタルワールドでは美しさだけでない特殊な効力を秘めた物もあるのだから重要度は尚更高い筈。しかしそれでもこの有様というのは持ち主の神経を些か疑わざるを得ないと思えた。


「これがデジモンの家かよ」

「凄ぇなぁ」

「あ、それじゃあ取り敢えずそこのソファに座って待っていて下さい」

「はい、丁寧に有り難う御座居ます」


 一行がその部屋にいたく興味をもった様子が瞳の輝きから窺えたが統率しきれないと思った義貴はそれを見ない振りをして一礼をし、部屋の奥を曲がったところの部屋へと入っていったシェイドラモンに返事をした。案の定一行はシェイドラモンが居なくなると物凄い好奇の目で部屋の中を見回り始めた。義貴は頭を抱えそうになったが、溜息を吐くとファングモンを呼び寄せ暫くじゃれるがままにしていた。

 あれこれと一行、特に目ざとい一美が面白そうなものを物色していると突然奥の部屋からクワガーモンが飛び出してきた。クワガーモンが壁に衝突し壁はぼこんとビニールの様にクワガーモンの衝突した部分から凹みゆるゆると空気の入ったボールの様に元の形へ戻った。それから直ぐ続けてシェイドラモンが飛び出してきた。シェイドラモンはクワガーモンにぶつかりクワガーモンはシェイドラモンと共にまたも壁に激突した。

 丈夫でしなやかな壁はボスンという音を一行の耳に伝えていた。一行は何事かとそちらの方を向いた。部屋の奥からもう一人デジモンが姿を現していた。

 二人が飛び出してきた理由はその直後に判明した。否、正しくは飛ばされた理由、だった。二人はそのデジモンの一撃に弾き飛ばされたのだ。


「こんな朝っぱらから起こすってのはどんな了見だい?」


 白髪を邪魔くさそうに振りクワガーモンくらいの大きさの身体をゆっくりと揺すりながら六本の鋭い鉤爪の付いた足で奥の部屋から出てきたそのデジモンは細く長い腕の先の大きな手で欠伸する口を押さえていた。そしてがさがさと二人に歩みよるとその手でがしがしと二人の頭を叩いた。


「で、あたしになんの用事だい?」

「いえ、あの、今日は客人がいらしてましてですね…」

「客?なんだよそうなら早く言いな。また玉虫の坊やが妙な事言いに来たんじゃないかと思ったじゃないのさ」

「はい、すみません」

「すまねぇです」

「そしたら鋏、アンタは湯、沸かしな。蛾の方はダージリンの葉が上の棚にあったからそれとカップだしな」


 蜘蛛の身体に女性の身体をくっつけたようなそのデジモン、アルケニモンは納得したように頷くと二人を顎で使った。それから一行の居る部屋に入ってきた。少しばかり即頭部から左右に突き出している日本の触角が揺れていた。


「なんだい、ヒヨっ子ばっかりかい。ほらアンタらさっさと椅子に座りな。人数分無きゃだすからちゃんと言いな」


 言われるままに一行は静かに椅子に座った。祐梨と一美だけはあまり態度に変わりは無かったが他は人間もデジモンも同様に萎縮して小さく椅子に座った。なんだか親に叱られているような雰囲気が白い家の中にたちこめた。




 自らの背中目掛けて突き出された毒針を、飛行する高度を上げて回避するとエクスブイモンは木の間を右へ抜ける。毒針を放った蜂の様な姿のフライモンは同じルートでエクスブイモンを追い再び尻の先に付いた毒針を放った。目の前に太い木の幹が迫っていたエクスブイモンは大輔が何か呼びかける声に反応して木の右に回り腕を木に引っ掛け反動で左へ回り毒針を再度回避した。


「しつけぇなぁ。スピード上がらねぇかエクスブイモン」

「木が多くてこれ以上は危ないぞ」

「また数増えたぜ大輔」

「あぁっ、何でもいいから急げエクスブイモン」


 エクスブイモンの周辺には十匹程の虫デジモン達が集まっていた。それでもかなり迎撃はしているのだが、エクスブイモンがその背に大輔達一行を乗せて飛んでいるため振り返って攻撃するなどの激しいアクションを取れず後に付いた相手は殆ど放置に近かった。


「こっち来てよ、攻撃が届かないよ」

「攻撃を喰らわないように離れてんだぞグラディモン」


 一応後方への攻撃方法はあったが、それはコテモンの進化した姿、球体の身体に装甲を身に着け、短い足と長い腕を持つグラディモンに一任していた。近づいてくるデジモンはグラディモンの長い腕の先にある細長いソードで一撃を喰らわせる。後方への攻撃はそれだけだった。


「だからこっちに来てってばぁ」


 それも相手が遠距離攻撃ならば意味を成さない上に、臆病で力のないグラディモンでは踏み込みが甘く攻撃を食らわせられたところで大したダメージは愚か撃墜する事は少しも期待出来なかった。威嚇の形だけだった。


「やべえってやべえって。後ろから色々来てるぞ」

「急げぇ、エクスブイモン」

「野郎が騒ぐな。この程度で致命打喰らうくらいなら死ねっ」

「でも結構後ろきてるッスよ祐梨さん」

「来てるだけで攻撃出来てはいねぇだろ。前の婆見習え、全方向の警戒怠ってねぇぞ」


 エクスブイモンの背中で状況の変化に一喜一憂右往左往と落ち着きの無い男子の側で祐梨は一人冷静に周囲を見渡し情けない男子群に檄を飛ばしていた。言葉は限りなく厳しかったがそれは的確だった。

祐梨の目はエクスブイモンの背中に乗っている間中ずっと細められたままだった。そして常にそれは外を向いていた。後方から自分達を追うデジモン、前方に不意に現れてくるデジモン、その全てをとは言わないが特に自らに危険が及ぶものに関しては一切の見落としが在り得なかった。

近づく者、武器を構えるも者その動向を把握しながら祐梨は敢えて何も一行に伝えなかった。一見して紙一重のような状況を彼女は楽しんでいたとも言えた。自分のパートナーは側に居ないというのに誰よりも余裕の表情をしていた。その横顔を見たシュンはそれが何故だか妙に気になった。


「祐梨さん修羅場慣れしてるッスね」

「後ろの奴が一斉に構えてるぜ」

「マジッスか、グラディモンソードダンス、ソードダンス」

「落ち着けっつの」


 後方の木の合間を縫ってモスモンの群れが一斉に尾の先のガトリングをエクスブイモンの背中に向けた。それを見たシュンは慌ててグラディモンに指示を出してグラディモンを少し尾の方に近づいて立つ様に指示した。


「レオ~、ボク出来るかなぁ…」

「出来る出来る。だから前見ろって、こっちじゃない向こうだ!」


 グラディモンは不安そうに後ろを振り向く。だがモスモン達のガトリングはまさに放たれる直前といったところでシュンは慌てて叫ぶ。しかし前を見ろというのを進行方向を見ろと勘違いしたグラディモンはエクスブイモンの頭の方へ身体を向けてきた。シュンは更に叫ぶ。しかしもうモスモン達は激しい銃声と共にガトリングの特徴である長く破壊力のある銃弾を連続して撃ち出していた。

 銃弾はエクスブイモンの背中目掛けて真っ直ぐに飛んで来た。エクスブイモンは被弾しいた。もう一度モスモンの方に振り向いたグラディモンの鎧にもモスモンの銃弾は襲い掛かった。それが幸いしてエクスブイモンはそれほど直撃を受けずに左へ大きく曲がって木を盾に残りの銃弾をかわした。

しかし攻撃を受けた反動で高度が下がり低く生えた木の茂る地点に思い切り飛び込んでしまった。一行は死に物狂いでエクスブイモンの背にしがみ付く。漸く高度を上げ其処から抜けた時には全身に俺だ枝が引っかかっていた。エクスブイモンの上に乗っている一行も同様に。


「ほっとしてんな。また来たぞ」

「エ、エクスブイモン右だ!」

「右は木が多くて行けねぇだろ。頭使え愚図」


 抜けた先でもデジモンは待ち受けていた。エクスブイモンが木に手間取っている間に加速し前方に周り込んだフライモンが毒針を直接突き出し襲い掛かってきた。エクスブイモンは毒針に触れぬよう注意しながら身体を右側に傾け近くに迫っていたフライモンを左腕で弾き飛ばした。もう一匹は更に身体を右に傾け極木の側へ寄る事で交わした。

直後にその先に在った木がエクスブイモンの目の前に迫った。エクスブイモンは一瞬ぎょっとし僅かにブレーキを掛けたがかわしきれないと判断して目の前に迫った木の側面を叩き強引に体勢を入れ替えそれをかわした。エクスブイモンの身体が大きく揺れ一行はまたがっしりとその身体にしがみ付いた。

 が、それでもエクスブイモンに息吐く暇はなかった。後方に待ち構えていたモスモンがまたも弾幕を張ってエクスブイモンの行く道を塞いだ。


「今度こそソードダンスだ」

「う、うん!」


 先ほどの攻撃で鎧の彼方此方にやや凹みが窺えるグラディモンは先ほどと同じようにエクスブイモンの尾に近いところへ立ち今度は振り返ることなく両腕を撓らせてソードの刀身を回転させた。長い腕が撓る事でそれはかなりの回転速度となりまるで円形の盾の様にエクスブイモンの背中に迫る銃弾を弾き飛ばしていた。


「エクスブイモン、急げっ」

「おうっ、大輔っ」

「そのままでいいぞグラディモン」

「このまま?レオ」

「だから振り向くなって!」

「コントかお前等…」


 シュンに呼ばれたグラディモンは再び先ほどの再現の様に振り返った。手は休めなかったが振り向いた所為で回転していたソードの切っ先の向きが変わり互いに交錯して弾かれ動きを止めた。ここぞとばかりにモスモンは銃弾を放った。これもまた先ほどのコピーの様に銃弾はグラディモンの鎧とエクスブイモンの背中を捉えた。


「グラディモン!」

「アレは放っとけ、もう…」


 足場が不安定な尾の近くに立っていたことと自分も直接弾丸を受けたことが相俟ってグラディモンはバランスを崩しエクスブイモンから弾き落とされた。エクスブイモンも弾丸を喰らって他の面々も余裕がなかっただけに誰も手を伸ばす事が出来ずにグラディモンは地面に落ちていった。


「グラディモン!」

「役に立たねぇんだからお前まで行くんじゃねぇ、この阿呆」


 祐梨はグラディモンを追いかけて飛び降り様としたシュンの首を掴んで掴まり易いところへ頭を叩き付けた。エクスブイモンはそこそこ高いところを飛んでおり当然人間のシュンが飛び降りて無事で済む筈がない。それでは役立たずと揶揄されるのは当然だった。


「グラディモン、転がって追って来い!」

「お前過保護過ぎ。放っといても一人じゃしょうがねぇんだから追ってくるだろうよ」


 祐梨は器用に背中にしっかりとしがみ付きながらシュンに蹴りを喰らわせた。そしてもう一言加えて呟いた。


「天の…いや、地面の方の蜘蛛の助けが来たな」


 エクスブイモンの頭を飛び越え赤い影がモスモンの目の前に飛び込む。そして構えた片手から広範囲に広がる糸を地面に向けて撒き散らし逆方向に細長い糸を飛ばし気に絡みついたそれで空中でブレーキを掛けた。モスモンの群れは避けようもなくその糸に飛び込み絡まって地面に落ちた。エクスブイモン達一行の窮地を救ったそのアルケニモンは糸を引き直ぐにエクスブイモンに追い付いた。


「ヒヨっ子共、まるでなっちゃいないよ。あんまりとろくさいんで見てられなかったよ」

「すんません」

「まぁQDCの温室テイマーじゃこの程度ってことだ」

「期待はしちゃいないけどね。少しは役に立ちな」

「すみませんッス」


 アルケニモンの高圧な態度に残った男二人は萎縮して頭を垂れた。一行を背負うという重しがあるとはいえ一応二人掛りの一行が攻撃を凌ぐ事すら出来なかった相手をアルケニモンは一瞬で動きを封じてしまった。単純にアルケニモンの方が成長強度が上でこういった局面に強いタイプであるとは言え、あまりにその差が歴然とし過ぎていた。


「大輔っ、向こう見て」


 意気消沈している二人にエクスブイモンが声を掛けた。それで二人がその先を見ると森の木が少し少なくなって次第に明かりが見えるようになてきていた。


「もう村は目の前だな」

「如何にか辿り着いたな」

「呑気な事言ってられるのは今の内だぞ。集落入ってみてやっぱり森で迷ってた方が良かったって後悔すんなよ」


 エクスブイモンは突き抜ける様に残りの距離を飛んだ。明かりが見えるという頼もしさに心を安めながら木を避け進んだ。明かりが見える。一面に広がっている。赤やオレンジの暖かい色が広がっている。暖かい色が広がっている。暖かい熱が広がっている。


「マジ、かよ」

「洒落になんねぇ…」

「惚けてる暇もねぇぞお前等」


 明かりどころか集落は殆どが炎に包まれていた。先に到着していたアルケニモンもその光景に少しばかり動揺している様子だった。


「争いなんて大体こんなもんだよ。そのくらいお前らも分かってんだろう」

「…ハイ。分かってるッス」

「そしたらさっさと元凶を如何にかしろ」


 一行はエクスブイモンから降りその集落に広がる光景をよく穴が開くほど眺め回した。炎は建物を包み立派なものは崩れていた。更には森にも火が着き風に煽られ広がっていた。そして虫達は自分達の住処だと言うのにそれを破壊して回っていた。その中頃の場所でこの集落の中で唯一バグに侵されていないジュエルビーモンが自分の部下である自衛団を相手に大立ち回りを繰り広げていた。








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「ファングモン、ステップアウト!オーバーハーフライト、アタックファースト!」


 モスモンの尾に付いているガトリング砲から放たれた弾丸を細かく刻んで後ろに下がりながら避け口からモスモンに向けて衝撃波を放った。モスモンは旋回してそれを避けると入り組んだ木の間をすり抜けファングモンの視界から消える様に生い茂る葉の中へ姿を消した。そしてその葉の陰から再び銃弾は撃ち下ろされた。ファングモンは義貴の指示を待たず前方に進んでそれを避けた。


「レフトターン!」


 行き着く暇もなくファングモンの後方からはサンドヤンマモンが鉤爪を振りかざし飛び掛って来た。直ぐに出された義貴の指示通りファングモンは左回りにぐるっと回って飛び掛って来たサンドヤンマモンをかわした。


「アタックファースト!」


 ファングモンは攻撃をかわされた為一度上空に退避しようとしたサンドヤンマモンの後ろに回りこみ先程の衝撃波を放った。サンドヤンマモンはその衝撃波に飲み込まれもがきながらも風の渦に押し流されるように木の幹へと強かに身体を打ち付けた。


「ファングモン、バック!避けろ!」


 義貴は叫んだ。それとほぼ同時にファングモンの脇腹に二匹目のサンドヤンマモンが襲い掛かった。鋭い爪が義貴の声とサンドヤンマモンの風を切る僅かな音に反応して伏せたファングモンの脇腹を裂いた。一匹を仕留めた隙を狙われた。迂闊だった。

しかしそれにしてもこの状況は異常だった。義貴とファングモンのコンビは雑魚なら既にこれまでに銃数匹は凌いでいた。しかし一向に状況は変わらない。先程から常にファングモンの近くには四、五匹の虫デジモンが群がっていた。逃げても追い払っても虫デジモン達は纏わりついていた。

 ファングモンは脇腹の痛みでよろめきそうになるのを堪え、サンドヤンマモンの逆から少し遅れて放たれたヤンマモンの雷の閃光を高く飛んで避けると木にしがみ付いた。


「ゴゥ、ファングモン」


 ファングモンはそのまま爪を立てて木の登った。ヤンマモンもサンドヤンマモンも木を登り始めたファングモンには追撃を仕掛け無かった。ファングモンは丁度ヤンマモン達の死角となる木の裏側にしがみ付いた為だった。

それにしてもデジモン達の行動はお粗末なものだった。先程からこういったちょっとした事でファングモンの姿を認識出来なくなったり攻撃をしなくなったりしていた。だからこそこれだけの敵の数でもこれまで如何にか切り抜けてこられたのだ。

義貴には現状が全く理解不能、という事もなかった。実際に経験したことは無かったがこのような状態が如何いう事かは知っていた。突然地域全体のデジモン達が暴走して虚ろな目で襲い掛かってくる。

その行動は単調で通常時とは明らかに繊細さに欠く攻撃や、無謀としか思えない突進など、ただ此方に攻撃をすることを目的としているとしか思えないそういった特徴のある単調な行動をする。つまり単純に言い換えると操られたような状態になるという事だ。QDCの面子ではそれをバグに侵されたと言う。

通称バグと呼ばれているデジモンを混乱に導くデジモン。その正式名称はコンフューズドバグモン。正式名称と言ってもそれは中核(カーネル)から正式に提案された名称でなく、あくまでQDCが仮に設定した名称である。故に安直且つ単純なネーミングだったが、それは現状では問題ではない。問題であるのは何故それが仮なのか。だが答えは至ってシンプルで、それは過去に存在しなかったデジモンであり、尚且つカーネルとは関係なく製造された人造デジモンだからである。

コンフューズドバグモンはQDCと敵対するデジドラモンの持つ組織によって作られたデジモンである。全長一センチ程の超小型デジモンで全身を機械で造られた虫の様なデジモンだ。殺傷能力は一切持たない代わりに、現在確認している限りでは、一匹のコンフューズドバグモンで一体の成熟期までの成長強度を持つデジモンを操ることが出来ることが分かっている。

コンフューズドバグモンは身体のデジタルデータを分解し自分の侵入経路として作りかえる事が出来、その力で体内のデジコアまで侵入し自分の身体をそのデジコアのデータに紛れ込ませ操る。成熟期までのデジモンは抗いようもなく意識を奪われ、身体の行動権利も奪われる。そう、紫苑に課せられた主なる仕事であったファイル島のバグの駆除。そのバグと全く同じものである。

更に加えて説明しなければならない事が一つ。それは、何故これだけのデジモンがバグに侵される中、義貴のパートナーファングモンはバグに侵されていないのかということ。完全体以上の成長強度を持つデジモンを操ることが出来ないのは単純に成熟期よりもデータ量が多くコンフューズドバグモンがデジモンを混乱させる能力に耐えてしまうからで、数匹程度の付加には堪えられるからこそ、コンフューズドバグモンが地域に広がる際の拠点とする、QDCの中ではその巣と呼ばれている大量のコンフューズドバグモンの集合体を完全体の身体に根ざすことが出来る。

その大量の力を以ってすれば完全体も征服することが出来る筈のコンフューズドバグモンが何故ファングモンを操る事が出来ないのか。それはファングモンの体内に侵入出来ないからだ。では、何故侵入出来ないか、それはテイマーのパートナーとなるデジモンがアナログの力をテイマーから得ているからである。それは特別な事でなくテイマーのパートナーとなっているデジモン、或いは過去そうであったデジモンであれば必ずコンフューズドバグモンを回避できる。

デジモンにはあらゆる進化の方法がある。即ち、極当たり前にデジモンに起こる通常進化、特定の条件下にのみ起こる特殊進化、法則性のない突然変異、そして人間のパートナーの持つアナログの力に触れる事によって起こる感応進化の四通りである。

細かく言えば感応進化の中にはデジメンタルと呼ばれる特殊なアイテムによって進化するものがあったり、通常の逆の道を辿る退化等というものもあり未だ幾らか細分化するが、基本はその四つである。そしてコンフューズドバグモンの力がファングモンに及ばない理由はその感応進化に関係がある。

感応進化は他の進化とは明らかに一線を画す進化だ。それはアナログの力が其処に働いているからである。アナログの力はデジタルワールドにはない力で通常ではありえない力をテイマーからデジモンは受け取りそれにより進化する。

その通常にはない力がコンフューズドバグモンの侵入を拒んでいるのではないかと考えられている。またコンフューズドバグモンはデジタルデータ分解して体内に侵入するするという実験結果がQDCにより証明され、一部の研究者の中ではデジモンに人間のアナログなデータが取り込まれた事により、コンフューズドバグモンが分解することの出来ないアナログなデータがあるがゆえに侵入出来ないのではないかとも言われている。

その恩恵を受けているファングモンは鼻と耳を頼りに仕留め損なっていたモスモンを見つけ出していた。幸いにもモスモンは一端離れた事でファングモンを見失い上空の茂る葉の中を彷徨っていた。

ファングモンはすぐさま木からモスモンに飛び移り前足の爪を頭部に叩き付けた。続けて二度三度爪を打ち付けた。モスモンがそれで気絶した後ファングモンはモスモンの身体を離れ地面に衝撃波を放った。ファングモンは衝撃波で落下の速度を減少させ緩やかに地面に着地した。


「ファングモン、フロント、アタックセカンド!」


 ファングモンは身を屈めグッと脚に力を込めた。前方には先程のヤンマモンとサンドヤンマモン、それに何処から紛れたか新しいモスモンが居た。三匹ともやや攻撃するには高い位置を飛んでいたがファングモンの脚にはそれ程関係のない事実だった。ファングモンは雷の如く三匹の側をすり抜けた。そのすり抜けざまの高速な一撃で三匹はまさしく虫の如く地面へポトリと落ちた。先輩テイマー佐川紳とブイドラモンには通用しない攻撃も操られた雑兵相手ならこれだけの力を発揮することは出来た。


「ファングモン、カモン」


 義貴は木の陰からファングモンを呼び寄せた。漸く周囲にデジモンが居なくなった。義貴は少し溜息を吐きデジヴァイスから二本ペットボトルを取り出し一本に口を付けた。


「ファングモン、疲れてない?」


 側にやってきたファングモンは義貴の太ももに頭を摺り寄せた。グルルと低く喉を唸らせ自分の頭を撫でる義貴の手を舐めた。義貴はペットボトルを開けファングモンに飲ませてやった。それ程長い休憩時間は取れない。ファングモンに水分を与えながら義貴はデジヴァイスのデジモン反応を見てそう思った。


「グルルゥ…」

「何だよ、別に大丈夫だって」


 知らぬ間に義貴の手は震えていた。ファングモンは義貴を見つめて唸った。初めての本当の意味での実戦。これまでのように守られているだけではない実戦。少しばかり望んでもいたそれに義貴は震えていた。興奮もあり緊張もあり恐れもあった。夕暮れがそろそろ過ぎようとしていて暗い森が暗さを増していた。


「早く皆見つけなきゃ」


 義貴はペットボトルをデジヴァイスに仕舞って呟いた。ちらっとだけファングモンの腹部を見る。傷はもう消えていたがそれが在った証拠として毛並みの赤さとは違う赤い色がファングモンの腹部にこびり付いていた。ファングモンは高速戦闘を得意とするデジモンでその為防御が通常よりも弱い。

得意の高速攻撃、スナイプスティールもそう何度も連発出来る技ではない。はっきりと持久戦に向かないタイプだと分かっている。兎も角早く誰かと合流しなければならない。そしてそれとは関係なく出来れば一美を真っ先に見つけたい。そうも思っていた。


 義貴はデジヴァイスのデータを見た。其処に新たに追加された赤い茸の映像がなんとも心苦しかった。自分のミスだとその事実が義貴の頭の中をずっと駆け巡っていた。そのミスが状況を酷くしたというその思いが指先の震えをもっと促していた。


 事の起こりは二時間程前。この森の代理ではなく本当の村長というデジモンの家を訪ねていたその最中に始まった。





 久々に快適なベッドで眠ることの出来た一行が起きた時間は予定よりも二時間も遅い九時半の事だった。普段は時間通りの行動する義貴でさえ一時間遅れての起床だっただけに一同は自分の非をお互いに誤魔化しながら朝を迎えた。

 朝食をそこそこに済ませると元々の予定だった今後の旅の為の食材を買い出し班の一美と大輔が驚異的な速度で済ませ、その間に義貴と昨日顔を見せなかったシュンと祐梨がジュエルビーモンのところへ挨拶に向かった。昨日アレだけ大暴れして見えたオオクワモンは今朝は落ち着いたのかジュエルビーモンと共に義貴達と挨拶を交わした。そして改めて詳しくこの森で起こった出来事を聞いた。

 一行がこの集落に辿り着く前夜、生み出されたデジタマを保管する保育用倉庫に侵入者があった。二人の見張りをほぼまずくびり殺し風の速さでデジタマを持ち去っていった。果敢に向かっていった仲間達は愚か無抵抗の者も逃走の邪魔となるものは須らく殺された。犯行グループは四体のデジモンで、こちらの攻撃を一切受け付けぬ速度で逃げ去った。

そのうちの一体には如何にか攻撃を浴びせる事が出来たが、それもまた一瞬のうちに助け出され逃走したということらしい。


 他にもその倉庫にはデジタマが在ったが、犯行グループは迷わずそのデジタマを奪い他には目もくれずに逃走した。そのデジタマのみが目的のかなり計画された犯行である。とすると一つ疑問が残る。義貴は質問した、どうしてそのデジタマが狙われたのかと。

 その質問にジュエルビーモンが口籠ると横から祐梨が言った。恐らくそれはこの集落にとってとても特別で大事なデジタマなんだろうと。義貴が続いてジュエルビーモンに確認を取ると、まだデジタマの段階で確実ではないが恐らくそうなるだろうと少し曖昧な答えを返した。更に義貴はそれが如何特別なのかという事を尋ねたが祐梨がそこは大した問題じゃないと制した事でその話は打ち切られることになった。

 話は今日の予定についての事に移行した。ジュエルビーモンは森の出来得る限りの者に協力を仰いで犯行グループを探すつもりだと言った。それは一昨日の夜中に犯行が行われその際に一体が負傷しているのだとしても機敏性に優れる虫デジモン達が森の中で撒かれる程の移動能力を持った者達が逃走に二日も三日も掛かるとは考えにくい。

監視を森の外へ逃さぬように立たせているので外へ脱出はしていない筈だが、突破されるのは時間の問題で此方には猶予がない。それが主な理由だ。

 その為にとジュエルビーモンは一行QDCメンバーに遣いを頼んだ。それはこの森の奥にいる本当の村長に森の中のデジモン達に犯行グループを捉えるように動けと命令して貰う為だ。ジュエルビーモンは未だ犯行グループは誰の目にも付かずに逃げているといった体で表現したが、実際には相当膨大な数のデジモンが居る訳でその数多くの複眼が一度も彼らの姿を捉えないというのはあまりに不自然である。

しかしそれが何故現実に起こっているか、答えは二つである。彼らの姿を見たものが全員殺されているか、彼の姿を見てなお見なかったふりをしているかどちらかである。

 この森の住人に個別のまとまりはあっても全体の統率はない。それで何故いざという機器が在った時に揃って集落の指示を聞き入れるのか。それは早い話が褒賞金が集落から出されているからだ。要するに自衛団以外のデジモン達は利益の為に誰もが動いているのだ。だから別に利益を得る話があれば集落の要求を飲み込む理由がない。

それを犯行グループが知っているとするなら、否おそらくは知った上で犯行を行っている事が推測され、今犯行グループはこの森の虫デジモン達を買収か脅すかして匿われている事も想像に難くない。

 その中から犯行グループを引き摺りだすには自衛団が直接出向いて武力で脅すか褒賞金を上乗せするか以外にこの森ではやりようがない。しかしそれをするためには今圧倒的に足りないものがある。それは人手である。

 脅すにも上乗せするにも大っぴらにやれば犯行されたり調子に乗って集団で褒賞金を吊り上げようとしてきたり場合によっては偽の情報を流してきたりもする。故にそうするためには個別にまとまりの中へ訪れ犯行グループの情報を奪い取るしかない。

そうするとこの膨大な森の中である全部を調べつくすのに一体どのくらい掛かるか分からないし、所在を転々と移られてしまえば一つ一つを調べる意味事態なくなってしまう。数十人程度しかいない自衛団だ、隙を見て一度調べられた場所へ移り変われば二度三度と同じところをかちあたるまで調べなければならないことになる。それは不毛もいいとこだ。

 だから本来の村長に願い出るのだ。ジュエルビーモンが言うには本来の村長はその実力も権力もジュエルビーモンより遥かに上のもので、人望と強制力がかなりあるのだそうだ。そうまで説明すれば大方頭が良いように見せるため授業内容はしっかり覚えるが決してキレるというほど賢くないシュンにも何が言いたいのか分かった。虎の威を借る狐とはまさにこのこと。権力者の村長という虎の力で森のデジモンを牽制する狐になるとジュエルビーモンは言っているのだ。

 それを直に村長に伝えるなり身内に伝令を出すなり出来ないのはそういった事情があるからである。仮にもジュエルビーモンは村長から集落の村長の代理を任されている訳で、自衛団は森全体の治安を良くするために立ち上げられた組織で、其れが通用しない等と直接自分の口から言える訳がない。

人手が足りないのは事実だがこれは何より優先されることでそれを人手が足りないと言ったりQDCメンバーと村長を引き合わせるいい機会だと言ったりするのは全て建前である。尤も当のQDCメンバーはその事実に全く以って気付いていない様子だったが。

 兎も角義貴達一行はジュエルビーモンの要求を受け入れ本日の予定は今後のあと少しとなった旅の準備を進めることと本当の村長に会いに行くという事と、その際に祐梨の目的であるベニデジタケを探すこととなった。

 一行は買い物を済ませた大輔、一美と合流し早速森の奥の村長の元へ向かう事になった。道案内には自衛団の中でも屈指の腕と言われているシェイドラモンとクワガーモンが宛がわれた。シェイドラモンは初めてジュエルビーモンを訪ねた時に一行の応対に当たってくれたデジモンでジュエルビーモンの教えを身体に見事に沁み込ませている感じだった。一方でクワガーモンはそれよりも荒々しい態度で相当腕に覚えがあると言った風だった。

 この場合印象はクワガーモンの方が悪かったが注意すべきはシェイドラモンだと言えた。道案内と言いつつそれなりの実力があるQDCの一行に護衛と称する腕利きを付ける以上それはQDCの動向を見張り場合によっては抑制、攻撃をする為の人材配置であるだろう。そうでなければ見ただけで他の面々と実力が違うこの二人がただの道案内をするにはあまりに役不足だ。

 裏の思惑も知らぬまま一行は村長の居るという森の奥へと向かうことになった。




 目の端をちらつく小虫を見つけた。しかしサイクロモンはそれを無視した。相手の数は膨大だ、いちいち構っている暇等一つもない。木の間隔はあまり広くなくサイクロモンは時々それに接触しているため身体の側面にはかなりの擦り傷があった。それに無視していた小虫がサイクロモンの背中にひたすら電撃を放ち切り付けてきていたのでもう背中は殆ど赤く染まっていた。


「悪いねぇ、サイクロモン」

「気にするんでねぇわ。こんなん屁でもねぇ」


 サイクロモンは豪気に笑い飛ばして言った。しかしその言葉は決して強がりなどでなく、実際その様子に少しも堪えたところはない。成熟期の中でもかなりの巨体を誇るサイクロモンだ、それも当然の事である。


「あぁ、虫の反応が多すぎて何処なんだかわからないねぇ。そろそろだと思うんだけど」

 デジヴァイスを眺め足元に広がる景色を見比べながら一美は言った。デジヴァイスの画面は周辺のデジモン反応を示していたが中心の自分たちを表す緑の点をも埋め尽くすほど赤い点が一面に分布していた。その所為で一美は求める青い点を見つけられずにいた。仲間を示す青い点を。


「もう結構時間経ってるしそろそろやべぇんじゃねぇの?」

「如何すんじゃい」

「しゃらくせぇ、一旦周りの全部ぶっ飛ばせ!」

「一網打尽とか言うやつじゃな」

「いいから早くぶっとばせって」


 サイクロモンは大きな右腕でブレーキをかけ、一気に反転した。サイクロモンの肩の辺りに乗っている一美は勢いで振り落とされぬ様にしがみ付く。


「じゃははっ、喰らえいわしのストレングスアーム!」


 サイクロモンは大きく腕を振り上げた。急な反転にも関わらずかなりの数の虫デジモン達が攻撃を仕掛けようとしてきたところを見ると恐らくは反撃前に攻撃出来ると考えたのだろう。確かにパワータイプのサイクロモンは攻撃も防御もそれに素早く対応し行動することは出来ない。スピードタイプの敵には圧倒的に弱い。しかしそれは実に安直過ぎる考えだった。

 それまで虫デジモン達がしてきた攻撃は雷を放ったり銃弾を撃ったりと遠距離の攻撃だけだ。それは急な反撃でも触れるとほぼ一撃でやられることがその巨体からもう予測できてしまうからだ。そしてもう一つの理由は攻撃の反動で減速せざるを得ない状況では直接攻撃するために近づくには多少の時間が掛かるという事。それは容易に追いつく程の脚が遅い訳ではないという事だ。

 そもそも巨体のデジモンはそれだけで動きが鈍いと考えられがちだが、それはあくまで巨体のデジモンが攻撃する場合は身体の大きさ分モーションが大きい為に小さいデジモンの数倍の距離があるからであり、攻撃される場合は例えば一メートル被弾地点に誤りがあってもそのくらいは身体の範囲内であるから当然喰らってしまうというだけであって、

考えてみれば普通に歩く一歩の大きさは明らかに何十倍もあり、移動速度も相応の早さを持っている。それが巨体であるから遅く見えるだけだ。怪獣映画で走って怪獣を追い越す人間などいるわけがない。

 それなりに距離があり巨体にかかる惰性で上手く身体を反転させオマケに反転の前から攻撃の準備をしているため直後にもう腕を振り上げているの出来、そこからは重力の力を借りるのだから腕を振り下ろすスピードは相当速い。サイクロモンは地面に自分の腕を叩き付けた。

其れと同時に大地の崩れる音が響き前方の大地は手前が沈む反動で隆起し木は軒並み倒されデジモン達は勢いで地面に叩き付けられたり吹き飛ばされたりした。丁度それは綺麗に扇型に立てられたドミノの様に惨状が広がっていた。一美とサイクロモンの見る目の前の景色には綺麗な扇状地と小虫の居なくなった景色が出来上がった。


「雑魚は散るのみ。ガハハハ」

「こういうところでやるとお前にゃ破壊力があると良く分かるわ。何匹かは死んでそうで怖いねぇ」


 一美は眼下に広がる景色を眺めて思った。しかし実際にはそうなってはいないだろうと彼女は予測していた。相手は羽を持った昆虫型のデジモンだ。吹き飛ばされた程度で死ぬほど柔ではないだろうし、何匹か運悪いデジモンが叩き付けた腕の真下に居ようと羽を持ち軽い身体の昆虫デジモンなら風圧で散って踏み潰されることはなかっただろうと。かなり荒っぽい方法だったがこれがデジモンを殺さず散らす最善の方法だと一美は考えていた。

 他の技は広範囲に効くものがなく、在ったとしてハイパーヒートという鉄火面で覆われていない片目での熱線攻撃だが、QDCとしてバグに侵されたデジモンを殺す訳にはいかず、また殺したくはなく、一点集中のその技ではその危険性が高い故現状では最も放ってはいけないのが事実だ。またこうも森に囲まれていてはあっという間に火の海である。そしてそれが今サイクロモンが苦戦を強いられている理由である。

 サイクロモンは葉月のアクスモンと同じく、一美と組む前から戦いを重ね生き抜いてきたいわばベテランの兵士で、この程度の事ではほぼ問題は無いに等しいくらいだ。しかしその戦場を生き抜いてきた時からの最大の必殺技、ハイパーヒートが事実上で封じられたとなると後はもう直接攻撃しか戦う手段がなく遠距離攻撃の多い虫デジモン達をまともに相手にするのは困難であるそれ故の逃走作戦であり先程の奇襲じみた攻撃なのだ。

 サイクロモンはあまり気にしていなかったが一美は焦っていた。そもそもこれだけのデジモンの中に一組だけでいるのは正気の沙汰ではない。一美はそれを自分達に思っているのではない。もう一組、先に隊形から離れたテイマーズに対して思っていた。


「ヨッシーの反応見えた。このままやや東よりに進むよ」


 顔には焦りを出さずに言った。サイクロモンの立てた大きな衝撃音で標的を見つけた虫デジモン達が先ほどのようにサイクロモンの近くに赤い反応を示すようになってきたが、お陰で少し遠くに位置する青い点が見えるようになった。それはここから北北東方向に存在しやはり赤い光で囲まれていた。

音が聞こえてこっちの方へ来てくれるとありがたいと思ったがそれが出来ない事が容易に予測される程赤い光は青い光に群がっていた。義貴のパートナーが長期戦に向かないのを分かっている以上、一時間も一人で戦わせている今に猶予などまるで残されていない。

 賢いくせに律儀だから人の為に無理をする。一美は義貴の事をそう思っていた。義貴が産まれてから小学4年生の頃までならその殆どの時間を一美は知っていた。特別幸せでも特別不幸でもない普通の家の子で、栃木の実家の隣に住んでいて、陸上で推薦され都内の高校に行くまではよく一緒に居て連れまわしていた子。

その頃には足を踏み入れていたデジタルワールドに八ヵ月程前に迷いこみ、その一ヶ月後に再会を果たした子。生意気だけど物事をちゃんと理解出来る賢い奴に育っていた子。だから普通より少し早く実戦に投入されることになって、でも実戦にはまだ及ばないレベルだったことを知って、少し無理なやり方でそうなることを阻止して戦場に行かすのを遅らせた子。それでも今回相当な任務に就くと聞いて、自分にチーム参加を決心させた子。自分の弟みたいな子。

 一美は自嘲気味に笑った。なんだかんだ心に浮かべて何もこんな場面で無理しなくてもいいのに、と思ってみてもそれ以上に自分が無理をしている事に気付けば当たり前に出る溜息が出た。隊形から飛び出しその巨体で敵を曳きつけながら仲間を探しているなんて、そんな無茶をしている。そしてさせている。

 少し思い出に浸っていたからか緊張が緩み集中力が切れていた。そして気付いた時にはもうそれは直ぐ近くに存在していた。はじめに気付いたのはサイクロモンが皮一枚を切られ、何かいるぞと言った時だった。周囲にそれらしき陰は見えない。しかしデジモン反応は出ていた。周りに群がっている虫デジモンの気配ごと赤い光が途絶え、一つの赤い光がまるで一美達の危機を示すように激しく画面の中で揺れていた。

 一美は途切れていた集中を再び繋ぎ直してデジモンの動きを追い始めた。目では捉えきれないが確かに周辺でヒュッヒュと風を切る音が聞こえていた。サイクロモンは大きく後ろに下がった。ダスンという大きな足音が響く。

 目の前に一人のデジモンが現れた。丁寧に此方がその姿を認識出来るようにサイクロモンの顔の目の前に腕を組んで飛んでいた。殆ど人間のような姿でメッセンジャーのヘルメットの後方部分を伸ばしてその先端を大量の針のように尖らせた頭部に両腕の肘に雷のような形をした鋭い突起が飛び出し脚の裏にはスケート靴のようになったナイフを装着している。

頭部、胸部、腕、足に装着されたラバー製のアーマーの様なモノは青い色をして身体に着ているスーツは白く首に巻いた長いスカーフも白い。それは有名なサイボーグの戦士をそのままモチーフに進化したと言われているデジモン、リンクモンだった。


「時間がないってのにまた性質の悪い…」


 一美は拳で掌を叩き渋い顔で呟いた。相手はサイクロモンにとってこの上なく不利な敵だった。リンクモンは超高速戦闘を得意とするデジモンで、その速さは究極体でも及ばない者が殆どだというくらいだった。

 一美はデジヴァイスを覗いた。義貴を示す青い点は直ぐ側と思える程近くにあった。実際はそれでも相当の距離があったがそれだけが一美の救いだった為にそのイメージについては完全に無視を決め込んだ。そういう気構えでいかなければやってられない気がした。時間も体力も現状を満足に動くにはもうそれほど余裕は残っていなかった。









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なんという雑なタイトル。



え~っと、ロボ小説を書こうかなぁとか思ってとりあえずテストで戦闘場面でも考えてみようかと。ネタは色々あるがロボとか戦争物とか色々表現難しそうだし、下調べめんどそうだし結構難儀。でもあれこれロボ物を見ているわたくしめにとってはかいてみたいジャンルの一つ。そろそろいい加減色々しっかりなんかに応募する用の小説をまとめにゃ。そしてデジモンも進めにゃ。
ってことでどうぞ。短め。



っと、説明なしで戦闘にとりあえず入るから前段階でフィールド状況を説明。一応内部で説明はすると思うが。何分何を書き出すか分からん脳みそなので。
密林。(ロボよりも高い木の茂った状況)夜。
多数の白兵は直ぐに浮かばんので単機戦。
ロボは接近戦型ということで。
では。
ロボの形はあんまり細かく考えてねぇ。コクピットないの状況もあんまり細かく書いてない。まぁかなり粗悪なテスト品。





 前方3000メートルの岩壁からこの密林へと侵入して来た敵機は自身の存在を敵に悟られる危険を無視しこちらへ真っ直ぐ進行してきている。自機に装備された高感度ナイトスコープが逃げ惑う鳥の姿を補足している。それは途切れ途切れながらもそのポイントを線で繋ぐとこちらへ向かってきているのが良く分かった。

 右側に位置するパネルを操作し、OSに待機、通常移動モードから戦闘モードへと移行する様指示を出した。OSがどこだかの役者からサンプリングしたヴォイスで「了解。待機モード解除」と告げてきた。確か、初めて機体に搭乗した時に直属の上官である大尉殿がインストールして下さった声だったか。まぁ、その大尉殿は先日の交戦時に中佐へ二階級特新なさってしまったのだけれど。

 私は指を躍らせてから機体を操作するレバーを握り直した。それと同時に自機も装備されたライフルを握り直した。正しくはモードの移行に伴いエネルギー消費を抑える為に制限していたエネルギー循環の制限を解いただけなのだけれど、その際に機体内部に伝わってくる振動が、何か人間の感情の動きの様な気がして私にそんな感覚を覚えさせる。私はそれが嫌いではない。


「此方はもう直ぐ敵機侵入路へ到着します。そちらはどうですか?」

「此方P-1。敵機と接触、これより戦闘に入る」

「了解、応援は?」

「いや、そのまま待機していろ。相手も単機だ、一人でどうにかする」


 自小隊から通信が入った。敵影を確認した時点で指示を出しておいたが、その確認の連絡だった。適当と思われる指示を出し、それから深く息を吸った。

 近接近戦に特化し侵入、制圧を主とする戦いに借り出される事の多い自機の特徴の一つである、半径200メートルという狭い範囲までしかフォロー出来ない索敵レーダーの中に敵影の反応が飛び込んできた。地面を削り木々を回避しながらスライド移動で突撃してくる敵機の姿もカメラに映しだされた。

手始めにといった印象で手に持ったライフルを一撃してくる。この闇夜には閃光とも思える眩さのマズルフラッシュ(銃口から放たれる銃撃時の光)を放ちつつ発射された一撃を私は右方向へスライド移動して回避した。敵は直後私とは逆方向へ移動し、一旦停止した。

 戦闘時独特の緊張感が体を走った。敵機が目の前にいる。無論新兵ではないのだから敵機がいる事で動揺や何某の衝動を感じる事もないがそれでも鼓動は先程よりも早くなっていると感じる。人間に起こる生理的な震えもはっきりと明確に感じている。油断があれば死ぬ。ミスをしても死ぬ。だがはっきりとそれが分かる冷静さは保たれている。迂闊な行動なんて事はしない。

 密林戦での最大の障害物は勿論この生い茂った木々である。しかし、とはいえ所詮木であるが故にその一本や二本の貫通は容易い。木の陰に隠れるだけでは身を守る事には繋がらない。不用意に動く事は当然自分を危険に晒すだけだが、先ずは動く。先手を打つ。左方向に向けてアクセルを踏んだ。人間同様の動きで自機が走行を始めた。相手も同方向へ移動を始め銃撃の応戦が始まった。

ロックオンはしていないし、此方にも敵機のロックオン反応は来ていない。障害物の多い密林でロックオン状態を維持すると敵機の姿のみを追い過ぎて周囲の状況を把握する事がやや困難になる。相手も心得ているということか。

 敵機のカラリングは黒。やや距離がある為機体の種類、武装など細かくは確認できなかった。

単機のみで進行してきたところを見ると先遣隊の一人で姿を隠していないところから推測するに陽動かそれとも比較的防御の薄いこの場所を単機突破でも目論んでいるか。何れにしても単機であるという事を考えれば深夜も密林も相手は得意としているところだろう。展開した我が隊は此方の方へ向かっているが…後続機、もしくは小隊でも来られると厄介だ。やはり隊は動かさず単機撃破を試みた方が得策だろう。

 木々は銃弾の応酬に対して守る術を持たない為に黙って体に風穴を開けそれでも立っている。木々の迷惑はお構いなしに放たれる弾丸はまだお互いの体に傷を付けてはいない。向こうも様子を見ている。速攻をかけてこないところを見るとやはり後続の侵入をやりやすくする為の囮と見えた。

それならば先に仕掛けるべきは此方。私は走行中の足を無理やり前方に踏み込ませ、自機を停止させ背中のブースターで補助しバックステップを行った。加速度の衝撃を受けて脚部が軋みの音を上げ地面を抉る。機体の重量感が搭乗者である私に衝撃となって襲い、バックステップを行った為にそれが後方へ抜けた。

同時に照準をやや左にずらし射撃を行った。感覚での補正であったが相手との相対速度を考慮して若干前方へ狙いをつけた。だが相手も此方がバックステップをした時点で狙いに気づいたのかスラスターによるピボットターン(その場で回転を行う技術)を行い弾丸を回避した。かなりの反応速度だ。やはり単機で進行するだけの技術はあるか。

想定以上の反応の高さだったが一応は狙い通りだ。着地と同時にブースターを下方から後方に向けて噴射し前方、敵機へ向かってスライド移動を行った。装填中のマガジン内の弾丸が若干少なくなっているが反撃を許す訳にはいかない。ライフルを前方へ向けて発射しつつ接近した。

敵機は後方へジグザグとした動きでバックステップを行いライフルを回避しつつ距離を取ろうとする。だが此方の方が速度は速い。確実に距離を詰め、そして40メートル程度に差し掛かったところで加速し一気に間合いを詰める。

と、バックステップのみを行っていた敵機が自機から見て右方にスライド移動を行った。右方から銃撃を行われた。なかなか此方の動きの読みの早いことで。現状で右方向への急旋回は難しい。取り敢えず私は加速状態を保ったまま前方へ走り抜けた。

射撃ではなかなか埒があかないようだな。そう判断した私は脚部のホルスターへ右腕の銃を収めると右手を木に引っ掛けて旋回し再び距離を詰めに掛かった。今度は敵機も避ける意志はなかったらしく私と同じ方法で旋回すると右腕を前に突き出しながら突進してきた。その手に武器は握られていない。何かのポーズなのかと一瞬考え次の瞬間に正答が浮かんだ。咄嗟にブースターを下に向け噴射し、飛び上がっていた。

ブースターの光に照らされ、敵機の腕部から別の光が放たれた。想像しい連射音と振動する右腕から内臓ガトリングと理解できた。チラリと銃口が見えたがそれも黒くカラリングされている。ライフルを仕舞った事に騙されて接近した敵を撃つ、か。どうやら騙し討ちについても心得がありそうだな。まぁこれで騙されるのは実戦経験のない新兵か、感覚だけで機体に搭乗している死にたがりの馬鹿かくらいだろうが。

私は敵機の後方へ飛び越えた自機を空中で反転させ着地と同時にアクセルを踏み込み間髪入れずに間合いを詰めた。敵機はピボットターンを行い、此方へ向き直ってガトリングで弾幕を張ってきた。左腕で右腰部に差していたらしい接近戦用武器、ショートソードと呼ばれる両刃の有り触れた西洋剣を取り外した。

向こうが迎え撃つ体勢を整えている一報此方は自機を左右へ振り回避しつつ接近する。此方にもソードの装備はある。接近戦でやり合うのも手だが、出来れば迅速に撃破し早めに待機している小隊に合流したい。
やり方次第だ。私は次の行動を起こした。この手を使うと消費エネルギーは多くなるが仕方ない。

 体勢の保持と敵の行動に留意しつつチラリと右側のパネルに目をやった。機体が特定の行動を起こす為に予めプログラミングされた行動を即時に行う為の短縮コードを打ち込むプッシュ式の電話と同じ配列のタイプキーの左側に機体全体を簡易に映している小さな液晶画面がある。それはタッチパネル方式になっていて、私は映された機体の左手の部分を指先で叩いた。画面は拡大された左手を映しだしているだろうが、私はもう見なかった。手順は分かっている。

 機体内部の操作を始動キーはアスタリスク。それから数字を三つ打ち込み、更に横に付けられたエンターキーを押す。これを使う時は自体が切迫している場合が多い。手元を確認せずに行えるようにアスタリスクから近い789を打ち、エンターを打った。


『左腕フォトンスロット開放』


 OSの動作確認の声に伴い、微かに低い、唸る様な振動とその音が伝わってくる。


『エネルギー流入開始』


手順はもう一つ。特殊な機構である為にセーフティロックが一つ設けられている。パネルの横にある専用のロック解除レバーに手を掛けた。円形の出っ張りを捻りコの字型の取っ手を横向きから縦向きにし、引いた。出っ張りが丸ごと装置から外れ支えとなっている棒が姿を現す。手を離すとすぐさま元の位置に収まるが、セーフティロックの解除はなされていた。


『AIF起動。展開可能状態を維持します。展開可能時間をメインモニターの…』

「うるさいよ」


 相変わらずサンプリングヴォイス特有の無感動な声が分かりきっている事を告げてきた。それを自分の声で掻き消しつつ再び右手の操縦レバーを握った。

握り込んでいる掌には幾重にも分岐して伸びた筋が指先にまで通っている。その指先には人間の持つ爪の変わりに紅い玉石が埋め込まれている。OSが機構の起動を告げると掌の筋に紅い光が流れ込み、それは指先に到達した。掌の中から僅かに光が漏れている。

アクセルを更に踏み込み左手のレバーを前に突き出しトリガーを引いた。

それと同時に自機が掌を大きく開いて腕を突き出した。その指先が紅く発光した。そして前方に巨大な紅い光の膜が広がった。

絶対遮断領域(AIF)。たかだか一小隊を束ねるだけの身分も権限もない私には使用するに当たって概要までしか説明は為されていなかったが、それによるとその呼称通りの能力を持つ、一種の盾の様な物だ。空中に機体の全身を覆う程の凝縮したエネルギーを発生させ、そこに接触しようとする物質を文字通り絶対的に遮断する。

弾丸であろうと、刀刃であろうと、何物の接触も遮断する。それまでに存在していた科学を完全に無視した超絶の能力。貫く事の出来ない盾。それがAIFである。

敵は自機が発生した紅い光の膜に唖然としたか、瞬間ガトリングの弾幕が途切れた。それもそうだ。この技術、機構は敵軍はおろか第三者機関にも存在していない我が軍だけの物なのだから。

実情はどうか知らないが、どこか慌てた様に感じる様子で敵機は再びガトリングを放った。接近戦の体勢を整えていたにも関わらず放ちつつ、脚は後退している。

自機は直進している為にガトリング弾は逸れずに自機へ向かって来た。しかし何れも展開されたAIFに触れるとその先にある自機に触れる事なく弾けて、消滅した。

消滅。それがこのAIFの特徴だった。AIFは物質の接触を完全に遮断する。これが例えば強固な壁だったとするなら接触した物質は反作用の力を受けてただ弾かれるのだが、AIFは違う。力を跳ね返すことはない。細かな理屈など分らないが、兎に角接触した物質をその場で分子のレベルまで分解する。質量や接触角度等によっては消滅、厳密に言えば分解、するのではなく運動エネルギーを失いその場で停止する場合もあるらしいが、私が見てきた中では全てがその場で完全に消えてなくなっていた。

眩いとは言いがたいAIFの光と自らの放つガトリングのマズルフラッシュ程度では仔細見える筈もないが、敵機は此方のAIFの異様な能力に気づいたのだろう。何しろAIFは物質でない為に接触音を発生する事はなく、ただ弾丸がその場で得体の知れない紅い光に飛び込んでは消滅しているのだから、相手からしてみれば魔術か手品かを見せられているようなものだろう。

苦し紛れにガトリングを放ちつつも全速力でその場を脱した。限界までアクセルを踏み込んでいるのが分る加速で機体が離れようとしている。だが遅い。既に加速の付いている自機に今から離れようところで間に合う筈もない。それにガトリングを撃つために進行方向とは逆のこちら側を見ていては前方に存在している樹木の存在にも気付く事は出来ない。

衝撃音。樹木がなぎ倒される。あの程度で深刻なダメージを受ける程ヤワな代物ではないがただで済む問題でもない。敵機は減速し体勢を崩して蛇行、一瞬操縦者がバランスを取ろうと努力している姿が垣間見られたが、あっけなく前傾に機体が沈んでゆき最後の最後で重力に逆らい体を反転させたところで仰向けになって倒れた。

私はAIFの展開を解除すると再び銃を構え敵機に接近した。未知の武装に驚き自爆してそして今撃破されるのではあまりに間抜けだったが戦場において名誉ある死も無様な死もないと私は考えている。死ぬか死なないかそのどちらかだけであると。

事を急いでいる為に相手の信仰しているかもしれないなんらかしらの神に祈る間も与えて遣らずに銃を敵機胸部に存在するコクピットに向けて右レバーのトリガーを引いた。その一瞬前に敵機のブースターが噴射され上半身が起き上がり左腕に持っていたショートソードが突き出された。起き上がりと同時に機体上半身を捻った為にコクピットを狙った銃弾は狙いを逸らされ胸部やや右を掠っただけに留まった。

だが私はその行動にそれ程の脅威を感じなかった。しいて感じた事をあげるとするならば敵機が自機と同じ長身の可変式ブースターを一機単独で取り付けるタイプと異なり、二機の小ぶりなブースターを二つ付けていたという事を認識していたにも関わらず失念してた事と、敵機が右ひじを付いてブースターを真下の地面に向けて噴射する事が可能なだけの空間を作っていた事に気づかなかった事を迂闊だったということくらいだ。悪足掻きをしようと結果は変わらない。

私は刀身をかわす事もなく左手で相手の左手首を掴んだ。刀身はコクピットを逸れて何もない肩の上の空間を貫いた。そして再び左レバーのトリガーを引きAIFを展開した。

AIFは自機の指の開き具合によって展開される範囲が決定される。例によって細かい理屈は知らない。だが何かを握っている場合にどのような範囲でAIFが展開されるかは分っている。即ちこの場合は掌の空間の中、つまり握り込んでいる物の接触を遮断し、分解する。

敵機の左手首が落ち、自機の肩にぶつかりショートソードの刀身が地面に突き刺さった。即時淀みなくライフルを今度は確実に相手コクピットに向け発射した。この後彼、もしくは彼女の周りの人間に起こる感情の動きやドラマについてなどは興味がない。

私は自機を立ち上がらせ待機している仲間の元へと走らせた。緊張の糸を緩め静けさの戻った密林が流れてゆくのを眺めながらセーフティロックの取っ手を捻り、パネルを操作しAIFの起動も解除した。起動状態を維持するのにも相当量のエネルギーを要する。燃費の悪さはAIFの弱点でもある。それから思い出して小隊に通信を入れた。


「此方P-1。敵機を撃破した。技術はあったが些か間抜けらしい。気を楽にして待機していていいぞ」

「ハハッ。此方P-6。了解です。
Q,N隊の撃ち漏らした敵機を迅速且つ完全に撃破。後でバーボンの一杯くらいはタダで飲めそうですね」

「そうだな。だが、気を楽にはしても気を抜きはするなよ。バーボンで酔いつぶれて吐くの代わりに血反吐を吐きたくなかったらな」

「心得ています。了解です!」


『装填マガジン内残弾数五。フォトンスロット閉鎖完了。左腕部AIF可動付加を軽減する為エネルギー供給を一時停止。機体損傷なし…』


 通信に応答した副隊長の気合の入った声をさえぎるようにOSが機体各部の詳細を説明し始めた。一応の確認はするが、大凡の機体状況は頭の隅で常に把握している。OSの説明を無視して現在時刻を確認する。戦闘開始から三時間。副隊長は軽口を叩いたが前衛から抜けて此方まで敵機が到達した事を考えると抜け道が出来る程に前線は入り乱れている事が想像できた。

穴を埋める為にも後続の敵機が来る来ないに関わらずこのまま前線まで上る必要もあるかもしれない。自小隊の抜けた穴には隣接して数の多いE小隊を分散させて貰うか。様子を見てベースに指示を仰ぐ事にしよう。

 不意に木々の切れ間から上空に浮かぶ月が見えた。まだまだ沈みそうにはない高さに月は浮かんでいた。短期戦と想定されていたが、夜戦はまだもう暫くは終らないようだ。








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まいむ@ムーン

Author:まいむ@ムーン
現在21歳雄。偏屈で批判家のジョーカー。
性格、マメで粗雑。短気で気長。本人すら把握できず。身長、服屋のついたて鏡に入らない程度。体重、焼肉で米を大盛り2杯と普通一杯程度。
実写よりアニメ、特撮を見る。バラエティは情報系の方が好き。朝Φ新聞が嫌い。エノラゲイが嫌い。
音楽家、作詩家、小説家。いずれも毒々しい部分を持つ。最近の口癖は「ってな訳」「いやいや」「成る程」「1ミリもないわ」「鬱陶しい」
格好良くて優しい人を期待する方にはオススメできない商品。
宣伝鬱陶しい。

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