社会不適合なまいむちゃんのそれっぽいブログ。
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boaいいよboa。
とか言ってみたりする。無論ビッチの方ではない。バンドの方です。いいよとか言いつつこのレインのOP以外の曲は知らないのだが。


まぁね、とりあえず脚本が小中千昭と見た時点で詳しい人は、神話…か、とかファンタジーのジュブナイルか、とかパソオタ系か、とか思うのですが、まぁその通りです。とりあえず中身は酷くぐろい。表現は妙に生生しく、一見では理解し難い。

玲音(れいん)の住む現実の世界、レインの居るネットワークの発展した姿ワイヤード。接触しあう世界、常にどちらもが存在しているそういう混沌とした具合がかなり気持ち的にやられる。あっというようなアクションはない。恋物語もうっすらとしかない。人が期待するような事がほとんどない。しいて言うならレインが可愛いくらいである(個人的意見です)

これは説明がほんとし難い作品。とっても良くもあるし酷く退屈でもある。ホラー系ではないとは思うんだがかなりトラウマな話だし。解釈難しいし。でも妙にその中身に共感というか何か奇妙なリアルを感じる。

まぁともあれ見てくれよって感じだな。ネタバレを避けつつ説明するととことん何がなにやらな説明になったわwwすまん、そこまでのスキルはない。っても雑誌の基本はネタバレによる期待感を煽るところがあるわけだし比較するもんでもないか。

どうでもいいが妙にレインの髪型やら性格やらが好みだなぁとか思ったら昔惚れたのに似ているからでした。それ抜きに(出来てるのかどうかは知らんが)してもショートのあのくらいのとか好き。


http://www.nicovideo.jp/watch/sm269842
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いや、特にこれといってあげる気もないがふと見たら全部ツンデレだったのでああなぁと。っていうかそもそもウィキでもツンデレ役者だとか呼ばれてたし。

凄くどうでもいい話。それ以前にネタがなし。
いやぁね、疲れて疲れて家に帰って飯食って九時に寝たのはいいさ。てっきり起きる時間は6時かなと思ってた。ってか疲れてたんだからそのぐらい寝ろよと、わしの体休めよと。

でも何故1時半に起きるのか。なにゆえって何故って書いてもいいのになんで毎回なにゆえって書いて何故なんだろう。そっちの表現の方が好きだな。なぜにとかは日常で良く使うが。まぁ、取り敢えず4時間半か8時間睡眠しか出来ないのかと。もっと寝ろよ。湯船浸かってないんだから寝て回復しろやと。

お前が忙しいのは仕事の所為でなくパソコンの所為だろと。三つも四つも不定期アマチュアとは言え小説なんか書いてるからだと。ネトゲとかドラクエとかKH2FMとかやってるからだと。サムライチャンプルーとかやってるからだと(飽きたので売ります。今回はやけにストーリーが糞というか絵がキモイし)でもカウビの追憶のセレナーデ?タイトル忘れたが欲しいと。何しろ最近の声優さんも入ってくるらしいから買うと。折笠富美子とか買うと。

クーラーもない安モーテルでシャワーのお湯が途中で止まるとか、ではないがドラクエ7が途中で止まると。ってかそろそろDVDクリーナーと。でもそれでもいかん気もすると。レベル2上げストーリー中盤まで行ってバグるとか危険すぎる。っていうかレベル13辺りの地帯までキーファが旅人の服とか危険すぎる。拾い物もらい物で冒険し過ぎ。でもキーファ…先を知っててもまたやりたくなるゲームはやはり良作。ドラクエの7は敬遠されとるけどわしは好きだな。

ドラクエはやったことない人もOKというかマリオRPGネタは懐かしすぎる。マリオと旅に出ようドラマを作ろう。でも改造マリオシリーズはドラマを作り過ぎ。孔明は長生きし過ぎ。

ドラクエはストーリーどうのよりもやり込みとか無視して5が一番分かり易く簡単なシステムで楽しめるから始めての人には5からオススメする。モンスター仲間システムあるし職業がないからあれこれ悩まなくていい。結婚してない人は出来るwww

7は取り敢えず慣れてても初めての時に100時間は軽く表だけで掛かるから長くやってたい人におすすめよ。小さいストーリーのそれぞれが中々オモロイし、時々で仲間の意見が聞けるからね。マリベルぐらい色気の無い女はそして好み。

で、寝る時間の話からドラクエの話まで飛んだ訳だが、大体長く人と話すと元のしたかった話はとんでこういう話に落ち着くよね。よねって人はどうだか知らんが。ヨネスケ。どうも世代的に味のIT革命よりも奥さんこの肉じゃが作り置きですか?それにしては素晴らしいですね。の方が好きなわけ。

ナントカなわけ、とか言うとどうにも年齢的にナメ猫を思い出すわけ。ナメクジ猫。つまりアリスSOS。アリス探偵団(だっけ?)の方ではないわけ。男は狼なのよ~キオスク高い~♪あ、歌詞大嘘吐いた。


S・O・S!!

ところで歌詞大嘘と言えば偶になんとなくで曲を聴いていると嘘の歌詞が浮かんでくる事がある。もしくは昔作った替え歌。CRウルトラマンで7とか入っている横を通る度に

光の速さで僕らを駄目に、し~たの~誰だ~よ、ウル~トォラァマァアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

とよくわからない歌詞が。仕事中なんかの曲を思い出して(さりげなく歌いつつ)適当な歌詞をはめて遊んでます。とかそんな事してるから今日は朝から60人待ちとか。5のシマに先輩掛かりきりとか。周り全域カバーとか。まぁ朝番のうちは通路に花積みとかピラミッド積みとかしないぐらいだったがそれでも平均5箱でてるとこの平均12箱最高22箱とか。まぁもう結構しぼって搾取する時期なのにそこそこ人気だからな仕事人。ハンドルランプキュイってるよ。またかよ確変かよ。いみそーれ打ちたいよ。でもゲーセンで置いてあるとこないよ。

っつーかこないだゲーセンで北斗を打った訳だがバトル継続継続、ジャックジャックで6連くらいしてメダルにして800くらい取った訳だが、ん?北斗の拳でBIG連発?いやねぇから。設定6確定の開放台だけど。
そこの店300いくらで景品カードが出るだけで次回持ち越しとかそして景品カード2枚でもらえるのが

500円相当の柿の種みたいな奴

まぁ一応箱に入ってたから多少高いのかも知れんけどさ、換金率とか無視して百円=20クレジットで計算すると800で四千円分はいってるのに半分以下て…四千はないにしても2000円分のなんかとかさ・・・やる気でねぇよ!じゃあちゃんと店行って打てという話だが店だと確実に飲まれる気満々なのでやめときます。いやいや、2万使って一回もないとか。天井を狙う気かというかもう天井に墜ちるというよくわからん表現になるくらいだわ。まぁ…天井どのくらいとか知らん時だったので(ってか今も殆どの台の情報とか仕入れてないのでわからん素人)デラ無駄やった。確実に天井には行ってなかったと思うが。

そろそろ保険料が落ちるのでお金は使えんようになってくるぜ。まぁハルヒが発売延びたので買うものはないと。あ、アーマードコアラストレイヴンは欲しい。でも周りにやってる人がおらんて寂しい。やってても直ぐ酔う人しかおらんから、だれかやれへん?カスタムロボよりもちょっと難しいくらいよ?個人的にカスタムロボはV2が一番好き。でも新作出てんの?もしくは出んの?

っていうか当時の人にとってスマブラとカスタムロボと007ゴールデンアイは三種の神器と思わないか?ん?普通はマリカーとかだって?いやいや、ワリオのコースで16秒でゴールとか狙う奴らばっかりだし、バトルで初っ端ドンキーとクッパの体当たり対決とかよくあるし。対戦物といったらわし的にはこれなんだが。

とりあえずスマブラならピカチュウで全国10位くらいは確実に倒せた。カスタムロボV2ならじいちゃんシリーズにブレードガン装備させて遊ぶぜ。ゴールデンアイはお決まりのガッツ星人と。ヘリパイロットの頭デカモード。球無限とかはおもろないから寧ろ消されたライセンスで。30撃破終了でリモ爆とか。ピストル対決とか。重兵器でやると確実に出逢ったら死が待ってるから駄目です。

とかなんかもう取りとめないな。寝起きする話が世界のスパイに大変身だよ。でも最近の007は好きじゃないの。なんかとりあえず映像に請ったハリウッド?みたいなのがやだ。そういうもんじゃないっしょが。

まぁそろそろ終了します。んちゃ。



まぁ、JAZZを飲もうじゃないか。
音があれとか言うのはなしな。



http://www.nicovideo.jp/watch/sm158407





俺の姿を確認するなり俺の一番上の弟は今や雪原となった新宿ナイアガラの滝前の広場のサクサクと踏みつけて大声上げながら歩いてきた。なんとなく溜息混じりに笑った。




「あ、おい遼さん来たぜ!お~い、こっちッス!」


「やぁ博和、相変わらずお前は騒がしいな」


「大会どうっした?って聞かなくても想像はつきますけど」

「お、分かってるじゃないか。優勝したよ。ほら『デジモンキングの証』」



「ほぇ~、やっぱり凄いッスねぇ。でもやっぱキングは遼さんでなきゃ」


「そうでもないだろ。これからはもっと強い奴もでてくるさ。もしかしたらお前だってキングになるかもしれないだろ」

「オホメに預かりコーエーです」

「なんだよ、その片言みたいなのは」




「遼さ~ん」

「遼さ、っぶわぁ!」



「啓人、またお前派手に転ぶなぁ」


「エヘヘヘッ、どうもお久しぶり」

「ヘヘッ、久しぶり。それに健太も」

「俺、前より強くなりましたよ、博和にもひけ取りません」

「んだとぉ?まだまだ俺のほうが勝率上じゃんかよ」


「んじゃ遼さんの前で何戦かバトルしてみるか?」

「望むところよぉ!」



「まぁまぁ…それは後でな。ところで、あそこの三人に引き摺られてるのはなんだ?」

「ま、ここまで来たのも半ば無理やりみたいなもんッスからね」




「留姫お姉ちゃ~ん。ほら早く行こ~よ~」

「留姫、駄々こねてないでさ」

「っさいわね~。別に私は来たいなんて一言も言ってなかったでしょ。あんた達が来い来い五月蝿いから仕方なく来たんじゃない」


「君も相変わらずだねぇ、留姫。久しぶり」

「アンタもうっさいわよ!ノコノコこんなとこ現れてないでさっさとホテル行って寝て帰ってなさいよ!」

「おいおい、いきなりその態度はないんじゃない?それに今日は博和の家に泊まる予定なんだから」


「んもう!」

「留姫お姉ちゃん意地っ張りなんだから~」

「そうよ留姫ちゃん。本当は色々、言いたいことあるんでしょ」


「あ~っ、樹莉に、小春まで!もうなんなのよ皆して!」

「すいません遼さん。元気になってからずっとこんな調子なんです」

「このほうが留姫らしい、じゃない」

「あれでも一応心配掛けたこと反省してるって思ってるんですよ」

「もうちょっと素直で仏頂面ばっかしてなきゃ、本当は女の子らしい子だからね」

「です、ね」

「そこ!何こそこそ話してんの!博和邪魔!」

「うぉっ止めろよ、暴れてんお前が悪ぃんだろ」

「五月蝿い!」



「なんか少しそれは無理な気もしてきたなぁ」

「です、ね。でもそうでなかったら留姫じゃない、みたいなそんな気もします」



「…だな」

「でも、聞くところによると健にはちゃんと謝ったって」

「…啓人からですか?」

「ん…聞いたらいけなそうな感じだったけど」

「心配掛ける僕等が悪いんですけれどね。でも元々僕は謝られたなんて思ってませんよ。謝られるようなことを留姫から言われた記憶もないです。多分、あの時留姫は熱で夢を見たんだと思います」


「そっか。じゃ俺も謝られることは何もないな」

「うわっ!冷てっ。お前等やったな」

「僕じゃないですよ。博和で~す」


「留姫が避けっからいけないんスよ」

「へなちょこな弾投げてるからいけないんでしょ」

「誰でもいい!このっ」

「うわっ、何で僕!」

「俺遼さんの味方~」

「おい、健太ずり~ぞ」


「早い者勝ちだって」

「こっ、んのヤロっぅおっっと」

「博和兄ちゃん避けないでよぉ」

「健とこのちっこいのまでっ。よーしこの博和様がまとめて相手してやらぁ!」


「小春ちゃん、やっちゃえ。啓人君女の子は攻撃禁止だよ~」


「えっ?それじゃっ、誰に」

「男女平等だっ!」

「博和にルールは無用だよ」


「ハハッ、皆よくやるなぁ」


「観戦してないでアンタも参加しなさいっよ!」

「危なっ、っと。これでも身体は毎日鍛えてるからね。これぐらいは避けられ、っぶ!うわっ」

「油断してるからいけないのよ」

「くそ、…そんなに参加して欲しいなら、僕だってやるからな、行くぞぉ!」


「ちょっ、そんなに本気に、っきゃぁ!…アンタねぇ、手加減ってもんがあるでしょ!ムカツク、ちょっとアンタそこでもう許さないわよ」


「もともとそっちがけしかけてきたんじゃないか」




ったく、結局よく分からないことになったな。色々みんなで話し合うんじゃなかったのか?

…でも、まぁこれでいいか。俺達はあれこれいいながら付き合ってきたわけじゃないし、それに何でもかんでもできる大人ってわけじゃない。まだまだ俺達が大人になるには時間がある。やっと少し皆がふっきれ始めたんだこんな風に息抜きしたってばちは当たらないだろう。



「そらっ、喰らえ啓人っ」

「こっちばっか狙わないでよ」

「っか~お前もたまには反撃しろよ、あそこのお転婆みたいに」

「博和!いちいち五月蝿いって言ってるでしょ!」

「留姫ちゃんやっちゃえ~」

「健兄ちゃんいいの?」

「あんまり手はつけないほうがいい、かな」

「あはははっ、あれはそうしとこうか」






デジモンの皆、そっちはどうだ?楽しいか?元気でやってるか?俺たちはこの通り、凄く元気さ。次はいつ会える、なんてくだらないことは聞かない。でもまたいつか会おうな。




「お~い、結局話ってのはどうするんだぁ!?」








「ねぇ?隠れて何やってるの?」

「別に、隠れてた訳じゃないさ。敢えて言う必要はないか、と思っていただけだ」

「嘘ばっかり。重要な仕事なんでしょ?別に無理に聞いたりはしないわ」


最近は二人で飲む機会を失っていた少しばかり年代モノのブランデーを棚から取り出した麗花は、薄給だったころに買った安いグラスを指に掛けてダイニング越しに俺にそう問いかけてきた。昔から賢く勘の鋭い女だった。

だから、その頃馬鹿な女共に呆れるくらい熱心だった事を反省して、暫くはどんな女にも心を開くまいと思っていた俺が、その賢さを自分の為には使わない、そんな麗花に惹かれた。

コネや諸々の事象も重なって、ひょっとしたら今の俺よりも高い位の椅子に座っていたかもしれない麗花は自分の理想、そして彼女の親友、恵の為にその地位に甘んじることをよしとしなかった。そうして官僚の大いなる力によって押しやられた先で、ネット世界の管理なんてものが遠い夢だった若いプログラマーに彼女は出会った。

俺は二十代始めという、自分の若さや愚かさを知る事になる時期にもう既に情熱の半分を失い残り半分も冷めかけていた。多分、俺の馬鹿な夢の話に普段は何故こんなところに来たのかが分からないくらい優秀な働きを示していた麗花が、始めて二人で会った時にさも自分の夢についての話を聞いているかの様に熱心に聞き入ってくれていなかったら、今のこの自分も現実もなかっただろう。

例えそれが様々な悲劇を引き起こす結果になったのだとしても、その悲劇自体、実は必要なものだったと俺は言える。あの頃とは別の心持ちで。


「重要な仕事だ。俺の恩人達からの依頼、だからな」

「そう」


カタカタと俺がパソコンのキーを鳴らす横で麗花は静かにソファに腰を下ろしてブランデーの栓を開けた。防音設備の優れた部屋の中で、ブランデーを注ぐ音とキーをタイプする音が絡まる。それはまるでドビッシューの音楽のようだったが、残念ながら俺はその辺りはあまり聞かない。

麗花は自分のグラスにだけ注ぐと、何も言わぬまま一口喉に流し込んだ。麗花は分かっている。俺が仕事の間中はアルコールの類を口にしないことを。


「退屈そうな顔、するなよ。データの最終チェックだけだ。直ぐ終わる」

「退屈はしてないわよ。大体、これくらいで退屈してたら貴方と一緒になんて居られないわよ。偶の休みにまで仕事を持ち込むんだもの」

「そう言うなって。俺は徹底的な日本人体質だからな、手が空いてると不安なんだよ」

「じゃぁこうしてよ」


ソファの裏手に回って麗花は俺の首に手を回し、そのまま左手を握った。緩く握り返してからその手を俺の肩に掛ける。そうしてから再びキーをタイプした。こうやってパソコンや麗花の手に触れていなければ俺は、またもジッポーのフタを開け閉てする音を鳴らしていたに違いない。

元々それも自分が煙草を吸うためのものではなく、権力や金や立場だけをひけらかす何も分かっていない大臣どもに諂い自分の憎悪をたぎらせる為だけのものだった。今は、自分や、熟練の研究者である友に闘志を分け与える為にある。

簡単な音声データをパケットに入力するだけだ、本来それほど時間の掛かる作業でもない。だが、これは、これだけは万一にもミスをするわけにはいかない。時間を掛けてまで入念にチェックを行う理由と義務がある。


「麗花、お前は子供を欲しいと思うか?」

「…何?誘ってるの?そうしたら随分古い文句ね」

「何を馬鹿な…誘うならもっと言葉を選ぶさ。で、どうなんだ?」

「ん~、分からないわ。でも、やっぱり、皆を見ていると楽しいだろうなって思う」

「…そうか」


俺は子供は嫌いだった。身の程を知らず、我が侭で、おこがましくて、そんなもの煩わしいと思っていた。だが、それは、単なる同属嫌悪だったんだ。俺はずっと夢見るばかりの子供だった。だから自分のしたことの愚かさに気付けずに、何度も同じ事を繰り返した。

悪質なクラッカーや増え続けるサイバー攻撃、果ては個人情報の流出や悪用、そんな現実が許せなくてネットの管理局、ヒュプノスを立ち上げようとしていた。そしてここよりも先進の技術を持つ国に倣いネットの中を監視していた我々は今までに見たことのない生物の存在を知った。デジモンはそれを始めて目にする我々には脅威だった。

俺はその生物が他の生物のデータを捕食する様を見てそれこそが悪だと今思えば甚だしい思い違いをしていた。ネットを管理しても、それでも時折我々を嘲笑うかのように監視の目をすり抜ける技術者に苛立ち、その鬱憤を全く別のものに憂さ晴らしのように擦り付けて巨悪の象徴だと忌み嫌った。

しかし、実際のそれは過去の偉大なる科学者の功績の足跡や子供達の夢の結晶体だった。こんなにも愛されている生き物が巨悪だなんて、言い訳をいくらしても足りない程だ。

だからこそ俺はもう言い訳をしない。ただこの教訓を次へ活かす為、全力を懸けて新しい我々の友を受け入れる体勢を確立するのみだ。だが…そんな矢先だった。運が悪ければそんな計画をふいにしてしまうような出来事が起こった。


「啓人君を叱ったこと、悔やんでる?」

「いや、後悔はしていない。大人がいちいち子供の反応で言うことを曲げていたら何が何だかわからない。だが…別の可能性も考えずにそうしてしまったのはどうなのだろうか、と思っている」


啓人君は大切な友を失った失意の中、希望とも思える現実世界、リアルワールドと仮想世界、デジタルワールドを繋ぐ道を再び見つけてしまった。彼にとってそれは何よりも嬉しい出来事だっただろう。それは勿論理解していた。

しかし、保障なくその道を繋げてしまうのはあまりにも危険度が高かった。その時期にあの生き物達がまた姿を現せば、我々ひいてはその、デジモン達も信用を失ってしまう。そうすれば次に彼等が此方に来られる時があっても彼等の居場所がなくなってしまう。そう言い聞かせて俺は啓人君を行動を抑制しようとコンクリ詰めにするという無理やりな方法も取った。

それは、啓人君が見つけたその道はもしかしたら、われわれに害のないようなものだったのかも知れない。もしかしたら放っておいても消えていったのかも知れない。しかし、俺は言葉で彼を止める力を持たずに、彼を傷つけてしまった。一回り以上も年が上のこの俺が。

だからこの「音声データに記録した自分たちの声をそれぞれのデジモン達固有のデジタルIDがぴたりと照合するデジモンのみにしかロックを解除できないパケットに入力し、子供達のパートナーにメッセージを送る」という計画に賛同したのも、罪悪感の為と贖罪の念があったことが大きい。無論、そうでなくても今の自分なら喜んで賛同しただろうとは思うが。


「悩んでいるならそれでいいのよ。きっと想いは通じているわ」

「俺もそう思ってるよ」


俺はパソコンを終了して、ブランデーをグラスに注いだ。そして最近取り替えたムードライトの蛍光灯が映すシルエットの頭を麗花のそれに重ねた。長くはない、が短くもない。そんな程度の行為を終えてブランデーを品なく飲み込んでグラスを空けた。

そしてまたブランデーを注いでグラスを麗花に渡した。久しくなかったお互いを見つめ合う瞬間。どちらからともなく笑って、それから麗花はこう言った。


「The biggest dreamers、大いなる小さな勇者達に乾杯」

「あぁ」


古い、七百円という価値しかないグラス同士を口付けて、カチンと高い音が響いた。珍しく麗花もグラスを空けるペースが早い。これは遅くまではもたないな、と思いながら俺と麗花自身もグラスに負けまいと、互いの心同士でカチンという音を響かせた。

ふと俺は愛情と日常というものは誰にでも変わらずに訪れるもののような気がした。中にはそれに気付かなかったり、忘れてしまったりして不幸にも見失ったまま一生を過ごしてしまう人もいるのかもしれない。
しかし、愛情と日常は、このリアルワールドとデジタルワールドのように確かにその姿を確認できずとも実はどこかで全ての生き物やその心に繋がりあっている、そんな気がする。


「そうだ、明日の朝はいつものパン屋に買いに行かない?」

「そうだな。…なぁ麗花」

「何?」

「やっぱり俺も今は子供が欲しいと思うよ」

「やだ、古いって言ったばかりじゃない」

「気取ってばかりの奴じゃ面白くないだろ」

「そう、こなくちゃね」


俺はパソコンを閉じてリモコンスイッチで電気を消して二人でソファの上に倒れ込んだ。そしてその年の秋、うっかりパソコンの電源を消し忘れたばかりに、不可思議なメールが届いて俺たちは驚くことになった。


『デジタルワールドヨリ、シキュウレンラクサレタシ』


そして確信した。自分の子供と共に過ごす日々は当分先のことになるだろうと。













終わり
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家で寝てたってことは、まぁ納得。そもそも寝る前の記憶が殆どないし多分健と話した途中でまた訳わかんなくなっちゃって家まで運ばれたんだろうなって予想はつく。

でも、でも健までが私の家に居てしかも真横で大きい体丸めてグースカ呑気に寝てるってことは意味わかんない。

取り敢えず体起こした。そしたら白いものが私の目の前を通り過ぎて落ちた。それは水に濡れてるタオル。


「何よ、看病してたんならそう言いなさいよ」


健に絶っ対に聞こえない、起きないぐらいの声でちょっと独り言を呟いてみた。これくらいのことでちょっと嬉しくなってる自分が悔しい。でも、悪い気はしないけど。

昨日から今日にかけて、健には色々迷惑掛けてる。勿論、健だけじゃない啓人とか博和健太とか、色々。散々あっちこっち引っ張りまわして、それは皆が勝手にやった、ってだけだけど、でも私でも責任は感じてる。素直に謝れるかは分かんない、ケド。

でも健がこれだけ色々なことをしてくれるのは何で何だろ?…私に気がある、とか?まさかね。あぁもう、弱気になるとすぐろくでもないこと考えるんだから。自分で馬鹿みたい。なんなのよ全く。

まだ頭が少しフワフワグラグラする感じはなくなってないけど、息をするのが大分楽で、身体も頭もそんなに痛くない。コイツには色々感謝しないと駄目、だよね、やっぱし。何かメンドくさいなぁ。でも流石に私だってそんなに薄情じゃない…ってかそもそも私は別に冷徹な人間ってわけじゃないわよ!…なんて言えた事じゃない、よね。分かってる。

色々考える隙間に何だか色々な音が聞こえて、それで何かちょっと外が騒がしい気がする。今何時なんだろう。雨戸は閉まってて時間の感覚があんま分かんない。

ドタドタと廊下を走ってる音がする。でもこれはお祖母ちゃんの音でも、ママの音、でもない。二人とも滅多な事で家の中を走ったりはしないし、大体こんな品性の欠片もないみたいな間抜けな音はさせない。何かまさかな悪い予感がする。健がここにいるんだからその可能性も結構高い、カモ。


「ドタドタ足音させて、五月蝿いったらありゃしないじゃないのよ」


スーッとこの間までは立て付けが悪くて最近やっと直した障子戸が開いて入ってきた啓人、博和、健太にその言葉を浴びせた。なんか凄く間抜けな顔で私の前に姿を現した。


「うわっ、ゴメッ…あれ?留姫起きてたの?熱大丈夫?喉渇いてない?」

「っ、一編にそんなに色々答えられないわよ。そもそもあんな音だしてたら寝てたって起きるわよ」

「それは~、ゴメンッ。で、大丈夫なの?」

「喉は渇いた。後は別に大丈夫。大体、駄目って言ったって別に治るわけじゃないじゃない」

「了~解。じゃ、お茶持ってくるよ」

「それと、そこの馬鹿みたいのが起きるから静かにしなさいよ」

「はいはい、了解」

「はい、は一回!」

「はい!」


相変わらずの啓人の慌てっぷりにちょっとおかしな気分になった。私は肩を竦めて、何よそれ、ってポーズをとった。そういえば皆と会うのってなんか随分久しぶり。でもなんでかそんな気はあんまりしない。ずっと昨日まで会ってたみたいで、それから今起きたところ。なんでだろ。よくわかんない。友達、ってこういう風な事を当たり前に思える、ってことなのカナ。

それで私は健を気遣うつもりなんて別になかったけど、なんとなく事情が分かってみると起こすってのも気が引けて声のトーンを下げて口に指をやって啓人を諫めた。ちょっと躾けたみたいなところもあるケドね。


「ったく起きてそっこーでやな奴だなお前」

「ホントホント」

「何よぉ」

「一応皆お前のこと心配してたんだぜ?ったく無茶やるやつは人の気なんて知らねぇんだからよ」

「考えるより先に手と口がでるんでしょ?」

「煩いわよ!」

「ほらやっぱり」

「ぅ…ぐっ…。どう…どうでもいいでしょそんなの」


あんまりあれこれ煩くて私は思わず枕を投げた。なんかもう、条件反射って感じ。全く、何してんのよ。本当に考えるまもなく攻撃しちゃった。これじゃぐぅの音も出やしない。そのまま口をつぐんで私は視線を逸らした。


「しっかし健もやるよな、そのままこの部屋で寝るとは思ってなかったぜ」


自分達でぐだぐだ言い始めたくせに博和はまた自分で話題を変えた。でもちょっとだけそれが気になって、それで私は直に聞いた。


「ねぇ、コイツずっとここに居たの?」

「ん?あぁ、な。俺が取り合えず起きてた時はずっとここに居たぜ。二時っくらいにションベンで起きて様子身に来た時も居たけど。多分それからずっと居たんだろうな」


こんな寒い所で一晩中私を看ててくれたんだ。…別に、有り難がったりなんかしないわよ、とか思うけど、でも同時にやっぱり少し、本っ当にちょびっとだけ嬉しくもなった。ママはいつも忙しかったし、おばあちゃんはいつも元気だけど無理するって歳じゃない。

そう自分で理解してたからいつも物事に期待とかしてこなかった。授業参観も運動会も学芸会も別に私は何か頑張りたいって思ったものはないからそれでも良かったからいつも、どうせまた仕事とかでしょ、って思ってた。でも本当は私だって一人でなんか―――――。


「ね、っねぇ、何で健はそんなに色々してくれるの?」

「んなもん俺等が仲間だからに決まってんだろ?何馬鹿みたいなこと言ってんだよ」

「でも、でも仲間だからって…普通はこんなに迷惑とかかけて、だって…」

「別に迷惑だなんてどいつも思ってねーっての。なぁ」

「うん、そうだよ。留姫が素直じゃないだけでしょ」

「それはっ!…そう…だけど。うん、認める。でもっ」

「あぁ~むぉうぅぅぅ!だったら本人に聞けよ。俺等が分かるわけねーっつの。お前は何にも言わない何も聞かない。だからそう色々、なんだ、まぁあんだろ?だからたまには自分からなんかしろよ。別に誰もウザがったりなんかしねーよ、なぁ?」

「そうそう」


何よ二人で。別に、必死になってた訳じゃないっての。ただ、今まで皆がしてくれたみたいなことされたことなかったからちょっと戸惑ってて、それで聞いてみたかっただけ。でも、自分でも分かんないくらいそうしてみたいって気持ちが強くなってた。

そんなつもりもないのにちょっと食い下がった。今何かヘンだよ。…私、最近自分がコントロールできてない。ううん。ずっと前からそうだったけど、初めてそうだって意識したの、きっと。私は一人で居るってことが当たり前で、それが普通だと思ってた。

誰かといなきゃいけない人の気持ちなんて絶対分かんないって思ってた。でもそれは本当は嘘をついてただけで。なんて、ほら、こんな訳分かんないことばっか考えてるよ。


「博和に説教されるとは、思ってなかった」

「確かに俺は頭悪いけどよ、偶にゃそんな奴の説教も聞いとけよ」

「俺は頭悪くないけどな」

「うっせ~よ」


でもそうやってちょっと訳分かんないぐらいのほうが当たり前なのかも。だって自分がどうして今こう思ってこう考えてるのかなってことも、人の気持ちなんてものも本当の意味じゃ分かんないし。コイツ等みたいにここまで何も考えないってのも私には無理だけど、 もう少し、少なくとも皆の前じゃあれこれ考えなくてもいい、んだと思う。きっと。


「…っ…ぅ、ん?うわっ!いつのまに寝て!…あれ?皆、それに留姫…」


少し五月蝿くし過ぎた所為か知らないけど、今まで横になって丸まっていた健の身体が跳ねるように起き上がった。


「お茶持って来たよ~、って、健」


そこに人数分のコップと冷蔵庫に入ってたはずの麦茶を持って啓人が入ってきた。何でよりによって冷蔵庫でキンキンに冷えた麦茶を持ってきたのよって思ったけど、目の前の光景はそれどころじゃなかった。

自然に笑うっていうのはこういうことなのかな。今まではずっとどっか笑おうとか、笑った方がいいよね、とか頭で考えたりしちゃってた。そんなこと必要ないぐらいに思ってた。でも今はそうじゃない。今までそうだったってことも今そうだってことも思いつかないくらい自然に出来た。出来たっていうのも違う。勝手にそうなった。


「健、寝癖が凄いことになってるよ~」


寝惚けてるのか自分の身の回りのこともよく分かってない健は何だって顔で皆のことを見た。量が多くて硬い髪の毛は見事に逆立っていて天井の方が地面じゃないの、って思うくらい上に向かって生えてた。健は自分の頭を掻く癖と自分の髪の毛の性質を知ってるお陰で何が起こったのか直に分かったみたい。


「はははっ、アンタの頭馬鹿みたいだよ」


皆揃って大声で笑った。色々な考えが吹っ飛んだ。私は相変わらず誰かと一緒にいなきゃ生きていけない人の気持ちなんて分かんないけど、でも私はずっと誰かと一緒にいたかったんだって分かった。こんなに気持ちいい朝はいつ以来なんだろ。今はそんなのもどうでもいい。


「寝起きなんだから仕方ないだろ」



私は尚更笑った。






「それじゃあ、今回もキングの座に輝いた秋山遼君にコメントを頂きたいと思います!今回初めてのテイマーも、もう何回も出場してるテイマーもこのキングの強さは十分に見せ付けられたよね。これから先の参考や、ひょっとしたら弱点なんかも聞かせてくれるかもしれないからよ~く聞こう!」


「ははっ、そんなに大袈裟なことは言えませんよ」


公式大会ではすっかりおなじみのこうじさんの相変わらずの巻き口調に促されて俺は壇上の前にでた。前に出てのコメントは久しぶりで少し、緊張したけどでも懐かしい感じが気持ちよかった。

結構前の大会、俺の先代の王者、というかキングの話を尊敬半分悔しさ半分でまさにこの会場で聞いていた覚えがある。同じような感情を持って今俺の話を聞いている子はいったいどのくらいいるんだろうか。その子が今後俺を倒す日はいつくるんだろう。わりと早く来るような気もするし、でも、そんな日はもう来ないような気もする。


「やぁみんな。実力やら運やら色々あって今回もキングになることが出来た秋山遼だ。多分~この中じゃ結構年上の方だと思う。こうして俺がみんなの前にでて話してみて最近思うのは若い、っと俺もまだ若いか」


会場に細波のような笑いが巻き起こった。やじみたいな掛け声も聞こえる。


「いやいやどうも。で、あ~そうそう、俺よりも幼いテイマーが増えたなって。俺が決勝で当たったテイマーなんてまだ小四だもんな。すこしずつだけど時代が変わるって言うのかな、そういうのを感じてるんだ。俺はもう早く俺を倒してくれるだけのテイマーが現れて欲しいって思ってるんだ。勿論、ただで負けてあげられるほど俺は優しくないけどな」


少し間をおいて会場を見渡してみると、うなずいてる奴や、次こそはって目をした奴が見えたりする。でも、まだまだだぞって睨み返してやったりしてみる。


「最近、デジモンカードは急速に種類を増やしたりしてて、戦略も前よりもずっと必要になってきた。素早い進化で反撃させないタイプの奴や、それとは逆に相手が進化すればするほど強くなる上級レベルキラーの奴もいる。

かつてないくらいにそういった奴とのやり取りが今は楽しいんだ。だけどな、セコイ手やつまらない戦いはして欲しくない。今回は指定されてなかったから結構多くのテイマーが使っていたけど、インプモンの引き分け戦法は正直テイマーが使うものじゃないと俺は思っている。カードの力やルールの隙を利用するようなそんな戦いは面白くない。

だろ?バトルは勝てるから面白いんじゃなくて、戦っていくうちに自分自身が今までの自分より、対戦相手よりも進化できて、その結果勝てるから面白いし嬉しいんだ。デジモンはただのカードでもデータでもない。ちゃんとした生き物なんだ。

今だってどこかで戦ったり進化したりしてるのだと思う。俺はそれをずっと心のどこかで考えていたし、身をもって経験もした。そうしてきてやっぱりこれから先皆に経験してもらいたいのは、例え遊びでも自分でどうするか考えて悩んで進化していくってことだ」

熱を上げて話をしているうちに次第に会場の反応が薄くなってきた。それはみんなが話を聞かなくなったんじゃない、話に集中して熱心に耳を傾けてくれているからだ。まだ鼻水を垂らしてそうな小さい子でもそうしている。…こんな出会いができた俺はきっと凄く幸せな奴なんだろうな。

子供は誰だってテイマーだ。大切なものとこれから先進化する可能性を持ってるし、そうならない可能性も秘めている。だから俺は皆にもっと大切なものを持って欲しいって願う。俺がデジモンに出会ったように、サイバードラモンに出会ったように。

更に熱くなって俺は続けた。


「ところで俺には四人の弟と三人の妹がいる。と言っても本当にそうなんじゃなくて、俺がそう思ってるってだけなんだけど。そいつらはデジモンと出会って色々な困難に立ち向かって、驚くぐらい進化してきた。俺の自慢できるものはカードの腕とこの七人の弟達だ。そのうちの一人は皆多分知ってると思うけど、今一番俺の腕に迫ってるデジモンクイーン、牧野留姫って子だ」


会場がどよめいた。それもそうか、今じゃもうどの大会にも顔を見せていないし。


「でもその子は多分もう大会、とかには出ないと思う。その子にとって戦うことよりも大事なものを見つけたから。一回も勝てなくて居なくなりやがって、って思ってる奴もいるかも知れないけどそれは許してやってくれ。あの子なりに考えた結果なんだ、それは。…おいおいそこ、別に彼女って訳じゃないよ。妹だって」


俺ぐらいの年の奴がよけいな推測を投げかけてきた。ま、こういう奴も世の中にはいっぱいいる。それはそれ、俺は俺、別に構ったことじゃない。


「遼君…そろそろ終わらせて」

「あぁ、すみません。ちょっと久しぶりで熱くなっちゃって」


こうじさんが後ろからこっそりと時計を示してきた。迷惑をかけるのも嫌だし、俺自身今後の予定もまだあるしここらで切り上げなきゃな。


「でも、取り敢えず俺は当分キングの座にいると思うからそれは安心してくれ。今回勝った奴も負けた奴もみんなもっと考えて頑張って俺に負けない次のデジモンキングやクイーンになってくれることを期待してる。ズルはするなよ。それじゃぁ」

「秋山遼君でした。それじゃ次に……」


今日はもう一つ向かう所がある。カード大会のエンディングセレモニーをキリのいいところで抜けて俺は東京では二週間ぶりに降った珍しく回数の多い今年度四回目の大雪の中新宿行きのバス乗り場へと足を向けた。






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夜が更けて皆が寝静まってから暫くしても僕はなかなか寝付くことが出来なかった。疲れてはいるのだけれど、どうしても閉じた瞼が素直にくっついてくれなくて僕は何度も寝返りを繰り返した。神経が昂ぶっているのかもしれない。今日は色々とあったし。

次に寝返りをすれば眠れるだろうと思い込もうとすればするほど寝返りの数は増えて、このままではその騒音で誰かを起こしてしまいそうで、それはよくないなって思って、堪らなくなって廊下へ這い出した。

古風な造りの家は音をよく吸い込んで、静かで暗い。寒さがシンと肌に伝わって僕は身を縮こめながら元来た道を戻って布団を一枚羽織った。家に合った木の雨戸の向こうではまだ雪が降っているらしくて、そういう音は、僕だと聞き分けたりできないけどそういう感じがする。

雪は予報では明日の、日にち的には今日の朝まで続くらしいと言っていた。留姫の家に着くまでに既に大分積もっていたからここ数年では見られないくらいの大雪になるかもしれないな。寒いのは正直言って結構辛いんだけど、積もる雪は嫌いじゃない。お父さんは朝方の雪かきが辛いからって雪が降るとあまりいい顔をしないけれど僕が小さかった時は一緒に遊んだようなことを覚えてる。

顎に手を当てて考えてみる。寝ることは出来ない。かといってやることも何も無かった。自分の家だったこういうときはパソコンで新しいソフトでも試すのだけれど。結局何も考え付かなくてとりあえず留姫の様子でも見ることにした。

床より寧ろ軋む身体に注意しながら歩く昔の日本家屋はやっぱりそれならではのなんと言うか、風情、みたいな、そういうものが感じられた古い文化や遺跡とかを調べたりするのは僕の好きな分野で当然こういう古風な日本家屋もその範囲の中にある。だからこんな家に住める留姫が少し羨ましい。

雨戸を少しだけ開けて庭を眺めてみたい誘惑に駆られたけれど風通しのよい日本家屋でそれをやるのは気が引けて止めた。

今の僕には長く思われる廊下を抜けて左の障子戸を開けた。独りよがりで怒りっぽくて人を寄せ付けない冷たさがあって、でも本当は子供っぽくて結構くだらない事で笑ったりして優しい我が侭な姫様を起こさないように静かに戸を閉めて側に寄った。我が侭な姫様か、自分で考えておいて、だけれど今のフレーズは別段面白くもないし、言うと怒られるし封印しておこう。

先ず首筋に手の甲を当ててみる。まだそこそこ熱が篭っていて熱い。風邪の引き始めはきっとそうじゃなかったんだろうけど、この熱でよくあちこち動き回れたなと感心する。でもあんまり感心しない行動だけど。
額のタオルも手に取ってみた。流石に水を含んでいるから熱いとは言わないけれど随分温くなってしまっていた。

オレンジの電球の薄暗い中で水桶を探したけれどずさんな仕事をしたらしい博和が用意し忘れたみたいだ。仕方なく羽織っていた布団を置いてタオルを持ってそっと後退りした僕はそのまま台所へ向かった。

物が多くて少し入り組んだ台所を足元に気をつけながら進み蛇口のレバーを下げて水を出す。冬場の水道水はキンと冷えていて手を強く刺激する。その冷たさに耐えながらやっとのことで水を搾った後にお風呂場から桶を持ってくるのを忘れたことに気付いた。

暫く頭を掻いて自分の手抜かりを反省してから桶を取りにお風呂場まで向かった。そして台所に戻って来た時にどうせならお風呂場で水を汲んでしまえば良いことにことに気付いた。更に水を汲んでから氷も入れておいた方がよいことも思い付いて、それならお風呂場で先に水を汲んでも意味がないことに気付いた。

更に更に桶を部屋まで持っていくときにはタオルを持つことが出来ないことが分かって、一旦桶の中に入れてからまた後で搾る破目になった。

なんだ、僕は寝惚けてるのか、と疑いながら、このままでは帰りの道中に水を溢す様な気がしたから多少その量を減らしていった。覆水盆に還らず。桶の水は溢したら面倒くさい。物事には注意して取り組むべきだということを改めて知った。というか僕は阿呆か。

いくらか余分に疲れて戻ってきた僕は慎重に桶を留姫の横に置いてから一度楽な姿勢で息を吐いた。たった一回の水汲みでなんでこんなに疲れなくちゃならないんだろう。溜息と同時に呟いたからボソボソとした音が口から漏れた。

タオルを搾った。冷たくて顔をしかめながら。先ずちょっとずつ起こさないように留姫の顔を汗を拭いた。僕は男の子で、留姫は女の子で、シャツのボタンを開けて身体を拭く、というわけにもいかないから、首だけ少し拭いてあげてからもう一度水に浸して、搾って額に乗せた。  
 
小春が風邪の時なんかは僕が重に看病するからこういうことには慣れていたけど、今更ながら女の子と二人というのは妙に緊張するなと思った。

また首筋に手を当ててみた。水の気化熱というらしいもので少し熱が引いたように思えるけど、それでまだこの温さだから実際は結構な熱がありそうな感じだった。

不意に留姫の髪の毛が手に触れた。ひどく柔らかい。小春のそれみたいに細くて手を引くとするりとする感触を残して逃げてゆく。無意識に息を飲むほど不思議な柔らかい感触。髪の毛は女の子の命とお母さんが小春の髪を梳きながら言うことがあるけど、何となくそれが分かる気がした。僕は手櫛で自分の髪を梳いてみた。ざくさくと手に絡まる。引っかかって痛い。

暫くは何故か動きたくない、って思った。何でだろう。多分、きっと、あの、正直に言えば見惚れていたんだと思う。僕の髪の毛は癖が強くて少しも色が抜けてなくて真っ黒なんだけど、留姫は逆に意図的に斑っていうか、あれだ、つまりメッシュとか言われる状態になっていて、なんていうかそれがでも似合ってる。こういうセンスのよさってのは留姫のお母さん譲りなんだろうな。

それから暫く何も考えないままにその髪の毛を恐る恐るに触れてたりした。自分の何処にもない感触っていうのはやっぱりそれだけでどきどきして心惹かれた。何となくクラス男の子が、胸、だとかお尻、だとか触りたいって騒ぎ立てるのは、僕はそういうのに参加したりはしないんだけど、でも分かる気がした。僕だって最近はそういう気持ちが全くない。とは言い切れない。

不意に障子の引き戸がすすっと地面にすれて開く音がした。その突然の物音に驚いてはっと手を引いて後ろを振り返った。なんとも申し訳なさそうに博和が部屋に入ってきた。一瞬身体が飛び上がったかと思った。


「いやぁ、でさ、夜更かしが癖ついててよ、暇でお前が何してんのかなって思って見に来たんだよ」

「……何、って別に。取り合えずタオルは交換したけど」


後ろでに障子を閉めて僕の横にざっと腰を下ろした。潜めた声で博和は僕に言い訳してきた。それが逆になんだか僕が悪いことをしたみたいな気分にさせた。実際にそうなのかも知れないけれど。


「で、そこのお転婆の様子はどうよ?」

「まぁ、大丈夫そう、かな」

「そっか。全く毎度毎度無茶するよな、こいつは」


肩を竦めて呆れたみたいに博和は口の端だけで笑った。


「え~、ところで健良さん、つかぬ事をお伺いしますが」

「え、何?」


急に博和がわざとらしい口調で拳を作りマイクを差し出すように僕に向かって拳を突き出した。なんか妙な気分がしてすこし身構えた。


「お二人の仲はどこまでいってんのかね?」


また僕は飛び上がったかと思った。実際には微動だにしなかった僕は博和の喋り方が実は徹底してないなと、頭の中で自分が冷静であるということを考えるように努めていた。  

博和はなんだかニヤニヤしていた。博和は多分そのうち女の子の胸がお尻がとしきりに言うタイプになるような気がした。


「っ…やめて、くれよ。そういうからかいとかあんまり得意じゃないんだから」

「得意ってなんだよ。つまんねぇな、ほれ、なんか答えろって」


僕は掌を博和に向けて身体を退けた。しかめ面もしたかもしれない。こういう質問は何を言ったって都合のいいように取られるって相場が決まっているし、今は無駄に色々考えて疲れたくないって思って取り合えず何も言わない意向を示した。カメラを避ける政治家に似ていた。


「マジな話、何もねーのか?」

「何も…ないよ。っていうか本人の前でそういう話をするのはどうかな」

「寝てっから大丈夫だろ」


本当は僕がしたくないだけなんだけど。


「でもま、お前にゃそういう話とかあったほうが良いと思うぜ?お前ら二人ともけっこー人を頼りにしないだろ。だからなんつーかそういうのはいた方がいいと思うぜ。オレ的にもけっこー似合うと思うしよ」


博和は僕とは真逆の考え方をしている。何事も考え込み過ぎないで気軽にやっつけてしまえる。殆どのことは物怖じしないで先立って決断したりしてしまう。よく言えば果敢だけど悪く言えば考えなし。

最初のうちは留姫ほどいやな顔をしたりはしなかったけど、でもあんまり好ましくなくてそれほど深い仲にはならない気がしてた。こういった安易に行動して人を傷つけてしまう人は、僕自身がそういうことを望まないこともあって、考えてからじゃないと動けない僕からすると苦手なタイプだって思っていた。

でも博和はふざけているようで実は僕でも及ばないことまで周りを気遣っているんだってことが分かった。多分本心や感情で生きていて自分が変化しやすい分人の変化とかもわかるんだと思う。

皆の気が滅入ってしまっている時は気楽に振舞ってみたり、デジタルワールドで僕と啓人と留姫がスーツェーモンの所へ行った時も小春を守ろうとしたり加藤さんを心配したりしてたってことも聞いた。デジタルワールドから帰ってくる時も戻ってこない留姫のことを心配したり、インプモンを連れて来た事を深く追求せずに容認したり、と。

現に今ふざけながらも僕をいたわってくれている。本当にただふざけている、だけの時もあるけれど、それもまた博和のとりえなんだと最近は思えるようになった。

考えてみれば僕はどちらかというと人付き合いは苦手な方で、啓人も留姫もデジモンのことがなければきっと話すこともなかっただろうって思う。一つのことを通じて様々なものと出会ったり発見したりすることが出来た。それはもしかしたら物凄いことなのかもしれない。それを僕よりも安易に追求できる博和が羨ましいとも思う。


「ねぇ」

「あんだよ」

「君がテイマーを、じゃないな、デジモンを始めたきっかけって何なのさ?」

「きっかけ?なんだー、っけかな」


ふと僕はつまらないことを聞いてみたくなった。啓人がデジモンを始めたきっかけは博和がやっているところを見てってらしいんだけど、ならその博和のきっかけというのは何なのだろうと思った。

博和は腕を組んで首を傾げながらそれが何かを思い出そうとしていた。僕は留姫の様子を眺めながらそれを待った。留姫は相変わらず少し苦しそうな顔をしていた。


「多分なぁ、あのCMだよ。ほら俺らが一年くらいん時の、あの、え~、何だ、あのゲームのやつ。ほらほらデジモンがバンバン戦って、最後に主人公が出てきて『君もテイマーを目指せ!』って言うやつ。あれがメチャ格好よくてよぉ、それでハマったんだよなぁ」

「博和もなんだ!僕もあのCM見てからお父さんにせがんで買って貰ったんだ。よく憶えてるよ」

「ほぁ~~ん。じゃぁ初回のカードも持ってるクチだろお前も」

「プログラムカード『テイマーの証』でしょ。七色の背景に人のシルエットとデジヴァイスが移ってるやつ」

「すっげーな。お前がけっこー初期ごろのテイマーとは思わなかったぜ。健太も啓人も俺んちでゲームやってたくらいだからよ。証持ってん奴に会ったのはマジ久々だぜ。あれ初回のカードが意外と少なくて持ってる奴は珍しいんだよな」


意外なところに博和と僕の共通点を発見した。まさか同じことがきっかけでデジモンを始めてたとは思わなかった。僕は嬉しくなった。


「でもしっかし健が親に物せびるってのもあんま想像できねーな」

「まぁこれでももっと小さい頃は結構我が侭だったんだ。喧嘩とかもよくしてた」

「ほぇ~、案外そんなもんなんかねぇ。やっぱ想像できねーけどよ」

「そういう自分が許せなくて変わったんだ。意図的にって考えられる程賢くはなかったからなんか自然に、ね」

「そっか。結構苦労してんのな」


自分のことを人に話したのはなんだか随分久しぶりだった。博和はやっぱり一種ムードメーカーなのかもしれない。だから啓人も博和を慕っているのかも。


「そういや俺とお前のツーショットってのも珍しいよな。こんなんがなきゃそんなに喋んねぇよな、クラス違うし」

「そうだね」

「まっ、暇つぶしにゃなったぜ。後はてきとーに楽しんでな」

「いや、だからそういうことは…」


一通り喋った後博和はまたさっきの申し訳ない様子で捨て台詞を残して僕の言葉を最後まで聞かずに部屋を去っていった。やっぱり単にからかってるだけなのかもと僕が思ったのは言うまでもないだろう。

少し声が大きかったかなと今のやり取りで留姫を起こしてないか顔を覗き込んだ。と、同時に留姫が寝返りをうって心底びっくりした。タオルが落ちたから拾ってまた水につけて額に乗せた。ついでに熱も確かめた。当然まだ熱かった。

たっぷり十分くらいは留姫の様子をずっと眺めていたけれど、博和の言ったことがまだ頭に残ってて落ち着かない気分がした。同時になんだか目の前がぼやけてきたような気もして僕もそろそろ帰ろうかなと思った矢先に奇妙な音を聞いて動きを止めた。


「ぅ…ぅ……ん…」


それが留姫の呻いた声だって気付く前に随分辺りに音の原因を探してしまった。留姫が苦しそうに布団を退けようとする音を聞いて漸く気付いた。

声…か、そういえばあのテリアモンの声は何だったんだろうか。うん、でもそれは、まだこっちの世界と向こうが繋がってるって事の証明になる、のかな?なんで急にそんなこと考えたんだろう。やっぱり僕はそろそろ寝惚けてる、のかもしれない。

熱いのかな。留姫は随分と苦しそうだ。っていうよりも魘されてる…のかな?そうだよな。普段強がっていても女の子、だしね。僕は最近は身体も強くなったみたいでほとんど風邪を引いた記憶がない。でも、それでも病気をした時のあの怖くて不安な気持ちは覚えている。

このまま自分が消えてしまうようなそんな感じが胸の奥を締め付ける。その感じ。

首筋はまだ熱気を感じて、さっき汗を拭ったばかりなのに触れるともうじっとりと濡れている。また汗を拭って水につけて額に乗せた。留姫の苦悶の表情をみてなんだか心苦しい気がした。

僕は留気が苦しんでいた本当の理由を知らない。それを知りたい気持ちはある、勿論。今留姫の夢の中を覗くことが出来るのならやっぱりそこで何が起こってるのか見てみたいし。それは色々やましい気持ちがあるって訳じゃなくて何というか純粋に知りたいだけ。

夢は全くの空想なんかじゃない。どこかに必ず現実を示すものがあるって何かの本で見た記憶がある。それにはやっぱり直接聞くしかないんだろうな。僕は魔法使いじゃないから。

留姫は本当はとても弱いってことを自分で理解してる子なんだ。僕は随分前からそのことを考えて、分かってた。つもりだった。見た目よりもずっと子供っぽくて女の子っぽい。僕はそれを何となく納得してただけだった。

留姫の両親が離婚したってことも色々あって知っていた。なのに僕はそのことを気にかけてあげられなかった。大切な人を失くす経験をしていたのに、それを、考えてあげられなかった。いけないな、そう考えない方が良いって啓人にも言われてるのに。でも考えてしまう。

不意に留姫の手が布団から飛び出してきた。浅い眠りの中で何を見ているのかは分からなくても夢の中が幸せな景色じゃないことは分かった。僕は出来るだけ優しい手つきで留姫の頭を撫でた。何度も撫でた。何でだかは分からないけど。

僕のしてあげられることに大したことなんてない。それがひどく歯痒くてでも当たり前のことだった。留姫の手を布団の中に仕舞う。頭が少しフラッとした。やっぱりそろそろ眠くなってきてるみたいだ、瞼が引き攣る。

でも僕は何でこんなに色んなことを考えてるんだろう。啓人にも言われたし、自分でも気付いているけど、全てが僕の所為って思う必要なんかは、ない。元々の臆病な性格の所為だとは思うんだけど、最近はこんなにもそのことを強く思ったことなんてなかったのに。

僕はまたタオルを水で冷やして留姫のおでこに乗せた。

多分それは留気が僕に似てるからだと思う。考えすぎてしまったり、一人で全てをやりこなそうと思ってしまったり、本心では啓人みたいに人を心から信じてみたいのに、でも不器用でそれがなかなか出来なかったりするところ、とか。

だから留姫が悩んでいたり悲しんでいたり、そのくせ強がっていたりするのをみると自分のことのように思えて心苦しくなる。

留姫が笑ったところを僕はあまり見たことがない。いつもどんなことにも興味がないって顔でそっぽ向いていたり、つーんとした表情だったりするし。話に混じってる時も呆れてたり怒ってたり、そうでなければちょっと考えるような顔をしてたりしてる。

頬が緩むなんて在り得ないくらい。笑うと留姫はとても幼くなる。口の端がちょっと上がって小さなえくぼが浮かぶ。と、それでそれだからそれから、目尻が落ち着いて普段と違う優しい雰囲気になる。そう言う…。

そう言うときっと留姫は怒るだろうけど。考えてみると。僕は結構人のことをよく見てるんだなって思う。でも、その割には人の色んなところに気付いてないな。なんだか矛盾だらけだ。なんて僕はその矛盾の理由を分かってるのかもしれない。

博和に言われた通りあるいはそうなのかもしれない。
そう思える節が幾つも在る。

僕はそっと障子を開けて部屋に戻った。寝息を立てる啓人たちの横を抜けて自分の布団に潜り込んだ。そしてあっさりとその温かさに意識を奪われた。





はっと気付いて僕はまた留姫の額のタオルを水で冷やして元に戻した。そうする必要があったかは最早判断がつかないけど、というよりこの時僕が何をしていたかさえよく分からなかったけどそうすることで僅かに僕の意識は保たれた。

はっきりと口に出すことも自分の中で明確に意識するのも怖かった。何で怖いのか今の僕には分からない。それは多分僕がまだ子供だから、だと思う。

博和に言われた通りあるいはそうなのかもしれない。

そう思える節が幾つも在る。

僕はそっと障子を開けて部屋に戻った。寝息を立てる啓人たちの横を抜けて自分の布団に潜り込んだ。そしてあっさりとその温かさに意識を奪われた。





はっと気付いて僕はまた留姫の額のタオルを水で冷やして元に戻した。そうする必要があったかは最早判断がつかないけど、というよりこの時僕が何をしていたかさえよく分からなかったけどそうすることで僅かに僕の意識は保たれた。

はっきりと口に出すことも自分の中で明確に意識するのも怖かった。何で怖いのか今の僕には分からない。それは多分僕がまだ子供だから、だと思う。

博和に言われた通りあるいはそうなのかもしれない。

そう思える節が幾つも在る。

僕はそっと障子を開けて部屋に戻った。寝息を立てる啓人たちの横を抜けて自分の布団に潜り込んだ。そしてあっさりとその温かさに意識を奪われた。




はっと気付いて僕はまた留姫の額のタオルを水で冷やして元に戻した。そうする必要があったかは最早判断がつかないけど、というよりこの時僕が何をしていたかさえよく分からなかったけどそうすることで僅かに僕の意識は保たれた。

はっきりと口に出すことも自分の中で明確に意識するのも怖かった。何で怖いのか今の僕には分からない。それは多分僕がまだ子供だから、だと思う。

博和に言われた通りあるいはそうなのかもしれない。

そう思える節が幾つも在る。

僕はそっと障子を開けて部屋に戻った。寝息を立てる啓人たちの横を抜けて自分の布団に潜り込んだ。そしてあっさりとその温かさに意識を奪われた。





はっと気付いて僕はまた留姫の額のタオルを水で冷やして元に戻した。そうする必要があったかは最早判断がつかないけど、というよりこの時僕が何をしていたかさえよく分からなかったけどそうすることで僅かに僕の意識は保たれた。

はっきりと口に出すことも自分の中で明確に意識するのも怖かった。何で怖いのか今の僕には分からない。それは多分僕がまだ子供だから、だと思う。

博和に言われた通りあるいはそうなのかもしれない。

そう思える節が幾つも在る。

僕はそっと障子を開けて部屋に戻った。寝息を立てる啓人たちの横を抜けて自分の布団に潜り込んだ。そしてあっさりとその温かさに意識を奪われた。











はっと気付いて僕はまた留姫の額のタオルを水で冷やして元に戻した。そうする必要があったかは最早判断がつかないけど、というよりこの時僕が何をしていたかさえよく分からなかったけどそうすることで僅かに僕の意識は保たれた。

はっきりと口に出すことも自分の中で明確に意識するのも怖かった。何で怖いのか今の僕には分からない。それは多分僕がまだ子供だから、だと思う。

博和に言われた通りあるいはそうなのかもしれない。

そう思える節が幾つも在る。

僕はそっと障子を開けて部屋に戻った。寝息を立てる啓人たちの横を抜けて自分の布団に潜り込んだ。そしてあっさりとその温かさに意識を奪われた。






























はっと気付いて僕はまた留姫の額のタオルを水で冷やして元に戻した。そうする必要があったかは最早判断がつかないけど、というよりこの時僕が何をしていたかさえよく分からなかったけどそうすることで僅かに僕の意識は保たれた。

はっきりと口に出すことも自分の中で明確に意識するのも怖かった。何で怖いのか今の僕には分からない。それは多分僕がまだ子供だから、だと思う。

博和に言われた通りあるいはそうなのかもしれない。

そう思える節が幾つも在る。

僕はそっと障子を開けて部屋に戻った。寝息を立てる啓人たちの横を抜けて自分の布団に潜り込んだ。そしてあっさりとその温かさに意識を奪われた。















































はっと気付いて僕はまた留姫の額のタオルを水で冷やして元に戻した。そうする必要があったかは最早判断がつかないけど、というよりこの時僕が何をしていたかさえよく分からなかったけどそうすることで僅かに僕の意識は保たれた。

はっきりと口に出すことも自分の中で明確に意識するのも怖かった。何で怖いのか今の僕には分からない。それは多分僕がまだ子供だから、だと思う。

僕はそっと障子を開けて部屋に戻った。寝息を立てる啓人たちの横を抜けて自分の布団に潜り込んだ。

ような夢を見た、ような夢を見た、気がした。

多分僕は留姫を。



そうなんだ。
















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体の感覚が戻ってきたところで漸く体を支えようとしてるのが右腕だって事に気付いてでも右腕にもそんなに力が入ってなくて、左腕に固く引っかかってるものが私の体勢を保ってるってことが分かってきた。


「留姫!」


はっきりと健の声が耳に入ってくるまでに何分たったんだろ。十数秒程度にしか満たないってことに薄々感づいてながらしらんぷりをした。健の声が聞えて同時に気持ち悪さが戻ってきた。何か胸の辺りまで込み上げてくるのを感じながら私は言った。


「ちょ、っと立ちくらみ」

「大丈夫、分かってるから」


はっきりと喋れたか自信なかったけど、健ははっきり答えて私の体を支える腕で力任せに引っ張り上げてゆっくりと元の場所に私を座らせた。出した声が擦れていたってことももう随分前から分かってた。それを私が隠してて健にはバレてるんだってことも。


「調子悪い、んだろ。だったら無理してまでここに居る理由はないじゃないか」

「私が何処で何してたっていいじゃない」

「良くなんかない」


健の強い口調に驚いて私は健を見上げた。いつもの、真面目に何か考えてますって顔じゃなくてぱっと見穏やかなんだけどなんかそれだけじゃない雰囲気を持ってる。いつもなら諭すみたいなちょっと自分のほうが上だって思ってんじゃないのってくらいのムカツク言い回しをするのに今はもっとストレートに喋ってる。

健は冷静に見えて案外怒りっぽいところがある。それも怖いくらい激しく怒る性質の悪いタイプの怒り方。人間怒ってるときは相手の何の話も聞こうとなんかしない。そーゆー奴ってすっごい嫌いなんだけど、でもそれに反撃できない自分も嫌い。くやしいけど心配掛けておいて偉そうなことはあんまり言えないし、そうでなくても健より正しいって思える意見も出てこない。


「帰りたくない」


考えて考えて考えて漸く出た言葉がそれ。自分でも阿呆くさいってのは分かってた。でも何もない。倒れそうなくらい疲れてたし、寒いし、頭痛かったけどなんか今の自分を表現できそうなものが見つかんなかった。ただ、気持ちの整理が付かないまま何もしないってのは性に合わない。多分そのとき考えてたのはそんだけ、だと思う。


「それで帰らないで何をするんだ?」


言われてみたらもっともな話。実際に帰るのを先延ばしにして結局何もできてない。それをもう一回繰り返したって何か分かるわけでもない。保障もない。全部が全部私の間違い。でもそれを認めたくない。そういう我が儘。

沈黙。沈黙。沈黙。それから何か考えてる感じの健。何も言わない私。何も言えない私。何を言っていいか分からない感じの健。何を言うのか私は知らない健。また沈黙があって、それから健が言い始めた。


「僕もさ、時々不安になることがあるんだ」


急に健の口調が元の落ち着いた感じに戻った。何だって思うよりも背筋がピリッとした。


「実際に何か問題が起こったわけじゃない。でも、ただ何でかこう、デ・リーパーが出て来た時みたいな、火にかけたお湯がだんだん沸騰して泡立ってくる、みたいなそんな不安が胸に込み上げてくる。込み上げてくる不安の理由も原因も分からない。

後一歩でその説明が付きそうな時もハッと気付くとまるでそれが夢だったみたいに忘れてしまう。全部失くして逃げ出したくなることも在る。でもそれは本当は失くしちゃいけないもので失くしてもまた自分のところへ戻ってくるものなんじゃないかって…

それに逃げ出したっていく場所なんてない。逃げ出すきっかけだってなかなか見つけられない。僕自身がそうだから何となく留姫の事も想像できるんだけど、でもそうだろって押し付けて聞いたりとかはあんまりしたく、ない。

僕等の中で誰が一番辛い、なんてことは考えたことはない。全くって訳では、ないんだけど、でも出来るだけ考えないようにしていた。辛いのは皆同じだから。

ただメールでも言ったけど、留姫は一人でも何でも解決しよう、って思ってしまうタイプ、だと思うから。自分で、より辛くなってしまうんじゃないかって心配してた。多分…僕なんかより、ずっと辛かったんだよね、実際にそうだったよね。
…ゴメン、早くに気付けなくて」

たった今気付いた健の癖が三つある。喋りながら言葉をまとめようとする時には目線をどっか遠くにやって握った右手の親指と人差し指を顎に当てる。何か言いたいことがはっきりした時には目を真っ直ぐにこっちに向けてくる。それが少し辛い。

それでもう一つの癖もそれにつられてるんだと思うんだけど、言葉の一文一文で必ず終わりごろになるとだんだん早口になってくる。それに相手がちゃんと自分の話を分かってるか確認するみたいな自信のあんまない丁寧な語尾が付く。ちょっと言葉を濁してたりもする。

出会ってからもう一年近くも経つのに今更気付いた。正直私はよっぽど人のことをよく見てないんだって思った。同時にふらふらした頭は逆に変なところで冴えてるって気付いた。でもちゃんと働いてる訳じゃない。なんか催眠術にでもかかってるみたいな気分。そんなのかかったことないけど。

私は黙ってうなだれ続けた。健は続けた。


「うん。だから気持ちの整理が付かない、ってことも僕は分かる気がするんだ。というより整理なんてつかないものなのかもしれないけど。だけどこのまま立ち止まったままではいけないんじゃないかな?本当のことなんて分からないけど、でも何にしたって僕等はもうお父さん達に心配をかけるべきじゃない。怒っているんじゃないんだ。僕はただ―――――」

「偉そうに言わないでよ!」


私は健の言葉を遮った。なんだか余計なことまでいっちゃいそうな気がする。でも口は動いたまま止まらない。自分が、遠い。


「アンタの言ってることは正しいわよ。改めて言われなくたってわかってる。心配掛けちゃいけないのも、一人で抱え込むのも無理するのも全部あんまし良いことじゃないって私だってそれぐらい分かる。そう思ってる。でも!あれも正論、これも正論、全部正論だって、私は認めない、認めたくない。納得も出来ない!

だって、あれだけ…頑張ったんだよ…。戦って傷ついてやっと勝って、それなのに私達には何も残ってない。その上レナモン達ともお別れしなくちゃいけなかったなんて。最初はお父さん。それから友達って呼べそうな人、それでレナモン。私は何回大切なものを失ったの?後何回失うの?何回裏切られるの!何回諦めなきゃ行けないのよぉ…。

アンタ達だっていなくなるかもしれないじゃない。いなくならないって言い切れるの?無理でしょ。こんな世界なら、こんな世界なら欲しくなかった!アンタに私の気持ちなんて分かる訳ない。色んなものに恵まれてたアンタなんかに!」


立ち上がって今度は目眩がしないで最後まで言い切った。でもどうせなら途中で喋れなくなって倒れて気絶した方がよかった。そうすればヒステリックに言っちゃいけないことなんて言わずに済んだのに。それに少しの間だけでもモヤモヤズキズキした気分の悪さから逃れられた。

言い終わってから直に健の右肩がビクンと反応した。後になって考えてみると、それはもしかしたら私を叩こうとしたから反射的に動いたのかなって思う。あれだけのこと言われたら普通、誰だって怒らない訳ない。

その時の事を私は今でも反省している。暴力を振るったりすることを嫌う健を、そんな風にさせるまで追い詰めたんだって。でもちょっと言い訳っぽいカモ、なんだけど、私は熱の所為でいつも以上におかしかったんだと思う。でなきゃ人として最悪。いっそ死んじゃったっていいくらい。

暫くの間私達は身動き一つ取らないで立ち尽くしてた。私達二人だけ時間が止まってたような気もする。少し遠くで車の走り去る音が聞こえてゆっくりと降り続けた雪が白い絵の具を景色に付け加えて私の心を冷やしてった。

そのちょっと前辺りから、健が長いこと話し続けてた頃から私の意識はちょっとずつ薄れてきてた。空も地面も雪の色に埋め尽くされるみたいに。


「どんなに分かるって言ったって誰かの気持ちを僕なんかに理解しきれるなんて考えたことはないよ」

「嘘だよ!今そう言ったじゃん」

「嘘じゃない」

「じゃあなんで…」

「だって、だからこそ誰かの気持ちを、留姫の気持ちを、理解しようと努力したりできるんじゃないのかな…?少なくとも、僕は、そう思うよ」

「そう……なの?本当に?」


不思議がって、戸惑って、疑って、でもなんだか私はその言葉に妙に納得した。私には少し難しくてあんまり深く意味が分かる言葉じゃないけど、でもとても健の健らしい感じのする、凄く想いっていうかなんて言うか、   

そういうのが込められた言葉だった。強く心に響くって大げさな感じは無いけど、ジィンって感じはした。


「僕だってまだ全部を理解できたわけじゃない。だから、断定的なことも、何一つ言えないんだけれど、でもだから可能性…を信じたいんだ」

「やだ。そういうのとか全部やだ。不安なんて全部消したい。失くしたい……会いたい。別れたくない。レナモンと、健と。皆と。信じたって約束したって仕方ない。ちゃんとした、証明できるものが欲しい」

喋り続けてるうちになんだかふわふわしたものが体の中から込み上げてきた。力が抜けてきて、座り込んだ。体が浮かぶような感じと一緒に、私はその場で横になった。ホームレスが沢山横になるような場所だからあんまし気分のいいものでもなかったけど、私を支えてくれた手がふわふわしたものに思えて気持ちよかった。

健は後で何も言わなかったけど、私はその時多分泣いてたと思う。だから私はレナモンの夢を見て眠った。


『一人は…もう嫌…』





「どうも有り難うね、お疲れ様」と労われて、勝手知ったるらしい留姫のお母さんの仕事仲間の女の人に案内された広い居間に思いきり体を寝そべらせてから漸く僕は自分の疲労の度合いに気付いた。思ったよりも体が重たい。


考えてみれば僕が学校を抜けてから今まで少しも気の休まる時間なんてなかったし、休むことなく動き回ってたから当然といえばそうだ。逆によく体が保ったな自分で驚くぐらいだ。体は日頃鍛えておくべきものだと思う。

医師の方によると心配されてたインフルエンザではなく単なる疲労から来る風邪だろう、ということだった。長いこと外の風に当たっていたことで熱が39度3分まで上がってはいたもののそれでなかったことは幸いだった。

留姫のお母さんはまだ抜けられない仕事が在り、おばあさんは海外旅行ということだった。それに結局留姫のお母さんの仕事仲間の人も予定があって帰ってしまって家には誰もいない事になったから、お節介な事に僕らは泊り込みで看病をするということに決めた。不思議と誰の親も反対はしなかった。

あの後僕は予め連絡していたお父さんに留姫を自宅まで連れて行ってもらった。余談的な話になるけど、付き添いで同乗した僕以外は気の毒ではあったけど中央公園の寒空の下で暫く待ってもらうことになった。勿論後でお父さんに再び迎えに行って貰ったけれど。

ひどく無気力で、だれて寝転がる姿はテリアモンと同じだった。音も出さず身動きもしないでただ天井を眺めているだけ。功夫(カンフー)にこんな精神統一の仕方はないけどなんだか少しだけ悟りみたいなものを開けた気分になった。このまま誰もが僕を放っておけば重力で潰されていたかも知れない。

案内されたときに電気のスイッチの場所を教えて貰ったにも関わらず僕は電気を着けないままでいた。その方が気分がよかった。なんとなく暗い部屋の方が落ち着くのは僕だけなんだろうか、とか思いながら完全に締め切らずに少しだけ開いていた台所と繋がる襖(ふすま)から漏れる光に照らされた右手をじっと見続けていた。指を動かすと何かの虫のようにも見えた。

自分がどれだけのことを留姫に言えたのか、それが本当に正しいことなのか、そうじゃないのか、少し怖くて自信がない。なんだかんだと言って、留姫も、僕自身もただ色々誤魔化してただけかもしれない。なんて考えてみても僕にはあれ以上の結論は、多分、出てはこない。多分、きっと。


「健、お疲れ?」

「ああ、無問題、流石に疲れはしたけど大丈夫」


割りと意識しないまま無問題、という言葉がでた。特別な理由はないハズ、だと思う。ただ本当に口を衝いた感じだった。それが今の僕にとってはとても大事な言葉だとしても。

お母さんがいたら叱られそうな足で襖を開けるということをした啓人は僕に話しかけてきた。啓人は大きめの四角い板を持っていた。それがおぼんであってその上に四つのスープが置いてあることに気付く前に「ちょっと危ないから電気つけてくれない?」「うん、分かった」というやりとりがあった。


「これ家で一回作ってきたんだけど、ちょっと冷めちゃったから今温めたんだ。体の温まるものとにかく色々入れてきたらこれ飲んで温まってよ」


そう啓人に言われてから、まだこの部屋のストーブをつけてないことに気がついた。そういえば吐く息はだいぶ靄掛かっている。


「啓人、これ自分で作ってきたの?」

「うんそうだよ。それほど難しいものでもないからね。急いでたからちょっと手抜きなところもあるけど、でもまあ飲めるぐらいにはなってる、と思うから…へへっ、大丈夫」


啓人に料理が出来たってことを僕は知らなかった。手抜き、って啓人は言ったけどとんでもない。肉も野菜もきちんと切られててとてもおいしそうだった。薄く琥珀色というらしい色をしたスープの中にお母さんが作るような具が沈んでいる。僕にはその具のどれがどれだなんて判断がつかないぐらいなのに。


「凄いな、啓人」

「門前の小僧のナントカってやつだよね。あれだけ毎日色々作るの見てたり手伝ったりしてれば流石に少しぐらいは出来るようになるよ」

「…あぁ、そうだね。僕なんかはそういうのはあんまりしたことないから」


留姫は料理とかできるのかなと、少し別のことを考えていた所為で少し聞き流してしまったところがあったけど、とりあえず適当に繕って誤魔化した。


「やった」

「へ?」

「だってさ、勉強も運動も僕、ほとんど健に敵わないじゃない。だからこいうところでも勝てたら嬉しいなって思って」

「へぇ、そう、なんだ」


やっぱり啓人らしく誇らしげに笑って、遠回しの、多分啓人自身は気付いてない自慢をした。僕は人よりそういうことをあまり考えたことがなかったけれど、啓人は啓人で色々思うことがあるんだなと少し納得した。

スープは啓人の言う通り飲んでみるととても体が温まって落ち着く気がした。ふいに僕は一人でないくて良かったという想いが心を掠めた。もしそうじゃなかったら僕は、ずっと腐り続けてたに違いない。


「健はさ、もしかして留姫がこうなった…のは自分の所為、っちょっと思ってない?」


僕の横に腰を下ろした啓人はトーンを少し落とした真面目な声で僕にそう尋ねてきた。


「そう、見える、かな?」


スープの水面に揺れる僕の手が作り出した波を眺めながらさも心外だって風を装って答えた。図星だった。

留姫を探してる最中、僕はずっと自分がもっと気遣ってあげられたらと自虐的に思ってた。本当は僕がどうこうしていたからどうだ、なんてことじゃないのだろうけれど、皆も留姫もきっとそうじゃないって言ってくれるんだろうけど、でももし、僕が気付いてあげていたら、また、今とは少し違っていたんじゃないかって、そういう思いが拭えなかった。


「留姫も健もすごく思いつめちゃうみたいだから。だから僕、とっても心配で」

「情けないな、僕は」


あんまり口にするようなことでもなかった。でも啓人には聞いて貰いたかった。僕の悩み、痛み。今は僕は自分がよく分からないぐらいで、どうしたらいいのかどうもしないほうがいいのかなんだかとにかく苦しい。僕は喋った。


「僕はずっと、自分で皆をサポートしなきゃって思ってた。僕は皆より色んなことを知ることが出来る位置にいるし、どっちかっていうとそんなに前に出るのが得意じゃないから後ろに引いた場所で支柱っていうか、支え?みたいな、まとめたりしなきゃって、そう…思ってた」


語尾が弱くなっていたのは自分でも分かってたから途中啓人にどう思われたか不安で一瞬だけ啓人のほうを向いた。啓人はただ真面目な顔をして黙ってこっちを見返してきた。視線を戻して僕は続けた。


「でも僕はそう気負っていただけで実は何も出来てなかったって分かった。比べてどうだって訳じゃないんだけど遼さんの方がもっと皆のことを思っていたし、僕はだから、ただ無理してたってだけで、こうして啓人を心配させてしまって、結果的には何もしてなかったのと、同じ」


言いたいことがこれで足りたような気もするし、でもまだ言うべきことがあるような気もした。自然と溜息がでた。僕は自分が思っていたよりも疲れてたのかもしれない。


「そんなことないよ、絶対に。だってそう思えたからあんなに頑張って探して留姫を見つけられたんじゃない。なんか、うまくはいえない、んだけど、そうやって考えたりできるのが健の凄いところなんだよ。自分の悪いとこなんて普通そんなに分かったりするもんじゃないもの」


何も、言えなかった。啓人は僕よりもいくらか背は低いけれど、僕よりもずっと大きな考えを持ってる。だからこんなにも僕や皆を引き付けて、いつも強くいられるんだ。


「啓人」

「何?健」

「有り難う」


有り難う啓人。親友でいてくれて。


「健、僕からも有り難う。さ、スープ飲んじゃおうよ」


僕は黙ってスープを啜った。途中で博和と健太が分担を終えて合流したけど、眠っている留姫を気遣ってそれほど大きな声じゃないにしても会話を楽しんでとしても、当の留姫はゆっくりと夢を見ていたとしても、啓人は敢えて僕に気付かないフリをしていたとしても、僕は黙ってスープを啜った。


スープは啓人の言うとおり僕の心を温めて落ち着かせた。手抜きといっていたようにスープは味が少し濃くて、飲むたびに少しずつと味が濃くなった。スープはとてもおいしかった。







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うぉお、寒っびぃな。鼻が凍るっつーの。ったく時間も凍っちまったのか?いくら待っても時計の針が進まねーぞ、どーしたコラ。啓人もまだかよ、外は寒いんだよ。っかぁー、まだ来ねぇよ。本当にどうしてんだあいつ。

…しかしあの元デジモンクイーン様がねぇ。ま、元々協調性のねぇ奴だったからな、サボリなんてのもありえないことはねぇな。重要なのはそこじゃねぇけど。

真面目(マジ)な話すっと、人に弱みを見せるようなタイプの奴でもねぇんだよな。悩んでないようにするってのは考えてるよりも難いだろうによ何であんなに意地張るんかな、俺には分からねぇ。

はぁ~、まだなんか俺らと距離とか感じてんのかな。そりゃわからないでもねぇよ。あいつの一番信用しているレナモンは向こうの世界に還っちまったからさ、俺達とはそこ以外で殆ど繋がってなかったしなんかあれ、友達、みたいな感じはしないんだろうな。

でもヤバイとこ一緒に行ったってことに変わりはないし、助け合ったりもしたろ。俺と健太は主に迷惑掛ける係りだったけどさ。でもよ、健や啓人でさえ寄せ付けないんじゃあいつはこの後どうするんだよ。無理して一人で居るよかつるんでたほうがよっぽど楽しいっての。デジモンの皆と別れたときも、レナモン離れたくない、とか言って誰よりも泣いてたくせによぉ。


「博和、何小躍りしてんの?」

「良いですね、コレステロールたっぷりの健太君は。寒い冬にも難なく過ごせてね」

「煩いよ、ただ聞いただけじゃんか」


両手で両方の二の腕をさすりながら地団太踏む俺はまぁ確かに変な小躍りをしてるけど。しかたねーだろ、マジで寒ぃんだもんよ在り得ね寒さだぜ。ってか早く来いっつーのあのアホよー。ほら息白いぜ、すげ、すっげーゴジラみてー、ゴジラの映画見てー。

でもま、冬が寒いっつーのも夏が暑っちいのも俺的には嫌いじゃねぇんだよな。なんつーんだ、季節感ってやつよ。多分そんな感じの、そういうのが結構好きなんだな。

デジタルワールドじゃ季節を意識することは無かった。寒いとこ行けば寒いし、暑いとこ行けば暑い。地球を丸ごと縮めたみたいな場所だったからすっげー変な感じだった。でもま、そういう感じも嫌いじゃぁないんだよなこれがさ。だってよ、日本に居たらデジタルワールドの感じは味わえないだろ。逆にデジタルワールドじゃ日本の良いのはわからねぇ。春に秋の食い物が食えねってのと同じだよ。

そーゆーそれぞれにしかないもん?そういうのを見たり聞いたり触ったり嗅いだり味わったり感じたりするのは結構面白いもんだ。それでも長いこと待たされんのはゴメンだぜ。死にそうなくらい寒いぜ、嘘じゃねぇよ。

とかなんとか考えてるうちにやっと、啓人の奴がやって来た。なんでかリュックを背負って肩にどでかいポットを提げてやがった。なんだよそれ、いいもん持ってんじゃんよ。


「二人ともお待たせ、ゴメンねこっちから呼んどいて」

「電話で呼ばれて来たのはいいけでいつまでも待たせるんだもんな。博和なんかすねてさっきから俺に当たってくるんだよ」


走ってきて息を切らしながら啓人は変に色々荷物を抱えててなんだか完全武装みたいな感じになってた。昼の時の雰囲気からなんかあんのは想像できたからそこそこ準備してでてったのに、啓人はそれいじょうに色々持ってた。


「それよかよぉそれの中身、何なんだよ。茶か、あったかい茶か?」
俺と健太は群がるようにそのポット、っつーか半ば湯たんぽ扱いのそれに集まった。手袋の上からも熱が伝わってくる。こらあったかいわ。

「う~ん、中身は、まぁ後で。皆一緒になってから飲もうかなって思ってもって来たんだ」

「むかつく奴だな、こんだけ待たせといて」

「本当だよ。今になって急に冷え込んできたし、今日そろそろ雪降るらしいし」

「それはゴメンってば。多分怒ってるだろうなって思ってこれもって来たから」


俺らの不満をさらっとスルーして啓人はリュックの外ポケから袋を数枚取り出した。


「これ予備も渡しとく。留姫もそうだけど、僕からしか連絡取れないしそれだと健は留姫探すの止めないだろうから健に途中で連絡来たり会ったりしたら渡してあげて」


次々とがさがさ取り出したそれはまぁ早い話ホッカイロで2リットル入りの啓人のポットの湯たんぽの中身を見せない代わりにしろってことらしい。こいつは本当にこういう細かい気を回すのが好きだよな。気が付きゃ裏でせこせこ色々やってんだよ。


「おい啓人、もうなんだ細かいことはすることねぇな」

「あ、うん。僕から皆にはちょくちょく連絡入れるからなんか変わりがあったら教えて」

「そっか、啓人は携帯持ってないんだっけ」

「よそとは違うって言って買ってくれないんだよなぁ」

「啓人ンとこは結構母ちゃんが堅いもんな。オッケ~ィ、ほんじゃささっとあのじゃじゃ馬見つけますか」

「博和それ本人の目の前じゃ言えないだろ」

「うっせ~よ、あいつ直ぐ蹴りいれてくんだよ。ほれさっさと行こうぜ」

「あ、ちょっと待って」


痛いとこつかれて早く逃げようと振り返りかけた俺を啓人は引き止めた。半端な体制で首だけ後ろに向けて「なんだよ」と俺は返した。健太もなんだ、って顔をしてた。


「…あのさ、なんか。健太、博和。なんか、ありがとう」

「何だよ急に」


複雑な表情をした啓人が戸惑いながらそんなことを言ってきた。言いたいことをちょっと誤魔化した感じのそれの言い方はなんとなく言いたい内容を俺に伝えた。ったくよ、啓人の奴。


「おい馬鹿!」

「な、なんだよ、急に」

「お前が今俺らに礼を言う理由がどっかにあっか?ダチが困ってっから助けるってだけだろうよ。俺達も健も留姫も、あ~とにかく俺らはテイマーズだろ。いちいち気にすんな。もっとラフにしてりゃいいんだよ。もう何も言うな。ほれお前らデジヴァイスだせ」


俺は腰のデジヴァイスを取り外してぐっと前に突き出した。健太も啓人も煽ってそれにならわせる。三人でデジヴァイスを突きあう形になって俺は言った。


「馬鹿やんのもマジやんのも一緒だろ。俺はこうなんか仕切んのは得意じゃねぇけど、あ~俺らは全員絶対ぇダチのまんまってのは忘れんな。ん~、え~、っらぁ!」

「え?あ、らぁ~」

「お前なんかもっといいこと言えないのかよ」

「浮かばねぇよ。とにかくあれだ俺のいいたいのはあんま無駄に気なんか回すなってことよ。んじゃ行こうぜ」


自分で始めておいて結構恥ずかしいことになっちまった。俺的には格好いいこといって円陣組んでオー、ファイッ。みたいになる予定だったんだけどよ。なんかぐだぐだしちまったよ。やらなきゃ良かったかね。

でも啓人と健太と目が合った時にそんなん無駄な考えだったって分かった。以心なんとかってやつ。

俺らは自然と手を出してデジヴァイスを持った手でがつっと腕をぶつけ合った。そうそう、こういう感じのをやりたかったのよ。あ、なんか今俺ら格好よくね?あんまし俺が言ったらまとまるもんもまとまらねぇな。真面目にやるってのは俺の性に合わねぇ。

なんてそんなこんなでとりあえず俺らは散り散りに留姫の居場所を探すことにした。まずは駅近くから探すか。





「あぁ、くそ」


傍若無人に近くの花壇の縁に座り込むと、少し荒い気持ちで掌に拳を打ちつけた。頭を掻き毟って空を睨み付けた。景色はそろそろ暗闇に色を奪われて、それでも空だけは綿のように白かった。きっともうすぐ雪が降る。

僕が留姫を探し始めてからもう三時間は経つ。啓人からは博和達がそれを手伝ってくれているということを聞いたけど、正直それでも見つかるなんて思えないぐらいだった。

こうしてみて初めて僕は留姫の普段のことをまったく知らないってことに気付いた。分かるのは何処の学校に行って、何処の家に帰って、普段は学校の間中も終わった後も一人で何処に向かってから家路につくのか分からないということだけだったんだ。

あきらめるなと自分を奮い立たせてみようとしてもこうも違いがはっきりしているとその意志も挫けてしまいそうになる。留姫を探すには情報も人手も足りない。でも自分でやろうと決めたことだし、やらなきゃいけないことだって分かってるから僕があきらめちゃいけない。

でも僕が留姫にしてあげられることって何だろう。まだ啓人にも言っていない留姫を探さなきゃいけない理由が僕にはあるけど、そうした後に僕は留姫になんて言えばいいんだろう。

留姫の気持ちは、痛いほど分かる。だからそう簡単に大丈夫だなんて言えない。きっととか多分とかそうだろうとかそういった言葉で誤魔化すしか僕には思いつかない。

誤魔化すならだけならもうそれも僕の力では仕方の無いことなのかもしれないけれど、でもそれ以上に怖いのは留姫の事を傷つけてしまわないかって事。今の留姫なら、いや、いつもの留姫だってずっと小さなことで傷ついてしまう。だから僕は―――――

不意に、テリアモンの声が聞こえた、気がした。でも本当に聞こえたはずなんか無い。でも一瞬だけ、ほんの一瞬だけ僕を呼ぶ、そうなんじゃないかって思える声が聞こえた気がした。

何でそれをテリアモンの声と思ったのか後になって考えてみてもよくは分からなかったけど、きっとそれはデジタルワールドからの導き、みたいなものだったんじゃないかって僕は思う。テリアモンの声のように聞こえたものはデジヴァイスのデジモンを指し示すときに鳴るアラームだった。


「そんな…まさか。…デジタルフィールドはもう存在しないはずなのに…」


拡大してホログラム化されたデジヴァイスの液晶画面にはデジモンに反応してその方向を示す矢印がグルグルとあたりを見回す姿があった。意識が別のところへ飛びかけていた僕を気にもしないで矢印の振れは次第に治まり、一定の方向を指し示した。ただ画面は時折揺らいで、今にもその機能が失われそうなほど頼りなく薄らいでいた。そう、それは今の僕達のように不安定にゆらゆらとでも確かにここに漂っていた。


「本当にデジモン、なのか?そしたら山木さんに…いやこの分じゃもうリアライズしてる、はず。強いデジモンなら通常兵器じゃ…倒せない」


自分でも独り言をしていることをはっきりと分かっていた。あのころだったら、それでもテリアモンが無問題と言って僕を困らせたりしていたはずだけど。

真っ先に案じたのは大事な家族の事。それから留姫、啓人、博和、健太、他にもたくさんの僕の大事なもの。落ち着いて考えようとしても何も分からず、ただ僕のデジヴァイスはデジモンの反応を示してることだけが事実だった。

何で、デジモンが、何でこんな時に、何でこんな場所に、何で僕達ばかり、何でこんな目にあわなくちゃならないんだ。考えたって分からない。僕はただデジモンが好きなだけなのに。

またしてもテリアモンの声が聞こえた。今度はさっきよりもはっきりと。空耳とは思えなかった。聞き違いでもない。確かに頭の中に響いている。これは単なるデジモン反応じゃない。確信は出来なくてそっと呼びかけた。


「テリアモン、…君なのか?」


僕の問いかけに呼応するようにデジヴァイスがピコンピコンと機械音を発した。間違いじゃない。勘違いでもない。確かにこれはテリアモンなんだ。

僕はずっと不思議だった。何故テリアモンが始めて僕と出会ったときから僕のことを知っていて、無問題という中国の言葉を話すことが出来たのか。僕はそれを理解すること、自分を納得させられる説明をすることができなかった。でも今この瞬間ならなんとなく分かる、気がする。

テリアモンが向こうの世界にいるときにテリアモンは僕からはパワーアップのカードのデータしか受け取っていなかったはず。でもテリアモンはこちらの世界に出てきて直に僕を認識した。

きっとテリアモンは向こうの世界にいながら何となく、プレイヤーである僕の存在を何となく、感じていたんだと思う。

僕はそんなに色んなことを人に伝えるって事が得意じゃないから普段はそんなに喋ったりとかはしなかった。でもゲームをやるときはもっと自分に拘ってるから「行くんだ」とか「倒せ」とか「無問題」とかよく言っていた、多分そうだ。いや、きっとそうだ。だからテリアモンはその言葉を分かっていたんだ。

テリアモンは自分を認識してる僕という存在を感じながら生きていて、だからきっと僕を選んでこの世界に現れてくれた。そのときのカードリーダーは今デジヴァイスという形で僕の手元にある。ブルーカードをスラッシュすることでテリアモンはリアライズした。となれば僕がすることは一つだ。

いつでも持ち歩いているカードケースからカードを取り出した。
僕はこうやって何時でも君に会う準備をしてる。


「カードスラッシュ!ブルーカード!」





 デジヴァイスの溝をカードがスラッシュされてゆく。カードをスラッシュしているのは僕、だけどなんだかカードが意思をもって自分でスラッシュしていっている気がした。眩いスラッシュの光がカードから、デジヴァイスから放たれた。

カードスラッシュの光に包まれて極普通のデジモンカードは青いプリズム仕様のカードに姿を変えた。このカードが何度も僕達を救ってくれた。でもこのカードを生み出したのは僕達自身なんだ。

デジヴァイス放たれた光が飛んでいった。それが向かう先に何が在るのか僕にはもう分かっていた。デジヴァイスは揺らぐことなく光の向かった方向へ矢印を示していた。

三度テリアモンの声が聞こえた。ついていくよ何処へだって。君と皆と一緒に居られるなら。僕は走った。

啓人みたいにいつも一緒に居たいっていう訳でも自分は自分相手は相手っていう留姫みたいな訳でもなく、僕らは一緒に居るのが当たり前って関係じゃなかった。

でもいつも一緒にいたいと思ってそれがどんなに幸せか分かっていた。君は最高のトモダチ。きっとこれから出会う誰よりもずっと。僕等はまだ君達に会えない。今はまだ。だからそれまで待っていて、僕は僕に出来ることをするから。

新宿中央公園の寒さでホームレスが他の場所に移った滝前の広場の階段にただ一人で佇んでいた。茶色のダッフルコートを着た小さな背中を丸め寒さに震えながら白い息を吐いていた。


「留姫、…やっと見つけた」

思っていたよりも僕が声をかけたことに対する反応は薄かった。それでも驚いてはいるらしくて体は前に少しだけ逃げる素振りを見せて細めた眼をこっちに向けてきた。


「探さなくていいって、言ったじゃん」


辺りには白い影がちらほらと舞い始めていた。





私、なにやってんだろ。

勝手にあっちこっち行ってみんなを振り回して、心配掛けて、オマケに私を探してくれた健に探さなくて良い、とか言っちゃって。馬鹿みたい、っていうか馬鹿、だよね。

本当は怖いくせに何も言えない。誰よりも寂しいって自分で分かってるのにただ黙って震えてるだけ。布団の中で歯をカタカタ鳴らしてるだけ。

言い訳ばっかりで誤魔化して、自分は強い人間だって思い込もうとする。本当はすっっっっっっごく、メチャクチャ~~~~~に、弱い人間なのに。


「心配したんだよ、留姫」


私を見つけてくれた健は安堵と同時に悲しそうな顔もしてた。やめてよ、あんたの所為じゃないってば。全部私が勝手にやったこと。お願い、だからそんな顔しないでって言ってるじゃん。……

言っては、ないけど。


「ん?…あ、博和か」


なんだか聞き覚えのあんまりない着メロが鳴って健は博和からきたっぽい電話に出た。耳の奥がなんかざわざわしてて小声の健の低い声が何を言っているのかよく聞こえなかった。


「皆心配してるよ。留姫、帰ろう」

「えっ…あ、――――――ぅ…」


携帯を閉じて健はちょっと笑ったみたいな顔で私に言ってきた。でも言いたい言葉がなかなか出てこない。有り難う、ごめんなさい、寒い、つかれた、おぶってけ。多分それは喉がいがらっぽいからなんだと思う、寒くて口が凍りつきそうだからなんだと思う。


「大丈夫?歩ける?」

「子供扱いしないで!それに帰るとも言ってない!」


私は差し伸べられた手を思いっきり振り払った。こんなひどいことをしていてよく子供じゃないなんて言えるよね私。ただ単に優しくしてくれてるだけじゃない。何がいけないのよ、馬鹿じゃないの?


「ゴメン…どうも僕は気を遣ったりとかってあんまり出来なくて。こうやって小春とかもよく傷つけてしまったりする」

「謝んなくて、いい」

「え?――――――」

「悪いのは、私。そのぐらいは流石に、分かる。だから…ゴメン」

「うん、ゴメン」

「だから謝んなくていいってば」

「あぁ、ゴメン」

「だから!」

「ゴ…」

「もういい、ストップ!」


馬鹿みたいな言い合いを制して私はうなだれて溜息を付いた。気分はもう既に最悪なのにこんな阿呆臭いことなんかやってられない。自分で脈絡ないのは分かってる。だから最悪だって思ってるんじゃない。

けど今度は強引に話を止めた所為で健も私も黙りこくった。失敗したななんて思ってみても意味ないし、だいたいそもそもこの状況事態が失敗なんだからってどうにか話題を探ってみたけど何も浮かばなかった。でもよく考えると別になにか話をしなきゃいけないって訳でもないことに気付いた。

そもそも何よこの空気。探してたとか言ってたくせにその後どうするか特に何も考えてなかったんじゃない。そういう無計画なのが許せない。でも健が此処に来たのは私が原因なんだからそういう考えってのもちょっと健に悪いかなっても思ったり。あぁもう余計なこと考えさせないでよ。


「じゃ、もう帰ろうか」

「なんでそう!――――」


色々考えすぎた所為で頭がぐらぐらする感じを引き摺りながら立ち上がろうとした私はそのままその頭のぐらぐらに引っ張られて意識とは全然別の方向に倒れていった。

時々私は其処が何処だか分からない深く暗い闇の中に放り込まれたみたいな気分になることがあった。そこは完全に暗闇って訳じゃなくてちょっとだけ自分の輪郭が見えて、ふと上を向くと真っ白な、ううん、色がわかんない位に眩しい光が、何て言っていいか分かんないけど多分浮かんでる感じ。

やっぱり説明できないけどとにかく光が浮かんでる。見方によればそれは希望って風に見えるかも、なんだけどでも私にはちっともそうは見えない。ただ遠くで私に気付かないふりをして笑ってるだけの意地悪なもの。どうあがいても私じゃ触れることもできやしない。

寂しくたって私には輪郭があるから光にも届かなければ闇にも解けることが出来ない。気付けば声も出せないまま独りぼっち。

指先のジワジワがざわざわブルブルに変わりながら私の全身をゆっくりとした歩みで抜けていく。自分の体が在って全体的に左側に傾いていてそれを何かで支えているのが分かった。開いてるはずの目からは何も情報が流れてこなくて砂嵐の景色の中になんとか自分のことを認識してる。力がはいらない。入っているかも分かんない。

怖くはない。気持ち悪さもすっと無くなった。頭もなんかすっきりした。代わりになんだか色々なものが失くなった気がした。







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駅を一つ跨ぐだけで新宿って街並みはがらっと変わっちゃう。寒い空の下で立ちはだかる色んな種類のビルの群れが僕らの住んでいる街とは別の世界とでも言いたそうな顔をして僕らを見下ろしていた。人々は皆そんなビルに見向きもしないで早足に歩いていた。

都会の人はせかせか歩くと聞いたことがあった。僕は自分でそのことがよく分からなかったんだけど、今ならその理由がなんとなく分かる気がした。西新宿の高層ビルはここよりも高く聳えるものがあるけど、それとはまた違う、威圧感、じゃないのかなそんなものを感じる気がした。

デジタルワールドはこんなような小さな世界を繋げて出来てた。荒野の物理レイヤーにいくつも繋がって、そして空にはリアルワールド球が見えていた。今はもう街と街の間にある見えない壁よりも、世界を東と西に分けてしまったどっかの国の、ベルリンの壁よりももっと強くて硬い壁に遮られて行き来が出来なくなってしまったけれど。

僕達が留姫を探し始めてからもう既に二時間が経っていた。考えられるところは一応全て探してみたつもりだけれど、僕らが始めて出会った新宿中央公園でも、色んな戦いの会った新宿駅近くでも、留姫を見つけることが出来なかった。健の方でもまだ見けられてないらしいし。

同じ出来事でも、同じ境遇でも、同じテイマーズの仲間でも、物事の理解し方や受け止め方は違うって最近の健はよく呟いてた。健は価値観の違いってものを大事にしてて、だから今それを聞いて僕が思うのは留姫の心の変化を読み取ることは難しいし単純に理解したつもりになるのもよくないって健が考えているんじゃないかなってこと。

そういう風に健が言うってことは多分、僕等は分かり合えないんだってことを言って諦めてるんじゃなくて、もっと分かり合いたいって意思を持っているからなんだと思う。そういうのは、なんか健らしくていいことなんだろうな、って思うけど。けど、だけど今は…。

一人で何処かへ行っちゃった留姫。それを自分だけで探したいって言った健。僕には留姫だけじゃなくて健も凄く思い詰めてるんじゃないか感じられる。僕はそれをあんまり良いことだとは思えない。でもそれをうまく説明できるほど健みたいに色んなことを知ってるわけじゃない。僕が考えられるくらいの単純なことじゃないかも知んない。

でもやっぱり二人の為に、それに留姫の家の人の為にもやれるだけのことはしてあげたいしさせて欲しい。僕も同じような立場だからそういう言い方ってのはオカシいかもしれないけど。

冷たい風が顔を引っ掻くみたいに通り抜けた。思っていた以上の風の冷たさに思わず体が震える。小春日が午前中だけっていう天気予報に僕は納得した。

いつの間にか空は曇り吐く息は白さを増していて寒々しい空気は街中を埋め尽くしていた。流れていく人はもっと早足になって凍りついた水溜りは踏み潰されて罅が入っていた。僕はそれをもっと踏み潰した。靴の底のゴムが冷水で濡れた。

五時間目に抜け出してきたからもうとっくに授業は終わってるはず。健はあんまり人を巻き込むのはしたくないって思っているみたいだけれど、今はそれよりも留姫のほうを大事にしたほうがいいと思う。

こんなに寒い中にずっといたら風邪引いちゃうだろうし、見つけるのが遅くなって留姫の家の人や、僕達のお父さんやお母さんを心配させるのもよくない。それに健だって今色々やってて疲れているのに無理してる。

博和、健太ならきっと一緒に留姫を探してくれる。健が言うにはさっきだって事情も知らないのに助けてくれていたらしいし。でも僕はそれを聞いても驚かない。ああ見えて博和も健太も結構友達思いだから。

僕はもう一ついい事を思いついた。二人に連絡するのに一度家に帰らなきゃいけないし、ついでに色々と準備していける。健が僕で無いように僕は健じゃない。僕にもすべきこととかした方がいいこととかできることとか、色々ある。

僕は強くない、でもそれでいいんだ今はきっと。だから今出来ることをしたい。僕は来た道を真っ直ぐに引き帰した。




レナモンが向こうの世界へ行ってしまってから、私は随分スカスカした心を引き摺ってた。女々しいって言われるのは結構、嫌なんだけど、言われると多分否定、できない。それが情けない。

お祖母ちゃんのそのまたお祖母ちゃんの時からずっとあそこに在った私の家の縁側から庭を眺める時間が増えた。意味なく庭を歩き回ったりもした。廊下の奥に名前を呼びかけてみたり、なんか反応しないかなってデジヴァイスとずっとにらめっこしたりもしてた。だって、レナモンがまだ私の側にいるような気がするんだもん…。

もちろんそれが何の意味も成さないってことくらい分かってる。分かってるわよ、でもさ、だからって止められる訳ないよ。レナモンがここにいない事を認めることなんてできない。まだ私はレナモンがいなくならなきゃいけない理由、納得したわけじゃない。なんで私達頑張ったのに離れ離れにならなきゃいけなかったのよ。

そう…思ってた。でも全然違ってた。分かってたのに自分に嘘ついてた。私はただ独りでいるのが怖かっただけ。そのことに最近気が付いた。漸くって言い換えてもいいかも知んない。うん、漸く気が付けた。

レナモンに出会う前と後と、啓人達に出会ってからもう少しくらいまでは私は今よりもずっと寂しい人間だった。友達も正直いたかどうかも分かんなくて、少なくとも楽しい気分で誰かと会話したことなんて無かった。

それでも私的には寂しかったり悲しかったりっていう感情を抱いたことはなかった。それは私の心が乾いて凍って固まって何も受け付けなかったから。

今はその逆、健も啓人も博和健太も樹莉も小春もあの「爽やか光線」も一応、皆がいて凄く安心できる空間がある。けど、とっても寂しくて悲しい。苦しい。胸の奥がグルグルして気持ち悪くて、熱くて寒気がして目も乾いて口の中がカラカラで、喉がチクチクして指先がチリチリする。

一人じゃない方が寂しいって変だけど、多分こういうのが本当の孤独、なんだと思う。そう思うのは孤独じゃないってことがわかるからなのかな。

―――――何かそんな変なことばっか考えてる。

浮き輪から空気を抜いたみたいな音がして八両編成の巨大なモンスターが幾つも大きな口を開けて私達を飲み込んだ。通勤ラッシュの時間はとっくに過ぎてて今はその三分の一くらいしかお腹の満たされてないモンスターの危うくいけ好かない制服姿の高校生ぐらいの人間に取られそうになった座席に腰を下ろして張り詰めていた空気を口から出した。

座席にあぶれた人々が面倒臭そうに入り口の反対側のドアの辺りにたむろってここで喋るには大きすぎる声でぺちゃくちゃし始めた。そしてシルバーシートに座ろうとする若い人は一人もいなかった。あんまりどうでもいいことだけど。

プラットホームが寒かった分、車内に入った瞬間が少し暑く感じて、でも私は身震いをして靴を脱いで椅子の上に体育座りをして、着込んだ茶色のダッフルをもっと体に引き寄せるみたく抱きかかえた。僅かに背筋に寒気が走ったから背もたれに強く背中を押し付けた。十二個の繋がれた鉄のモンスターが上下にうねりながら進んでく。

窓の外を見ると、青かった空はすっかり白んでどこか私を見放すようなすっきりとした白で感情を埋め尽くし、右へ右へと流れ始めた景色は私だけを其処へ取り残し置いてけぼりにしていた。

もう十分に分かっていたはずなのに、世界が改めて私に独りぼっちだという事を認識させる。もう放っといてくれたっていいのに。構わないでいてくれたっていいのに。

レナモンも私も、お互いが凄く大切な存在だった。そう思えるまでには随分と時間を使っちゃったけど。でも気付けた時には、私にもこんな風な気持ちに慣れるんだって事が分かって凄く、とっても嬉しかった。

お互いがお互いを思い遣る、胸の置くがほわって暖かくなる気持ち。カードを使うのも、戦うのも、合図を送るのも、それを受け取るのも、心配するのも、守るのも、時には八つ当たりをしちゃったりするのも、困ったりするのも、優しくするのも、近くに居るのだって、遠くに居るのだって、そうした末に一つの体に成る事が出来たのだって、全部全部お互いを思い遣る気持ちが生み出しているんだって思う。

ちょっと偉そうに言い過ぎカモ、なんだけど、そういうのも共有したかった。してたかったよ。ねぇ、レナモンもそうだよねそう言ってくれるよね。なんてさ、馬鹿みたい。でももう会えないなんて納得したくないよ。会いたいよ、レナモン。

携帯が声も出さずに震える声に驚いて足を椅子の下にすべり落とした。車内の空調の一部だと思う脹脛目掛けて吹き出る温風が足元だけを絡みつくように暖めて私は身震いした。 もうちょっと静かに知らせてくれないかなとか思いながら鞄の外ポケットの中を探った。

ディスプレイには手紙のマークが表示されていて、見るとそれは健からのメールだった。

これで八通目。電話なんか二十一回にも及んでる。ああ見えて健は結構しつこいんだから。

駄目だよ、私になんか構ってちゃ。これは私が勝手にやってること。だから他の人に惑掛けるなんてことしたくない。心配してくるってのは嬉しい…かも、だけどでもやっぱ駄目だよ。ってかやだよ。そんなのやだ。

誰かが私を心配したって私のことなんて分かる訳ないっていうかさ、救われるってことないし。私だけ皆と違う。学校も違う、環境も違う、持っていたものも無くしたものも違う。皆とは別の世界観を持ってる。だから友情ごっことかそういうのは嫌い。中途半端に付き合うくらいならいっそ突き放すとか離れるとかして欲しい。

だってそうじゃなきゃ後で傷つくのは私なのよ?向こうはそれでいいのかも知んないけどさ、どうせそれにも気付かないような馬鹿ばかかりでしょ。だから自分のことは自分でやる。よけいなことあんまり考えさせないでよね、頭痛くなってきたじゃない。

また携帯が震え始めた。これが携帯が意思を持って寒がっているだけだったら凄く笑えるのに。なんて阿呆なこと考えてる時でもないよね。そろそろおかしくなってるかも。ともかく今のは健からのメールだ。


「んあっ」


どうせ同じ内容でしょって思って見るのも面倒で消去しようとしたけど、押し間違えて指定保護にした。


「あぁ、もう!」


何なのよ全くって思いながら保護を解除してもう一度消そうとしたのに、どんだけ頭が馬鹿になってるのか、全く同じ手順でまたミスった。自分の馬鹿さかげんに悶えて、結果やる気が失せて保護の解除だけして消すのを諦めた。


「メールもしつこくなってんだから」


軽く苦笑いしながら呟いた。そのしつこさに免じてこのメールだけは見てあげるわ。私は表示の項で決定ボタンを押した。


『留姫のことだからきっと一人で全部、って思っているのかもしれないけど、本当はそうじゃないと僕は思うんだ。留姫なら分かるよね。見つけて欲しくなったら連絡して。それまでずっと探しているから』


何かちょっと、くるものがあった。寒さとは違う鳥肌がたって、唇を噛み締めた。顔文字も絵文字も無い飾りないストレートなメールの打ち方がなんか健が喋っているみたいに見えた。レナモンと同じだ。いつも私に近づいて来ようとしてくれてる。私はそれを受け入れる状態をつくれてないんだけど。

私はもっとぎゅっと強く身体を丸め込んだ。大事なものを抱きしめるみたくして。携帯の画面を何度も見つめた。勿論書いてある内容が変わったら怪奇現象なんだけど、それでもなんでか何度も確認した。勿論書いてある内容が変わったら怪奇現象なんだけど。

言葉なんて曖昧なもんって私は思ってる。そういう意識が私の心の奥の、奥の、奥の、そのまたもっと奥にはある。いつか約束したことも人間は平気で破る。なんか今おんなじこと二、三回考えた。頭、回ってないなぁ。

どこかで見ているんじゃないのかって思うくらい私は健に見抜かれてた。周りを見渡してみてもビルの起伏とお互いによそよそしい人々しかここにはない。私は小さく自嘲気味に笑った。自分のしてることが下らない。

押し付けがましい声の車内アナウンスが響いた。次はもう降りる駅。私はこれを降りて私のやるべきことをする。…でもそれが本当にやるべきことなの?そもそも何をするために私はここへ来たの?何でここに…そうだ、レナモンを、ううん違う、そうじゃない。ニュースを、デジモンのニュースを見たから。それでレナモンの姿を――――――。

私はレナモンが、皆が向こうへ帰らなくちゃいけなかったなんて認めない。だから私はレナモンを探すためにここまで来た…?ううん、それも違う。嘘ついてる。

アンタはただ寂しいだけ。それを誤魔化すためにレナモンを、というかそのことを利用しようとしてるだけ。そうでしょ。レナモンはここにいないってちゃんと心の奥では意識してる。だから他に頼ろうとしているのよ。全く、馬鹿の極みよね。他って何に頼るの?おばあちゃん?ママ?それとも…お父さん?バッカみたい。

扉が開いた。ここはもう降りる駅。でも今降りて何をするの?逃げてばっかりで何が出来たの?これから何が出来るの?何も出来てないでしょ。違う?違くないじゃないのよ。




違うよ。私だって守ってきたものがあるもん。

誤魔化さないでよ。ただ怖いだけでしょ。

怖くない!怖くなんか…

ほら、また強がってる。

強がってなんか、ない。

そんなの意味ないのに。

意味あるとかないとかそんなんじゃない。

自分の中を見られたくなくて言ってるんでしょ?

違うってば!

認めて良いんだよ。全部。分かってるんでしょ?

認めない、認めない、認めない、認めない、認めない。

認めなさいよ。

認めない!

間違ってるのはアンタだってば。ほら皆行っちゃうよ?いいの?取り残されても。

良く、なんかないよ。でもね、でもさ…

でもやっぱり違うよ。




『私はアンタ達とは違う。だから分かりあえない、きっと』


指が勝手に動いた。どっちの私が打ったのか、暖房の効いた電車の中で私の指だけが冷えて感覚を失ってた。扉が閉まった。人が街に流れていき、街が景色の後ろへ流されていく。山手線はそのまま線路の上を回って新宿へと向かっていった。私はそこに取り残されていた。









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さがとか書いて先に永井先生がうかんだわしはニコ厨。もといニコ坊。

んで何が悲しい性なんだかってと、妙に相手の言葉の先読み、深読みをしてしまうこと。相手の意図した事以上の意味を読み取ろうとしてしまう。ついつい。まぁ昔からの経験による防衛策な訳だが、実のところ相手を傷付けるか自己嫌悪に陥るかのどっちかで大した意味はない。精々相手が自分を裏切るかどうか図れるくらいで、日常的にそんなもんはかってるのも糞と。自重、もといじじゅうしろと。

まぁ元々人間の発する言葉には一つの意味しかない言葉でもその裏に色々意味があるもんで、例えば感情とか思惑とかがある。泣きながら訴える言葉はそれを理解して欲しい意図とかがあったりするし、怒りながら言ってたらこれは単純に二度とそういう事をやるなと。

で、わしのばあいはその感情とかが見えなくても奥を想像すること。不思議な事に日本人の使う言葉はその奥に隠している感情も時折見せる事がある。ただ、普通は奥の感情なんて隠してるもんだからみんな気付く筈もないよな。わしも気付くなんて能力はないので、ただ想像しているだけなんだが。

邪推はいかん、とわかってはいるんだがなぁ…単にムっとくる幅が広くありすぎるだけなんだろか?喘息大変だねとか言われるのも言い方によっちゃむかつく。なんとなくそれに対する本当に感じてる(ような)ことを見る気がして、ああ、一応言っただけか、とか思ったりする。

そんなこんなで、深読みするくせに自分の事に関してはそれほど鋭くないというか鈍い。逆に妙に他人の事に関しては的中率が上がる。

まぁそれはあくまである程度以上の付き合いがその人間達とあって、どういう事でどういう事を感じるかを一部でも知ってる場合なんだが、誰かが何かを言った時にふと今あいつちょっとむかついたな、とか思うときがある。

こいつこの話はされたくないのか、とか。これは誤魔化したいんだなとか。これが進行すると、誰と誰が付き合うかまで分かる時がある。誰が誰を好きかとかでなくて、誰と誰が付き合うか。の、割りにいざその人たちが付き合ってたりすると付き合ってる事事態には気付かなかったり。4月にこいつら付き合うなと思って5月に付き合って10月頃に気付くとかあるww

まあ人と付き合う人数が少ないわしなので数多くは分からんが、3組ぐらいガチで的中した事がある。そういう場合は大抵男の方も女の方も好きなので嬉しいがね。よかった、付き合ったかと。でも、大体女の方には惚れかけてたり、実際惚れてたりするので・・・・・・・・な。以外な組み合わせだよなとか付き合うとは思わなかったとか言うけど、わしはそうも思わんかったし。

的中させたところであんま意味はないがなぁ。いらんことばっか当てよる。

時代は物事をストレートに言わない時代だからね、正しい事を当てたとしてもかえって悲しくなる。
どうも、不注意で怪我をしたまいむちゃんです。不注意で怪我をすると、何故あの時もっと注意しなかったと凹みます。注意を忘れた頃に怪我します。くそっ、何故っ、何故指を焼いてしまった・・・煙草が口にくっついてあぶね、と思った事は沢山あったのに・・・家畜!じゃない畜生!


で、母親が姓名判断をやったらしく、ついでにわしの分まで占ってきた。なんでも総画23は良い数字らしい。まぁ占い好きなのでそういうのはネットでしょっちゅうやってるので知ってたが。まぁ実際成功するまでは信じません。物事が上手くいった試しなんかほとんどないわ。

なんでも礼儀正しくて、人徳があって、人の好き嫌いが多くて、誠実で、一つずつ段階を経てゆくタイプで、頭領運で、仕事は出来て、自信過剰気味なんだってさ。社会運、家庭運ともに凶だったのは笑ったwwなるほどと。いや、信じないぞ!

初年運、大吉。中年運、大吉。晩年と全体運、大吉。
嘘つけ。日常こんなない物だらけで何が大吉か。スロ今のところ10万負けの何が大吉か。もうやりません。人のお金でも負けてるのでやりません。とか言ってやっぱり大した数やってなからそろそろ勝てるんじゃないかなぁとか思ったりしてたり。一つところで4万つかってあたりなしってなんだよ。天井バケかよ。

人徳はないですよ。礼儀もそりゃ常識的な部分がなかったら話にならんが。好き嫌いは激しいです。食べ物は全部食べます。誠実以上にずるがしこいが。指示する側はへたくそです。仕事はダメダメです。自信過剰な部分もいくらかあります。

まぁそんなもんです。それに新幹線で言えばこだまタイプって分からん!どれぞ。目的地まで各駅とまるってそんな特性は知りません。新幹線なんかひいじいの薄ら記憶しかない見舞いと修学旅行くらいだわ。

まぁでも新鮮味ない毎日に占いはよくやるまいむちゃんでした。







「…んでよー、そのコンボが決まったときはマジ最高でよぉ。まさにテイマーとしての、実感?なんてのを感じたね」

「その自慢はもう聞いたって」

「違げ、違げー。前に話したやつは別のコンボだろ。今回はなんたって三連だからな、相手の顔の変わりようったらなかったぜ。こりゃ遼さんとやり合える日も近いぜ」

「男子五月蝿いよ。静かに自習してなさいって先生に言われたでしょ」

「お前の声のほうがデケーってのバカ」

「あ、あんたバカって言ったね。ちょっとこっち来なさいよ博和」

「来いって言われたって行く訳ねーだろ」


私のクラスはいつも騒がしいな。博和君はいつも皆怒らせてばっかりだし、健太君も一緒になってはしゃぐし、彩香ちゃんは彩香ちゃんでいっつも無駄だってわかってるのに追い掛け回してたりするし。本当に騒ぐの好きよね。それでまた奈美先生が戻って来た時に関係ない人も皆怒られるのよ。私なんかまじめにプリントやってるだけなのになぁ。本当皆変わらない。何があっても。


「啓人、博和健太をどうにかできんのお前だけだろ。なんとかしろよ」

「えぇ僕!?無理無理、無理だって。ああなったら先生が来るまで終わんないよ。っていうかあの中にあんまり参加したくない、し」


啓人君も情けないなぁ。ここでビシッと「皆静かにしろよ、俺の樹莉に迷惑かけるんじゃない」とか言ってくれればいいのに。…後半は関係ないか。


「皆ぁ~止めなって、先生に怒られるよ~」


嫌々でも結局言うのね。そういうところは啓人君らしいっていうか、変に律儀って言うか、単に人の言うことを断れないって言うか。情けないぞ啓人、もっとしっかりするんだワン。

博和君は啓人君の忠告も聞かないで教室中をあっちこっち逃げ回って面白がって囃し立てるみたいに悪口を皆にたくさん言う。皆はもう誰が誰だかわからないくらいに博和君を追っかけまわしている。ここで先生が突然入ってきたらみんなすごくびっくりするんだろうなぁ。

ガラッ、と本当に音がしたら教室中の音が急になくなって皆がいっせいのせで息を止めたみたいにその場に固まった。だるまさんがころんだ、みたいに動きを止めた皆は自分が動いたことを指摘されたかどうか確かめるために扉のほうの鬼さんに目を向けた。


「っはぁー、健か驚かすなよ。先生かと思ったじゃんか。ってかどうしたんだ授業中によ」

「あ、そうだよね、ゴメン何も考えてなかった。あぁそうだよなぁ」
なんだかあわてた様子で扉から現れたのは健良君だった。何か凄く緊張した雰囲気で入ってきたなって思ったら、普段のイメージとは合わないなんだか気の抜けた顔で教室中を見回していた。どうしたんだろう。

「そうだ、啓人。ちょっと話があるんだけど大丈夫?」


健良君はまたざわつき始めた教室の端のほうから啓人君を呼んだ。何かを感じたのか啓人君はさっきまでの情けない顔を一変させてするりと机の脇を抜けて健良君と廊下にでた。

ふと、博一君、健太君と目が合った。もうさっきみたいに目が笑っていなかった。なんでか胸がグッとなった。あのときよりもずっと弱い感じだけれど、インプモンが、ううん、ベルゼブモンが私たちに攻撃をしてきた時と同じ胸をつかまれる感じがした。





ポケットの中の振動に気づいて僕は読んでいた本を置いた。なんで携帯なんか学校に持ってきてたのかなと不思議に思ったけど、そういえば鞄の中に入れたままになっていてマナーモードにしたときにポケットに入れて忘れていてのを思い出した。

取り敢えずは取り出して液晶画面を覗く。珍しいことに遼さんからの電話だった。こんな時分に何の用だろう。


「もしもし、お久しぶりです」

『健か、久しぶり。早速で悪いんだけど確認してもらいたいことがある。留姫が学校に行っているかどうか確かめてくれ。理由は後で話す、頼んだ』


僕が電話に出ると遼さんはほとんど何も会話する間も与えてくれずに本当に一方的に話を進めて切ってしまった。それでもその内容はしっかりと聞き取れた。留姫が学校に行っていないような事を言っていたけれど、何故急にそんなことを僕に確認させるのだろうか。

そのこと自体にも遼さんがあれだけあわてた様子だったことも腑に落ちなかった。何となく気になって、というよりそうするより他にすることもないので留姫の携帯の番号を引いた。

言われてみて僕は最近留姫に会ってないことに気付いた。そもそも学校が違うし、趣味も性別も習い事も何から何まで違うのだからお互いに敢えて個人的に会ったり連絡を取ったりしようだなんてしたことはなかった。でも考えたことがない訳じゃない。

皆で連絡を取れたほうがいいのかなって思って、普段は会わない留姫には色々話ておこうかなって電話しようかなとは思った、けど、そうする前にやっぱりいいかなって感じてこれまで連絡はとっていない。

僕らの唯一の共通点はかつて、そして今もデジモンを友達に持ったことのあるテイマーだということだけだ。でもそのことで留姫と会うことなんてほとんどないと思う。お互いにあの頃の事を、そして今の気持ちを思い出してしまうだけだから。多分そうだ。だから今まで僕は連絡を取らないでいたんだ。

呼び出しのコールが途切れた。電話はコールが途切れた後に声が聞こえるまで暫く掛かる。前にコールが途切れた後そのまま電話が切れてしまったことがあるけど、今はその逆で電話が切れない代わりに一向に向こうから声が聞こえなかった。繋がっているのかわからなくて試しに自分から話してみた。


「もしもし留姫…聞こえ、る?」


自分でも可笑しな位慎重な声が出た。なんでか分からないけど変に緊張しているみたいで、もう一度一連の言葉を言い直した。


「もしもし、留姫聞こえる?」

『…何度も言わなくたって聞こえるわよ、なんか用…?』


留姫らしい面倒くさそうな喋り方。だけど最初からトーンが低くて聞き取り難く、語尾の方では何を言っているのか聞こえなかった。何て言うか声に覇気がないような、そんな感じがする。その声は遼さんが急な電話をしてきた事と相俟って何かあったんじゃないのかと僕に連想させた。


「あれ、留姫大丈夫?なんかいつもと調子違うみたいだけど」

『アンタが私のいつもを知ってたっけ?」

「ははは、それもそうだねぇ」


いつものきつい言葉に僕は思わず笑ってしまった。あぁ、いつも、は知らないから使っちゃいけないね。そんな僕のことは気にもしないで留姫は続けた。


『ってかそれより…』


何かを言いかけて声が急に途切れた。電波が途切れたにしては妙にぶっつりと途切れるなと思った。


『何の用なのよ』


声が返ってきた。気を取り直して僕は尋ねてみた。


「今遼さんから連絡があって、」

『知らない!』


急に大声を張り上げて、でもどこか力なく留姫は言った。

溜息の混じった気怠るそうな声の理由を尋ねる間も無く留姫は電話を切ってしまった。何となく遼さんが尋ねてきたことの理由が分かる気がした。調子が悪ければ学校にはいないはずだ。

でもそれなら留姫が家にいないというのもおかしい。留姫との電話の最中やけに雑音が多かった、特に、車の走る音が。多分何処か屋外に留姫はいるんだと思う。それを確かめる前に切られてしまった。全く、何時でも我が儘なんだから。

二度三度続けて電話をしてみたけれど、電話は通じないで、最終的には電源を切られたみたいだった。些かの後味の悪さと胸の苦しさを憶えながらも取り敢えずは当初の目的を果たすことができた僕は遼さんに電話をかけ直す事にした。色々と確認したことはいっぱいあった。

アドレス帳から開いて遼さん電話したときに何度か押し間違えた。手が震えていた。多分焦っているんだ。留姫があんな風な態度を取るときは大体どういう時だか知っているから。

留姫はなまじっか芯の部分が強い子だから人に悩みなんか話さない、全てを自分で受け止めてしまえるんだ。本当だったら溢れてしまう事でさえ。だから僕は怖い、それが溢れてしまった時が。

なのに留姫は人とあまり関わりを持とうとしない。それは自分の強がりを知られたくないからかもしれないし、人と触れ合うのが怖いからなのかもしれない。でもきっとそれは間違ってる。

自分の心を暴かれることはとても怖いことだと思う。皆の中で一歩前に出ることってすごく勇気が必要なことだと思う。けど、それだけだ。たったそれだけのことで楽になれる。心の負担を減らせるんだ。僕は啓人や留姫と出会ってそういうことが分かった気がするんだ。

全てを自分の心の中に仕舞っておくってのは良いことじゃない。表面張力でコップに留まる水だってそれ以上水を入れれば溢れる。どんなに大きなダムだって貯め続ければ決壊する。全てが僕の勝手な予測だとしても今留姫は限りなくそれに近い状態になってると思う。嘘はよく吐くくせに嘘はうまくないんだから。


『健、どうだった』

「あ、はい。えっと取り敢えず学校には行っていないと思います。電話は直ぐ切られちゃいましたけど。後、雑音が、車の音が良くしていたので多分外にいるんだと思います」

『やっぱりか。全く、留姫の奴、悩んでるとかそういう類のことは何も言ってくれないんだから』


電話が思ったよりも早く繋がって出始めに少し狼狽えた。遼さんは僕の電話が来るのをずっと待っていたのだろうか。

話をしている感じでどうやら遼さんが僕と同じ予想をしていたのが分かった。直ぐに留姫への愚痴を溢したけれどそれはなんだか遼さんらしい優しさの響きを感じられた。

幾らか聞きたいことを僕は尋ねた。どうして急に遼さんが留姫のことを聞いたのか、何で僕に頼んだのか何故そんなに僕らのことを心配してくれるのか。でも遼さんは事実だけ述べると後は当たり前だとでもいいたげに「気にするな」としか言わなかった。

僕は、というか僕等は遼さんに出会えて良かったと思う。出会った当初は少し遼さんに対して不審な感じを抱いていたけれど、でも今なら遼さんが何で一つ線を引いたような関係を保っていたのかが分かる、気がする。

遼さんは僕達よりも大人だ。デジタルワールドの知識もある。だからこそ僕たちを同じ位置ではなく、少し後ろから見守ってくれるような形で、それこそ所謂ところの兄貴分、みたいな。

僕自身も小春がいるし、啓人も留姫も博和も健太もそれぞれの考え方や目的があってデジタルワールドへ行ったから、僕が皆をまとめなきゃってずっと思っていた。だから遼さんの 一歩引いた態度とか我の強い感じが理解できなかった。

でもそうじゃなかった。間違っていたのは僕の方だった。無理に皆をまとめる必要なんて本当はなかった。そもそも客観的な意見だけでなく、個人的な見方で僕は話してしまうんだから僕が皆をまとめようってこと自体不自然だし傲慢な考え方だったんだ。現に今だってうまく言葉がまとまっていない気がする。

遼さんは初めからそうなることがわかっていた。だから僕らの中心で先導したりしないで、あくまで僕らと一線を画したところで支援するように僕らを支えてくれていたんだ。遼さんとは実際に接していた時間は短かったけど、でもそういう考えの深さには今更ながらありがたさを感じる。


『健、俺が頼む、ってのもなんか変なんだけど。何しろ俺は九州だからさ、そっちの様子は分からないし側に行ってやることもできない。だから…そのなんだ…』

「無問題(モーマンタイ)、そのつもりです。留姫も遼さんも僕の大切な朋友(パンヤオ)、友達です。だから困っている時は必ず助けになります。中国の人間は義に厚いんです」


僕は遼さんには見えないけれど大丈夫だっていうジェスチュアをした。


『そうか、ははは、悪いな…どうにも俺は駄目だ。何もできないんだよな。いつも話の中心とは離れたところにいるから』


いつも、少なくとも僕の知っている限りの遼さんならあまり言わないようなことを口にした。実際にそういう称号はないけれど、デジモンキングなる遼さんが、いつも何とかしてくれそうな雰囲気を漂わせている遼さんが言うにはあまりに弱腰な口調だった。僕と同じように遼さんもきっと不安なんだろう。


「何も出来ていない、ということはないです。現にこうして留姫のことを伝えてくれたし、戦っていたときも誰よりも前に出ていてくれた」

『そうかい、そう言って貰えると嬉しいな。おっと、先生が来た。校則とか煩い人だからさ、悪いけど一旦切る。頼んだぞ健』

「了解しました」


電話は切れた。そうか、遼さんはデジモン達とも僕等とも一緒には居られないところにいるんだ。僕にはその気持ちは分からないけれど、ならばせめて僕は僕に出来ることをしたいと思う。僕はポケットに携帯を仕舞った。

でもやっぱり思い直してもう一度留姫に電話を入れてみた。携帯からは、ただいま電波の届かない、と聞こえていた。一体どこに行ったんだよ留姫。


「心配ばっかりかけて」


それから少し考えてからメールを送った。メールに気付いて連絡を返してくれるといいなと思いながらもう一度携帯をポケットに仕舞った。僕の中で小さく決心が固まった。

留姫のお母さんにはどうしようかと思った、というかその前にこのことを知っているんだろうか。

そう思って留姫の家に電話をしようかと考えたけれど止めた。留姫の家族がどうなっているのかっていうのはあまりよくは知らないのだけれど、僕らの中の常識ではそれをするのは良くないという判断に至った。

留姫のことを家族の人が知っているのなら知らせる必要はないし、逆に知らないのならば知らないままの方が良い。無駄に騒ぎを広げる必要もないし、僕等は家族に心配を掛け過ぎた。これ以上は心配を掛けるべきじゃないって誰もが分かっている。

知らぬが仏という言葉もある通り、気付かないうちに元通りにしておくことが出来れば問題ない。

肝は据わった。そう難しく考える程のことでもない。ただ僕が僕の役目を果たすだけ。今留姫を探せるのは、助けてあげられるのは僕しかいない。

留姫が何処にいて何処へ向かっているのか全く見当もつかないけれど、チャイムはとっくに鳴っていたけれど、先生は授業を始めていたけれど、何も今すぐ行く必要はないのかも、いっても意味はないのかも知れないけれど、僕は行く。

困っているときに助け合えなくては友達とも仲間とも言えない。お父さんはいつもそう言うんだとお母さんが言っていた。僕もその言葉を言えるような人間でありたい。

手には既に黒い機能性の高い手袋もフリースの安い茶色のマフラーも深緑一色のコートも掴み取っていた。もしかしたら後々お母さんには迷惑を掛けるかも知れない。でもこれが正しいことだと僕は思いたい。僕は席を立った。


「先生すみません。今から風邪をひくのでサボりにしておいてください」


言い訳をするよりかは潔く事実のみを告げようと思ったけれど、あまり言葉が見つからなくて遠回しで半端な言葉が出来上がった。

唖然としている先生を尻目にして一目散に廊下に飛び出た。せめて啓人には知らせておきたい。そう思って六年二組の教室へ飛び込んだ。少しばかり勢いよく扉が開いて大きな音がした。何故かは分からないけどクラス中から強い視線を感じた。時間が止まったみたいに僕のほうを向いて固まっている人が何人もいた。その様子がおかしくてそんなに大きな音をだしたかなと一瞬不安になった。


「っはぁー、健か、驚かすなよ。先生かと思ったじゃねーか。ってかどうした授業中に」


ああ、そういうことか。言われて授業中であったことを思い出した。なんとなく雰囲気から僕が来るまで騒がしくしていんだろうことが分かった。そこにいきなり先生が入ってきたら驚くだろうな。

それが分かったと同時に自分がどんなに間抜けだかということにも気が付いた。ここに先生がいたら早速ここで足止めだ。面倒は後でいくらでもかかっていいから今は時間をとられたくない。そう思っていたくせに直ぐこれだ。

気が昂ぶると見境がなくなるのは僕の悪い癖。そうやって何度も失敗してきたのにまだ懲りていない。いや、駄目だ。そういうことを考えるのも止めよう。今は時間もないし。僕は気を取り直して呼びかけた。


「…あ、そうかゴメン勢い余っちゃって。あ、啓人ちょっと話があるんだけど大丈夫?」


唐突だけれど大丈夫かな。今は先生がいないからいいけれど、もう直ぐにでも来るはずだ。手短にうまく説明できる自信はないけれど今はやるしかない。啓人には悪いけれど取り敢えず外までは着いてきてもらおう。

僕は一人で何でも決断して勝手に行動してしまう。でもそれは啓人達からしたら腹立たしいことかもしれない。何で一人で勝手にとか知らせてくれればとか僕ならそう思う。それを知っていながら自分でしてないのなら意味が無い。だから啓人には知らせておきたいんだ。

でも同時にそう言った時に啓人なら自分も一緒に行くと言い出し兼ねない心配もあった。いや、違う、僕自身がそれを少し期待している、部分もある。

僕はそういう考えで動くのは嫌いだ。後に叱られるのは僕だけでいい。啓人まで巻き込む意味は無い。自分から言うのは憚られるからといってあわよくば手伝ってもらおうだなんてそんな曲がった考えは持ちたくない。けどそれを考えてしまう。

そんな僕の考えは知らずとも、啓人は僕の様子に驚かず静かに机の間を縫ってやってきてくれた。ドアを僅かな時間開け閉てしただけで暖かい空気が僕を取り巻いた。二人で教室をでた。急激に寒くなった気がした。実際温度差は激しい。


「どうしたのさ健」

「李、どうしたんだ」


教室を出たまさにその瞬間に僕は先生に呼び止められた。それもそうだ、サボりますで許す先生がいていい訳も無い。それならどうしよう、やっぱり一度きちんと説明したほうがいいのかな。

いや、駄目だそれは。話自体突拍子も無いものだからそれで納得するわけが無い。なら嘘を…だけどそれは僕としてはあまり好ましくない。後で言い訳にするにしても嘘で誤魔化したくない、何事も。どうすれば、どうしようか。逃げる、という単語が頭に浮かぶ。けれどどうやって。無理やり行くのもどうかと思うし。


「先生、ちょい聞いてくださいよ。女子が寄って集って追っかけてくんスよ。もうどうにかしてくださいよ」

「収拾付かなくて勉強できません」

「なんだお前ら、浅沼先生はどうした」

「今プリント刷ってていねーッス」

「取り敢えずこっちどうにかしてくださいよ」


僕が狼狽している間に博和と健太が教室から出てきた。突然なんだ、と一瞬戸惑ったけど、博和と健太が無理やり先生を教室へ引っ張りこんでいきながら僕に目配せをしたので、助けてくれてるんだと気付いた。僕の様子から事情を察してくれたのか、有難いな。

その行為に感謝しつつ僕はその場を離れるべく廊下を駆け出した。啓人も僕の後についてくる。僕は良い仲間を持ったことに感謝した。





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「健太、博和おはよー」

「啓人おはよう」

「うぉーっす」


いつものように公園には俺、博和、啓人の順番で集まった。先ず始めにランドセルを滑り台の下の高床に放り込んでカードの箱を取り出す。そして自分のデックとカードリーダーを取り出す。それはいつもと同じ。

いつも、か。いつもって言ったってもう五ヶ月も前のことなんだよな、こういう生活をしていたのは。最近はまたなんか慣れてきたけど公園でまたカードで遊べるようになってから暫くはただ懐かしいってことばっかり考えてたもんな。それに五ヶ月前とは何かの変わった感じが、うん、違和感があるんだよな。

変わったことは幾つかだけはっきりとわかる。今は冬だから皆着ているものが冬の洋服になってること。俺達が向こうの世界にいっている間に発売されたブースターⅩⅢのカードがカード箱に新しく入ってきたこと。

楽々入れた滑り台の高床がそれぞれ何センチかずつ狭くなったこと。今はいつでもデジヴァイスをもっていること。あとなんか心持ちも多分変わっている、と思う。

変わっていることははっきりと分かっているのになんで変わったのか、どうして変わったのかがいまいち理解できないみたいな感じがしてるのは多分俺だけじゃない、多分。でも絶対に変わったとは言える。だよねマリンエンジェモン。俺たち変わったよね。


「博和、そういえばペンデュラムどうしたの?」

「あーあ、忘れちまったなそういや」

「あれ、そうなの。結構張り切って先生に見つかっても絶対育てるって言ってたじゃない」


博和は思い出したみたいな顔をして頭を掻いた。それはちょっとだけわざとらしくみえて、啓人は少し口調が強かった。そういえばペンデュラム一度もだしてなかったなぁ。昨日まではあんなになんだかんだ言ってたのに。


「…あーな、そうなんだよな」


博和にしては何だか戸惑って言い難そうな雰囲気だった。なんだろ。


「今日さ、ニュースでデジモン特集があったんだよ。お前ら見たか?」

「見たよ。マッコイさんが出てたやつでしょ」

「僕も見た」


それがどういうことを意味しているのか、俺達にだけは分かる。ただのテレビの特集ってだけじゃないんだ。ちょっと空気が重くなった。それは今でも俺達が皆と別れたって事が心に強く残っていることの証拠になるってこと。


「それでよぉ、今朝ペンデュラム見たらさ、アンドロモンに進化しててよ。ダブルパンチ喰らった気分でさ。ちょっとあれな感じになってさ。ペンデュラムのやつはなーんも悪くないんだけどさ」

「…そっか、なんかゴメン」

「いやいいって。世の中誰が悪いってことも無いってもんよ。母ちゃんもよくそういうしな」

「デジモン達の思うことは皆同じだしね」


結局公園ではそれ以上同じ話題について話すことはなかった。博和の言うとおり誰が悪いわけでもないし、誰かを責めることもできない。みんな一人一人が正面からそれにぶつかるしかない、のかもしれない。ぶつかったからってうまくいくわけじゃないけどそれいがいに何もやることなんてわからないし。

なんか今俺マリンエンジェモンのカード見てない。カードバトルで使ったらなんか泣いちゃうような気するし、カード整理した時に別のところに分けた。本当に何が悪いってこともないんだよね。ただ、俺は凄く悲しくなっちゃう気がするんだ。今でも。


「じゃ、ガッコ行きますか」


博和の提案で少し早いながら俺達は学校へ行くことを決めた。でもやっぱり学校でも俺達デジモンの話ばっかりだったりするんだよな。




「秋山ぁ、なんしとうや」

「たいしたこたしとらんっちゃね」

「じゃったら、黒板見ろ。カードで偉くばなっとも勉強ばできんきゃいかん」


勉強できんからカードで偉くなるとばい。

一年近くも向こうの世界に行っていた俺にとってこちらでの普通の生活はひどく退屈なものだった。ただ別にこの生活が悪いということではない。これが普通だしこれでいいのだと思う。

ましてや俺が、留姫が、健が、啓人が、博和が、健太が、小春が、樹莉が、勇猛果敢なデジモン達が、そして大人たちが命をかけて守ったものだ。それを悪いと言うほど幼くも、おこがましくも無いつもりだ。

ただ、俺の本来の性質から考えるとこういう生活はあまり馴染めないと、そういうだけだ。それでも一応やれるだけの事はして親孝行はしたいと思っている。

一年近くも勝手に失踪したおかげで親父には相当な心配を掛けてしまって、勉強は言うまでも無く遅れ、来年は別の問題で心配を掛けるだろうから、今のうちに心配を掛けないようにはしておきたい。けれど、やっぱりどうにも授業にはあんまり集中できないでなんだか葉の枯れ落ちたイチョウの木ばかりを俺は眺めている。

あの時一瞬、一歩前に出ようとしたのは恐らく俺だけなんだろうな。デジモンとは小春くらいの頃からの付き合い、ってだけじゃない。ある意味俺が一番でジモンに愛着がある。年齢もそこそこいっているくせに、俺が一番デジタルワールドって存在に惹かれているんだろう。

いや、逆に啓人達よりも歳がいっているからこそ、モラトリアムのうちに普通とは違う、普通ではない何かを経験しておきたいのかもしれない。というかなんだかんだ言いつつも根っからのデジモン馬鹿なんだろうな。

…それはサイバードラモンに呼ばれた時から既に判っていたことだが、実際にデジタルワールドへ行き、他のテイマーズ達と会い、久々にこちら側のの世界に還ってきたなと思っていたらデ・リーパーと戦うことになって、そしてサイバードラモンと別れて、それで改めて思い知らされた。俺は戦うことで自分の存在を認識しているんじゃないかって。

小さい頃は型通りの九州男児の親父に似て喧嘩っ早いと言われていたし。デカルトの「我思う故に我在り」とはまた大分違うけれど、まぁ似たようなことなんじゃないかと俺は思う。

健なんかは研究が進めばまたいつか会えるようになるって言っているし、啓人も直ぐにでも会えるみたいに信じているし、留姫は…よく解らないけど、博和や健太や健のところのおチビちゃんもまぁ信じているんではないだろうか。

だが、一方で俺はと言うと、誰かといや、何かと戦っていさえすれば何処からかまたふらっとサイバードラモンが俺をデジタルワールドへ誘うのではないかと勝手に思っている節がある。なったらいいなというかなるんだろうなといった風に。

だから俺は、啓人達ほど強く会いたいと思っている訳ではない。ただ、生きていてくれればそれでいいと思う。雲なんかを眺めながら考えるなんてこともないことさ。


「秋山ぁ、聞いちょるか」

「聞いちょる聞いちょる」

「二つ返事じゃわからなか」


なんばいいよっとや、耳にはいっとーよ。ほんませからしか。

教室中が笑いの渦に巻き込まれた。いつも思うことだけど、笑われる側はそれほど面白いことも無いぜ。でも、俺も向こうに行くまではこんなものだったのかな。寒い日には暖房をつけた温々した教室でくだらないことばかり言って笑っていたのか。

しつこいようだけどそれを悪いとは言わない。土地には土地の生活がある。所が変われば品も変わるし話題も変わる。人間なのだから俺達はそれに順応しなくてはならない。しかし人間も生物、動物なんだ。順応とは別の道、自分の一番落ち着く場所への移住、なんてことも考えられるのではないだろうか。と思うのは少し言い訳じみているだろうか。

サイバードラモン、生きているだろうか。戦う強さだけでなくもっと別の、君の君らしい強さとしての何かを持っている君ならきっと解ると思う。

今そちらでは束縛無き進化が行われているだろう。そうしたらきっと強いデジモン同士が戦ったりすることもあるし、ギルモン達が襲われたりもするだろう。そちらであればパートナーが居なくとも自由に進化できるのかもしれないが、それでもサイバードラモン、俺は君が一番強いと思っている。

君が君の真なる敵を見出すことが出来れば、俺と共に進化したジャスティモンとはまた別の形で究極体に進化できると思う。そうしたら、いや例えそうでなくても、サイバードラモン、きみは皆を守って欲しい。

俺が彼らの兄貴分だったように、君もきっとデジモン達の兄貴代わりみたいなものだと思うから。だから守って欲しい。彼らがまたデジモン達と会えるように、デジモン達が彼等と出会うその日まで。俺が分かれたのは何も君等デジモン達だけじゃないのだから。

それでももし、どうしても俺の力が必要になったら其処から強く呼んでくれ。強く祈ってくれ。いそうしたら今度はきちんと親父に言ってから、壁をすり抜けてでもそちらへ行くよ。デジタルワールドの広大なる物理レイヤーを一年も旅してきた唯一の人間である俺だ、易しくは無くとも不可能ではないはずだ。


「起立っ、気を付け、礼」


授業のリズムに合わせて何処を見るとも無く見て立ち上がり適当な格好で頭を軽く下げた。ドカッと椅子に座って溜め息をつく。全てが心配で全てが退屈だ。だけど俺にはどうしようもない。いつも通りカードで戦うしか俺は俺の存在を示せないのだから。

リュックからデックケースと三百枚入りのカードケースを取り出した。本格思考の奴にはやや少ないようにも思えるカードの枚数だが、俺からすればそんなことは問題ではない。無駄にカードを多く集めるのなら単なるコレクターに過ぎない。それは力の驕りになり得る。

わずかばかりに蓄積された金と、手持ちのなかで選びぬかれたカードがあればいくらでも強いデックは組める。力とは純粋な攻撃力や数値の高さでない。今ある力を生かせられることこそ真に力を持つということだ。それを俺はデジタルワールドで学んだ。

それを忘れぬために、敢えて俺のデックのパートナーデジモンはモノドラモンでありサイバードラモンだ。そしてその教訓を得た俺はそのデックで負けたことは過去に一度も無い。

俺が久しぶりに訪れたカード大会は、随分とテイマーの年齢層が下がり、その中でも強い奴が出てくるようになっていた。けれど、俺を倒せるような強い力と心を持ったテイマーはまだ居ない。唯一見込みがあるのは、サイバードラモンと出会う直前に戦った徹底的に強いあの女の子だけだ。

それでもその女の子も今はもうカードをやらないのではないかと思う。誰よりもパートナーを信頼していた奴だし、それにまだまだ幼い、それも女の子なんだ、そういう意味では誰よりもショックは大きかっただろう。

何の気無く考えながらカードを仕舞って携帯を取り出したら着信履歴に表示された文字に目を引かれた。


「留姫ぃ?」


こげなことが起こんたぁバリ驚きやんな。

起こるべきことは案外まとまって起こるもんか。留姫の事を考えていた俺は開いた口がふさがらないまま着信履歴を長いこと眺めていた。俺には留姫が電話をしてきた理由がさっぱりわからない。なんだ、しかも授業中に電話しているじゃないか。一体どうしたって言うんだ。

電話を返そうと思って発信ボタンに手をかけた瞬間、博多の人間がよくよく五月蝿いことを思い出した。休み時間中に電話のやり取りをする、なんてことをしたらやれ彼女できたのかだの可愛いのかだの聞かれるに決まっている。

そりゃ、留姫は俺の目から見ても可愛いとは思うさ。モデルさんの娘だし、実際留姫と初顔合わせの大会のときもかなり早い段階からファンができていたもんな。

ただ恋愛感情云々と言われるとどうかなってところだな。大人っぽい振りをするくせに案外ガキっぽいこともする。年齢的にもそうだし、啓人や健もそういうもんだと思っているから、俺からすればあいつらは弟、妹みたいなもんかな。とかなんとか考えて見たけど面倒だし取り敢えずトイレ前で電話することに決めた。

発信ボタンを押してコールが耳に聞こえている間にもう少しばかり考えてみた。彼氏彼女…か、留姫の方は俺の事をどう思っているのだろうか。何やってもなかなか認めちゃくれないし嫌いかな、と思うと意外と心配はしてくれているんだよな。だからよく判らない。ま、強くて格好いい鼻につく兄貴ってところかな。自分で言ったら阿呆らしい。

なんだかんだで多分あいつは健の事を好きになる気がする。留姫には悪いが健の方がしっかりしているし、そういう奴の方があいつには合いそうだ。それに俺に何か求められてもデジモンの話しかできないからな。
コールが途切れて一秒半の沈黙が流れた。留守電かなと思ったけれど直ぐに電話口から声が聞こえてきた。


『…もしもし…』


とだけ聞こえた。廊下が騒がしい、そろそろ休み時間が終わる頃か。俺は携帯を握りなおした。


「もしもし留姫、聞こえる?」

『爽やかそうな声なら聞こえる、ケド?…』


憎まれ口は相変わらずか。それはまあ予想していた通りだ。けれど少し声の調子が俺のイメージしていたものと違うような気がした。久々の会話だから覚えていなかっただけなのかもしれないけれど、いつもの留姫、という感じがしない。そもそも、留気から電話をしてきている時点でおかしいのだから。


「君から電話してくるなんて珍しいね、何か―――――」

『一昨日、東京のカードの大会に出たでしょ』


俺の言葉を遮って留姫は俺に聞き返してきた。全くよくわからないなと思いながら取り敢えず返事をした。


「ん、ああ。リーグ優勝者とのエキシビジョンマッチでね。それがどう―――――」

『アンタ、よく飽きずにやってられるわね。私は…もう飽きた』


またも俺を遮っていった。人の話聞いているのかよ。でもこんな感じを何処かで感じた事がある気がする。心なしか留姫の声が遠くに聞こえる。後少しでその答えが導き出せそうだったけど、それより留姫の言った言葉に冷たい汗が毛穴を一気に塞いだ気がした。


「飽き…いや、それより大会がどうしたんだ。君は見かけなかったけど何が―――――」

『エキシビジョンの誘い、私にもあった…』

「ん?留姫?おい留姫!?」


留姫が言ったことの意味を聞こうとして俺はやめた。気持ちは多分わかる。今はデジモンカードを見るのでさえ辛いんだろう。本心で言っているって感じでもなかったし、それを掘り下げてわざわざ傷口に塩を擦り込むような真似をするやつがあるか。俺はその言葉を避け別のことを聞くことにした。

しかし留姫はまた俺の言葉を遮り、そして電話は唐突に途切れた。バッテリーや電波の状況が悪かったということではなく、留姫が自分できったのだと判断が付いた。それならもう一回電話しても無駄だろう。俺の電話なら受け取らないだろうし。

通話していた時間は意外と短かった。携帯には通話料金が二十円と表記されていた。

俺はすぐさまアドレス帳で別の名前を検索した。俺の電話でなきゃいいはずだ。少なくとも一回は電話に出てくれるはずだ。

発信ボタンを押した。コールの一回一回を長く感じる。今の俺が出来ることなんてこのぐらいのことだ。頼むぞ、携帯を学校に持って行っていてくれ。

デジタルワールドで鍛えられた俺の勘は結構当たる。留姫との電話の最中、雑音がやけに入っていたような気がしたのと、受話器から離れて喋っているような細い声と、それを含めて考えてみても。大体の場合嫌な予感の方が当たる可能性が高い。

コールが途切れて今度は直ぐに声が聞こえた。よし、繋がった。あいつがきちんと拘束を守らないタイプの奴でよかった。


『もしもし、お久しぶりです』

「健か、早速で悪いが確認してもらいたい事があるんだ。ゆっくり聞いてくれ。留姫が今何をしているか、俺の名前は出さないで聞いてくれ。理由後で話す、頼んだ」


後日俺が知ったのは、健が携帯を持っていたのは、前日秋葉原に買い物に行った際に鞄にいれておいたのをそのまま忘れただけという全くの偶然だったということだ。









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同時上映してみようかと。どうせQDCも今現在完遂しとるわけでもないし。でもこっちは完成してるから安心してくれ。
ただ、結構長いぞ。冊子にしたら100ページ越えるからな。いや、普通から考えると短いか。








朝起きてごく普通にテレビを点ける。僕にとっては習慣になってるいつもと変わらないこと。でもそこには居ないはずの君たちがいた。ニュースの特集でデジモンのことが取り上げられてたんだ。

今じゃもうデジモン、っていうか賢い、普通の動物じゃない生き物がいるなんてこと、僕等の世界に出てきた事もあった事も本当の事だってみんな分かってる。みんなは自覚ないと思うんだけどね。へへっ。

 僕等の生活は何も変わらない。元のままでとっても普通の状態になった。

 君達は確かにもう此処にはいないんだけど、西新宿や東京のここに近いほかの地域も大分元の通りに戻ってきつつあるんだけど、今でも時々君たちのニュースが流れることがある。そっちには何の関係もない話なんだけど、デジモンって言葉はどうやら今年の流行語大賞に選ばれるみたいで、デジモングッズはいっぱい売れるようになったんだって。

 …で、僕はデジモンがも~っと色んな人に知られて嬉しいって風に思えるようになったけど、それは君達がいないことを改めて思い知らせるようなことでもあったんだ。

 健(ジェン)も本当は寂しいだろうし会いたいと思っているんだろうけど、割り切って考えるようにしてるって言ってる。健太や博和は寧ろ新しいカードが増えたって喜んでるけど。こないだなんか博和にハイアンドロモンのキラを自慢されちゃってさ。

いっつもカードいっぱい持ってるんだもんなぁ。なんてそう考えるとカードを続けてる遼さんも、またデック組みなおしだよとか言ってるような気もするなぁ。でも留姫と加藤さんはどうかな。

 加藤さんは最近良く笑っていて深刻な感じじゃない、んだけど、それが逆に僕にはちょっと変に見えて…どうなのかな、って。そうは言ってもなかなかそういうことを話したりとか出来てないんだけど。

 留姫はカードをもうやらないなんて言っちゃってる。気持ちも性格もずっと一緒に過ごしてきてなんとなく、だけど、分かるからそれも理解できる。女の子だから仕方ないのかもしれないけど、なんて、それを言うと留姫怒るんだけどさ。

 でも僕が一番そういうことに拘ってるかもって思うんだ。アグモンの人形に話しかけたって仕方ないのにさぁ。おかしいかな僕。…でも、まぁいいや。僕が一番また君たちに会えるって信じてるから。あんまり自分で凄いって思えるところもないけど、デジモンは誰よりも好きだって自信持ってる。思い出の場所、君の住んでた新宿中央公園の家、ギルモンホーム。コンクリートで囲まれちゃったけどまた会えるって、思ってる。

 ギルモンっていうデジモン。僕が考えたデジモン。デジノームがそれを本物のデジモンとして生んでくれたデジモン。でも自分で生まれたデジモン。僕のパートナーのデジモン。僕と一緒に遊んだデジモン。僕と一緒に闘ったデジモン。僕と一緒にデジタルワールドに行ったデジモン。

僕と一緒に同じ身体になって進化したデジモン。辛かったり苦しかったり楽しかったり嬉しかったりそういうのを全部一緒に感じたデジモン。他のどのデジモンとも違って、それで、例え他にギルモンって名前のデジモンが生まれたとしても、それとも違って。

僕にとっても皆にとっても、ギルモンにとってもたった一人のデジモン。大切な友達。僕は忘れてないし忘れないよ。僕はデジモンの中で君が一番好きなんだ。

 だから僕は辛くないよ。時々、悲しくはなるけど。でも君を考えたこと、出会えた事、後悔してない。君は嘘でも幻でも思い出でもないんだもの。


「お母さーん、今日公園で遊んでくるから遅くなるねー。お父さーん、ギルモンパン一個貰ってくよ。それじゃぁいってきまーす」





「みっずたまり、みっずたまり、ジャブジャブジャブジャブみっずたまり」

「こら小春(シュウチョン)転んじゃうよ」


 悪天続きの寒い冬に久しぶりに差し込んだ太陽の温かい光が水溜りの中で小春に蹴られて揺れた。初雪は一月初めにはもう降っていたから、同じ年の二月としては珍しく暖かい日だった。ただ、寒がりで低血圧の僕を布団にしがみつかせるだけの寒さはあったけど。

 小春は背中にテリアモンの形をしたリュック―――実は裏返すとテリアモンとは少し違うロップモンの姿になるリバーシブルの凝った作りになっている―――を背負っている。お母さんが、夜なべはしないで、っていうかしてても分からないけど、縫ってくれたものだ。

小春もそれを気に入っていて、最近では専ら朝は僕にランドセルを持たせてそれを背負って学校に行ってる。そろそろランドセルの中身も増えて結構重くなってくるころなんだけれども、まあそれでもいい。もう暫くは小春が元気であってくれることの方が大事だし、身体の鍛錬にもなる。それに本物のテリアモンが肩に乗ってる時のほうが重かったりするし。


「わはははは、プチツイスター」


 小春は両手を広げてくるくる回り始めた。羽織ったコートがひらひら揺れる。晴れの日が嬉しいのもわかるけれど、そろそろ周りの人の迷惑にもなるかもしれない。


「小春、もうおしまい」

「えー、終わっちゃうの?」

「甘えても駄目だよ。転んだり他の人の迷惑になったりしたらいけないからね」


 小春を脇に抱えてやんわり叱りながら運ぶ。十メートル程運んでから重くて効率が悪いことに気付いて小春を降ろした。別の方法を取ろうとした僕はいつのまにかいつも通りの苦笑いを浮かべていた。少し頭を掻いた。しゃがんで小春の視線に顔を合わせる。


「今日はね」


 軽く空を見上げた。すっきりとした空気が顔を撫でる。


「小春の日なんだよ。意味分かるかな?」

「そうなの?何で?」


 小春が興味を持ってくれたことに安心した。僕はお父さんや連杰(リンチェイ)兄さんや嘉玲(ジャアリン)姉さんみたいに、なんかこう、気の利いた、みたいな、そんなうまいことが言えるような才能は持ってない。

喋ることはどっちかって言うと苦手なほうで、小春にはいっつも叱ってばかりになってしまう。けれど、少しはそういう事が出来る、そんな人間になりたい。兄としてできることが見ていることと叱ることでは情けない。


「あのね、こういう冬なのに暖かい日のことを小春日和って言うんだ」


 正面から小春の目を覗き込む。小春が後ろめたいことの何もない人にしか出来ないような目で僕の目を見返してきた。


「小春、つまりシュウチョンと同じ字だ。こういう日はみんなでお日様に感謝する。だから、小春も皆に感謝されるようにならないとね」

「ふ~ん、うん。分かった。小春は皆に感謝されるように静かに道路の右側を歩きます」


 ちょっと首を傾げてからいつも授業中そうしているだろうように高く手を上げて理解してくれたことを示した。小春は忍び歩きをするみたいに大げさにソロソロと歩き始めた。何もそこまでする必要はないんだけどな。でも僕は振り向いた悪戯っ子に出来る限りで満面の笑みを浮かべた。

 今日は本当に太陽が綺麗だ。午後は少し天気が崩れるっていうのが信じられないくらい。

 電脳世界(デジタルワールド)は今日、当に今晴れているんだろうか。晴れていてくれるといいな。テリアモンにもロップモンにも小春を眺めているんだって感じて欲しい。テリアモンならきっと小春日和って言葉を知っていると思う。誰よりも人間らしい言葉を使うデジモンだったから。

 不意に悲しい気持ちが込み上げてきた。フジ系列の番組でデジモン特集を組んでいたから、なんだろうか。テレビでお父さん達ワイルドバンチの面々が電脳世界と現実世界(リアルワールド)の境界線は守られた。この世界はもう安全です。と言う度にお父さん達を恨む気持ちが強くなる。誰が悪いわけでもないはずなのに。

 テリアモンがもう此方側には来られないんだろうかと思ってしまうことが怖い。テリアモンと二度と会えないなんて思いたくない。会えないままで大丈夫でありたくもない。会えることを信じられないと嘆きたくもない。お父さん達が今研究している新しい箱舟(アーク)を完成させるよりも前に、今直ぐにでも。僕は只―――。


「健兄ちゃんおいてきますよ~」


 小春が僕のことを呼んでいた。既に少し遠くまで行っていた。いけないな。僕は誰よりもしっかりしていようと決めたんだ。僕はワイルドバンチのTAOの息子だ。一番デジモン研究に近いところに居るんだ。

 だから、だから僕が信じていさえすれば皆も安心して信じていられるはず。僕が弱音を吐いてはいけない。臆病という言葉を慎重という言葉に置き換えて逃げていても、それだけはしてはいけないことだ、と僕は思う。


「ごめん、今行くよ」


 僕が臆病なら今はそれでいい。焦ったり事を急いたりするのは僕の役目じゃない。テリアモンは進化すると攻撃的だったし、僕も、僕自身の中にいるもう一人の僕、みたいなものが攻撃的な面を持っていたから、忘れがちになってしまうけれど、僕らはいつ皆のサポートに回っていたんだ。後ろで皆を支える役目を持っていたんだ。そうしてきたつもりだし、そうだと思いたい。

 だからテリアモンが居なくなってしまった今でも僕はその役目を担い続けるんだ。それがきっと君に会う一番の近道なんじゃないかという気がする。


「こら小春、回るなぁ」





 くぅー。手に入れたぜ、インペリアルドラモンパラディンモード。あぁっと、パラディンフォーム?だったっけな。あれ雑誌によって呼び方が違うから混乱すんだよな。あぁ、モードであってるわ。

いやしかしこれでまた啓人達に自慢できるぜ。何しろ俺っ様の自慢はカードの種類の多さだもんな。ちょいそれしか自慢んなんねーってぇと格好つかねーけどさ。

しゃーねーじゃん?俺は啓人みたいにデジモンの絵は描けないし、健太に比べたら成績は結構低いし、健みてーに色々知ってたりする訳でもねーし、加藤の様にパペットが縫えないし―――とそれは別に羨ましかねーけど―――留姫とカードバトルしたら一回も勝てないだろーし―――っつーかあのコンボはやべぇよマジでさ―――遼さんみたいに爽やかにキメられる訳でもねーんだよ。

それでも運だけはなかなかのもんでな。デジモンの映画のDVD買ったときも俺オメガモンのカード当たったしよ、啓人達と一緒にカード買いに行ったら必ず俺が一番良いの当たるし、それよりもすげーのはさ、遼さんも持ってないハクキラのカード、あぁ箔押しキラのカードを持ってるってことだよ。

そんで「お前凄いな」とか感心されたときはもう最っ高だったね。デジタルワールド行きゃ念願のテイマーに成れるし、運だけはマジで強ぇぜ。


「うぉーっす、健太。また新しいカード、手にいれたぜ」

「おはよ。なんだよカード買いにいったんなら俺も誘ってくれよ。で何当たったの?」

「交換は絶対してやんねーかんな」

「うわっ、凄いなぁお前。パラディンじゃん!欲しいなこれ、うわ、凄い。攻撃力820だ、効果もこれきついな使われたら。超羨ましい」

「おい、スリーブ二重にしてあっけどあんまり触んなよ。激レアものなんだから。あぁよるなって」

「もっと見せろよ。腹立つないいカード当たったからって。この間三百円貸して当たったカード返してもらうぞ」

「金なら返したろ」

「お金はいらないよ」

「金が戻ってくるんなら別にいいぜ。どうせ同じのもう一枚あるから」

「それ凄いムカツク発言だぞ」


カードが当たらないからってひがんじゃってまー怖いこと怖いこと。…しかしまぁよくこんな毎日に戻れたもんだよな、実際。カード買って、バトルして、ペンデュラム育てて、ゲームやって、気が付きゃ遊んでばかりだなこりゃ。ま、それが子供の仕事ってやつよ。とにかく前と同じ風に過ごす事ができるようになったってのが、凄ぇ。

今更だけど、俺たちそんなすげーことしてたんだよな。我ながら感心するね。ま、啓人達はともかく俺がそんなことをしていたってーのはそんなに皆に知られてねーけど。

てぇなるとガードロモン、元気でやってっかなー。あいつがいなくなってからこっちの空がやけに青く感じられるんだよな。ふーんむ、センチメンタルっつーのかね。特に冬は空気が乾いてっからな、今日も富士山が良く見えるぜ、ビルの隙間に…ほらな、見えた。


「博和何やってんの?」

「今日は富士山見えるぜ」

「ふーん。俺にはよく見えないけど」


デジタルワールドには富士山みてーな山はあんのかな。向こうじゃ世界一高い山ってこったからな。ムゲンマウンテンか?ありゃぁファイル島で一番高い山か、んじゃ違うな。っつーか大体本物のデジタルワールドにファイル島はあんのかよ。ないのか?いや、やっぱ探したら見つかるかな。

いつ思い出してもデジタルワールドは凄い世界だった。ゲームとはまるで違ってさ、なんかめちゃくちゃドキドキして。そりゃぁ多少は色々怖いところとかあったけどよ、いいところも一杯あって、変なとこももっと一杯あってよ。そしてアイツがいた。なんか短い間だったけどさ。あっちとこっちとアイツといた時はずっと最高だったね。

遼さんみたいに一年っくらいあっちに居られねーかな。今度は単に冒険しに。まだ見た事ないとことか、ジジモン、ババモンのいたとことか、怖~いデジモンのいそうなとことかさ。

兎に角全部。デジタルワールドを全部みて回んだよ。それいーな、最高だねぇ。誰も適わない最強の、んでもって最凶のテイマーズ。それど遼さんとサイバードラモンにも勝っちまったりして!くぅーたまんねーなー。

ああっと、そういやなんでこんなこと考え出したんだっけ。…ま、いいや忘れちった。









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正直そろそろもうほんとに一人でいるのは限界か?と思い始めた今日この頃、日付の日から数えおととい連絡し昨日決定して今日飲みにいくというなかなか例のない早さで飲みにいきました。一人の場合大体家です。いいちこをストレートに追い水という意味のよくわからない飲み方をします。精米70とか美味しくないです。


まぁ今回飲みに言った人とは随分久しぶりで、学校以来でいついらいだったかも忘れる以来なんだが、声も性格もやってることもやっぱり大して変わってませんでした。あ、状況に応じた変化については計算から抜くとします。

全くありがたいことです。飲みにいくべと誘って、本当に飲める友達はほとんどいないのでこういうのは非常に有り難い事です。地元の人はカシスオレンジ4で死にます。カルーアミルクがそれほど甘くないそうです。飲み放題でもそうでなくても本当に値段以内で飲みます。というかそれより飲めない。

んで、休みを合わせて東京へ。自分と相手二人して設定の時間に間に合わず、尚且つたどり着いてから二人で待ち合わせミス。擦れ違い。ほんとにわしゃどこの田舎っ子ですかと。生まれたところも育ったところも東京に隣接、ドーナッツの中ですよと。マルイがある方?どこの出口か分からん!そしてあれは「オイオイ」って読むんだ!(読みません)何故東口の反対なのにふと見ると北口って文字が見えるんだ!大体田舎者に見られないように必死ですwww

んで店に入って飲んだと。会話したと。
…デラ楽しかった。久々に会話したって気がした。疲れたのも飛んだし、頭痛もなくなった。大体ワラワラ飲むから(そしてその所為で失敗するから)こういう少人数は久々だしこの形も始めてだし。ゆっくり飲めるなぁ、一人と長く話せるなぁ。とか思ってたら、なんか待ってる間にやけに緊張してしまった。

なんでやろね?いつもそうなんだけど久々に人と会ったり都会にでて飲んだりすると緊張する。元々人の話は解釈してあれこれ聞いたり言ったり出来るんだが自分からは喋るネタはほとんど人にわからんから大体つかみの時は緊張している。そしてガスライターが着かないと。ワロタww

まああれこれなんやかんやと、よくある普通の会話をして飲んで終電で帰りましたとさ。全然5,6本だから余裕で家につく、チャリもこげる。なんかいっぱい飲もうって気はそんなになかった。それよりもホントに詳細の分からん人だから今どーしてんのか何してたんか聞きたかったな。色々あったらしい。ま、わしは語るべき事象は特にないので。どのくらいようつべとニコニコで動画見たかくらいだなwww

そして帰り道判明したのはわしは泣き上戸だろうということ。なーんか飲み後に家に帰って布団に入る頃に一回は泣いている気がする。理由は分からん。元々涙腺はゆるいからな。取り敢えず流れとけ的な感じになってて謎。

泣き上戸とか笑い上戸とかって過去に経験した事のある似たような雰囲気(手っ取り早く言うと以前に飲んだときの状況)が無意識の中でプレイバックされてその時の記憶が蘇って心持ちが変わるらしいよ。だから以前がやたらと楽しかった印象がある場合は笑い上戸だったり、悲しかったら泣き上戸だったり。でもそれってその二つ以外に適用されるのか?急に説教したり、キャラが変わったりとかな。まぁその辺は無意識の開放てところで説明しておけば無難でしょうw

悲しかった記憶はあんましないがなぁ・・・何故でしょうな。まぁ飲みに行った後の帰り道の気持ちはいつの時の気持ちに似ているかはなんとなく分かる気がするから泣けてくるのも分かるがね。まぁきっとそれは個人で感じが違うンでしょうが。

でもやっぱりそう思うのは飲んでる時が楽しいからだな。帰ってその後はまた現実の話だからな。飲んでる時は夢心地の夢の国だし。マンドクセとか思うさ。また一人で本読むだけとか泣けるさそりゃぁ!

多分もっと話せたな、いいこと言えたな、言うより聞けたな。酒で時間の感覚が飛ぶから3時間は一瞬でした。その一瞬の為に酔う様に生きて夢の中で死んでもなんら不思議はないよな。ホントに他の誰かと何かをするってのは一人でする全ての趣味を凌駕すると思うんだが、どうだろう?

あー、楽しかったわい。こりゃあ次回行くまで死ねないと思うね。あぁ、成る程。生きていくって死ねない理由を増やしていくことだと思うわ。








 漣の様な木の葉の擦れ合う音がする中、エルは眠りから急激に目を覚ました。長い旅の経験が眠りを浅く保つ方法を知っていた。そしてそうすることでエルはこれまで危機を回避することを心がけていた。

寝ている状態が生き物は一番無防備だ。漣に紛れて不穏なしかし極小さな音が混じっている事に気付いた。楽器の音の高さ、大きさ、質、限りなく正確にという訳ではないがそれらを聞き分けられるエルからすればそれに気付いたのは当然の事だった。


 起きて一番にエルがしたことは身体を動かすことでなく、周囲の気配を探ることだった。景色、音、匂い。それを超越する部分での感覚に近いものでエルは周囲を探った。或いは研ぎ澄まされたそれらを駆使したのかもしれない。向こうだけが此方を知っていて此方が知らないのでは情報に差がありすぎる。

かといって下手に動けば自分が目を覚ましたことを気取られ急襲してくるかもしれない。このうえ此方の状況まで気取られたのではやる方がない。

 エルはこの能力をよく磨いていた。過去の体験が彼にそうさせたのだろう、兎も角彼はどんな状態でもその気になれば周囲の状況を探りながら眠る事が出来たし、自分が起きた瞬間に自分が起きた事を認識し、明確に意識を働かせることも出来た。例え酒をかっ喰らっていたとしても、一日中多くのデジモンから身を隠し逃げ回り疲弊していたとしても。

 エルはかつて寝込みを襲われ窮地に立たされた事があった。旅の初めの頃、あまりデジモンの世界に存在する縄張りというものに気を払って無かったが故にうっかりデジモンの縄張りに侵入してしまい、その夜寝ているところを数匹のデジモンが襲い掛かった。

ヤシャモンの強さによりその場は難を逃れたが、そのことはまだデジタルワールドを旅するにはまだ拙かったエルに強く教訓として心に残った。同じ撤は踏まない。それ故の能力だった。

 寝息の様に、しかし寝息よりも深く呼吸をした。数匹のデジモンに囲まれていることが認識出来た。それほど多くはない。だが確実に暗殺の方向に力が特化したデジモンであることが予測できるためそう安心もしていられなかった。

恐らく直接的な戦闘になれば十中八九ヤシャモンが勝つだろうとエルは思ったが、直接的な戦闘をしないからこその暗殺型なのだからその想像は意味がなかった。取り敢えず単純にエルはこの場を脱する為、デジヴァイスを握り直した。タイミングは重要だ、テンポ感のない音楽に意味はない。

自分に言い聞かせて樹に寄りかかっていた自分の体をうつ伏せに倒してそこから素早く前方に走り始めた。はじめにうつ伏せになったのは樹に寄りかかったままでは素早く動くのが困難だったからだ。

 急に目標が動き出せば相手は当然此方の動きに対応せざるを得なくなる。ワンテンポ遅れできっと彼らはエルに狙いを定めて動くだろう。注意すべきもう一方の方に注意を払ったとしても確実に一体は此方に来る。取り敢えず気を取られる。そしてそのタイミングでエルはデジヴァイスを起動させた。

あまり新しい型式のデジヴァイスではなかった。正しい向きで握ると楕円形に少し上の方が大きくなった形をしている。その形に近いものを選ぶとしたら自転車のギアによって動かされる駆動の中枢であるチェーンとエルは応えるだろう。前ギアと後ろギアの大きさの差が丁度そのような形だ。その前ギアの方には小さな液晶画面がついていた。

後ろギアの辺りにその画面に映るものを操作するためのボタンがついていた。エルは予め画面を設定した上で決定ボタンを押した。そのデジヴァイスの先が光り、そしてエルのいた場所から数メートル離れた場所に気配を殺していたヤシャモンが光を放った。


「デジメンタルアップ」


 今の瞬間に一切気を取られず此方の姿を認識し続けていた相手がいないことを祈りつつ得るは側の樹の陰に飛び込んで伏せた。この周囲には茨が無い事は確認済み、逃げるのに必死でそんな怪我をする心配はなかった。

 デジヴァイスの画面に映る青い点が著しく周囲に動き回っていることを見て今は姿を変えている筈のヤシャモンが行動を開始したことを確認した後、エルはデジヴァイスからヘッドギアのようなものを取り出し被った。エルは一つ小さく笑みを浮かべた。

ヘッドギアは普通のものより随分と骨組みに近い形をしていて、頭の横と天辺に一本ずつカーボンのようなもので支えられ、しかしそれだけでよく固定され、しっかりとエルの頭に装着されていた。左右の耳には密閉型のイヤホンのようなものが当てられ、また目には望遠鏡のような長いレンズ部分を持ったゴーグルが装着されていた。

やや空想科学的な形状をしたそれはまさに見た通りから想像される機能を持っていた。つまり視聴覚の強化。望遠にも暗視にもなるゴーグルと小さな音を集める集音のイヤホン。分かりやすい形での認識力の強化、そして戦闘力の強化。正確に認識できるということはどんなことにおいても結果に繋がる重要なファクターである。

今の状況に於いては敵の姿が認識出来るということは即ち反撃や撤退や正確な判断がしやすいということだ。勿論、たかだか夜の森という程度の暗さなどは認知能力の少し高いデジモンくらいなら問題はない。しかし肝心のテイマーの方が何も見えていないのでは指示など出し様もないことは当然だ。

エルは樹の陰から様子を窺った。デジヴァイスの反応と強化された聴覚を頼りに先ずデジモンの居る方向を探った。殆ど止まることなく動いていたのでその姿を認識するのは困難だったか、どうにか暗視モードのゴーグルの中に動く影を見つけた。

三匹の赤い身体をした昆虫型のデジモンが周囲に散らばっていてそのデジモンはいかにもという長い尻尾の先に毒針を持っていた。全体的に丸みを帯びた、しかし所々にその攻撃性を現す装甲は蜂同様高速移動を行うのに適した形だった。羽は長く計四枚を有し、機動性にも優れそうだった。名前はフライビーモン、エルがその目で実際に見たのはこれが始めてだったが、ナスティフォレストの暗殺者のデータはデジヴァイスの中に記憶されていた。

フライビーモン達は暗視ゴーグルの中を出入りし絶えずあちらこちらへと動き回っていた。流石のエルもフライビーモンの移動速度には追い付けずその姿を見失っていた。デジヴァイスの反応からするともう既にヤシャモンとフライビーモン達は交戦状態のようだったがその様はエルからは認識できなかった。


「クソッタレ」


 エルは小さく悪態を吐いた。エルにとって相手のこのスピードは想定外だった。暗殺に特化しているのなら当然攻撃の速度は相当なものだとは思っていたが、こうも認識出来ない程となると面食らってしまっていた。そしてエルは小さく一つ笑みを浮かべた。

 こうなってくるとテイマーの存在は然したる意味がなくなってしまう。見通しの良い場所でなら例え高速で動いていたとしても大まかな戦闘の具合は分かるだろうが、こうも不具合の多い状況では指示を与えるのは困難だ。


「状況は如何なってる?ハニービーモン」

「あの者共は速さに特化している故、このままでは勝負が付き難いのが現状、というところだ」


 エルはデジヴァイスを介して元のヤシャモン、今のハニービーモンに尋ねた。ハニービーモンはデジヴァイスの向こうからそう答えた。

 ヤシャモンの新しい形態ハニービーモンは相手のフライビーモンと同じく昆虫型で速さに特化したタイプのデジモンだ。単純な破壊力で考えると体の軽さ故に他の形態に比べそれは比べるのも愚かなくらい低い。基本的には頭部の毒針等で急所を突いたり毒を打ち込んでそれで弱らせるという為だけの存在だ。この形態で敵を倒せたことは殆ど無い。大凡の場合が撹乱して終りという程度のものでフライビーモンと戦うには些か力不足だ。

 しかし代わりに相手の攻撃もよほど広範囲に攻撃が行える技で無い限り一切喰らわないから一撃必殺やヒットアンドアウェイの戦法を得意とする相手にはおおいに有効だった。同じ蜂の姿をしていても大きさはフライビーモンの頭二つ分、体重も極軽く丸みを帯びた身体をしているため移動速度も機動力も断然此方の方が上だった。

 エルは正確なことを知らなかったがこの時二種のデジモンは高速で行動しながらも一切互いに触れ合えず膠着の状態だった。フライビーモンが襲い掛かればハニービーモンは避け、逆もまた同じことだった。身体能力的に長期戦の向かないハニービーモンも暗闇での暗殺でこそ意味を成すフライビーモンも互いに一撃当てる事が出来れば、という思惑を交錯させていてそれ故互いに一歩も譲らぬ攻防は続いた。


「面倒だ、ハニービーモン。パラライズミッションでカタをつけよう」

「御意」


 特殊なゴーグルでも状況を認識出来ないと判断したエルは早々に特殊ヘッドギアをデジヴァイスに収納した。そしてデジヴァイスのデジモン反応だけで状況を予測し指示を出した。ハニービーモンは一切疑いも聞き返しもせずただ一言御意と言うだけでその指示に従った。

勿論ハニービーモンはエルがさっぱり状況を直接認識することが出来ていないということを知っている。しかしそれでもハニービーモンは指示に従った。お互いを信じるとか信じないとか最早そういう次元ですらない。

状況が把握できなくとも指示することが必要とされているなら指示することは当たり前で、どんな状況でもその指示をまさしくそのまま実行することは当たり前の事となっていた。そう生き残る為に全ては当然の事なのだ。

 エルは人差し指を舐めしゃがんだ体勢のまま頭の高さに指を翳した。そして小さく舌打ちをするとまたデジヴァイスの画面を確認した。


「風下じゃないか」


そして今度は溜息を吐くとしゃがみ歩きでフライビーモン達に近づかない方向へゆっくりと進み始めた。またエルは小さく一つ笑みを浮かべた。


「ミッションコンプリートまで目算何秒?」

「およそ三十」

「それじゃあ三十秒後に僕の方へ、そしたら一気に離脱するぜ」

「御意」


 三十、二十九、二十八。体内時計、いやいっそ体内メトロノームと言うべきか。その数値を分間六十のメモリに合わせるとで的確なタイミングで残りの秒数を心の中で数え上げる。しゃがみ歩きのスピードを早める。それでも数を数えるリズムが狂わないのは的確なリズムを心に刻むことに慣れているからだった。

エルは戦闘も音楽も大体同じような感覚で捉えていた。幾つかの主な要素があり、それに自分らしさというエッセンスが存在するだけ。どちらもある種エルにとっては自分の内なるものの表現手段であり自分に必要なものだった。ギターのリフを刻む事とパートナーへ指示を出すことはエルにとって全く同じものだった。的確なタイミングで的確な音を出しそれを自分の想像と一致させる。何年も続けたことだから慣れていて当然だった。

 十五、十四、十三。そのとき、にわかにフライビーモンの一匹がエルの存在に気付いた。距離は在るがまだ数秒その時までは時間がある。
十、九、八。フライビーモンが眼前に迫って来た、ハニービーモンはパワーが無いわけで、当然フライビーモンを止める術を持っていない。エルは突撃してきたフライビーモンを伏せて避ける。しかしそれであたふたしている時間はない。既にフライビーモンは反転してもう一度此方へ攻撃してくる態勢を整えていた。エルは笑みを浮かべた。

七、六、五。こうなったらとエルはなりふり構わず立ち上がって走り出した。物凄いスピードで羽音が近づく。後ろを向かないままエルはその音を頼りにタイミングを合わせ身を捩って横に飛んだ。右肩の袖をフライビーモンの爪が引き裂いて通り過ぎる。

また羽音がした。どうやら残りの二匹も此方の様子に気付いて飛んで来たらしい。こういう状態になったらハニービーモンは何の役にも立たないんだ等と考えながら遅い来る次のフライビーモン達への次の一手のを考えた。二匹を同時に避ける事はかなり難しい。機動性から考えても木の陰に逃げ込んでも機敏な方向転換で確実に攻撃してくる。

この場合は寧ろ足を止めることのほうが危険だ。ならば特別な方法で迎え撃つか。エルはデジヴァイスを操作した。身体が揺れて操作がし難かったが、ゆっくりしている場合ではない。急げ。そしてエルは笑みを浮かべた。

四、三、二。エルは振り向くと飛び掛ってくる後方のフライビーモン達にデジヴァイスを向けた。そしてデータフォルダからあるものを取り出した。それはこの森では使うことの無かったテント。森の中では地形の構造的にテントを組み立てる事が出来ず、またその暇もあまり無かった為使われずにいたが、よもやこんな形で再び取り出すとはエル自身も想像だにしていなかった。

テントは広がりフライビーモンの目の前に現れた。エルは脇の樹に手を掛け、進行方向を変える。フライビーモンが突然目の前に飛び出してきたテントに絡まり二匹とも縺れる様にして地面に落ちた。だが先程のフライビーモンが三度目襲い掛かってきた。間に合うか?そしてエルの頬は緩んだままだった。

一。フライビーモンの不敵な笑みが目の前に迫って来た。それと同時にエルは叫んだ。そして笑った。


「デジメンタルアップ」


 心の中のゼロのカウントと共に景色が一気に歪んで吹っ飛んだ。身体が宙に浮き上がった感じがする。と思った次の瞬間にはもう身体の浮遊感は安定して景色が認識出来るようになっていた。

 エルは後方を向いた。おってくるフライビーモンの姿は無かった。
エルは脇に抱えられた状態のまま肩に手を掛け脇を潜り抜けて背中によじ登った。デジヴァイスを取り落としていないことを確認すると腰に収めた。それからまたしっかりと肩にしがみ付いてフレイドラモンに話し掛けた。


「ギリギリ、だった。ったく、あんなの面倒で戦ってなんかいられないって」


 今朝と同じように樹木を足掛かりに飛ぶように移動しながらフレイドラモンは答えた。


「拙一人でも恐らくは倒せた」

「ヘイ、別に倒さなくていいって。ポイズンパウダーでどうせ痺れて動けないだろ。しょっちゅうしょっちゅう戦ってたら僕の身が持たない」

「確かに、幾度も戦いを重ねていては無駄に時間を浪費してしまうな」

「そう。君は戦い過ぎなのさ。それは暇がある時に」


 エルは疲れた笑いを見せた。と言ってもそれは演技で実際はそこまで極限に疲れている訳でもなかった。しかし朝方カメレモンに見つかってから逃げ通しであったため全く疲れていないというのも嘘だった。しかしそれでもつい先程まで多少では在るが睡眠も取れたし、そもそもエルは夜起きていることがそれほど苦痛でもない性質の人間だった。

 痺れるようなスリルをエルは感じていた。それは生命の実感にも近いもので夜更かしを当然のものとしてやっている人間でなければ味わえないものだった。気付けば自分が終始口元に笑いを浮かべていたことを知った。それが悪い感情であることは既に分かっている。しかしそれでもそれは止まらない。エルは興奮時に出される物質が麻薬と同じ種類の物質を含んでいることを知っていた。

 ナスティフォレストの住人が放った刺客はこれで暫く打ち止めだろうか、エルはそんなことを思った。暗殺部隊を送って、それでもなお仕留められていないと分かれば程度は分からないが幾分か手出しを仕様という気は薄れるだろう。それは逆により強いデジモンの導入も考えられることだが、なんとなくエルはそうもならないような気がしていた。あくまで根拠の無い思い込みだが。

 その極めつけの暗殺者フライビーモン達はやや苦心させられながらも渾身のパラライズミッションによりあっさりとエル達に出し抜かれていた。恐らくは今頃地上で大量に吸い込んだ毒により身動きの取られないままもがいているのだろうとエルは思った。

パラライズミッションとはつまり攻撃力の低いハニービーモン故に浮かび上がった作戦で、相手の身体の動きを奪う毒を逃げ回るように見せかけて散布するという実にシンプルなものだった。しかし、逃げるハニービーモンを捕まえるのは容易な事ではなく、相手はそこに集中してしまうため毒の散布に気付き難いと言う実にデメリットの少ない作戦だった。


「大分足早に抜けた故そろそろ出口の見える頃合いだ」


 フレイドラモンは独り言のようにぼそりと呟いた。本来なら見つからないように地面を歩きゆっくり進む予定だったが急がざるを得ない事情、というか単純に追い立てられたためかなり早い速度で出口に近づいている。そういった皮肉も込めてなのかフレイドラモンは言った後に哂ったが下らないと思ったのか直ぐにその哂うことも止めた。

 変わってエルは大きく笑った。目指すPDPタウンは森を抜けてさして距離の無い場所にあるそれを考えると自然にエルの表情は柔らかくなった。今まで起こっていた災難などもう記憶には一ミリたりとも残っていなかった。


「フレイドラモン、街に入ったら先ず如何する?」

「当然、決まっている」



「オーライ。じゃあ先ず酒場に寄るぜ」

 まぁ、つまりはそういうことだ。












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取り敢えず、辻ちゃんもまた終った訳だが。辻ちゃんの交際なんて可愛いもんだし今色々とあるし報道はやめておこうかという週刊誌や新聞やらの心遣いは更にグレードアップした特報で終末を迎えましたとさ。



さて、どうでもいいことなのでもう書く事がないです。あ、モーむす関連で思い出したがお塩先生はいつきちんと破局してくれるのかなぁ?押尾学はもーむすのあれこれに手を出したとかいう噂があったらしいが。取り敢えずどうがんばってみてもお塩先生はダサいし辻チャムはかわいくないので本当にどうでもいいです。ありがとうございました。

ところで、永井先生の弟ひろきゅんは酔っ払うと声が永井先生にそっくりです。どうみても永井です。ありがとうごさいました。
あ、永井先生ってのはネットで自分のネタ人生を暴露する以外と格好良くて男前で偉大な先生です。ニコニコで見なさい。本放送はどこでやってるかわからんから。
人が生きるにあたって
死ぬ事は当然のことで
どう画策したところで
変わり様のない事実で

それぞれの寿命や
どうにもならない事情で
乱数的に日付は変わっても
いつか終る時がくる

それを思って誰かと分かれる僕の心は
まるでディズニーランドの帰り道の
悲しい気持ちのようで…
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「寒っ…」


短いファーダウンのジャケットを可能な限り風が入らないように閉めフードを被り俺は背中を丸めて歩いた。目の前はほぼ白く染まっていて数メートル先くらいまでしかさっぱりどうなっているかすら分からない状況で冷たいガスがボトムスのジーンズを凍み付かせ、積もり積もった雪と共に俺の歩調を緩めさせる。

大した防寒が出来る手袋じゃねぇから手はダウンのポケットに突っ込みっぱなしで、腕で両脇を締めるように押し付けてただ寒さを出来るだけ感じないようにして、はっきりと何に向かっているかも確信出来んまま進み続けていた。

周りは全て雪。積もるは雪、降るは雪、何処までも雪。時間も方向も感覚が分からなく成る程空は白く傾斜の感じからどうにかこの山らしい場所を上に向かって進んでいることを認識する。それすらもしかしたら狂った三半規管に騙されてるのかも知れねぇが。

舞い降りるなんて幻想的な状況は此処にはなく降り注ぐように雪が襲ってくる。肩にも身体の前面にも雪が積もっていて多分フードの上にも積もってると思う。とんでもない寒さだ。本気でふざけんな。


「あぁ寒っ…」


 ここ数十分で独り言はかなり増えたが最早言っている事はそれ一つだけだった。始めのうちはどうにか色々なものに悪態をついてたりもしたが、そんなもん体力の消耗で無駄に過ぎないなと分かってからは一言も言わないようにした。その代わり頭の中では様々な考えが浮んでいた。

っつーか何なんだよ此処は。理解はさっぱり出来る気がしない。というか理解して受け入れるのは正直嫌だってのが正直なところだ。全く本当に如何なってやがんだよ。

 俺は港区台場に住む中学一年この間十三になった、んで名前は有馬紫苑。取り敢えず親は死んでて、現在の家族構成はろくに家に帰らない親代わりという体裁の居候兼金づると最近小生意気になってきた妹と共に住んでいる。えー、後なんだ?自分で言うとしょっぱいが成績はわりかし優秀、そんで人が言うには不良自分が思うにはろくでなし。

だけど部活はきちんと出ている、剣道部。ガキん頃からやってるから腕っ節はマシな方。取り敢えず少なくとも同い年に負けたりはせん程度の実力はある。他は、と、そう趣味はお子様に丁度良いものと丁度良くないものの両方の活字を読む事、嫌味な雰囲気全開の音楽を他所様に聞かせるくらい垂れ流しで聞くこと、後は適当に。

よし、自分が何かは分かってる。それは確かだ。間違いは無い。それだけ分かってりゃ大丈夫だ。だがそんな阿呆っぽいことでも考えてなきゃやってられん。兎も角、どうして此処に俺がいるか、少なくともそんな程度のことだけでもはっきりさせとかないと何がなにやら分からなくなっちまう。

 そんで、俺は学校にいた筈。なにやら色々あって学校に行ってってか逃げ込んで、そんでそこでまたよりふざけた事があって、何か訳分からないうちに今此処にいる。しっかりとした記憶は無い。兎も角彼是考えているうちに此処にいた。

 暫くはちょっとした夢かなと思い込もうと色々やってみたが現実逃避甚だしいことをやり続けて死んだなんて馬鹿みたいな死に方は止めて欲しいと別の逃げ道を探すためにこうして上へ歩き続けている、此処が山らしいってことは取り敢えず薄ら見える周りの山からなんとなく想像がついたからな。

通常山で遭難した人間は下へ下へと行こうとする。だが下へ行ったところできちんと分かり易いところへ下山出来るかなんてはっきりしてはいないし、大体状況が把握しにくくなってより危険だから上へ行くべきだと何処かで聞いた記憶がある。それにこの場合じゃ下山出来たから助かるかどうかも分からん。故に俺は上に向かって歩き続ける。がそろそろ本当に凍えて死にそうだ。

今考えつくありそうな死因は3つ、このまま凍えての凍死、暖をどうにか取れても食うものが無くての餓死、雪崩でも起きて巻き込まれて窒息死か圧死か。そんなもんだ。何れにせよ俺の考える最悪の死に方だ。勘弁してくれ、俺は死ぬなら毒殺か銃で撃ち殺されるかどっちかって決めてるんだよ。

歩く。相変わらず景色は変わらない。というかまぁ変わりようもないか。先ずこの周りの白いのが全部無くならなきゃ目の前に何か差し出されるくらい出ないと何がなにやらも分からん。それでも一応周り全てに注意しながら歩き続けた。変化を見落とせば確実に死ぬ。ワンテイクのミスもやり直してなにやら出来る程動けない予感はある。

足を大きく広げ前に踏み出す。前の足がしっかり安定しているのを確認してから後ろの足を雪を退かす様に動かしながら持ち上げる。雪に引っかからない様にまたその足を前に出す。一回足を動かすのに数十秒、慣れない動きはそれだけで体力を消耗する。息は上がってるし、空気がとんでもなく冷えてるから吸い込む度に咽ちまいそうになる。限界に至る前に一回休める場所を見つけないとそのまま…って事になる。俺はより注意深く周りの変化を探りながら進んだ。

歩き始めてからはもう一時間半、この場所に呼び込まれてからは二時間が経過していた。腕時計はとっくに凍り付いていてそいつじゃあ時間の経過なんぞちっとも分からんが、俺が時間を判断出来るのはこの変な機械のお陰だ。形は殆ど携帯電話、見たことはないが。色は黒で、縁やら所々が赤く彩られている。

縦長でやや丸みを帯びていて外側がゴムのグリップになっている。裏には腰に付ける為のホルダーが丁寧にも装着されている。携帯のように二枚の板が重なって出来ていて、普通の奴とは違って最近はよく見るらしい、上の板が縦にスライドするタイプのものだ。

スライドすると下の板に携帯のと同じボタンが付いていてそれで操作をするらしい。板をスライドすると上下に小さく穴が開いていて、それが通話口だとするならば電話も出来るだろう。回りくどく説明したが、総合して考えるとコレは携帯だってな事になる。

ただ、それにしてはおかしなところが幾らからあり、分かり易いところで言うとそれは大きな液晶画面が無いことだ。代わりに良くある携帯のカメラのレンズのような場所から空中に、実際はどういっていいのかよく分からないがホログラムが浮かび上がってそれがディスプレイとなるらしい。時間はそのレンズの下の小さな液晶に映っている。

しかも丁寧にアンテナも立っている。それも三本。まぁ其処は愛嬌としても、明らかに今の技術じゃ造れないもの。しかし存在している。そして俺はそれを持っている。さっぱり理由が分からないが、そう散々長ったらしく説明したのはつまり、その携帯っぽいのは俺が此処に来てから二時間の時が経過したことをはっきり示していて、それはとても由々しい事実だって事だ。

凍え死ぬという状態は何を表すか。それは低体温症のことを指す。人間、及び体内の細胞が活動するには一定の体温が必要だ。変温動物でない人間は何処へでもいけるが、それは衣服とかで体温を保つ方法を知っているからだ。だが、それで対応しきれないところへ行くと、体温が低下、場所によったら上昇する。体温が変化すると言ったとおり人間は活動が覚束無くなる。それでもそのままの状態だったらどうなるか。つまり死ぬってことだ。

更に一つ余計な話を加える。低体温になると死ぬ前に色々と身体に異常
が起きる。んで、今俺が一番言いたいのはこのままだと凍傷になるっつーことだ。今はまだ動きが鈍くなって冷たいのが認識できる辺りだが、このままだと次第に刺す様な痛みが心臓と遠い毛細血管の辺り、つまり手足に起き始める。

それでも自体が好転しない場合は段々その痛みもなくなってくる、と。そんで、もう一回言うが死ぬ。そういうことだ。俺に死んで欲しいと望む奴は少なくないが、残念ながらまだ刺す様な痛みってのには襲われていない。体温は割りと高い方だしな。だが、寒さに慣れてない脳みその方が先に音を上げてオチるかもしれん。そうしたら南無阿見御陀仏だ。


「寒いっての。マジで何なんだこの状況は!」


 まともに舌がまわる筈も無くかなり曖昧なぼやきを大声のつもりで小さく叫んだ。そして吸う息がまたとてつもなく冷たい。無駄なことをやっては後悔する。今までとなんら変らんな。違うのは生死が掛かっているってことだけ。どうでもいいが、やっぱり服は機能性が一番大事だな。

 一瞬このまま進んで大丈夫なのかと嫌なものが脳裏に飛び込んできた。進んでも進んでも変わらない景色に不安を覚えた。白過ぎて何も見えないし風が強くて呼吸もままならない。

冷たいガスは濃くそろそろ翳した手も見えなくなりそうなくらいだ。歩を進めるがそして辿り着くところは雪。幾ら動かしても足は雪にしか触れないし埋まらない。手を伸ばしても何にも触れない。ただ、伸ばした手に雪が積もるだけ。やっぱりこれまでと何も変わらないな。求めても何も得られない。俺はポケットから手を出して腕を擦った。脳みそが冷え過ぎてくらくらしてきやがった。

 やっぱり戻るか?それが一番やったらいけない間違いだってのは分かっている。今来た道を一瞬で戻れるなら兎も角、今来た道を今来ただけ時間を掛けて戻ることに意味なんかある筈が無い。もう既に移動に限界がきそうな気分だってのにこれ以上移動距離を増やしてどうする。

仮に戻って直のところにこの雪を回避出来る場所があったとしても、そこまでたどり着く余裕がないのなんぞ明白。弱気になったところで今更如何仕様もない。ならかまくらでも彫るか?それも多分無意味だ。こんな坂のきつい道に如何かまくらを造れってんだ。

それに第一、造り方が全然分からない。やっぱり進むしかない。挫けそうとかそういう考えが浮んでも進む意外に選ぶ道はない。弱い奴に選択の自由はない。ただ一つ、危険を回避するというところ以外に。

 僻む訳じゃない。羨むつもりも無い。だが、周りの奴等と同じような幸せやら平均の安息なんて殆ど得たような記憶はない。何時だってどうにか色々なものを騙くらかして自分の生きていられる場所、と言うと大袈裟だが、休まるところを手に入れて来た。

断然環境の良い奴には対抗する術がない。金は持っていないから人より良い物を買うことは出来ない。常識的な思考も趣味も無いから人と馴染むこともない。人と馴染まないから味方もいない。僅かに、俺の口八丁に誤魔化されてなんとなく俺と一緒に居ることが出来る奴もいるが、やっぱり芯の部分では理解なんか仕合えるなんて思わない。

幾ら俺が正しかろうが、大勢が否定すりゃそれまで。ろくに考えもしないで人の話に流されるような奴等ばかりだし、そんなもの望んでもいない。

だから俺は力と賢さだけは今まで保持してきた。実際には向こうの所謂普通の奴等に敵いもしないものしか持っていない俺を、いかにも凄い人間だと錯覚させることで余計な争いを省くことにしてきた。向こうがこっちに敵わないと勘違いすれば余計な意見はしてこないし、幾分か嘘臭い匂いがするものの協力的になる。換わりに頭の悪い奴は余計な喧嘩をよく吹っかけて来たが。

 持ち上げた足と身体の重さを支えきれず雪に引っかかって転んだ。身体ごとしっかり雪に埋まり真っ白な世界が閉じた瞼の中で真っ暗闇になった。雪は冷たい物だと思っていたが身体ごと突っ込んでみるとなんだか温かい様な気がした。成る程、風が来ないから温かいのか。其れに熱を奪う筈の塊となった水分が身体から離れずにいるからかえって温かいってことか。

倒れた時に受身を取れなかったからか頭がよりくらくらと、いやいっそグワングワンとしていた。本能が起き上がれと促したが意識がそれを拒んだ。立ち上がって寒いと感じる瞬間を拒絶した。進むことよりも休むことを選ぼうとしていた。

少しずつ睡魔が身体を支配しようとしているのが分かる。意識が薄れそうだ。脳が睡眠の状態に入ろうとしている。そう感じることすら自分の身体と何処か遠くの場所のことのようにも思えた。

俺は本能というものを認識出来るとしたらいつでも本能の選ぶモノの方が正しいと思ってきた。今度もそうだ。このままだと此処で朽ちる。いや凍りつくから朽ちることすらなくなる。ただ魂が身体ごと滞って此処に留まる。何からも何処にも身動きが取れないまま終る。

生きることを怠けても仕方ない。死んだらそれまで。後は世界がどうなろうと何一つ知ることが出来ないし触れる事も出来ない。邪魔臭いこの雪にすら触れられなくなる。終っちゃいけない。色々なものの為に。それに俺自身の為に。

身体の下で雪に埋もれた腕に力を込めて身体を起こせ。顔面に付いた雪を払って立ち上がれ。黙っていると凍るぞ。生きることが辛いことだってのは知っているだろう。それでも立ち上がれ、楽より苦を選んでこそ強くなれる。そう決めて生きてきたろ。長いものに巻かれないと意識していた筈だろ。黙っているな身体を動かせ。

気楽に言うな。こんな理不尽な世界で何故俺が努力しなきゃならない。間違っているのは俺じゃないだろう。

だとしてもだ、それで黙っていても凍るものは凍る。動かせ、足をもう一度持ち上げろ。辛いことには抵抗しろ、楽することにも抵抗しろ。そうやって自分が生きていることをはっきりと認識しろ。生かされていた人間が死に向かってどうする。言い訳せずに生き残れ。

あんなもの…偶然に決まっているだろう。運に生かされた?運命に生かされた?お前が一番嫌いな言葉じゃないか。何人に感化されてんだよ。
感化されてんのはお前だろう。ふざけんな!生き残ってやるべきことを考えろ。死んでいいのか?一番辛いことは死ぬことだとお前は知ってる筈だ、他のものに騙されてんな!

五月蝿ぇ。この顔を見ろ手を見ろ足を見ろ身体を見てみろ。それに、心の性根を良く見てみろ。心底歪んでんじゃねぇか。お前がここまで無理をさせていたんだ。もう止めてくれ。

止めてくれじゃない。俺に言ったところで誰が止めてくれるってんだ。周りが止めてくれるまで俺は止められない。お前は何をしたい?死にたいのか?

………―――――。

違うだろう。なら大人しく俺に従え。進め、歩け、辿り着け。本当に休みたかったらな。

 …それで本当に、良いんだな。

 良いっつってんだろ。

 …分かった。後悔するなよ。




―――――――――――――――……??












「…さっ、寒っ」

 ぼんやりとした意識が戻ってくるに連れて身体の冷たさを脳みそが認識し始めた。身体を脈打つ血の音が耳の奥に響いて五月蝿い。伏した体の動かし方を忘れたようにどうしたら身体を起こせるのか暫く分からず伏して短い呼吸を繰り返した。先程よりも呼吸をするのが僅かに楽で咳き込むことも肺が痛みを感じる事もない。だが、流石に冷たいとは感じている。

 如何にか腕に力を込めて身体を起こした。引き摺るように動かした足の指先が針を刺した様に痛い。くそっ、泣いちまいそうだ。早速その場に座り込んで背中を岩場のごつごつした感触に預けながら片足靴を脱いで擦った。指にも痺れる痛み。息も吹きかけ冷え切った末端神経に毛細血管を温めることにひたすら苦心した。今なら水だって熱い。

風呂だったら焼ける。湯だったらきっと溶けるな。だが、それを感じられるということっはまだ全ての指の機能を一つも失っていないということか。体温は相当低下してるみたいだ。曖昧な状態の脳みそでよく生きていられたな。

 というか此処は何処だ。極平然と岩場に背中を預けたと思ったがよく考えたら何故此処に岩場がある。というか何故景色が白でなく暗い。地獄の淵にやってきたなんて阿呆な考えをしている場合じゃない。今はまだ生きている。こうして心臓の音を感じているのだから間違いなく。俺は如何なった?どうしてどうやって生きて此処にいる。

 腰の辺りに手をやった。記憶の通りならどちらかの方の腰に付いてる筈。そうやって探って漸く右の腰から謎の携帯に似たさっきの機器探り当てた。取り外してミニディスプレイを見ると時間を示していた、当然だ。だが、肝心の、あれ、そうなんで時間を確認したか、あ、そうだ。何時間経ってるか確かめたかったんだ。


「ッフッハッハ」


 思わず笑った。如何にかこの洞窟らしいところに逃げ込んだはいいがまだ頭がぼんやりしてるみてぇだ。必死に一番最後に時計を見たときから何時間経っているか考えた。一番最後に時計を見た時の印象が薄くて代わりに一番初めに見た時の時間を思い出した。そのときからは三時間経っていた。よく生きてこんなところまで辿り着いたもんだ、それも意識なしに。


「それにしても、やっぱり寒ぃな」


 雪も風も吹き付けない洞窟の中とはいえ気温は異常に低い。今までマイナス二十度だったもんがマイナス五度になっても氷点下であることに変わりはないし。


「火ねぇのか」


 俺は靴をもう一度履き直して周りの様子を窺った。暗くてあまりはっきりと認識出来る訳じゃないがそれでも目を凝らして様子を窺った。とそうして漸くポケットに眼鏡を仕舞ったことを思い出した。先ず一番初めに凍りついて使い物にならんから此処に来て直にぶち込んでたんだ。

俺はポケットから眼鏡を取り出した。そして仕舞った。眼鏡は取り出した瞬間に凍り付いていたことがはっきりと分かった。よくものの見えないまま俺は付近に何か無いかと探した。

見えないから手探りに這い回った。手に在る感触は寒さと若干の痛みと石っぽい感触。それ以外は何もない。雰囲気から考えてもここに殆ど何も無いことはある程度検討は付くがそれでも一縷の望みなんて言葉もあるし、身体を動かすことも出来る。黙って据わっているよりは体温も上がるかもしれない。ただ、この場合体力が無くなったら即そのまま死ぬだろうが。

結局十分くらいは探したが何も収穫は無かった。それほど広範囲に動けた訳じゃないし、大体火を起こすための道具は何一つ無いのだから其れに使えそうな道具まで探せとなるとかなり困難なことだった。以前此処に辿り着いて発火道具を忘れていった登山家か、遭難して此処で朽ちた人間でもいない限り火を起こす道具が揃っているなんてことは在り得ない。

雪の白さで木すら見えていなかったんだから、当然枝が転がっているということもない。そして人が上ってこられそうな山でもないから登山者もいないと想像する。と当然発火道具は落ちてない事になるし、それで木の枝がここらに落ちていたら動物の縄張りの可能性もあり、また新しい死に方が増えるという結果な訳だ。つまり、動物に殴られて死亡ってことだ。少し動いただけで俺の息はもう上がっている。冷たい空気を吸い過ぎたな。俺はまた暫く体力の回復を待つことにした。

今の俺の居る位置からは僅かに外の様子が窺える。黙って丸く体育座りで外を眺めているとなんだか不思議な気分になった。東京に積もるような雪はそんなに降らない。たまに大雪で驚くほど周りが白い色になるが、それもそんなに長くは続かず精々一日二日で溶けてしまう。

でも、雪が降ると決まって俺は連れられるままに葉月と未来(みく)と雪遊びをした。男友達に逃げる手も在ったが、誘われてもいない遊び場所にのこのこ現れる程俺は人に馴染みする人間でもなかった。

夏生まれの葉月と未来。その二人よりも冬生まれの俺の方が寒いのは苦手だった。雪なんか降った日には外に出ようとも思わなかった。それでも俺は葉月達に連れられると必ず雪遊びに出た。何故だろう。今でも分からない。そんなことをふと思った。ただ、そういう下らない事のほうが案外楽しいもんだという思いもある。それだけのことだが。








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「ったく七月のこのクソ寒さってのはいったい何なんだよ」

「山ん中はしばれるん仕方ないべさ。それにオイラは問題ないでや、しばれんの大歓迎それにここはオイラん地元だかんね。懐かしぐでたまんねべよ」


 ごつごつとした岩、岩、岩、それに、なんか岩。山なのか岩なのかよくわからんくらい岩に囲まれた山道ともいまいちいえるかどうか微妙な道を俺等は進んでいた。

人間の世界の常識が幾分のところまで通じるか分からんからになんとも言えないが白っぽい岩と枯れた木が岩の隙間から生えているのと直ぐ向こうを向けば見えるクレバスと直ぐこっちを向けば見えるクレバスとそんなもんくらいしかない山。そして上を向けば積もり積もった分厚い雲で多分歩き進めるうちに雪が降るなというくらいの天気だった。

リアルワールドではまだ夏で、山を降りて少し行けば夏だと言うのに此処はもう冬の寒さだった。夏の内に雪が見られるなんて奇跡的過ぎる。勘弁してくれよ。ザクザクという足音は続く。

 山は恐ろしく高い。人間の世界で考えると、だが。頂上は地上からではまるで見える訳がなく、俺も頂上に触れられるなんて想像したくもないくらい高い。付近の山々もなんだかそれに及ぶ程高く、生き物が立ち入るべきではない場所と言われるのも、この山へ入った奴なら納得のもんだ。

 ふと俺は足を止めた。息が上がる。その息は白い。寒さで顔面が歪む。膝に手を付いて息をつく。一度は此処に来たことがあるからもう防寒はかなり大丈夫なつもりだった。それなりの厚着はしていた、が山を舐めて掛かってはいけないってのは本当だな。

自分の頭の悪さに腹が立つ、そんでゴマがやけに機嫌がいいのも腹が立つ、不意に昔葉月に寒いのは嫌だと布団に篭っていたところ布団を剥がされ情けないと言われたことを思い出したことも腹が立つ。この寒さに少し歩調を早めたところ、小石に足を取られてよろめいた。側にあった大岩にぶつかった。


「ブヘヘヘッ、何してんだべな」


ゴマの野郎が下衆な笑い声で笑いやがった。腹が立つ、俺は岩を思いきり蹴飛ばした。足、痛った…。


「この季節にこの寒さは…って、そう、いやそうだな。お前と会ったんは此処なんだっけな。ハハッ、忘れてたわ」

「オイラ散々行ぐ前言ったべな」


 ゴマの機嫌がいいのはそういう訳か。人の話なんてこのところ大して興味を持って聞いてなかった証拠だな、そんなことを言ってたような覚えが少しあるけど全く気にも留めてなかった。そういえばそうだ。此処は俺とゴマが出会った場所。デジタルワールドに飛ばされた…いや、呼び込まれたって感じだったなアレは、そう呼び込まれた場所。そんで、レオのおっさんに拾われた場所でもあるんだな。あ、寒くて口凍りそう。


「そうなんだよな。つって感慨なんてあんまり無いけどよ。まぁあん時は最悪だったな。いきなり訳わからねぇ世界に飛んでいきなり襲われて、これは絶対死ぬなって思ったのは後にも先にもあの時だけだ」


 マントの下に隠れた腕を擦りながら歩を進め、そんな下らないことを俺は言った。なんだか喋ってないと体が固まっちまいそうだと思ったがよく考えたら喋ると口が開いて逆に寒いと気付いた。まぁ、どうせ大差なんて無いからそのまま俺は続けた。ザクザクという足音は続いた。


「そんでお前もなぁ、周りの奴に比べたら比較にならんくらい弱いしよ」

「仕方ないべや、周りごついのばっかでよ、オーガん兄貴にと会うまで誰と会っても逃げてたでよ」

「まぁ俺がお前でも逃げるわ。それは認める、此処のデジモンとは今でも戦いたくねぇし」


 此処のデジモンはクソみたいに強い。それは俺等だけの認識ではなくこの辺りに住むデジモンには常識となっているらしい。基本的にこの山には近づかないってのが鉄則。誰からも聞いたことだ。それで、この山を必死こいて登ってる俺等は阿呆なんじゃないかとか思うが、それは仕方ない。人には人の事情が色々あるってことだ。

 この最悪な山道をもう四日前からひたすら俺等は登り続けていた。それでもまだ多分山の中腹にすら差し掛かってないだろうな、もう何度も行き来してるこの山だそんなことくらい分かっている。斜面がきついし、崩れやすい場所やクレバスがかなりある。しかもそれをまともに進んでいくと秘密を守る巨人とか言われているこの山の連中に出くわす。

一体くらいなら今の俺等ならなんとかなるかも知れないが、それほど自信があるわけでもないし、第一奴等は喧嘩が大好きな野郎共だ。騒ぎがあったら直ぐ飛んで来やがるから命が幾らあってもそれじゃ足りない。

お陰で迂回に次ぐ迂回に加えて更に所々で洞窟も通らなきゃいけないから冗談じゃないくらい回り道をしている。まぁそれで今俺は安全にこうしてあるいて居られるし、洞窟の中で寒さを凌いで寝てもいられる。昨日辺りから少し身体を重く感じている俺には有り難い話だ。

 それにしても何回言っても言い足りないくらいだが本当に寒い。クソ寒い。顔面が凍みる。耳が千切れそうだ。髪の毛も変な風に固まっている。と言っても何が変なのかなんてのは全然知らないし興味もないがな。風が冷たく正面から入ってきて目が上手くあかない。それがうざったらしくなって俺は適当に首にぶらさげていたゴーグルを掛けた。髪の毛がしゃくしゃくする感じが分かる。


「もうお前進化させるから運んでくれよ」

「そしたら見つかり易いからいかんて言ったんは紫苑だべや」

「…分かってるよ。でもこの寒さは挫けちまいそうだ」


 確かにでかくなったゴマの図体はそれだけでかなり目立つ。そしてでかい奴は喧嘩を売られ易い。この辺の奴等は見かけない奴らが自分より強いということを認めない。だから見かけない奴にはほぼ確実に喧嘩をふっかける。というか襲い掛かってきやがる。ただ、小さい奴にはそれほど喧嘩を売らない。小さければ戦う以前だとでも思ってるんだろうかな。

兎も角小さければ無理に刺激しなけりゃ逃げられる。偶に機嫌が悪い奴に当たると襲われる。この場所の大方はそんなもんだ。慣れてくると奴等の機嫌の取り方も分かってくる。いくら注意したって出会うもんは出会うからな、ここでは生きてるかそうでないかが全てだ。それ以外はない。

そしていい加減生きている俺はそろそろ此処の奴等に顔を覚えられてもいいと思うんだが、如何せん奴等は馬鹿だから気に入った奴以外は数日すりゃ忘れる。戦ってもいない俺等は気に入られるもへったくれもあったもんじゃないとそういう堂々巡りのいたちごっこってわけだ。不毛極まりない。


「それに紫苑、しばれるっても今日はそれほど寒くないっしょや。前来た時ん方がしばれてた筈だでや」

「いや、寒いよ。お前は寒くても関係ないから言ってるんだろ?」

「そうけ?オイラはしばれはせんて思うけどの」


 寒いところ生まれはいい気なもんだ。くそっ、全然気楽なのがやっぱり腹立つ。


「あ~、やっぱし乗せろ。寒すぎる」

「適当だでな~。まぁオイラは構わんでよ」


 俺は腰からデジヴァイスを外して画面を見た。斜めを向くと吐く息でゴーグルが雲って見にくくて俺はゴーグルを一旦外した。


「っと」


 我ながら思わず馬鹿みたいに声が出たなと思いながら、握り損ねて落としたデジヴァイスを拾おうとした。手袋してるにも拘らず右手が凍りのように冷たい。指先が震えているのが分かる。

一瞬俺はデジヴァイスを拾うのを躊躇した。というよりは身体の動きがそこで止まった。寒さとは全く関係のない鋭い痛みが指先から肩に向かって抜けた。今度は思わずあげそうになった声を噛み殺した。膝が折れて地面に着きそうだったのもどうにか抑えた。ビキッと何かが音を立てた気がした。それから俺は直ぐに左手でデジヴァイスを拾い上げて操作しゴマをイッカクモンに進化させた。


「見つからん様に適当によろしく」

「適当で見つからながったら苦労せんべや」


 気付かれないように左手だけでゴマの背中をよじ登り早速横になった。見た目以上に長いゴマの体毛は横になった俺をすっぽりと隠している状態でそこにゴマの体温も加わってかなり温かい。手に体毛を絡ませておけば落ちることもそうそうないしある意味俺にとちゃかなりいい寝床だった。


「行くでや」

「行ってくれ」


 背中に掛かる振動でゴマがゆっくり慎重に出発したことが分かった。俺は分かってるじゃねぇかと軽く笑った。けど、内心はそう軽い気分でもなかった。右腕の痺れはとれない。握ることも開くことも出来ない。顔面が歪みそうに痛いのを抑えて俺は無理やり笑った顔を作った。そうすりゃ痛いのも誤魔化せる、かもしれない。兎も角痺れが取れるまで俺は暫く寝転がってそのままの体勢で待った。

 なんとなくこうしているとゴマと出会った頃のことを思い出す。出会った時はこんなことなんか絶対しなかっただろうなって事の方がかえって昔を思い出させるきっかけになるな。余計な事を考えながらなんとなく口に出した。


「なぁゴマ」

「何よ」

「お前よく俺のパートナーでいられるよな」

「何それ?また嫌味け?」

「あ、いや普通にそう思う訳よ。特に意味はねぇけど」

「んなん知らんべよ。それよりよくわやんならんとオイラと居られるってぇ事の方が驚くべさ」

「ま、考えることは同じか」


 飼い犬は飼い主に似るとか言う話も同じような事なんだろうか。どっちもお互いを飼い犬と思っているんだがな。なんてな。前の俺等ならこうやってふざけて何か言うってのもなかったんだろうな。そう考えると人の関係性ってのは興味深いもんがあるよな。科学者も哲学者もろくに何かその真理みたいのを解き明かせてないってんだから面白い。解き明かすだけ無駄で無粋とも思えるが。

 ごっそり今ある意識がそのままぶっ飛びそうなくらいの痺れが右手から順に肩まで走ってきているのが分かる。ぶるぶると引き攣っている。ったく、アル中の親爺じゃねぇんだぞ。…まぁ話としちゃ殆ど変わらないか。

 俺とゴマのその解き明かせない関係はこの山から始まった。その時は今の自分も今のゴマも今の世界の状況もそれまでのお互いのこともこれからのお互いのことも一切知り得る筈も無いまま。

 俺がゴマと出会った日、この山は如何仕様もない吹雪だった。今でもはっきりと思い出せるほどその日の記憶は明確で、リアルワールドでの思い出なんぞ殆ど払拭されちまうほど印象深い記憶だ。











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なんかリッチチョコなんだが、この果物混ぜチョコは飽き易いね。旨いと思っても結構後後になってやっぱりそんなにいらんかなと。そしてこれは単純に旨くなかった。なんかどうなってんの?的な。所見の印象が強いのに後になるとあんまりよく覚えてないような。まぁ高いし別にいらんかぁ、と。これでこれならもう一個ある方もいらんかぁと。
う~む、あまり期待が出来そうにないところだ。よく考えたら邪道でもなく普通の混ぜチョコの選択だしなそっち系の果実とか。もっと色々試してみたらいかがかと。そういう感じ。
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所謂団子でチョコを包んだシリーズ。
別にそんなにうまくもない。これとは別の和きなちよこはそこそこ面白くてうまい味だなとは思ったがこれはそうでもない。どうやら異色チョコは合う合わないの差がなかなかあるらしい。

すごく変な店のパチンコの景品で取ってきたみたいな印象。もしくは良くわからんが取り敢えずお菓子を買おうということで適当に選んで持ってきた感じ。なんか知らんが別に望んで買ってきた訳でもないのに折に触れておいてあるような。しかも特別望んでもないが食うような。そういう中途半端なww
まぁでもこういうシリーズは好みが色々なのでもっとがんばって欲しいところではある。
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チョコ最中。もしくはぬ~ぼ~。昔懐かしい物を集めた動画にぬ~ぼ~があったがまさか田代スがCMをやってたとは思わなんだ。

まぁ中のクリスプ、外の皮(他に言い方ないのか?)チョコとバランスがいい。なかなか見かけたら食べたくなる。が、近所には意外と置いてない。最中系アイスは若干食べにくいので(個人的に)そこまで好きでもないんだがこれはなかなか好きよ。

でも一回二回食べた後に何処に置いてあるかわからん。まぁもう少し向こうまで探したらあるとは思うが。
最近やたらとデラ~~という言葉を発しようとしている今日この頃。また多分聞いた方言が絡んだままといういつものパターンだと思われるが何処の地方の言葉だったか。多分「とても」とか「凄く」という意味。あ、なんとなく名古屋だと思われる。響き的に。博多弁やったら「ばり」広島弁じゃったら「ぶち」大阪弁やったら「どエライ」伊予弁だったら(こらマイナーじゃな)「そうとう」北海道弁(こういう言い方そんなにするかねぇ?)「なまら」
まぁ実際に使う人からすると若干以上はニュアンスが違うのかも知れませんがね。

まぁ折角なのでなんだか折に触れてやってる気がする地方の言葉の話。
なんでこんなにあれこれ調べてるかというと別に言語マニアとかそういうんでなく、単純に人の言葉が移り易いのと小説で方言キャラが出てくるからその使い分けの為やね。

でついでに今調べてみて若干ショックだったのがちょっと前(まぁ1年くらい前か?)のどっかの人の記事を見たら女の子の間で地方弁が流行ってたらしいということ。なんか可愛いとか盛り上がるとからしい。ま、だがその前から色々調べてたけどな!(よくいる流行の先取りを自慢する奴の如くいうぜ)

方言を色々使おうとしていくとだんだん性質が悪くなるのはどれもまとめて一緒くたにしちまうこと。その上のやつの記事では「なまらせからしか」と北なんだか南なんだか分からん方向から来た方言になっとった。恐ろしいことに偶に普通に全然行った事もないところの方言が混ざって出てくる時あるんだよな。

まぁわざとやってるわけではないので上の如く単語レベルではくっつくこたぁ…ないと思われるが(というか流石に方言そのものは意図的に出さないと混ざらん)訛りとかが混ざってくるんだよね。自分で言ってべっくらこいたのが

「昨日やってたやつじゃろ、わしもみたでや」

何人ですか。何処生まれ?ってかよく考えたら普段から適当に言葉を崩して喋ってるので(かつぜつが悪いのは含むな)自然とニュアンスがそういうのに近くなってるんだなぁと、これこんな風な感じに言って気付いたさ。そらそうだ。猫→ニャンコ→ナンコだもんな。普通にナンコ来いナンコ来いとか言っとるもん。

多分此処までの文章を読んだら絶対に一つや二つ素で方言(っぽいもの)が混じってるからな。しかも普通には変換しない場合があるからわざわざ字を書いたり消したりして。


でもしかし方言ってな良いよな。地方柄の一番明確な部分って感じがするもん。地方の人って地元訛り聞いたらなんか落ち着くんじゃないの?

埼玉は地方弁はないです。あるかもしれんが一般化しとると思います。あ、でも後のことをうらといったりうわっぱりという言葉が上着の事を指すことを理解してたりはします。じゃぁあるんじゃん。とか言ってもでも東京のまねだったりがあるかんな。

あ!今調べたら虫が「たかる」ってのもうちの地域の弁らしい。へぇ、調べてみるとのこってんのはあんのなぁ。捨てるをほっぽるって言うしなぁ。あるんかぁ。でもほぼじじばばしかつかっとんの見たことない。


ところで最近の混ざる率は名古屋が一位、北海道が二位、博多が三位くらいと思われる。でもまたゲームセンターCX的な流れで永井先生の動画を見てその辺りも混ざってくるかも知れません。声が好きな人間のなまりは特に移る。

せっかくなので今後も色々調べたいとは思うのだが、取り敢えずいい加減自分のふるさとがどこなのかちゃんと設定を固定して欲しいです。

いまふるさとと書いて「昔のようにしかぁってマイマーザー」とか浮かんだのはきっと永井先生の仕業です。最近始めてアレが永井先生だと知りました。遅い。

まぁ所謂あのニコニコしたやつで見たんだけどさ。若干短いが購入リストに入れようかと。本編は…買うにしても相当後になるか買わないか…判断が難しいところです。初期三作だけやっても十五万かかんだから。まぁBOX三点買いの1-2-3。当選倍率はいくつだろうか。とか競馬なんて偶にしか見ないよ。…いや、やるほどもお金ないし知識ないからやってないですよ。


映画なのに放送よりも短いというのは悲しいが、逆にセイバのテンポの速さはテンポの良さに繋がって結構良かったかと。ただ前知識がないと一瞬なんだか分からんがww


全体的に各方面のオマージュした印象のある映画。香港映画、怪獣映画、ジュブナイル系(デジモンのだが)展開なんかは映画ではないがまさしくファンタジーの王道な。此処は俺が食い止めるからのタイマン、ボス真の姿、主人公最後の力みたいな。ニコニコしたところで見たので仕様によりEDまでは見れてないんですが、なんでもNG集があったらしいです。このNG集と見てジャッキー・チェンを浮かべるかバグズライフみたいなのを浮かべるかで世代の差が分かりますww

メインは成長期でっていうかラスト以外ずっと成長期です。途中もないです。その分テンポと熱さがあります。っていうか大体途中ないよな短い奴だと。

まぁ内容は説明する意味がないくらい見たら直ぐ分かるのでヒントのみ出すと、ソーセージウェイオブザドラゴンモデル。年を追う毎に大きくなるゴブリモン。鼻は排気口。成長期と成熟期の差無視。勇者王シャイン。犬は男前。

勇者王でシャインなのはイメージに合うのがどれか分からんかったので適当なのです。

ちなみにこの作品を見た後に「これって結局どうなってたの?」とは聞かなくていいんだ。見たまんまでいいんだ!一見は完全に投げっぱなしなのでそういうのは気にしない。戦闘シーンがいいのでよしだ。空中で襲ってくるピピスモンとか熱いし。

それでいいのさ。兎も角20分がーんとガン見していればいいんだ。後のことは気にするな!

だからこの感想も何処となく雑なんだ!




僕は話し始めた。一乗寺君が気を利かせてホログラムのスイッチを切った。


「僕は…これからファイル島の復興を重点において色々やってきたいって思っているんだ」


 割ときっぱりと僕は言った。


「色々と考えて、思ったんだ。QDCのもっと上の地位の奴はどうしても開拓とか武力行使とかそういう、やり易い方法で組織を盛り立てようってしてる。それが全体という訳じゃないし、それ自体もこのデジタルワールドを良くしようって考えなんだから、それだけを否定するってのもあんまり僕はしたいとは思ってない。

だけど、やっぱり僕には僕のやり方が合って、それでやりたいこともあって、今は寧ろ先に進むよりも今までのことをもう一度見直すってのがいいんじゃないかって思うんだ。だからちょっと前までは僕が、言い方は悪いけど、あの無法地帯で率先して指示出した方がいいかなって思ってた。

でも、そうしようって一乗寺君に言われた時、なんとなくそれだけじゃないって気がしたんだ。元々どこに行っても目立つ人間って訳じゃないからってのもあるかも知れないけど、やっぱり皆が言わなくても分かるところなら僕よりも適任の人がいるかなと思う」


 こうやって自分が物事の意見を主張する時には決まっていつも変な気分になる。なんと表現すればいいのか、いまいち分かり難いけれどなんんとなく果たして今喋っているのは自分なのかそれとももっと別の誰かなんじゃないかみたいなそんな変なことを考える。

 無意識のうちに言葉が出てくるってのが分かる。別にそれは天才的な発想が湧いてくるとかそういうことじゃなくて、単純に思ってることがそのまま出てくるって感じかな。喧嘩したときの言い合いに似た感じ。

アメリカ人の使うスラングみたいなある意味を込めてはいるものの、その意味事態がそれ程大した意味を備えてないみたいな、単なる言葉だけが浮んできていて、でも口で喋っていることは全然普段考えていることだけでなんだか自分で喋ってても良く分からない。


「ファイル島は僕にとってはこのデジタルワールドでの故郷みたいなものだから何より大事にしたいこともある。あそこに住んでいる殆どの人にお世話になったし、逆に助けたことだってある。だからあっちの方に就けって半ば無理やりに飛ばされた時もそんなに不満には思わなかった。

強制的って事柄自体は好きじゃないんだけどね。それに、あそこのテイマーはもう殆ど此方側にはいない。だから今一番あそこを分かる僕があそこの復興に行くべきで、そう色々考えてたらやっぱり自分が一番やりたいことはそれなんじゃないかって思えてきて、だから偶には自分の考えに従って動くかなと思った。って偶にとか言っても普段の僕は知らないと思うけど」


 僕は自分を制御できる人間だ、と思う。そうせざるを得ないっても言い換えられる。勿論笑いたい時に笑うし、怒る時には怒る、まぁ僕が怒る時は別にそんな怖くないって紫苑から言われるけど、その辺の感情は普通にあるよ。でも、怒らないと思えば怒らないでいるし、泣かないと思えば泣かない。極端に何かを変化させない。

丁度それは機械のパーツみたいにあるべき形のまま其処に存在して以上も以下も出来るだけないようにする。錆びて増えた分は削るし、欠けた所は直す。当たり前を本当に当たり前としている。

 人が感情的な分僕は冷静にいつも努めていた。それは感情的な奴でとても嫌な奴を知っていたから。そうなりたくなくて常に静かに人の後ろに回っていた。それで考えが回る分頼れる奴みたいにも思われていたし、格好いい奴とも思われてたな。バスケ部の副キャプテンもやった。

生徒会の書記もしてたし。考えてみると多分過去にあった全部のそういう役職が二番手三番手だったな。小学校のサッカーも副キャプテンだ。

 でも、最近は少し前よりも感情的になったと思う。相変わらず二番手以降ではあるけどそれでも実は自分が負けず嫌いだったってことに気付いた。それはきっと紫苑の所為というかお陰というか、そうだと思う。

僕が知っている中で一番感情的で、でも決して全部を見せる訳じゃなくて感情的だけど感情だけで喋ってるんじゃなくて、何処か真摯ででも全然紳士的ではなくて、そういえば僕の紳という字は紳士的であって欲しいって親の願いだとか何だとか聞いた覚えがあるな。

兎も角、紫苑といると自分もとても感情的な人間な様な気がしてくるほど紫苑は感情的だ昔の知り合いが僕をみたら結構変わったと言われるかもしれないな。

 なんだかやっぱり変なことを考えている。でも普段からこんなこと考えてる訳でもない。折に触れて、なんか特別なことでもあるときぐらい。特に人と話すときが多い。話しながら別のことを考えてるってどれだけ失礼なんだ、って気もするけどね、でも仕方ない。


「へぇ~、アンタも考えることは考えてるのね」

「話の腰を折るなよ」


 イノミヤの余計な感慨発言。知らないってイノミヤの思ったことなんて。って言うか間の抜けた発言ばっかしてた奴に言われたくないし。


「まぁ、いいや。それで僕はファイル島の復興作業に志願したいんだけどどう思う?」

「いいんじゃないでしょうか。紳さんがそう考えているのでしたら僕も賛成です。ファイル島の復興、是非お願いします」


 イノミヤの相手をしながら人の話に付き合える一乗寺君はある意味でも凄いかもしれない。そんな無駄なことを考えながら最後に確認すると一乗寺君は快く了解してくれた。と調子に乗った僕は余計な事をもう一つ加えた。


「有り難う。あ、でさ、もう一つわがままいいかな」

「あ、はい、なんでしょうか」

「今、新人のテイマーにさ、齋藤義貴君っていう子がいるんだ。その子をPDPタウンの対策本部に連れて行って貰えないからって思うんだけど」

「えっと、ちょっと待って下さい」


 一乗寺君は僕にそう言われてパソコンをまた操作し始めた。僕の言った子が誰だか調べているのだろう。僕は名前をもう二度復唱した。


「齋藤義貴君だよ。さいとうよしき」

「あ、はい。えぇこの子ですね。十一歳…というと伊織君と同い年ですね、京さん」

「そうね、伊織も小6だもんね」


 カタカタとパソコンで僕の言った義貴君の名前を調べると切ったホログラムのスイッチを入れてデータを表示した。その際誰だか分からない人の名前が出たけれどまぁなんだかその名前を挙げられた人間と同い年の人間を話題に出すという行為は小父さんくさいことに思えた。元々彼は僕よりも全然子供染みていないけれど。


「何故この子を?実戦は殆ど経験がないらしいですけれど」

「それはそうなんだけどね。結構もうちゃんと自分でもやれることをやりたい、みたいな事を言っているからさ、かなりやる気あるししっかりしてるからこういった大舞台なところでちょっとさせてあげたいなって思って」

「そうですか、はい。わかりました。メンバーに組み込めるよう考慮します」

「重ねて有り難う」

「…代わりに、逆に少し尋ねても良いですか?」

「ん?あぁ、別にいいよ。何かある?」


 大方用が済んだなと気を抜いてまた勝手にクッキーに手を伸ばして京に手の甲を叩かれながら一つぱく付くとその軽い気分のままに一乗寺君が問いかけてきた。尋ねられることがあると思っていなかった僕は一寸何のことかと思考を廻らせた。

「先程、ファイル島復興を志願する理由の一つに紳さん以外に詳しくあそこを知っているテイマーがいないと仰ったと思うんですけれども」

「うん、そう言ったな。それで何?」

「確かこういう言い方、あの島のテイマーはもう此方側にはいない、とそういう言い方をしたと思うのですけれど、それはどういった意味だか教えて頂けますか」

 あまりに唐突な核心の突かれ方だった。一瞬自分でもそういったかどうか思い出せなかったけれど、でも多分一乗寺君がそう言っている以上はそう口走ったんだろうと思った。此方側にはいない。それはどういうことか、一乗寺君はそれを僕に問いかけてきた。

ということは、という考えが頭を過ぎる。まさか此処に関しても同じことを考えていたなんて。一乗寺君は此方に身を乗り出してきた。顔は冷静だけれど心中は少し興奮している。多分彼も僕と同じタイプの人間だ。僕とはもっと別の理由でだと思うけど。

もしかしたらそれ故に一乗寺君は紫苑を好きでないのかもしれない。僕も最初はアイツがかなり嫌いだと思っていたし。でもそしたら逆にもっと仲良く出来るかもしれない、希望もあるね。


「多分同じ事を考えていたと思うのでもっとはっきりと言います。紳さんもあの島で死んだとされている人々が向こう、デジドラモンの側に行ったと考えているのですか?」

 まったくその通りだった。言い方一つで思惑が伝わるというまるでアニメみたいな話が目の前で起こっていた。よくよく賢い人だと感じた。賢い格好いい運動神経良い、こりゃモテるよ。よくイノミヤが一緒になれたもんだと本気で思う。口にしたら殴られる。多分グーで。それも二発くらい。


「…そう。僕もそう思っている。そうでないと説明し難いところがいっぱいある。ただ、僕は捕虜になったんじゃないかとも考えてる。…そうあって欲しいってのが本心だけど」

「そう…ですよね」


 そう言うしかない僕と答えを聞いて少し気落ちしたらしい一乗寺君。思っていることは同じで、それに確信を持つのが好ましくない辺りも同じだ。そりゃ、信じたくない、僕も。もしかしたら裏切り者、背信者、ユダがいたかも知れないってのは。そしてそれは既に結花さんのことでいないとも限らないと証明されている。


「そして、もしかしたら今もまだ…」

「紳!」


 と、僕が怖いことを喋りかけると、京が大声を出した。手に持っていた紅茶が少し床に零れてカーペットに染みを作った。


「…その先は、今は言わない方がいいでしょ。賢君も賢君よ、そういうことはあんまり煽っちゃ駄目。少なくとも今はまだ絶対良くない」

「…悪い」

「…すみません」


 ちょっとした嫌な暗い空気が辺りに立ち込めた。イノミヤは布巾を取りにダイニングに向かい、一乗寺君はパソコンに目線をやった。僕はといえば特に何も出来るものを持っていなかったから仕方なく頭を掻いた。


「賢ちゃん、賢ちゃん、賢ちゃん!」

「京さんっ!」


 と、そこにドタンと音を立てて二人デジモンが転がり込んで来た。深緑のいかにも芋虫といった印象のワームモンと頭に一本挿した羽が分かり易い子供サイズの鷹顔の鳥ホークモンはそれぞれ一乗寺君とイノミヤのパートナーデジモンだった。


「なんだワームモン慌てて。何かあったのか?」

「何日か前にアイツが出たんだって」

「つい先程の情報です」

「ちょっとちょっとアンタ達、落ち着いて話してよ。何の話なの?」


 かなり慌しい様子の二人は口々になんだかよく分からないことを言い始めた。半端に搾り途中らしい布巾を持ったイノミヤが飛んできてもっともな事を言った。


「ほらワームモン深呼吸深呼吸」

「順を追って何のことか話してホークモン」


 なんだか目の前の遣り取りが酷くどこかで見たコントのように思えて少し可笑しかった。普段冷静そうなホークモンまでも慌てているところからして多分かなり重要な話なのだと思うけれどなんだかとても笑ってしまいそうだった。


「さっき聞いた情報なのですが、数日前ナスティフォレストに無断侵入者が現れたらしいのです」

「それは別にそんなに珍しいことじゃないんじゃないの?今其処の話してたところだし」

「いや、違うんです。証言に依りますと、侵入者があのエルトリオ・O・ローランドだったそうです」

「それ、本当、なの?…たった今怖い話してたばかりだってのに」


 エルトリオ・O・ローランド。ホークモンの口からその名前を聞いた瞬間にイノミヤが滅多にすることの無い表情を浮かべた。驚いたような恐ろしいものを見たようなそれは返って普段の表情みたいに皺出来るぞってくらいの激しい変化が無いけれど、逆にそれがかなりのショックを受けている表情だと思える、所謂凍りついた顔という感じがした。

「京さん。エルトリオ…というのは誰なんでしょうか」

「それが…僕達がこの間見た奴のパートナーみたいなんだよ!あのフレイドラモンのさ」

「本当なのかワームモン」


 一乗寺君の問いにはパートナーのワームモンが答えた。此方の驚きもイノミヤと同じくらいのものだった。こっちの話も断片的過ぎてよく意味が分からない。話を繋いで想像するところによると、エルトリオって奴がいて、それはイノミヤが知っている奴でなんだか何かしら凄い奴でパートナーがフレイドラモンのテイマーで一乗寺君達と会った事があるらしいということだ。


「イノミヤ、そいつは何なのさ」

「…そっか、アンタそん時ファイル島に行ってたんだっけ」

「何、わりと最近の話な訳?」

「って言っても半年とちょっとは前の話よ。噂には聞いてない?QDCの四つ目のデータバンクにハッキングがあったって話」

「在り得るの?そんなこと」


 データバンクにハッキング?ますますよく分からない。そんなことがこっちに噂として飛んでないのも驚きだけど、そんなことがあったことも驚きだ。まぁファイル島は殆ど情報交換なんてされない場所だから仕方ないけど。

 QDCのデータバンクというのは正確にどういう存在で幾つその数があるかってのは僕のように下っ端の人間には殆ど知らされてない。というのも、いくつかに分けられたそれにはQDCの様々なデータが入っていて言ってみれば電子図書館みたいなものだ。

存在が知らされていないようにそのセキュリティや機密性はかなり優れていてこれは本当に一部の者しかそのデータの中身を知ることは出来ない。ファイアウォールの向こう側の知識と言われるとんでもない情報の次に知ることが困難だとされてる情報庫の筈なんだ。それにハッキング?そんなことが起こり得るなんて考えられないくらいだ。


「でも実際に在り得てるのよ。それをしたのがエルトリオ・O・ローランドなのよ。しかも少しもその痕跡をつかめないようにしている上に、丁寧に名前を残して言ってるのよ」

「天才ハッカーって訳ね」


 流石に苦笑い。強引にプログラムにねじ込んできたとかならなんとなくまだ想像が付くかも知れないけれど、痕跡さえ残さないなんてね。しかも名刺付きでキャッツアイ?みたいな。大層な自信だな。


「しかも、それだけじゃないわ。今のところ分かってる話でね、エルトリオは…」

「待って、それ多分当てられるよ。…つまりそいつは、デジドラモンと関係があるテイマーってことじゃない?」

「…そうよ。よく分かったわね」

「まぁだって実は三歳なんです、なんて言い出す雰囲気でもないでしょ」

「そんなん、笑えないわよ」


 笑える筈がないよね、この状況じゃ。僕の冗談に少しでも反応した人は誰も居なかった。ブイドラモンだったら或いは笑ったかも知れないけど。


「ということはワームモン…」

「うん、どうやってるかは分かんないケド、アレを使ってるかもしれない」


 と、僕の話の横でそっちはそっちでまた分からない話をしているらしい。どうせならと僕は続けて聞いた。


「アレって何なの?…まさかその盗んだ情報を使ってるなんて言い出すんじゃないよね」


 一瞬一乗寺君が笑った。嫌な空気がぶり返す。


「残念ながら、その通りです」

「それは、怖いね」


 つられて引き攣り笑い。実はさっきの話と同じくらい怖い話なんじゃないかこれは?でももう僕はその話を聞くことを止められなかった。四人も理解者というか共犯者を作りたくて仕方ないのか、僕の質問全部に答えてくれそうな雰囲気だった。なんて恐ろしい話だ、なんて思いながら僕はさらに重ねて聞いた。


「その情報っていうのは…」


 みなまで言うのは躊躇われて途中で言葉を濁した。でも一瞬イノミヤの顔を見た、目が少し伏していてもう口が動いていた。耳を塞ぐには遅すぎた。


「――――――――――。」


 僕にはそれが浦沢直樹の考えている20世紀少年の結末の内容。という風に聞こえた、らよかったと思った。そしたらあの物語の何が何だかはっきりと分かってよかったのに。でも、小さな声で呟くように言ったイノミヤの言葉も僕の耳にははっきりと何を言っているのかが分かる程しっかりと聞き取れてしまった。


「それハ、トテも、難儀ナ話でスね」


 ワザとカタコト風に言ってみた。当然誰も笑わなかったしツッコまなかった。こんな時紫苑なら笑って「頭悪い奴みたいだな」と軽く言い放ってくれるんだろうか。












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こいつはすげぇな動画。無重力中で浮かんだ水がどうなっているのかの実験映像。表面張力でバランスを保つ為に球体を常に維持している感じの水球が風やら泡やらを受けての変化がなんともまぁ。NHKちっくでした。



http://www.nicovideo.jp/watch/sm77603




在り得ないわ。私の想像の範疇をあれは超えてる。

 完全体クラスの方が戦わなきゃならないほど強いと感じる敵はこのところ見たことがない。QDCの幹部のパートナースティングモンだってその姿のままではクワガーモンと同格くらい。でもあの成熟期レベルの姿であれだけ強いなんて本当に在り得ないわ。

 私が此処に駆けつけた時は既にクワガーモンがやられていて、シェイドラモンがもう戦い始めていた。シェイドラモンと似たような装甲を全身に付けていて、技も同じく炎の技を使っている。でもあれは桁が違う。

今互角に戦っているように見えるけど向こうは全然手加減をしているように見えるもの。あれは、確かフレイドラモン。でもあれだけ強いフレイドラモンなんて聞いた事が無いわ。


 直ぐに私は戦闘に参加しようと思ったけど、やめた。私の技は全て及ばない。スウィートフェロモンも絶対に効きやしない雰囲気を漂わせているし、エネルギーを吸うスウィートハニーストローの効果が及ぶ範囲にまで近づくのは私では不可能。

シェイドラモンと協力すればどうにかなるでしょうけど、でも私の方が攻撃される確率は高いし、それだとシェイドラモンが私を絶対庇いに来るだろうから邪魔になるだけ。仕方なく私はクワガーモンを戦闘の範囲の及ばないところに非難させ、治療しながらその様子を見守ることにした。

 シェイドラモンはフレイドラモンと距離をとった上で数メートル上空から手を前に構え火球フレアバスターを威力を弱め連続で放った。相手も炎の属性を持っている以上威力を下げたそれがダメージに繋がる筈がないけれど、何かの狙いでかシェイドラモンはそれを放ち続けた。

 フレイドラモンはそれを凄いスピードで走り回り避けると隙を見ては似たような火球を撃ち返した。ただ、フレイドラモンのそれは溜めが少しもないのにシェイドラモンの数倍の大きさを保っていた。シェイドラモンは旋回してそれを避けながら火球を放ちフレイドラモンが近づくのを確認するとまた距離を取った。

 不毛な遣り合いは続いた。連続でシェイドラモンはフレアバスターを放ち、隙を見てはフレイドラモンが返す。そしてそれをシェイドラモンが避けている間に間を詰めるとシェイドラモンはまた距離を取る。その繰り返し。タイミングを計ってるのか私にはよく分からないけどなんだか切迫している戦いの割りには随分ゆったりとした戦いに見えた。


「主、中々の手練れだな。拙は楽しいぞ」

「そりゃどうも。でも今のアンタに近づいてもらっちゃ困るね、その右腕のもんをさっさと放ってくれなきゃ」


 急にフレイドラモンの方が手を止めやたら大きな声でそう言った。シェイドラモンもそれに呼応して撃つのを止め切り返した。


「ほう、気付いていたとはますます楽しい」

「いいからそれどっかに放ってくれない?危なくてとても叩きになんかいけないよ」

「そうか」


 話している内容がよく見えなかった。フレイドラモンが暗器かなにかを右腕に隠しているらしいのだけど私には何処にもそんな様子が見えなかった。暗器だから見えないのは当然なのだけれど、シェイドラモンはよく其れに気付いたものね。彼の言うとおりそれは凄いことなのかしら。


「なれば、放つ、と、しよう!」


 フレイドラモンがそう気合いを込めて叫ぶと同時に右腕を地面に向けて振るった。すると右腕から何か強いエネルギーの塊が飛び出して地面に当たって激しく炸裂した。その余波で周囲に強い風が吹き荒れ、地面が削れて細かく砕け其れが舞い上がり砂煙が一瞬にしてあたりを包んだ。

それは此方にも及んで私は腕を顔の前に翳してどうにかその先の様子を窺おうとした。でも砂煙で辺りは良く見えず、炎の発する光と恐らくは二人がぶつかり合っている音だけが認識出来て、実際にはどうなっているのか分からなかった。

 どうなってるのよ、私が声を上げそうになった時煙の内側からエネルギーの波が飛んで来た。時空が波打っているのが分かるほど強いそれはシェイドラモンの技だった。全身からエネルギーを全方向に放出する不可避の攻撃、サイキックウェーブがその勢いで砂煙を吹き飛ばすと私は漸くその中の光景を窺い知る事が出来た。

 予測できたこととはいえ、その光景を見るのはかなり不安を感じさせられる行為だった。シェイドラモンは装甲のところどころに焦げ痕を付けて尚且つずたずたに切り裂かれたような痕が残っていた。全身からエネルギーを放出するという大技をやったせいで息もかなり上がっていたし、片膝を付いてまで呼吸を整えようとしていた。

 一方のフレイドラモンはまだ全然余裕の表情で腕を組んでいた。ただ、幾らかシェイドラモンの技も通じたのか少しだけ攻撃の後が残っていて、何よりはっきり分かったのは大きく装甲を削られた右腕だった。だけどフレイドラモンは右腕を顔の前に翳すと何か少し集中した様子でその右腕から炎を発すると、あっという間に装甲が元の状態に戻ってしまった。


「雑兵とは思えぬな。完全に死角を取ったと思ったが、全身からエネルギーを発し回避するとは」

「一応選び抜かれた雑兵、だからなそれにしてもそのサイキックウェーブが片腕のエネルギー放射で防がれるとはね、まぁダメージなんか期待してないけど」


 二人ともどうやらかなり戦いを楽しんでる様子だった。笑ってやり取りを交わすとフレイドラモンは首を回して、シェイドラモンは立ち上がった。


「そんなアンタに本気を出さないのは失礼だな」

「ほう、今まではまだ本気で無かったとは。それは興がそそるな。して、如何なる趣がその本気とやらにはあるのか」

「アンタがもう少しくらい真剣になるだけの代物さ」


 シェイドラモンは大きく息を吸って吐いた。そうしてから拝むように上を向くと身体に薄く炎の膜のようなものが見える様になっていた。


「バタフラモン姉さん。見てるんだろ?コイツは追って来なきゃ戦わないらしいから俺がやられたらクワガーモンついでに俺も頼むぜ。それと俺がこういう姿になったってのは秘密にしといてくれ。とやかく言われるの嫌だし」


 あの戦闘の中私に気付いていた?という驚きよりも単純な納得の方が先にきてしまった。なんとなくフレイドラモンはむやみやたらと戦っているのではないとその戦う姿を見て私はふと感じていた。そしてそう私に話し掛けたシェイドラモンがこれからなる姿というのは多分見られると今後のあの子に支障をきたすって事もなんとなく分かった。

あの子は今の地位が気に入っていてそれ以上出世を望んでいないということも知っているし、それにあまり今からなろうとしている姿にはそうそうほいほいとなってはいけない制約が何かあるのだろうなと言うことも想像が付いた。それ程に強いエネルギーと眩い光をシェイドラモンは発していた。

 全身を包む炎の膜は次第に背中に集まっていき、それから背中の羽を燃やした。燃えた羽は一旦背中から離れ散ると、直ぐに炎のまままた背中に形造った。炎のような羽から炎の羽へ。考えていたよりも変化が乏しかったけれどどうやらそれがシェイドラモンの次の技、多分あの子のことだから特に何かを考えたわけでなく、単純に強くなるためだけの力を其処に込めたのだと思う。兎も角背中に生えた炎の羽はとても綺麗だった。

「…いやいやこれは中々どうして。美しくあり、そして強い。是は、かなり本気になってしまいそうだ。主と同じようにそうなるとかなり身体に痛みを伴うが」

「あ、分かる?これねぇ終わった後偉い痛いんだよ、だからそれが出来れば達成感の苦痛で在りたいんで、行くぜ!」

 シェイドラモンは地面の一蹴りで一気にフレイドラモンとの間合いを詰めた。先ず右のストレートパンチ、それが上体を捻って交わされると続けて右を引くと同時に左のショートアッパーを顎に向けて打ち出した。

 完全にそれが当たったと思われた瞬間にフレイドラモンの右足がバネの様に彼の身体を宙高くへと跳ね上げ攻撃が当たった衝撃を逃した。一見して攻撃が当たったように見えたそれにどうにかそういう事情があることを認識した次の瞬間にはその後をおったシェイドラモンの左足があり、フレイドラモンの左足がそれを完全な攻撃として繰り出される前に止めそこを足掛かりにまたも宙へ飛び上がり付近の木へ地面と平行の向きに着地した。

 それから直にフレイドラモンはまたバネの様に木から離れ空中を漂っていたシェイドラモンに左のパンチごと飛び込んだ。シェイドラモンは炎の羽を空中の方に向けて羽ばたくとフレイドラモンが予想していたよりも早く地面に着地し繰り出されたパンチを受け流し、尚且つその受け流した手で掴み身体の下に回りこんでもう一つの手でも掴んで一本背負いに投げ飛ばした。

 頭から地面に向かったフレイドラモンは何事もなかったかの様子で緩やかに身体を回転させると綺麗に足から着地した。着地した瞬間はやや身体が後ろに仰け反った状態だったけれど直に直立の状態になってシェイドラモンの方へ向き直った。

 先程までの戦いと違って今度は息を付く暇もない高速戦闘になった。向き直ったフレイドラモンは一瞬私の視界から魔法でも掛けたように消えると直ぐにシェイドラモンの真後ろから鋭いキックを繰り出していた。シェイドラモンはそれを思い切り受けてしまいそのまま凄い音を立てて木に激突した。背中の羽で木が炙られ煙が少し立ち昇った。

 けれどもシェイドラモンは直に体勢を立て直して攻撃を図った。フレイドラモンの真上に飛び上がり上からパンチを繰り出す。しかしそれを皮一枚のところで交わしたフレイドラモンは逆にボディにパンチを入れてまたも吹き飛ばした。今度はシェイドラモンも無抵抗で木にぶつかる事は無く、その前に地面に着地したけれど勢い余ってそのまま暫く滑っていった。

シェイドラモンはフレアバスターを放った。最初の時のフレアバスターと違い今の状態ではフレイドラモンが放っていたくらいの大きさのものを連続で撃ち出していた。フレイドラモンもそれに対抗するように炎を放ちその大方が相殺されて余ったものもお互いの身体に直撃することは無く周囲に当たって弾けた。

そうしているうちに辺りはいつの間にか其処此処に炎がちらつくようになっていて、不謹慎かもしれないけれどそれは戦場らしさを思わせた。

炎の余りの一個が偶然にもフレイドラモンの足元で炸裂した。一瞬怯んだ隙を逃さないようにシェイドラモンはフレイドラモンに突進した。けれど、それでも見事にシェイドラモンの攻撃に反応したフレイドラモンは右のパンチ、左のパンチを受け止め、そして頭突きをお腹で受けた。

思わぬ攻撃に身体をくの字に折ったフレイドラモンにシェイドラモンは更に顎先への蹴り上げるキックを出す。当然のようにガードが入ったものの、攻撃を受け止めきれずにフレイドラモンは蹴り上げられた。そして続けて後ろ回し蹴り。それは見事に決まって先程とは逆にフレイドラモンは吹き飛ばされる事になった。

そしてまだ攻撃を続けるシェイドラモンはフレアバスターを何発も撃ち込んだ。是でもかと言う位撃ち込んだ。それでもまだ足りないと思える程フレイドラモンは強い。タップリ30発は撃ち込んだかと思われる辺りでシェイドラモンは手を止めた。数歩下がって様数を窺う。

私もその様子を固唾を飲んで見守る。僅かにクワガーモンが意識を取り戻した様に思ったけどあんまり気にしてもいられなかった。それどころじゃなかった。

爆発の煙の中からフレイドラモンが姿を現した。流石にダメージを喰らった様子は見られた。ただ、少し様子が変だったのは、さっきのシェイドラモンと同じ様に身体に炎の膜が張ってあったこと。鬱陶しそうに煙を腕を振るって散らしシェイドラモンの方を睨みつける。炎の膜は少しずつ色濃くそして段々と膜から炎そのものへと姿を変えていった。


「ここまでやるとは、想像していなかった。成る程素晴らしい。だが、此れまでだ」

「アンタの本気の一片が見られただけでも十分だね。ってもまだやられる気分でもないけどね」


 フレイドラモンの身体の炎の膜は完全に一つの炎の塊になった。前かがみになり両肘を引き身体の脇に付ける。炎が勢いを増す。揺らめく。燃え盛る。そしてゴウっという音と共に炎の轍を残してシェイドラモンを貫いて走り抜けた。宙高くにシェイドラモンは舞い上がりその過程で炎の羽は解けるように散らばり消滅した。

フレイドラモンは何時の間にかシェイドラモンとフレイドラモンが元いた場所とを結ぶ燻る一本の炎の跡の先にまで行ってしまっていた。けれど、シェイドラモンが宙高く舞い地面に向かって落下し始めると飛び上がり素早く、丁寧にその身体を抱いて地面へと降りた。

 殆どどうなったかが分からなかった。ただ、シェイドラモンはかなりのダメージを受けて気絶したらしいことは遠目に分かった。先ほどの言葉や、フレイドラモンの態度から私はそれを取り立て危険なこととは思わなかった。

どうあれ彼はシェイドラモンと戦ってそれでも私達を無事に帰してくれる。不思議と全てのことがそう私に確信させる要素に思えた。或いは易しく自分の弟を抱く姿を見ているからかもしれないけれど。

 フレイドラモンはぐったりとしたシェイドラモンを抱きかかえながらゆっくりと此方に向かい周囲をキョロキョロと見回し始めた。


「エル、些かやり過ぎた。回復フロッピーの類は残っているか」

 するとフレイドラモンは勝利の雄叫び、という訳ではないらしい事をけれどとても大きな声で叫んだ。仲間に呼びかけているのかしらと私は思った。今更だけれどそういえば侵入者はデジモンだけでなくそのテイマーもいるんだということを思い出した。


「人に使ってる場合じゃないんだけどな」


 とそんな声が私の真横で聞こえた。驚いて私はかなりの勢いでその場から飛び退くと反射的に手を上げて無抵抗の意を示した。急に攻撃されて私まで気絶では困る。


「そんなに驚かなくても。まぁゴメンね、アイツが如何してもって言うからさ。ヘイ!フレイドラモン、こっちにいるぜ」


 フレイドラモンのテイマーと思しきその人間はやけに飄々と、そして笑顔で此方を向いてきた。フレイドラモンとは違い少しも殺気や気概を感じなかった。だからこそ側にいることに気付かなかったのかもしれないと私は思った。そしてその人間はまだそれ程年齢を重ねているようには見えず、QDCのメンバーとして時折この街に来る人間達と大差ないか、僅かに上かそのぐらいに思えた。

 フレイドラモンはそのテイマーの姿を確認するとまた戦闘の時に見せたスピードで此方に来た。近寄ってよりはっきりと分かるその威圧感。アルケニモン様の其れにかなり近いものがあり、もう少し厚ぼったく野暮ったい感じがした。何にせよパートナーとは対照的な空気を漂わせている。


「そいつを其処に下ろして、フレイドラモン。まとめてクワガーモンも治療しちまおう。行くぜ」


 なんだか状況の良く分かっていない私をおざなりに少年テイマーはあまり見たことの無い型のデジヴァイスから不思議な光を照射してシェイドラモンとクワガーモンに当てた。すると二人の傷が見る見るうちに消えてゆき、元通り、とはいかないまでも大分回復した様子になった。


「これでもう殆ど空だぜ。人がいいのもいい加減にしてくれよ

「何を言うか。戦は好きであるが無為に傷を着けるのは好ましくない、このくらいの施しは当然であろう」

「オーライ、分かってるって。それじゃ、お姐さん、重ね重ねゴメンね。僕等もう行くから」


 よく分からないまま二人の遣り取りをあっけに取られたまま眺めていた私だけれど、そう言われてはっと我に帰り、思わず尋ねた。


「あの、名前、は?」


 質問した理由は後になっても分からない。兎に角聞いておきたい衝動が生まれてそのまま従った。


「聞いたって如何になるものでもないけれどね。まぁレディに聞かれたなら答えなきゃ。…エル、さ。エルトリオ・O・ローランド。それじゃぁまた会う日まで。御機嫌よう」


 軽く笑うように言ってフレイドラモンの肩にエルは手を掛けるとさっと行ってしまった。結局自分でも何がなんだかわからないまま目の前の光景が突然静かなものへと変わった。やや燻る炎も残っているものの今までの戦いが嘘のように消えてしまった。


「エルトリオ・O・ローランド…」


 なんとなくその名前を反芻した。後にこの森がこの日以上の戦火に包まれることになるその日までに幾度と無くその名前の入った噂を耳にするとはこの時の私は微塵も想像していなかった。












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プロフィール

まいむ@ムーン

Author:まいむ@ムーン
現在21歳雄。偏屈で批判家のジョーカー。
性格、マメで粗雑。短気で気長。本人すら把握できず。身長、服屋のついたて鏡に入らない程度。体重、焼肉で米を大盛り2杯と普通一杯程度。
実写よりアニメ、特撮を見る。バラエティは情報系の方が好き。朝Φ新聞が嫌い。エノラゲイが嫌い。
音楽家、作詩家、小説家。いずれも毒々しい部分を持つ。最近の口癖は「ってな訳」「いやいや」「成る程」「1ミリもないわ」「鬱陶しい」
格好良くて優しい人を期待する方にはオススメできない商品。
宣伝鬱陶しい。

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