社会不適合なまいむちゃんのそれっぽいブログ。
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水溜りに煙草を投げ捨てた、
波紋の上にサラサラと雨が降る
先行き見えぬ夜の中、影は其処に映される。

小さな波紋は幾重にもぶつかり、かさなり、拡がって
大きな淀みの端にまで、微かながらも届くもの

傘の上で飛沫は刻む聞こえない音を、見えない足跡を
自転車で切り裂いた水溜りの中で、煙草は崩れて揺られた
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まぁ、仕事を始めてかれこれもう3ヶ月ちょい経つわけだが。例の通り相変わらず打ち解けてない。まぁ自分から会話をしたりせんしなぁ。自分から声かけたりしたのは本当に興味をそそられた人だけだったりするしなぁ過去全員。奴も・・・あの子もあの子もあの子もあの子も女の子ばかりですよ。ようするにそういうことなのですよ。って別にそんなにいっぱい声かけてないですよ。びびりなので。

占いをすると、頭領運だとかダレとでも仲良くなるとかバイタリティーに溢れてるだとかすごくその系の話がよく出てくるんだが全部うそです。いかに占いが嘘かよく分かるんだが(と、一応『先天的に持っている資質』という言い訳がなされているのでそう言うもんでもないか)本当に何故でしょう。

いつも仕事は適当です。言われたことしかやりません。仕事の上昇志向なんてありません。精々客が不快にならないか、ちょっといい感じの気分になってもらえるかぐらいの努力しかしません。やれる限りのカバーしかしません。

話しかけてもらったとき以外にはフレンドリーな感じに声をかけたりはしません。趣味は大体家の中で完遂します。

まぁ、そんなもんだよね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・トマタ。
そして行くのめんどい。で、ようやく紙がきて払ったよ。あーうーはねぇ、仕事が雑過ぎる。あと直接店に来い的な態度がいかん。なんで止まってんのに紙がけぇへんねん。そして直ぐ未払いでとめるつもりならっさっさと先月分の奴も払わせろ。店には行かないけど。

っていう訳で、携帯使う機会なんて殆どないのに持ってます。といってないと連絡取るのに困るんだがね。ってかバイト先も連絡が全携帯ってどゆことですか。先に家電でしょーが普通。たしかにいつでも捉まるのかもしれんけどさそっちの方が。まぁ、いいけど。



どーでもいいが最近のお笑い業界はパンク気味ね。っていうかお笑い番組がだんだんつまんなく感じてきた。後イケメン芸人がダレとか歌が上手いのダレとかドラマとかどうでもよくなってきた。ほんと使いまわし増えたよね。なんかもうほんとどうでもwii
ん~、しかしよく考えたら今同年代の人に対して女の子というのは失礼な気が。でも知り合いもそうでない人も大体同年代はいかにも女の子というイメージが。野郎共と話してても女の子とは言わんにしても女子とか言うしな。

あー違う。そういうことを話そうとか思ってるわけちゃう。身内の野郎共も彼女なしで暇アリ(まぁ暇暇言っているのは暇が出来て集まれたときだけで、実際そうそう暇でもなさそうな感じだが)でそういった事をあれこれ言い合ってましたさ。

どういう下着だったら良いかとかそんなもん見た事もない癖に話あったり(下着は、ちゃんと選んでるって感じられるんだったらなんでも良いとは思いますよ。仕事場に先輩の持ち込むPJがあるので読みたい気もするのだが、何か違う意図にとらえられるのは目に見えているので無理です。そんな勇気ないです男気もないです)

しかしオタの多い身内なので(世間的にももしかしたらそうなのか?疎くてすまん)ニーソが何かブームな感じです。かえして!ニーソックス。まぁ服とのあわせにもよるけど、それの使い方の上手い人とか似合う人とかって何か素敵ですな。

やはり野郎共なので化粧とかの話は出ない。出てもケバいのはやだというだけの話。まぁ、そりゃぁ分からんものねぇ。わしもいっそ化粧っけのないくらいの方のほうが好みでがす。あれ?プール入った直後ですかお姉さん?(年上は全員お姉さんと言う事にしておきます)とか、ショッキングピンクなまぶしさ!とか目の上が完全に紫なんですけど・・・ってのは苦手で、どうもあの色が・・・なんか・・・個人的に嫌な記憶があるので・・・・なのでより何が良いとかは分かりません。っていうかあれか、あんまり男子が分かってても困るよね。せっかく女子の領域なんだからどうなってんだろう?っていうぐらいの立場でいてていいのではないでしょうか。言い訳か?

気が付くと以外と味もそっけもないような服装やら態度やらに惹かれるらしいです。フライトジャケットとかライダースとか着てる女の子もいいよね、とか。ほしのあき?おぐらゆうこ?ごめん無理だわとか。まぁブームにのっかってツンデレ好きなんだろうかね。

といって露出が高いのとか女性らしいのとかが嫌いってわけでもない。やっぱ線の美しさはあるわけだし雰囲気の柔らかさもどんな態度の人であれ持ってはいるし。なので正直よっぽど年上か馬鹿か太ってるぅぅって人でなければ拾いストライクゾーンのどっかに入りますね。ただ、大体ストライクゾーンに入るのがカットボールだったりスローカーブだったり高速スライダーだったりで(自分の心の)扱いに困るよ。


ところで、小説に使ったりその他諸々使うかもしれないってことで携帯に男女(男の方は少ないが)の服装のリストをメモってあるが、後で見てみると正しいんだか正しくないんだかな名称で書いてあってよく分からんときもある。そして色々書きすぎてどれに使おうとか思っていたか忘れたりとかでめんどいです。


あーモテなくていいから彼女くれ。とか言ってる奴に彼女なんかできっこないわけで、一体いつになったら身内のみんなに女が出来るんでしょうか。まぁ、特になんかしてる訳でもないしな。なんかしなきゃ。
仕事では台入れ替えがあったり、アラド戦記ではDQNと組むことが多くて泣けたり、スロはイベを逃したり(まぁ儲けに行くと負けるのでその方が自分にはいいのかもしれない)4号機で勝った事が一度もなかったり(っていうかだから投資額・・・故に打ってません)新しく入った先輩がうざかったり(矛盾しているようですが、所謂出戻りの人です。なんでも過去一番バイトが長かった人だとか)マインドゲームのスペシャル版が24000円で泣けたり(買えねぇっつの)小説がじぇんじぇん進まなかったり、ニコニコバンドの人がうらやましかったり。バンドやると言う身内がまだ病気で動けなかったり(社会的な意味でな。健康って訳でもないが)

ドラクエ7はラストのラストでCD読み込まなくなって止まってたり、8は8で結構面倒だったり色々なゲームやったせいで中途半端な進み具合だったり、キングダムハーツ2は既にノーマル版で3,4回フル全クリしてて若干飽きてリミックスやる気にならなかったり(っていうかね、別に英悟版である必要性を感じない。FF系はこのインターナショナルが若干面倒なんだよね。同じのを更に楽しむ為には2度かわないかんってのが)

最近うんちの出がよくなかったり、いい加減一人でいるのに飽きたり。身内はみんなお酒が糞弱いので全然楽しむ程呑みあえなかったり。ハルヒの新刊がいつまでも延期だったり。そもそもコレクトしたい物を集めるのにこのままでは2,30年くらいかかるんじゃないかと思ってきたり(多趣味って良い事だとか言われる時あるけど、お金がかかりますよ)

いいかげんベースの新しいの欲しかったり。方向性に迷っていたり。やっぱり小説書けなかったり。単車買いたかったり中免欲しかったり。車はとっても使う機会皆無だったり(三人使う人がいるので絶対に使うときに置いてないのが分かる)ニコニコは削除とコメ禁の嵐だったり(あれ?時系列おかしいかい?)

もう、大変です。
今まとめ書きでこの時間がタイムリーだったかどうだったかすらもよく分からんがこないだまで「プロポーズ大作戦」ってのを見てた。
相変わらず色々なテコ入れバーターあれこれでまぁあれだがそうだね。イミフ
ネタバレあるかも。


正直全体的につまんないと思いつつ見てたんだけど、脚本家がどういう展開を作るのか興味があって見られた時は見てた。ラスト、ぶっ飛ばしてやろうかなと思ったけど。

こういうわかりやすい話の奴でラストに、視聴者さんがそれぞれ結末を考えてくださいみたいな灰色決着ってさ、限りなく嫌いなんだよね。単に結末を作るのはいかんというアレが入ったのかもしれんし、目論み色々あったんかもしれんけどさ。個人的にはいかんよね。逃げじゃん?それってさ。せめて脚本家の意向がどっちにあるかぐらい何か言われてたとしても上手く隠してのせてくれって思った。っていうかどうしてヒロインがその行動をとったとかがないからよりイミフ。


まぁ知らない人の為に適当に説明つけると、ヒロインが今結婚しようとしてる奴と結婚するか主人公のジャニと結婚するかどっちだ!ってところでラストな訳だけど(ネタバレだが別に脚本から考えると問題ないようには思う。)

知らないよ、と。何がいいたかったの?ってのは別に主張の為にドラマがあるとかいう訳でもないから言わんが、何言ってるか分からないってのは本当にいただけない。もの書きとして許せない。全行動が解せない。くだらないおはなしを続けるっていうのもね、別にありなんだよ。それで終始通してもそれはそれで単純におもしろいってのならいいんさ。

でも結末付けたり本筋があったりとかいうんだったらまとめてほしい。総括の出来ない脚本家はうざい。色物過ぎて理解できないとかならともかく普通に言葉数が足りないイメージがあるもの。


まぁ、いいけどね。いつ以来からか月9には期待しなくなったから。ラストクリスマスは個人的に好きだけど。ってか織田好きですか?最近はほとんど役柄変わらないよなぁ彼はwww

まぁ、楽しく見たって人に悪いので内容批判はしないでおきますよ。あくまで外の人とか大人の事情とかに。本当に、人があたまを使わなくなったから今は頭を極端に使うような話(っぽいの)か全然使わないのか、泣ける(風)なのかのどれかが売れてて困るわ。映像化されんのがただの人気なのがなぁ・・・あとされ方も・・・

宮部は理由とか(まぁ手法やら心意気やらが凄かったのでこれは別に良いが)模倣犯とか微妙なチョイスだったりが悲しいよ。ブレイブとクロスファイアは中だけ。RPGはなかなか…あとまだ面白いのもあったよな・・・まぁ数が数なだけに半々だけどさ。売れたのがショボイ方ってのは・・・もっと映像化しておもろいのあるけど。子供を扱ったのなんかは特に良いと思うけどなぁ。色々あってそしてタイトル忘れてあげられんがwww

ってまぁこれ以上行くとマニアックで訳わからんくなるからやめます。
という訳で近年脚本家は本当に頑張ってくれ。企画とかプロットとかやること色々で大変だろうけどさ。
先日、バイト帰りにぬるぬるとした湿気の中で柔らかい雨が降っていてなんか嬉しくなった。よかった、梅雨はまだ此処にあったか、と。
まぁ湿気というか空気感的には明らかに朝も夜も梅雨だなってのは分かっていたが明確に雨が降っていないとなんか気持ち悪い。梅雨の湿気は個人的にはぬるいとかジメジメするとか言うイメージはなくて、ほわほわしててぬくい感じがする。…まぁ前線の具合によっては雨がめっさ冷たかったり、堅かったりするんだけど。

久々に柔らかい雨を感じた。この雨は春雨の時でも降らないので本当にこの期間だけ。夏になってもまた別物になっちゃうし。あと近いのは冬入りの辺りの雨くらいか。まぁ温度が違うからまた感想も違うんだが。

雨音も他の季節のもんより明らかに違うし、触れる感じも傘に当たる具合も違う。これがもっと集まって粒が大きくなるとぼだぼだ降る雨になるんだよな。湿った脱脂綿みたくなる。

しかし擬音がまたどうしようかというところ。パラパラとは違うしポタポタでもシトシトでもない。ぽろぽろもないしパタパタでもない。ぷるぷる?うんむ・・・ぷろぷろ・・・近いな。トテトテ…は別の意味も混じってくるしなぁ。ぷらぷら・・・か?これも別の意味混じってきそうだ。

ぷぱぷぱ・・・いい難いわ。さぷさぷすぷすぷ。ないな。……ぽすぽすかな。一番イメージ近い。ぱすぱすだと水分子の結びつき具合が弱くて散るイメージが大きいから違うな。8:2で水よりのゼリーのような感じだ。9:1か?

まぁ擬音はいいとして、大体そこだけ見ると何の話か分からん。雨ぬれてかえろかと思ったくらい。下が仕事着だったから傘さしてったけどさ。

雨で困るのは気に入ってる靴を履いてくのを躊躇うってとこくらいか。鼻が悪いので洗濯物は部屋干しでも匂いが気にならない。ってかわからん。なるならファブしとけ。

まぁ心持緩やかになれるからこの季節はいいさ。これはこの季節でしか味わえないね。


ということを大体どの季節でも言っている気がするのはまぁデフォだな。多分夏が一番好きだと思うんだが相変わらず意見が季節によって変わるわ。

そういえば7月21日には時をかける少女のアニメがフジでやるらしいので見るつもりです。劇場で見たしDVD買ったが多分見る。仕事内日だといいんだが。っていうか別の日に変えてもらうかww

まぁ、そんな感じ。
毎回思う。特に粉末のみの奴だともっと思う。

1、ふたを半分ほどはがし粉末スープを取り出す
2、粉末スープを麺の上に開け、内側の線までお湯を注ぎ3分後によく混ぜてお召し上がり下さい。


※国じゃないんだからさ、こんな面倒な手順を書かんでもええやん?

1、ふたを半分程はがし、粉末スープを麺の上に開け、内側の線までお湯を注ぎ3分後に良く混ぜてお召し上がり下さい。

終るやんけ。

ほんに謎やわ。粉末スープを麺の上に開けるのに取り出さずに開けられるか!
左手を掻く手順にいちいち「右手で左手をお掻きください」とか言わんから。馬鹿にしてんのか!

ちなみに粉末スープが袋に入ってんのは湿気対策だよな?
コスト上げによる値段の釣り上げを狙っているのだとしたら殴る。まぁえてして粉末スープだけのやつなんて大体クソ安く売ってるからおkだが。

ものっそいどうでもいい話。



ネットゲームとは、いかなる場合でも人を腐らせる魔力を持っている。

どうもまいむちゃんです。ハンゲであれこれ良いネトゲはないかと探していたところ現在はまっております



アラド戦記


ロボ世紀?だっけなはなんか全体的に閉じた感じがしていかんかったのと、FEZはうちの環境だと戦争に出るとPCが重くなって動けないのでやめた。後戦争って割りには役割分担とかが明確じゃないから切ない。まぁネトゲではぐれの人は基本やりにくいんだがね。

まぁ、ともかくネトゲやってますよと。銃使いですよと。うむ、そんなところさ。
ラストコレクション。東京に出る機会が減ったのでなかなか面白いのを撮る機会はなくなっているだろう。おもしろそうなのは反射的に撮影するとは思うが。



41、妊婦~。松葉杖がないと妊婦の体によくない、のではなく体の弱い人どうのこうのだろう。でも駅の中でなく、どっかの半端なところにあった記憶があるからやっぱり謎。

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42、これも杖関連だと思うが、一番頭身少ないのに一番紳士的な動き。

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43、ダッシュ!ダッシュ!オーレンジャ。ゲキレンジャーのげきげきかげきにはそういえばノリが同じかもしれん。どうでもいい上に別に同じでもねぇし。

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44、ドッキング、バッキング。ペースメーカー的な事なのか。詳しくはやはり謎。

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45、妙な肩幅。逆三角。奇妙だから撮っただけか。どうせトイレの表示だろ。

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46、これも多分トイレなんだが何だろうか。とりあえずとある一家である事は間違いないだろう。・・・誰やねんな。

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47、足に平べったい板の影を付けたらスキーしてるみたいだけど。妙に気合の入った絵だ。

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48、プレーン女の子。面白みゼロ。ただ、首の切り離され具合は異常

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49、正しいエスカレタの図だと思うんだが、母親の手は子供に向かってうにょっと伸びているね。きもいね。

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50、母校にある飾り。いつからあるのかは謎。テラベネッセセノビーでも可。左上のは多分ビーチボールではなく、太陽。

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以上ですた。

こんな下らんものを50もコレクトしたその心意気によくやったと誉めてやりた・・・ねーよ。阿呆か。

ということをしていて、そういう趣味ももっているまいむちゃんでした。
コレクト品大放出。


26、ローラー付きテレビラックの注意部分。どう見ても押す人と押される人にしか見えないんだなこれが

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27、注意部分2。支点力点作用点の具合でこうなります。

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28、赤、ちゃんと僕。関係ないが。自転車降りてけって事じゃねぇの?とりあえず自転車を引き連れてる子供にしか見えないが。

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29、注意3。これは意外に引く人と引く人に見える。「こりゃ僕んだい」って。

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30、電車。大江戸かな?リュックは前か、手にもちましょーと。で、前か手に持っても優遇されないからうざいと思うんだな。電車内のマナーとシステムが若干噛みあわないとわしは思っている。

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31、トイレの、オムツ換える台あるって事だと思うんだが、小さい方が偉い人で、何か話しをしている図にしか見えない。

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32、これは謎。いつどこでとったか謎。杖を持っているのは何なのか謎。杖を持った人ようの何かだとは思うのだが。

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33、32と同じ場所かねぇ?「今日はハンバーグよ」「やたー」的な。

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34、おむつ換えられるでっていう。でも金田一少年の事件簿であの放送禁止になったパクリとか言われたあの話のトリックみたなんですが。猟奇的。

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35、これはもう完全に教祖様ですな。胸を十字に切られたっていう発想もあるのかもしれんが、ローブのしたから十字架持ってるようにしか見えない。

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36、東武伊勢崎線で(どこにもあると思うが)帽子をつるしていやがらせ。今日も朝から嫌がらせ、あそれ、引越し!引越し!さっさと引越し!しばくぞ!!ネタ古。

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37、緊急消化様のホースでもあんじゃねぇの?でも謎。

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38、埼玉県内の駅の待合室にあるマーク。この絵に時計はありますが、その場に時計はありません。

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39、いっそげ、いっそげ、やれいっそげ。でも何を意味するものなんだろう?急ぐ人は右側?それとも走るなってこと?あるくなって事?×がないのでよりわからない。

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40、じーさんとばーさんは剣を構えている!相変わらず何に注意とか何があるとか分からない。断片過ぎて。

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うむ、次回でラストだな。埋め的にもいい感じだ。

その2弾



11、何かの電車内で薬か何かの広告のやつ

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12、ヴァネッサ。ではなくベネッセの筈

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13、大江戸線、優先席のところ

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14、最早ワカメちゃんとカツオにしか見えない。よくある標識。

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15、定番の非常口。ってかこれを集めるの遅くね?www

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16、箱乗り。エスカレタの注意書き。子供はやるな!大人もやるな!

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17、注意書き2。逆走危険!

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18、ベビカ。これどこだかわからん。

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19、赤子が出来ました~(ソードマスターヤマト、誤植編、風に)これも大江戸線。

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20、ジュースを選ぶ子供の図。どーれーがーいいのー!!??都庁前駅で撮影だがいたるところにあるかと。

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21、骨折編。割とわしは優先席には普通に座る。

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22、ビル下の地下街(都庁前駅に繋がる場所)の店の看板。何かもう銃を持った人にしか見えない。チャップリン。

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23、この絵が個人的に一番シュールと思われる。

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24、エスカレタで休まない。肘をかけない。ということらしいが、下の様子を見ている様にしか見えん。

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25、またエスカレタ。母親がこのベビーカーを片手で持ち上げているように見えるのはわしだけだろうか。

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こんなもんでどないだすか?まだまだありまんせー。そういやマンセーってあんまり言わないわし。
今までにゲッツしたコレクト品。画像。その名もシルエットマン。
こんだけ何を暇つぶして集めてたのかというもので若干の最近の更新の適当さを誤魔化してみる。


薄ら何処でとったかとか記憶にないのでその辺は適当にしますが一応解説。お前はこんな事をしていたのかと笑って楽しんでくだされ場幸いです。もしくは辛いです。


1、多分日比谷線で取ったの。まぁ電車なら大体撮れるか。ファイズ。

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2、新宿の都営大江戸の地下に入って都庁前駅まで行く途中にあったやつ。擦れ違い1

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3、上に同じく。階段編。

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4、大江戸から日比谷線の途中(仲御徒町駅にて)切符を買う人だが、なんとなく中華包丁を持った強盗に見えてしまう。

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5、トイレ。多分大江戸線で撮ったと思われる。車椅子キャラとか老人キャラとかで遊ぶ時に使うwww

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6、なんやろこれ?多分5と同じところかな。トイレかなんかだろ。

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7、新宿駅西口辺りのエレベーターの図。三人ってのはなかなかなかった。

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8、仲御徒町駅の駅員の図(大江戸の可能性もあるが)。でも何の説明かは謎。

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9、エスカレタの注意の一つ。撮影場所不明。でも大江戸か日比谷かで大体決まっているがwwwどこにでもあるかと。親と子供の手が融合してんのがキモイwww

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10、横断歩道渡れよ、とそういう奴。新宿にて撮影。ふらふらしてた時に撮った。

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集めたはいいものの遊びに使う物語を思いつかないというか暇がなくなってきたのでこういう形での放出でございます。小説内で使えそうな映像撮影集なんてのもあるぜ!でもそれはいつかサウンドノベル的なものを思いついたらそれで書くときに使いたいと思っている。あくまで、暇が出来たらの話だが。

日にち埋めと見易さ的に分解して掲載するです。

昨日の仕事帰り、ぷらんぷらんと帰って車道に出たら本気で車と衝突しそうになってビビった。全く関係のない事を考えてただけに動悸が止まりませんでした。そしてその時思わず口から出た。



「うわっ、すっげぇ余所見してた

危ねぇ~!」


本当に言った。別に誰も傍に居た訳でもないのになんか言おうとか思ったわけでもないのに。強いて言えばカポーがチャリ漕いでたからおもくそその独り言を聞かれたと思う。いつも喋るのの3倍くらいの音量で独り言が出た。それにもびびった。っていうか吹いた。

ありえないぐらいひとりごちたわ。なんで誰も聞いてないのに独り言で言い訳してんねやろな。危ないだけ言えばいいものをわざわざ余所見してたと説明するってwwww卑屈すぎるわwwww








 シュン達一行は一美と祐梨の騒動が収まった後ジュエルビーモンに紹介された自衛団の宿舎へと来ていた。宿舎は一行が予想していたよりもずっと整った殆ど旅館のようなところで、入り口も庶民的ではありながらも中級程度の旅館の雰囲気を持った作りとなっていた。

それは一行が本当に此処で大丈夫なのかと心配する程で、受付に既に自分達の話が通っていることを聞くと不思議な気分がした。その際、本来四人しか居ない筈のQDCメンバーの部屋割りが三人部屋に男三人と二人部屋に女二人と割り振られていたことを知り一美が元々祐梨を誘って一泊するというのは彼女の中で決定されたこととして進められていたということを知った。

 男女の二組は先ず部屋へ行った。それぞれの部屋も相応のホテルらしい雰囲気できちんと個別のバスルームも付いていた。やたらに力の入ったその部屋の作りに某かの不信感を抱きつつも部屋に非は無いので黙って部屋に入った。シュンは散々ほったらかしにされたがその後漸く一美に付き添いを頼み込んで医務室に行った。

 夕食前には少し合間がありそれぞれは地下の大浴場へ入った。女子は件の通りだったが、男子の方は一度コテモンが中型デジモン用の湯船で溺れかけるという出来事があった。夕食は自衛団が全員同じ時間で行動出来ないからか学生食堂の様な場所で各々がメニューを取る形となっていた。其処ではシュンが祐梨に水を掛けられるという出来事があったがもうその時点で慣れていたのか特には誰も気にしていない様子だった。

 食後から消灯まではそれぞれ別行動を取った。一美とシュンは地下の大浴場の隣に在った運動場の卓球台に目を付け、小一時間程それに熱中していた。義貴はそれに熱中している一美の代わり宿舎内に入れないサイクロモンに食事を持っていった。その後義貴が部屋に帰ると大輔はもう早々にいびきをかいており、ブイモンもすっかり眠っていた。

義貴はそれからパソコンでQDCにメールを入れ明日の予定を立てそれからファングモンと共に布団に入った。祐梨は誰とも行動せず一人でやたらに大きいイヤホンを当てて音楽を聴いていた。

 サイクロモンは義貴から渡された食事を食べた後、暇を持て余してやってきたコテモンと暫く話をした。コテモンは夕方の浴場での失敗や他の今日在った出来事をいろいろと喋ったがサイクロモンは大方笑っているか相槌を打つかのどちらかだった。

卓球対決を終えた一美とシュンはコテモンを迎えに行った。暫く二人で騒がしくしていたがコテモンが眠いと言い出したので部屋に帰ることにした。サイクロモン三人がホテルに帰った後、蒸し暑い夜の中で土と森の静かな涼しさを感じながら眠った。

 一美はそれから直ぐにベッドへ潜り込んだが、シュンはコテモンを寝かせた後も起きていた。それは身体を鍛える為に日課としている筋トレをする為だ。

 シュンは自分がモテる為には大概の努力を惜しまない。そしてそこそこの筋肉が付いた長身というのはモテる筈と考え、特に夏で薄着という事もあり更に彼曰くの『おいしい』場面では肉体美も晒すことがあるだろうとして日頃筋肉を見せる為に色々と努力しているのだ。

しかし彼はそれでもモテないのが、彼の軽い性格であるという事に気付いておらず、諸々の間違った本に由る女にモテる為の処世術というものには改善が見られなかった。彼の努力はまるごと悲運である。

 日課を終えたシュンは蒸し暑い中行った筋トレの所為で滝のように流れた汗を流すため部屋の個室バスルームへ入った。その際大きな鏡で自分の身体の具合を確認するのも忘れなかった。

そして何故これだけ揃っているのに自分はモテないのかと考えながらバスルームを出た。それからシュンは飲み物を買い置きしておくのを忘れた事に気付き、取り合えず今飲む為の物を買う為に宿舎一階のロビーに向かった。

 ロビーには未だ明かりが着いていた。何でだ、と思いながらもそれ程気にせずシュンは受付横の自動販売機で黒いマトリクスの模様が所々に付いたキノコ、デジタケの横に並んでいるスポーツ飲料水のボタンを押した。この手の山菜や時に肉などが入っている、というか見た目混入されている自動販売機はもう何度も見たことがあるシュンだったが、未だにそれには慣れない。

 シュンは知らなかったがロビーの受付は所謂守衛室というのも兼ねており、その時間の見回りの当番になっているデジモンが受付をしていて二十四時間体制で警護に当たっていた。

 シュンが飲料水を二口程飲んで部屋に帰ろうとした時守衛的ロビーの受付のヤンマモンがシュンに声を掛けてきた。


「旦那、ちょっといいですかい?」

「えっ?なんスか?」


 今時旦那はないだろ、と思いつつもシュンは振り返って尋ね返した。


「さっきアナログの女が散歩するとかで外に行きましたけどそろそろいい時間なんで部屋に帰るよう言っといて貰えますかい?こっちの連中は最近の事でいきり立ってますんで勘違いでゴタゴタ起きても面倒ですしさ」

「あぁ、ハイ、大丈夫スよ。どの辺行きました?」


 お前は江戸時代の足軽かと思う心を抑えてシュンは了解した。それより気になったのは人間の女が散歩に出たという事だった。一美は自分が部屋まで送った時にもう大分欠伸で眠たそうだったから今の時間に散歩というのも考えられない。ということは答えは一つかと思った。


「裏手の庭にでもいるんじゃないですかね、この近くで散歩して面白いなんてのは其処くらいですし」

「分かったッス」


 シュンは旅館を出てサイクロモンの寝ている運動広場と逆の方向へ行き言われた旅館の裏手の庭へ向かった。バーンロックスの時よりも遠く離れた星が空に光っていた。が、シュンにはそれ程詩的な感覚になるセンスはなく夏の盛りに海にでも行きたいと思ったくらいだった。

 裏庭はまさしく旅館の庭園、と言えるほど凝ったものでなく露天風呂を作ろうとして失敗した様な岩造りの池の周りに森の中でも背の低い木を並べて他の幾ばくかの物で飾りつけたその程度のものだった。祐梨は其処のベンチに座っていた。特に何をするでもなくただぼうっと空を見上げていた。


「あれっ、祐梨さんも散歩スか?」


 シュンは声を掛ける時に偶然此処を通り掛かった風に装った。そもそもシュンはヤンマモンに頼まれたから祐梨を探しに来た訳ではなく、単純に何故今の時間に一人で散歩をしたのかその興味のみで来たため、余計な事を説明することも面倒だったし、何より散歩を邪魔しに来た無粋者とも思われたくなかった故にそうした。


「お前は散歩じゃねぇだろ。お前みてぇなのが夜散歩なんてする訳がねぇ」

「いやッスね、俺が後付けて来たみたいに言わなないで下さいよ」


 シュンはいつもの調子ではぐらかしたがそれは見事に図星だった。人目が在る中で自分がまるでこういう雰囲気を楽しむ事が出来る人間かのように振舞う事はしても一人で散歩などという暇な事はシュンがする筈は無かった。


「まぁ隣失礼するッスよ」


見抜かれた内心と共にシュンは祐梨の隣へ座った。祐梨はシュンに顔を向けなかった。


「何の用だよ」

「いえ、何で今時分に散歩するのかな、なんて思ったんス、それでッス」


 シュンは祐梨の横顔を見た。祐梨は何か口に棒状の物を銜えていて、口の中でそれを転がす様子からそれが棒付き飴だという事に気付いた。


「お前と話したいことは何一つねぇ」

「釣れない事言わないで下さいよ。そんくらいいいじゃないスか」

「うるせぇ、いいか、俺はお前が嫌いだ。だから失せろ」

「じゃぁなんでデジタルワールド旅してたりするんスか?」

「話聞けよ手前」

「あ、怒った顔も意外と可愛いスね」

「うるせぇ、また殴られてぇか」

「褒めただけでいちいち殴らんで下さいよ。医務室の方にゃ大爆笑だったんスから。それも全員スよ、入ってきた人全員ス」

「お前が悪ぃんだろうがよ、んなこと知るか」


 邪険にされたら攻めろという本の知識に由りシュンは祐梨に会話を投げ掛け続けた。諦めたらそこで試合終了ですよ、とシュンがバスケを始める切っ掛けとなった本の台詞を思い出しつつ話を途切れさせることなく続けた。


「たっは~、話を聞かねぇ野郎だな」

「話してくれたら聞くッス」

「なんなんだよ」


 祐梨は思い切り溜息を吐いた。そしてシュンを睨んでから少しシュンとの距離を開けようとベンチに手を付けたが、祐梨は自分で移動するのではなくシュンの方を蹴飛ばして無理やり端に追いやった。


「お前みたいなナンパ野郎はムカつくんだよ、ストレートに言えば心動かされるとでも思ってやがんのか!」

「回りくどいより良いと思うスよ。名言だって伝えなきゃ意味ないッスし」

「ったく、お前みたいなのがQDCなのかよ。俺ゃもっと堅い奴等の集まりだと思ってたぜ」

「こっちの方が楽しくていいじゃないスか」

「そういう奴等もお前みたいなのも俺は不愉快なんだよ」

「まぁ上層部の堅い奴等なんか気にしたって仕方ねぇスよ。何言っても聞きゃしないんだから」

「世界の現状も知らねぇで、呑気に上に従うだけの癖して何言ってやがんだ!」


 祐梨は立ち上がりベンチを蹴飛ばした。さっきまでの冗談みたいな怒り方と違い急激に沸点に達した様な激しい表情をしてシュンを睨んでいた。シュンもそれにつられて慌てて立ち上がった。すると祐梨はシュンの胸倉を掴んだ。


「手前の組織がどんなものだか知ってんのか!あぁ?」

「組織って…ちょっ、待って下さいよ」

「笑い事じゃねぇんだよ!手前の組織はなぁ!」


 そこまで言って祐梨はシュンを離した。膝を曲げないと服が伸びてしまう程掴まれていたシュンは急に離された反動で後ろによろめいた。祐梨はよろめいたボディにパンチを入れた。シュンはその強烈な一撃にまたかと思いながら身体をくの字に折った。


「組織が…なんスか?」


 シュンは顔を歪ませたまま聞き返した。祐梨は腹を押さえているシュンを苦虫を噛み潰した様な顔でシュンを見下ろしていた。祐梨は少しの間声を出さなかったがその口が僅かに動いた気がしたとシュンは思った。

 シュンには祐梨の怒った理由が分からなかった。これまででも既に十分祐梨の怒るポイントは理解できていなかったがそれでも出来る限り怒らせないようにと言葉を選んでシュンは喋っていたつもりだった。女心と秋の空とかいうやつかとシュンは心の中で一人苦笑をした。


「止めた、お前なんかに言ったところで理解なんか出来る筈がねぇからな」

「酷いスね」

「…似てるから、また余計にムカつくわ」

「な、なんか言いました?」

「うるせぇ、俺ゃもう寝る」


 シュンが腹部の痛みに歯を食いしばって呻くのに構わずシュンの腿に蹴りを一発加えてから祐梨は旅館の入り口へ向かった。新しく加わった痛みにシュンは完全に地面に膝を着いてグロッキーになったが祐梨が完全にその場を離れる前に一言だけ口にした。


「何も知らんですんません」

「うるせぇ」


 シュンの言葉に祐梨は直ぐ返した。それから祐梨が角を曲がって完全に見えなくなるとシュンはその場に仰向けに寝転がった。祐梨のパンチは目が回りそうな程の痛みを後から伴った。既に今日だけでどれだけシュウは殴られているか分からなかったがこの一撃が一番ダメージを受けたんじゃないかと思った。こんなに嗚咽が漏れ嘔吐感を感じたのは部活の合宿で一日ぶっ続けて練習した時でもなかったと思った。


「重たいパンチだぁ」


 シュンは呟いた。それからシュンが起き上がって部屋に入って眠るまでには二十分程の時間を要した。こんなことも一美先輩ので慣れっこだと感じるあたり彼はまるごと悲劇だった。






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「ぶっは~。やっぱデカイ風呂はいいねぇ。アンタもそんなとこで何時までも身体洗ってないでこっち入ってきなよ」


 紹介された宿舎の地下にある大浴場の大きな湯船の中に浸かりながら一美は声を反響させながら言った。中は中型程度のデジモンくらいは入る事が出来る広さが在るため、其の中で小型のデジモンや人間が入るための湯船は小さく見えたがそれでもそれなりの広さを持っていて室内ではあるが実に開放的な空間になっていた。一美は例の如く多聞に漏れず頭に白いタオルを乗せていた。


「待てよ、こういうチャンスなんて滅多ねぇんだからしっかり洗っとかねぇと」


 祐梨は一美のいる湯船の目の前で身体に付いた泡を落としていた。連れてこられる前はなんだかんだと文句言っていたが広い良い感じの浴場を目の前にして満更でもない様子で出会ってから始めて女の子らしい綻んだ表情を一美に見せていた。


「な、誘いに乗って付いてきて良かったろ?」


 一美は広い湯船にはしゃいで其の中を泳ぎ始めた。早めの時間帯故其れほどデジモンが居る訳ではないが、浴場内にはまばらにデジモンがいる。しかしそれも気にせず一美は泳いだ。ちなみにそれは平泳ぎだった。


「そこは、確かにそうだけどよ…っつかお前はしゃぎ過ぎだろ。いまどき風呂で泳ぐ奴なんて見たことねぇぞ」

「まぁ、偶にはそんな奴もいるってことだって」

「知らねぇよ」


 漸く満足した祐梨が湯船にそっと脚を入れる。一瞬想像以上の熱さに驚いたが直ぐに身体に力を入れて湯船の縁の直側にある出っ張りに腰掛けた。


「うおっ。湯船に浸かるとどうしてこう唸っちまうんだろうな」

「知らねぇよ」


 祐梨が一人自分の行為を笑っていると一美が祐梨の物真似をしてそう言ってきた。祐梨は舌打ちをしたがそれ以上は何も言わなかった。


「そういや結局お前等は俺を如何したいんだ?また他の奴等みたいに仲間になれとでも言うのか?」


 まだ泳いでいる一美に向かって祐梨は言った。祐梨には今の状態が理解出来なかった。それは森で出会ってから今まで一美達は一切何を言うことも無く、ただ成り行きのまま現状に至っている感じがあったからだ。

QDCはデジタルワールドとリアルワールドの平和を保つ為に働く組織であり、当然未所属テイマーは保護すべき存在であるとしている。それ故これまで一美と出会ったというQDCのテイマー達は尽く一美を自分達の仲間へと勧誘してきた。しかし一美達は祐梨に特別何かを言わなかった。祐梨の質問はそれ故の質問だった。


「ん~、別にあたしらは絶対に勧誘しろって言われてる訳じゃないからねぇ、なんとも言わんけどな。ただユーリィが仲間んなりたいって言うなら大歓迎だし、ただ旅してるだけならあたしらん仲間になった方が面倒がなくて済むとは言えるかな」


 一美は泳ぎを止め少し考えてから言った。相変わらずのへらへらとした顔のまま一美は祐梨の目の前に座り首だけ湯船からだしていた。祐梨は湯船の其処に座っても背が高いと顔は出るんだなと思った。


「じゃぁ何で俺に付いて来いなんて言ったんだ?」

「危ないところに居たら保護しろって決まりだからねぇ、そこはまぁ。それにあたしとしては同年代の子で一人で旅してるテイマーなんて見たことないからさ、話聞きたいなぁって思って。ってかさ、何で旅なんかしてる訳?もしかして家出少女?」


 一美が好奇な目で祐梨を見て言った。祐梨はまた組み付かれたら困るとばかりに身を乗り出してきた一美の頭を押さえて湯船の中に押し戻した。


「別に事情はない。ただ面白そうだから色々やってるだけだ」

「何だよ、つまんねぇなぁ。じゃあお前等は何でこんな所にまで来てんだよ」

「まぁお仕事の関係ってやつですわ。このあたりもかなり物騒だからそれで特別対策本部ってのがPDPタウンに設置されることになって、それでアタシらは知り合いのよしみで其処に行くんだ。旅行は好きだから構いやしないけどな」


 ふくれた顔で一美は頭のタオルをお湯に浸して絞って顔を拭いた。そして身体を持ち上げて湯船の中の腰掛けに足を掛けると壁を蹴ってすーっと壁の方へ進んでいった。祐梨は少しそれを目で追うと持っていたタオルを気泡を作るようにお湯の上に浮べそれを手で丸く包んでクラゲの形を作った。


「アンタも大変だな」

「まぁね。でも此処の方がもっと大変だよ、デジタマが盗まれたのはそうだけどさ、其の少し前にもテイマーが森に侵入して追ってきた自衛団のデジモンを幾らも倒して逃げたとかいう凄いのもいたとか言う話なんだってさ。さっきシュン、ってあのユーリィがぶん殴った奴ね、アイツの付き添いで医務室行ったら其処のデジモンに教えて貰ってさ」

「はぁ、まぁ此処は迂回するにゃデカイ場所だからな。侵入した方が早く街とか行けるし。んで、そいつどんな奴なんだ?」


 祐梨はクラゲを持って一美に近づいてきた。


「あんまり詳しい話は分からないけど、フレイドラモンがパートナーなんだって」

「フレイドラモンか、大した事はねぇな。んでその奴の名前は?」

「やたら食い付くねぇ、聞いてどうすんの?」


 やたら興味をもった感じの祐梨を不思議に思った一美は聞いた。


「強い奴なら興味あるね。そういう奴は大体良い男だって決まってんだよ」

「何?じゃぁ彼氏居ないわけ?」

「ん?あ、いや、いねぇよ」


 急な一美の切り返しに祐梨は一瞬まごついた。それを見逃さず一美は更に言及を続けた。


「いねぇ、の前にいや、って言ったね。本当はいるんじゃないの?」

「…いねぇっての。いいから教えろよ」

「ま、浮気はばれなきゃ問題ないなんて格言もあるしな」


 にまっと悪い笑顔を浮べて一美は祐梨の肩を叩いた。祐梨は何を言うんだという顔をしたが多分此方の話は聞きもしないだろうと思って元の腰掛けの位置に戻ってふてくされてタオルのクラゲを弄った。


「エルトリオ・O・ローランド」


 祐梨はばっと顔を上げてタオルを掴んだ。クラゲが一瞬で潰れて気泡が水面に一斉に浮んでいった。祐梨の方へ近づこうとしていた一美はそのいきなりの反応に驚いて少し身を引いた。


「な、何だよ、エルトリオ、知ってんの?取り合えずこの辺りじゃその名前は有名らしいけど」

「…あ、エルトリオ、か。そっちの話か」

「ん?何何?ユーリィの彼氏もエルトリオって言うのかい?って言うか彼氏外人?」


 隣まで来た一美がまた好奇の目で祐梨に擦り寄ってきた。祐梨の小さな背に一美の高い身長は威圧的で祐梨は引き気味で顔を引き攣らせた。それを一美は肩を掴んで強引に自分の方に身体を向けさせた。


「どーなんだいユーリィちゃんよ」

「…違ぇよ聞き違えだよ。それも彼氏じゃねぇ、知り合いの、だぞ知り合いの」

「焦るところが、怪しい」

「うっせぇよ、余計なお世話だ」

「ちゃんと答えてくれないと組み敷くぞ」

「お前話題が下世話過ぎるんだよ!」


 陸上競技で鍛えた一美の腕力を如何にか無理やり振り払った祐梨はタオルを一美に投げつけた。それが見事に一美の身体に当たってペチンといい音が浴場中に響いた。しかし一美は怯まずタオルを身体から剥がして祐梨を追うように全身した。


「このタオルで縛っちゃおうかなぁ」

「お前の頭の中は何で出来てんだよこの痴女!変態女!」

「おうおう、そういうツンデレはそそっちゃうね」

「こっちくんな!それにツンデレってなんだ!」

「知らねぇの?今世の中は萌えってので一杯なんだってよ」

「訳分かんねぇよ!」


 祐梨が立ち上がって逃げると一美も立ち上がって追いかけた。一美は思い切り女王様をイメージしてタオルをまるで鞭のようにしてお湯をビシビシと叩いた。


「お前もういい加減にしろ!」


 これ以上は逃げられないと判断した祐梨は一美が隙だらけの間にお湯を掻き分け背後に回り肘をアームロックで極め首に腕を回した。一美は一瞬首に回された腕に手を伸ばしかけたが直ぐにそれを止めた。


「ギブギブ、極まってるよユーリィ」

「俺はそこそこプロレスも見てんだ」

「分かったから、ほらタップタップ」

「もうやってくんなよ、マジで」

「やらないから、ほら極まってるっての」

「ったく。今日初対面でなんだよお前」

「人の付き合いなんて年月じゃないぜ、なんつって」


 かなりむくれ気味の祐梨の掛けたがっちりの関節技を解かれて一息吐いた一美はおどけた調子で言った。反省の色は殆ど見られず隙を見せたらまたやってくるなと判断した祐梨は一美を無理やり湯船に座らせて一定の距離を保って自分も腰掛けた。


「本当に止めろよ、折角少しお前等の事手伝ってやろうかとでも思ってたのによ」

「え、何やっぱり仲間なってくれる?」


 祐梨の以外な言葉に一美は揚々として問い返した。勢いが余って湯船から立ち上がった。


「寄るなっ。仲間になるんじゃなくてあくまで手伝うだけだ。考えてみたらどうせ森の中で探し物をするって点じゃやる事は大して違わないし、俺も早くモノが見つかってくれりゃ助かるしな。でもやっぱり止めるか?」


 すっかりふてくされてそっぽを向いた祐梨は湯船の縁に腕を掛け足を投げ出して不満の意を大きく示した。そして抜け目無く祐梨が近づいてくると直ぐに抑制した。


「いいじゃん、どうせなら一緒の方が楽しいだろ?でもユーリィはパートナーいないじゃん」

「いるよ。ただ、呼ばれるまでは成層圏辺りでも泳いでるんだろ。用事がない時は自由にしていいって言ってるし」

「何だそれ。そんなとこで何してんだよ?」

「まぁ、そういう奴なんだよ」

「何にせよ手伝ってくれんだろ。そしたら改めてヨロシクなユーリィ」


 一美は祐梨に手を差し出した。差し出されたその手を訝りながら祐梨は一美の顔を見た。警戒されているなと分かって一美は頬を掻いてはにかんだ笑いを見せた。祐梨はそれに吊られて少し笑った。それから一美の手を掴んだ。


「んじゃ、話もまとまった事だし飯食いに出よう」


 手を引っ張って祐梨を起こし一美はそう言って湯船を出た。祐梨もそれに従って一緒に湯船を出たが、彼女にはそれより少し気になる事があった。


「やっぱりお前デカイな」


 祐梨は少しばかり溜息を吐いて一美の横を歩いた。










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 薄暗い景色の続く森の中を抜けて漸く入る事ができたナスティフォレスト内でただ一つのそれぞれのデジモンで造った巣ではないきちんとした村としての集落。此処は名前は無いけれど僕が想像していたよりもずっと村としての機能を果たしている場所だった。

旅館みたいな所もレストランっぽい所もあって、きちんと村長という肩書きを持ったデジモンがいる。お金も此処では取り入れられて、この集落の空間だけ大きな陽を隠す木がなく明るい。見るからにきちんとした村になっていた。


「久々に布団で寝れるねぇ。毎回ろくでもねぇとこで寝てたからな、誰かの所為で」

「んぁ?俺…っすか?それ結構イガイっすよ、大体、そういうの見つけんのはブイモンじゃないっすか」

「えぇ、俺ぇ?絶対大輔だよぉ」

「どっちにしろコイツはお前の相棒なんだからお前の責任みたいなもんだろ、それとイガイ、じゃなくて心外、な。意外じゃ意味違ってくんだろ」

「あぁ、そうとも言うっすね」

「そうとも、じゃないって。そうとしか言わねっつの。そうだろサイクロモン」

「そうじゃなぁ、それ以外の言い方なぞありゃせんわ」

「ほら、な?」

「サイクロモンは一美さん以外味方しないじゃないすか」

「まぁな。ってか以外って今普通に使ったろ、なんでそれで違いに分かってないかねぇ」


 この森全体がナスティフォレストと呼ばれるのは、それぞれの種類のデジモン同士がいがみあってしょっちゅう喧嘩が起こるからで、幾つもの家族のような集合体がそれぞれ睨みを利かせているから。その状況を少しでも和らげようと仲の良いデジモンやその周辺のデジモンが集まって出来た仮のまとまりだったんだけど今ではかなりの種族のデジモンがこの集落に拠点を置いて生活しているらしい。

相変わらず少しの事で喧嘩をするというのは変わっていないんだけど―――事実紛争の数自体がそれ程減った訳じゃない―――大きく生命に関わる争いが起こることがなくなり、それに自衛団のようなものも出来て幾らかは安全に生活できるようになっている。

何にしてもここがこの森を統合している集落で、オレ等はこれまでの様に集落の村長さんに挨拶をするためにここへやってきた。それにここを通過するには急いでも二日以上は掛かるからどっちにしろ宿は取らなきゃいけないんだからそれなら野宿よりは布団に入った方がいい。そういえば久々にちゃんとしたところで身体が洗える。


「偉いのが住んでるくらいだから流石にでっかいねぇ」

「挨拶は早いとこすませちまいましょうよ。俺もう腹減ったッスよ」

「お代わり出来ても飯喰らい尽くすなよ大輔」

「んなことしませんって」

「サイクロモン並に食う癖によく言うっつーの」

「そんなに俺食ってますかぁ?」

「…冗談に決まってるだろ。相変わらずの馬鹿だな」


ナスティフォレストの森の中で出会った女の人の名前は暮野祐梨さん。QDCや他の団体にも所属していない、所謂フリーのテイマーっていう人。

QDCに所属しなかったのはいかにもって言う組織とかが嫌いだからだとかで、QDCや他の団体の人に出会って勧誘をされても名前すら明かさずに逃げ回って今回初めてそういう人、というかオレ等に関わったんだって。

だからデータを照合しても祐梨さんのデータは一切無くて今の段階では保護対象になるのか危険人物だか如何だかは微妙。耳にも鼻にも唇にもピアスがあってその上一美姐さん以上に、こういう言い方ってのは良いか分かんないけど、女の人としては口が悪くて怖い怖い感じだけどそんなに悪そうには見えないからこういう風に疑うのも悪い気がするけど、オレのチームは皆疑いなく人を受け入れる人ばっかりだからオレがしっかりそういうの考えなくちゃいけない。特にシュンさんは虫達の集落につくまでに事情を聞くって名目でもう3,4回くらいデートに誘ってた。

名目が大したものだから祐梨さんはそれをOKして途中シュンさんと一緒にオレ等と別れた。シュンさんの性格はもう今更如何仕様もないからいいんだけど、でも祐梨さんはとってもしぶしぶだった感じだし、一美さんと同じで荒っぽそうだからシュンさん多分二、三発くらいは殴られてるかもね。それはそれで少し面白いな。

 祐梨さんが言うには此処には知り合いのテイマーにベニデジタケを採ってきて欲しいと頼まれたから来たとかで、普段ならこんなところに立ち寄ったりはしないらしいです。でもベニデジタケって毒性の強いデジタケだから採ってきたところで使い道なんてあんまり無いように思えて、それを聞いたら祐梨さんは、なんかの研究に使うんだとよ、と言った。

祐梨さんは群青色のボタンシャツの上に白衣を着ているからもしかしたら研究の手伝いとかもしている人なのかもしれないと思った。でもこんなところでまで白衣を着てるってことは一美姐さん同様に結構横着な人なのかなと思った。それにしては赤いチェックの短い膝上少しくらいのプリーツスカートとその下にスパッツと長い黒いブーツを履いているのが一美姐さんとは違ってお洒落に気を遣っている感じだった。

それと、オレの感覚ではどうしてそうしてるのかよく分かんないけど、短い髪の毛が赤く染めてあって、でも左のコメカミ近くの髪の毛だけは真っ黒に長く、真っ直ぐ洋服に掛かるくらい長かった。オレのクラスでも先生に怒られても髪の毛長くて染めてる奴とかいるけどこんな風にした人を見たのは初めてだ。


「義貴、入るぞ」


 祐梨さんはテイマーなのにパートナーが居ない。いるけど近くには居ないって。呼べば来るとか言っていたけど如何なのかはよく分からない。もし、そのデジモンが強いなら、ちょっと戦ってみたい。一美姐さんには色々教えてもらってたし紳さんとは組み手でよく戦っていたけどそれ以外のデジモンとはまだ一回も戦った事がないから、オレがどのくらい出来るのかやってみたい。並の奴だったら負けない自信はある。

 QDCディレクトリ大陸東部第二支部を出てから一週間、これまで戦闘をする必要があったのは二回でスネークリバーでシードラモンに襲われたのと今回のスナイモンの。どっちも大輔さん、一美さんだけで戦える相手で僕の出番は無かった。争いを期待するってのは駄目なんだけど、でも鍛えたからには発揮させたいってちょっと思う。

そういうもやっぱり駄目なのかな。やっぱり戦闘がたった二回だけでナスティフォレストの集落までついたって事を喜ばなきゃいけないよな。大体まだ安全と言われてるスネークリバーとバーンロックスまででそんなに多くデジモンに襲われても問題だし。


「ヨッシー、何ボーっとしてんだよ。お前はあたしと大輔と話聞く方だろ。それともアレかフケて向こうの不味そうな店でデートでもするか、久々に」

「一美さん、それ結構困るっすよ」


 うっかりボーっとしてたら一美姐さんが頭を掴んできた。気が付かない間にナスティフォレストの村長さんの家の前を通り過ぎようとしてたみたいだ。

 村長さんの家はやっぱり他と比べてなかなか大きくて立派だった。集落の丁度中心で見た目はログハウスみたいなそれを大きくした感じのもので外の一面を綺麗な緑色の蔦と葉っぱに覆われていた。そういう仕様なのかな、そんなに昔造ったものじゃないし。


「…大輔さん一人残したって会話の内容が何一つ残らないでしょ。オレが話し聞かなきゃさ」

「オイ、俺だって人の話くらい分かるぞ」

「なんだよつまんない奴だなぁ。ま、それが仕事だしなぁ」

「あぁ、ってか俺の話聞いてくださいよ」

「オレもあんまり事情とか詳しく知らないんだから一美姐さんが説明してくれなきゃ誰も説明出来ないじゃん」

「んぁ、お前も無視すんなってぇ」


 オレ達はPDPタウンに今度設置するデジモン達の紛争を防ぐ為の特別対策本部に就く為に歩いてPDPタウンに向かってる。それは何だか偉い人がオレ達に出したテストみたいなもので、行く途中にいくつかある集落の状況を見て何か問題があったらしっかり解決してからでないと特別対策本部に入る事が出来ない。

っても元々問題があって見過ごす様な心構えで対策本部行きたいなんて思う訳ないんだから言われなくても勝手に問題に首通込むよ。そういうのが好きな集まりみたいなもんだから。


「んじゃお前中入れないからその辺適当にぶらついて呼んだら来い」

「老兵はさるのぉみ。向こうに行っとるでよ」

「それにコテモンも一緒にいな」

「…あ、うん分かったよサイクロおじちゃん、行こう」

「俺はまだ無視っすか」

「うっせ、馬鹿は黙って納得してな」

「はい…」


 中型のデジモンくらいは楽に入りそうな大きな入り口前の階段を登って、家に入る前に一美姐さんはサイクロモンに言った。サイクロモンは左手で敬礼のような事をしてずんずんと大きな足音で駆け出した。サイクロモンのサイズでは大体の家なんかには入れないから仕方ない。

そのサイクロモンの横にサイクロモンの足の指くらいの大きさしかないコテモンが並んで行った。コテモンはシュンさんのパートナーだけどデートの邪魔だからってオレ等に預けられた。コテモンは生まれてからもう三年程はたつらしいんだけど何時まで立っても全然子供みたいでシュンさん以外にはあまり自分から喋ったりしない。
そういうとっても存在感の薄い奴だ。

一美姐さんは木作りの家にあからさまなインターフォンを押してデジヴァイスを近づけて通称QDCコールという、早い話が自分たちがQDCの人間だという事を知らせるデータをインターフォンに転送した。


「カモン、ファングモン」


 僕はファングモンを呼び寄せた。ファングモンは階段をひょんと飛んで僕の腰辺りに頭を摺り寄せてクゥーンと鳴いた。

 ファングモンは他のデジモンみたいに喋られない。純デジモンと言って今では十万人のデジモンのうちに一人生まれるか生まれないかくらいの確率で生まれる、デジモンの原始時代の影響を受けたデジモンだから。オレの言葉を理解してそれに対して返事をすることも出来るけど、言葉を操る事が出来ない。まぁ、全然問題なんかないけどね。


『QDCの方ですか?少し今立て込んでいるので…』

「気にしない気にしない、取り敢えずまず入れてくれりゃいいから」

『しかし…』

「なんかあっても文句も言わないって」

『はぁ…じゃあ、開けます』


 インターフォンの声のデジモンのいう事を全部遮って一美姐さんは強引に中に入ることを承諾させた。困ってそうだったけど言いのかな。姐さんはいっつも人の事は無視なんだから。

 取っ手のない横に開くドアが開いて直ぐにドンと大きな音がした。本当に大丈夫なのかなと一瞬入るのを止めようと僕はしたけれど、インターフォンの声デジモンらしい人が早く中に入ってと言ったので慌ててオレ等は入った。


「すみません、今色々とゴタゴタが在って、それで副隊長、あ、この森の自衛団の副隊長のオオクワモンさんがちょっと在れてて手が付けられなくて今数人で止めてるところなんです」


 家に入った瞬間にもう目の前には円形の闘技場みたいなものが見えた。脇の方に上へ行く階段があって、他にはその闘技場を囲んで付けられた鉄格子以外何も無かった。鉄格子の中ではクワガーモンをより大きく強靭にして灰色に色を変えたオオクワモンが居てその周りを一人のクワガーモンと五人くらいのスナイモンと三人のフライビーモンが囲んで抑え付けていた。

それでもオオクワモンは暴れて全員がそれに振り回されていた。その少し離れたところに緑色に身体が輝いている見たことのないデジモンが立っていた。


「うへぇ、暴れてんなぁ」

「約束だから文句は言うな、大輔」

「別に言いやしないっすけど、ところであれ如何したんすか?」

「あの、何て言うか…、いや俺より隊長が説明した方が早いと思うんで、ちょっと隊長呼びます。隊長!QDCの方だそうです!一端此方に来て貰えないですか?」


 インターフォンの声のデジモン、シェイドラモンが鉄格子の向こうに呼びかけた。あの中に自衛団の隊長さんがいるのか、と思っていると直ぐに緑色のデジモンがこっちに飛んで来た。あの見たことのないデジモンが隊長さんなのか。


「シェイドラモン、此方の方々は私が応対しますので、貴方は向こうを手伝ってあげちゃって下さい。もう人の話も聞かない状態ですから」

「はい、了解しました」


 緑色だと思っていたそのデジモンは近づいてみるともっと色々な色に見えた。金色だったり紫だったり青っぽかったり。丁度変な虫の背中みたいな感じで、よく言う玉虫色っていうのがこういう色だったとか聞く。

色の煌びやかさに比べて雰囲気は大分静かで身長が三メートル近い人型のデジモンが玉虫色の外骨格鎧を装備して赤い刃の槍を持っているような感じだった。シェイドラモンは鉄格子の一部を開いてジュエルビーモンと入れ替わりにオオクワモンの方へ向かった。本当に何があったんだろう。


「お客人、先ほどのデジモンは名前を名乗りましたか?」

「名前?シェイドラモンって種族なのは知ってっすけど」

「そうです、それこそ彼の名前。しかし名乗らなかったのですね。今は少し混乱してるとはいえ我が騎士団にあるまじき行為。今日の訓練時間を増やさなくては」

「…なんかコイツえらい堅い奴だな」


 一美姐さんが僕を肘で突付いて小さな声で言ってきた。姐さんが学校の先生みたいな人があんまり好きじゃないからちょっと苦手に思ったのかもしれない。でもオレには律儀ないいデジモンに見えた。


「申し遅れました、私ジュエルビーモンと申します。QDCよりのお客人、如何いったご用件でしょうか?」

「用件ってか単純に村長に会いに来たんだよ」


 ジュエルビーモンさんの丁寧な質問に対して大分一美姐さんの言葉遣いが粗末だけどこれQDCとしてはいいのかな。まぁ姐さんに御しとやかとか期待する方が間違いだけど。


「それでしたら、今は私が村長の業務を代理して行っておりますのでどうぞ」

「それよりあれなんだ?一応QDCの仕事で来てるから何か問題あるんなら手伝うけど。ってか何か問題とかねぇかって事聞くために寄ったんだけどな」

「おぉ、そうですか。という事は以前来られた一乗寺君の代行という訳ですか」

「ん~、まぁそんな感じで大丈夫、だろ?」

「いいんじゃないっすか」

「役目としてはそういう感じなんじゃない」


 一乗寺さんが普段どういう業務でここに来ているか詳しくは知らないけれど、紛争を沈静化させたりするのが主だと聞いているから適当に答えた。


「そうですか。それでは色々とお話したい事がありますので、二階へどうぞ」

「え?あの、あのデジモン達は放っておいていいんですか?」


 あっさりと鉄格子の向こうの状態を無視する形で話が進んでオレは思わずそう聞いた。


「ええ、大丈夫ですよ。今オオクワモンが聞き分けのない状態ですがああやって暫く暴れておいて貰えばそのうち興奮も収まるでしょう」

「でもかなり危なそうに見えますけど」

「このくらいで死ぬ子はうちにはおりませんので大丈夫です。まぁいつもの訓練と大した差はないですから」


 訓練と大差ないって、凄いあっちこっち叩き付けられてるけどあれで平気なのかな?まぁ大丈夫って言われてるものをどうだって考えても仕方ないけど。








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俺は聖書が嫌いだ。神様が優しく導いてくれるなんてのが嫌いだ。日常当たり前にやってるようなことを取り上げてやれ罪だ咎だと騒がれても俺には何のこっちゃ実感がない。死んだ後に天国にいけるようにってそもそも天国地獄なんてシステム自体存在するかどうかも分からんのにその時の為に今生きてる楽しみを否定するなんて狂ってるだろ。

仮に天国があったとしてどういう基準でそこにいけるかなんて分かりゃしない。もしかしたら稼いだ奴がいけるかも知れねぇぞ。ひょっとしたら地球の上に生きてる限りはいけないって事もあるぜ。どっちかって言うと俺は輪廻転生の話の方が好きだね。

自然の生態も基本的にはサイクルで出来てるだろ。公転も自転も季節も食物連鎖も物質も全部こっちにいったらあっちに行ってそんでまた戻ってくる。そういうもんだろ。だからくっだらねぇ事で時間潰してないで適当に人生楽しんでみたらどうだ?

 大体あれだぞ、祈りを捧げるって頭可笑しいんじゃねぇか?大体神様ってそうそう多いもんじゃねぇだろ?一片に何人分の祈りを受けるつもりだ?聖徳太子か奴は。馬鹿か。適当にハイハイ言って終わりだろ。普通の社会ならそうだぜ。神様は愛に満ちてるからそんなことしないってか?阿呆抜かせよ。

愛に満ちてるなら祈りを捧げないって奴も救ってやれよ。大体神様が万人を平等に愛すってんならなんでこんなに世の中不公平な訳?努力の差とか言うのかね、阿呆臭いわ。生まれた時から苦痛で満ちた人生に努力の差も何もあるかよ。クズ野郎が金に塗れて正直者が糞に塗れるような時代だ、そういうのが世の中の常なんだっつーの。それが…当たり前なんだよ。

 信じたら救われるなんてのは嘘だ。救われる奴だけが救われるべくして救われてるだけだ。実際は単なる確率だ。何処に生まれて如何生きていつ死ぬのかも全部。それを自分の力で幾らか変えてるってだけの事でそんなに色々違いなんかない。その中で偶然にも悪い場合にばかりぶちあたるのが運の無い奴ってだけだ。

理想を持つのは立派だろうよ、思想を掲げるのも凄いことだろうよ。でも人頼みにしてる奴がいい奴になれる確率なんてないんだよ。百パーセントの確率は無くてもゼロパーセントの確率はそこらに一杯転がってる。それを後付けで色々御託を並べてるに過ぎないんだ。


「うおぉっ!」


 とかなんとか如何でもいい考え事をしながら歩いてたら岩場を踏み外して前の太い木の幹に顔面から突っ込んじまった。やや朽ちて乾いている部分に当たったからか俺の頭には何か潰れるみてぇな気味の悪い音が響いてきた。ブラックな映画の悪役がビルから落ちた時の音に似てて面白ぇ。でも流石に腐っててもショックがそれ程吸収された訳じゃねえから、ちょっと馬鹿みたいな表現だが俺は目を白黒させた。


「うわ痛った…」


 額を押さえてしゃがみ込む。気が抜けてる証拠だよなこれ。あのクソアマに見られたらまた色々言われたところだな。危ねぇ危ねぇ。っつーか痛ってぇ。地味に痛ぇ。何だただ突っ立ってるだけのくせしやがってよ。俺は腰から中型のナイフを鞘から取り出して突き立てた。


「小便掛けて枯らすぞこの野郎」


 ナイフをぐりぐりと押し込んで少し抉ってから抜く。無駄に何十メートルも伸びやがってよ。悪かったな小さくてよ、ギリ百五十台でよ、胸もケツも無くてよ。胸糞悪いな。

 大分心持ちは回復してると思ったんだけどな。思ってたよりも傷は深かったって奴か?冷静に考えりゃ全然いい仕事じゃねえぞ。こんなところに下ろされることを考えりゃやりたいなんて考える方が可笑しいっつーの。騙されたわ~、情報があるなんて大したもんでもねぇ筈なのにひょいひょい安請け合いした俺が馬鹿だった~。

まともに頭回ってねぇからだぜ、本当何してんだよ。懐かしいとか思ってディープパープルなんて聞くんじゃなかった。うっかり思い出すなんて重症だ。そこを付け込まれた~。凄ぇ不覚。後で憶えてろよヒョージの野郎。


 ナスティフォレストの中へ入ってから数時間、景色に大した変わりはなくその単調さにそろそろ目眩を起こしそうで俺は一端その場に座って休憩に入る事にした。適当に地上に飛び出た根っこの上に座って上着のポケットを探る。左右同時にポケットに手を突っ込み右か左か少しばかり悩んだが結局左の方にした。包みを破って棒付き飴を頬張る。疲れたときには飴だな。糖分がねぇと頭が働く訳がねぇやな。

 本当は右のポケット、煙草が良いんだけどな。自分でも驚くくらい煙草の量が増えてたって事に気付いて反省して今は禁煙。そうだよ、禁煙してんのに何で煙草持ってきちまったんだろうな。自覚ねぇよ、自覚ねぇのに煙草吸おうとしてたよ今。うわ在り得ねぇ。何日もつかな。やべぇ、今日にも吸っちまいそうだ。

 舌の上で適当に飴を転がす。ミルク系のを大量に持ってきたのは正解だったな。結構エネルギー摂らないとまた直ぐ体重減っちまうぜ。痩せてると羨ましがられるけど寒いと結構キツイんだぞ。皮骨筋肉、じゃ直ぐ骨にまで響くからな。

 あ~、面倒臭ぇ。本当にこんなとこ来るんじゃなかった。やる気でる要素が一っつもありゃしねぇ。適当にやっつけ仕事でさっさと片付けて帰らねぇとノイローゼにでもなっちまいそうだ。それに静かなとこにいると落ち着かねぇ。マーシャルをビンビンやらせてるところの仕事の方が良かったね。帰ったらそっち方面に行くか。もしかしたら色々と、会えるかもしれないしな。なんて事を考えてるから駄目なんだよ。弱ってんじゃねぇ、俺。

 ザァっと風が流れた。俺は立ち上がってケツを叩き木の葉が揺れた音のした方向を見た。いやいや退屈凌ぎが向こうから来たんじゃねぇかこりゃ。そういや色々な諍いで此処の奴らはいきり立ってるとか言われたな。丁度いい、一寸は遊びも入れないと身が保たないってもんだ。

 ビィィと虫らしい羽音を聞かせながら風を裂いて、蟷螂をモチーフにした昆虫型デジモンのスナイモンは俺の目の前に現れた。このところの憂さを晴らす獲物が見つかったとでも思ったのか意気揚々として両腕の鎌を振り俺を威嚇して来た。触覚を揺らせて喜んでやがる。

 スナイモンの攻撃の特徴は主にその速度にある。所謂スピード型と言う奴で森に同化する緑の身体とその速度を合わせて発揮すれば相手はスナイモンを認識することが出来ずにやられるってセコイ戦法を取っている訳だ。蟷螂なだけに格闘能力は高いがろくな知能も無くただ本能的にスピード短期決戦に持ち込むだけの雑魚。飛びぬけた防御能力がある奴なら殆どその技が通用しない。カウンター一撃で終わり。


「何だよ、俺を殺したいのか?」

「侵入者はぁ、殺していいって決まりなんだぁ」


 かなり興奮しているのか息が荒く目にやたら力が籠もってる。冷徹なウィルスハンターが笑わせるな、そんなにやる気満々だったら攻撃はもっと読みやすい。とは言ってもここの虫共は他に比べて能力が高いらしいからな、安直な油断は怪我の元だ。


「雑魚が俺を殺せるかよ。一片死んでから出直せ」

「そんなに強気でいいのかぁ?殺るぜ?殺るぜ?」


 自分の実力も知らねぇくせに強きな態度はむかつくな。さて、話にならん程度の奴だが呼ぶか。


「行けぇ、エクスブイモン」

「おぅ!」


 スナイモンが鎌を振り上げ俺が大きく息を吸い込んだところで横から同等の大きさの青いのが突然飛び出してスナイモンを寄り切って行った。青いのはスナイモンの懐にタックルをかまし少し離れたところまで運ぶと後ろに曲がってスナイモンを羽交い絞めにした。

 あれは、エクスブイモンか。珍しい、古代の希少種ブイモンから進化した姿だ。一説に因るとブイドラモンの派生前の姿で単純な腕力で考えるとブイドラモンより上だとか。ブイドラモンの犬みたいな顔に比べて随分竜っぽさがあり、同じ青い体を持つのにこっちの方は随分筋肉質で力強い。その分エネルギー技を扱う技術が無くその点ではブイドラモンの方が上だ。エクスブイモンが戦う能力に長け、ブイドラモンが生き残る能力に長けるってところだったな。

あの体格で組み付かれるとそうそう振り解けるもんでもない。そういう点では通常の戦法としては正しい。が、この場合は相手を見ないと意味がないな。昆虫を甘く見ると獲られるぜ。


「邪魔をするなぁ!」


 スナイモンが腕をエクスブイモンの背中に向けて真上から振り下ろした。突然のダメージに堪らずエクスブイモンは羽交い絞めにしていた腕を解き離れた。そう、元々昆虫に関節はない。どの方向に力を向けようと当たり前の攻撃力は発揮できる。無防備の背中に鎌でザックリだ、そりゃ逃げもするだろうよ。俺なら離れる前に一撃喰らわせる様に指示したけどな。はじめに聞こえた方の声がテイマーか。だとしたら馬鹿っぽそうな声だったから仕方ないか。


 スナイモンは腕を身体の後ろまで引いて力を溜め始めた。鎌から斬撃を飛ばすシャドウシックルを放つつもりらしい。迂闊に隙を見せると皮を斬られるだけじゃすまないぜ、如何する?


「飛び込めエクスブイモン」


 馬鹿っぽい声再び。エクスブイモンは力を溜めているスナイモンに突撃した。もう少し溜めてから放つつもりだったらしいスナイモンはそれをみて慌てて攻撃に転じた。だが一瞬早くエクスブイモンの方がスナイモンの腕を掴み技の発動を阻止した。

結構ギリギリだったぞ今、危なっかしい作戦を取るねぇ。一端技を出させてからでも大丈夫な身体能力してるぜ?っつーか両腕塞がって次はどうすんだ?お、なんか意外に人の戦いも楽しめるな。雑魚如何しだとそれはそれで拮抗してて笑える。


「かましてやれエクスブイモン」


 ズゴンと一発。成る程頭突きでくるか。荒っぽいけど突飛なところはやるじゃねぇの。スナイモンは昏倒して地面にぼとりと。それこそ本当に虫ケラみたいに落ちた。エクスブイモンも地面に降りて止めでもいくかと思ったらスナイモンを担いでこっちの方に戻ってきた。始めから殺す気でやってたって訳じゃねぇのか。まぁ如何でもいいけどよ、あんなの瞬殺くらい出来なきゃここじゃお話じゃねぇぞ。


「大丈夫か~」


 戦闘がひと段落着くと向こうから殺気の間抜けな声が近づいてきた。他にも数人ぞろぞろと大きいのから小さいのまで。というか大丈夫か、ってまさか女一人デジモンに襲われてるから助けに来たってそういうアレか?面白いことするなぁ。

 まぁ、出会っちまった以上無碍にして去るなんてのも問題があるし俺はそれらが来るのを待った。人間の方は髪が俺みたいに短く、なんか身体にフィットした感じのTシャツに濃いブルーのスリムのカットジーンズの俺くらいの歳だけど結構背の高い女に、腰にジャラジャラとチェーンを付けただぼだぼのジーンズと英語の入ったシャツの上に白いボタンシャツを着たやたら縦に長い男と、ゴーグルを着けてストライプのTシャツにベストを着たハーフパンツのガキ臭い男と、Tシャツ、ハーフパンツ、リュックと遠足の準備万端なちっこいガキで計四人。


 デジモンの方が、さっき戦ってたエクスブイモンに、剣道の防具を着けて足が恐竜みたいな姿をした子供くらいの大きさのコテモンに、かなり大型のエクスブイモンの1,5倍はありそうな黄色い巨体に片目を塞ぐ様な鉄仮面をつけ左腕に比べ右腕が以上に大きくなっているサイクロモンに茜色に細長い体が特徴的で前後の脚に黒いベルトを巻いているファングモンの計四匹。どれが誰んだか分からねぇが取り敢えず四組のテイマーズだ。


「怪我ないスか?」


 一番に口を開いたのは縦に長い男。余計なものあれこれ色々と付けた俺の嫌いなタイプの男。


「怪我はそっちの青いのがしてんだろ」


 適当にあしらう。どうせ自分達が良い事をしてると思ってるんだろうからまともに取り合うのも阿呆らしい。


「へぇ、綺麗な声ッスね。なんか歌ってるところとか見て見たいッスね」


 なんだこいつは。この状況で聞くべき事でもねぇだろそんな事。しかもやたら近寄って来やがって。こいつ馬鹿なのか?うざってぇのに絡まれたもんだな。歌なんかやらねぇっつーの。というか怪我の話は無視かよ。


「用がないなら俺は行くぞ」

「いえいえこの辺りは危険スから。俺達この先の集落に行くんで一緒に行きましょうよ。QDCとしては女の子一人ほったらかしで行く訳にはいかねぇッスから」


 あぁ、QDCか。納得した。そりゃ女一人で歩いてたら色々お節介をするわな。こんなのに出会っちまうとはな、失敗した。多少面倒でもさっさと行きゃよかったよ。組織の人間ってのは煩わしいからなぁ。


「名前お伺いしてもよろしいですか?」


 長い男の横からガキが丁寧な言葉で俺に問いかけて来た。デジヴァイスで何か通信を取ってる辺り俺の情報でも調べてるのか?成る程ねやることは警察とあんまり変わらないようなことをしてるんか。ってかガキの方が口調が立派ってのはなんなんだよ。人の事は言えねぇけどよ。

 それにしても何でQDCがこんなところにいるんだ?如何見ても通りがかったようにしか見えねぇし、こんな辺鄙なところに用があることもねぇだろ。


「名前いいッスか?」


 何度も聞くなよ。ちょっと考えてる最中だっつーのに。見て分かれ。むかつくな。


「暮野祐梨(くれのゆり)だよ。ったく組織ってのは面倒くせぇな」

 取り敢えず答えた。あんまり話を引き伸ばして面倒臭い事になるのも勘弁だし。









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バステモンはなんとも不思議な雰囲気のあるデジモンだ。僕はあまり自分の事なんて喋らない。過去を口にしたところで誰も本当の所では大して関心を持っていないし、大方つまらない反応をされる。でも、今は何故だか独り言をやけに口にしたい気分だった。そういう雰囲気をこの店全体とバステモンは持っていた。


「坊やの名前、聞いておきたいわね」

「エルトリオ・O・ローランドです。コイツはヤシャモン」

「そう。あたしはバステモン。常連はウィンリィなんて呼ぶわ。次の機会があるかなんて分からないけどよろしくねエル」

「ええ、また次があると嬉しいですね」


 ウィンリィはにっこりと笑ってグラスを僕に差し出してきた。僕は煙草を持ったままの手でグラスを持ちそれにぶつけた。グラスの高い音がやけに耳に残り僕はその心地良さを感じながらまたグラスを傾けた。その時だった。


「おいおいマスターさんよ、この店のソルトピーナッツは腐った豆を炒るのかぁ?」


 無駄に大きな声で誰かがそう叫んだ。振り向くと右手側のテーブル席のゴブリモンが見るからに下劣で非道であくどい顔をしてウィンリィに、ひいてはこの店にいちゃもんを付けていた。


「この腐った豆はなんなんだよ、あぁ?こんなんじゃ手前の店の自慢の酒とやらも不味くなるぜおい、どうしてくれるよ」


 口振りからもうこの店でも何度か同じことをしたことがあるように感じた。でもそれにしてはなんだか彼らに遊びがないように感じる。こういうことをする輩はもっと下卑た笑いを浮かべながらいかにも遊びをやっているような雰囲気を持っているのに今はもっと必死な感じがした。


「アンタ達も懲りないわね。腐った豆が嫌なら出て行いっていいのよ。勿論お金は払ってもらうけど」


 あぁ、そうか。ウィンリィが過去全て撃退しているという訳か。それでこんなにあからさまにいきり立っているのか。と呑気に構えているのもよくないな。


「オイ、それが腐った豆を出しておいて言うことか?お前俺達を舐めてるんじゃねぇだろうな!」


「僕が、思うに…君たちの指が腐ってるから豆が腐るんじゃないのかい?」


「あんだと!」


 僕は立ち上がってそう言ってやった。見事に三匹の怒りは魔法を使ったように一瞬にして僕の方へ向けられた。更に怒りの色を増した顔をみて僕は続けて言った。木刀を構えようとしたヤシャモンに手でストップを掛けた。店中であまり暴れてもまずい。


「オーライ、聞こえなかったならもう一度言うよ。ファック、ユー」

「手前、この野郎!」

「ウィンリィ、多少店が汚れるよ」


 中指を突き立てゴブリモンの方へ向けた。彼らのうちの一匹が振るわせた拳を振り上げたのを見て僕はウィンリィに一言呟くとゴブリモンの動きに合わせて前飛び出した。ゴブリモンは成長期としては一撃を喰らうと中々痛いけれど、動きがさして速くないし、攻撃が単調だから避けるのは簡単だ。

 ゴブリモンの懐に潜り込んで振り上げられた拳を逆の方向に進み避けて、彼らの脇をすり抜け彼らが飲んでいた酒瓶を掴んで逃げた。


「とろいなぁ。速くこっちに来てみなよクズ野郎」

「ぶっ殺す」


 殺す、か。言われていい気がする言葉でもないけど、僕にはなんだかその言葉は少し懐かしい。嬉しくは、ないけどね、でも何かやっぱり少し色々と思い出す。


「逃げ回ってんじゃねぇ」


 かなり鈍い動きでゴブリモンはテーブルから回りこんで拳を突き出してきた。スウェイバックで避ける。大した事のない風圧。当たってそれが痛いのは僕が生身だからというだけ。デジモンから考えたらクズもいいところのそんな攻撃なら死んでも当たっちゃいけない。続けて出された拳も全てバックステップでかわした。

拳がテーブルに当たって古い木の板が炸裂する。店内が狭いからテーブルや壁に挟まれないように注意しながら僕は逃げた。


「ヘイ、そんな攻撃しかないのかい?」

「手前っ、だったら、黒焦げにしてやるよ!」


 僕の挑発にゴブリモンは技を出して答えた。掌にエネルギーを集中させると其処に拳大の炎のボールを生み出した。炎のボールは渦をまいてうねり力を溜めた。こうも簡単に僕の願いが適うと逆に少し張り合いがなくて悲しいね。僕は彼らの飲んでいた酒瓶をその炎目掛けて投げつけた。割れた瓶から飛び出した酒が炎を纏ってゴブリモンの腕から全身に広がった。消火は後できちんとやらないとな。


「ぎゃぁああ」


 情けないことにゴブリモンはアッサリと悲鳴を上げて炎を消しその場に転がった。仲間の二人が頭の悪いことに手でその火を消そうとして逆にアルコールと炎がその手に燃え移って炎を拡大させた。


「クズ以上に馬鹿だったね、それは僕の勘違いだった。ソーリー、馬鹿で腐ったクズ野郎共」


 親指を立てて地面に向ける。折角ジャズの良い音を聞いているのにそれを台無しにすることもないだろうにさ。ゴブリモン達は床を転がっていた。僕は肩を竦めてウィンリィの方を見た。ウィンリィはちゃんとバケツに水を張って用意していた。そしてゴブリモンにバケツごと水を投げ付けた。


「立場が分かったら早く帰ってくれないかな。とてもとても目障りだから」

「この…野郎」

「おい、もう止めろって」

「うるせぇ!ここまでされて黙ってられるか?盗賊が舐められて如何するよ」

「君、盗賊だったの?僕はてっきりずっと物乞いで生計を立ててるものだと思ったけど」

「あんだと!」


 始めに殴りかかってきたゴブリモンは懲りずに再び僕の悪態に反抗心をむき出しにしてきた。仲間が止めるのも聞かずゴブリモンは立ち上がり僕の胸倉を掴む。敢えて避けずに僕は胸倉を掴まれた。


「言っておくけど殴りかかろうなんて思うんだったら君のこの手首は斬って落とすからね」

「はっ、人間に俺らデジモンの身体を傷つけることが出来るかよ」


 僕はデジヴァイスからナイフを取り出した。その柄から数センチの部分には刃がなく、其処がL字に一度折れてから柄に平行に刃が伸びている少し特殊な形状のナイフだった。柄には真っ直ぐ握った時に人差し指を置く部分に象の牙のような形の突起物が伸びている。僕はそれをゴブリモンに見せて言った。


「時代遅れだね。人間がデジモンを傷つける為に作り出した道具を知らないのかい?デジタリサルウェポンって言うんだけどね、ちょっと特殊な仕掛けで人間でもデジモンに傷を付けることが出来る様にする武器さ。尤も、それで人間がデジモンに敵う力を得るワケじゃない。でも、君には十分」

「御託で誤魔化そうったってそうはいかねぇんだよ!」


 ゴブリモンはさっきみたいにまた拳を振り上げてきた。頭悪いね、自分の方が強いとでも思ってるのか。そんな筈ないだろう。僕は胸倉を掴んでいるゴブリモンの手に向けてナイフを突き出した。




 なぁリリィ。僕等が出会った時の事、覚えてるかい?いや、君が僕の寝ている所に訪れたってのは無しにして。僕が君を、君が僕を始めて認識した時のこと。僕はあんまり覚えてない、ゴメンな。そもそも、あの頃は自分がどうやって生きていたかもあんまり憶えてないからさ、それは分かるだろ。

 あの頃僕は何も知らない奴だった。君はどうだったんだろう。出会った時はそんな色々なことが分かるほど僕は賢くなかったし、一緒にいるようになってからは君は自分の事を殆ど話さなかったし。もしかしたら僕よりもっと色々な物をその小さい体の中に秘めてたのかい?教えてくれないか、多分な次はそういう事も全部分かる気がするから。

 じゃぁ、少し会えなくなるけどさ、我慢してよ。なるべく早く済ませるようにするから。あ、クイーンに僕のことなんか聞かれたら正直に答えていいから。でないと君も疑われるからね。僕は平気、クイーンが来たって逃げられる自信がある。大丈夫。君にとって格好良い奴のままどうにか生きてるから。

 それじゃあ。…オーライ、次にこれが言えるのはいつか分からないけどな、ちゃんと聞いといてくれ。リリィ、愛してる。君を愛してる。





「ヤシャモン、なんで手を出した?」


「ゴブリモンの攻撃を阻止したまでの事、拙自らは何もしておらぬ」

「僕があれ以上暴れるとでも思ったのかい?余計なお世話だぜ」

「拙の力を見せればそれで済むだけの事」

「…オーライ分かったよ」


僕等は夜の生温い風を心地良く感じながらぶらぶらと寝床を探していた。自分から暴れておいてそうそう長い間店の中にいる訳にもいかずに店を出たはいいけれど、あまり安心して寝られるところもない感じで意外に何処もゆっくり出来そうにない。何しろそこら辺にもう先客が居てよっぽど隙間でも見つけない限り横になれるスペースがなかった。路上のど真ん中で寝るなら話は別だけど。

ゴブリモンが殴りかかろうとしてきた時にゴブリモンの腕を捉えたのは僕のナイフではなくヤシャモンの木刀だった。僕のナイフを木刀で受け止めそのままゴブリモンの腕を弾き攻撃してきた腕も掴みそのまま投げる。自分の分身、パートナーだけどやっぱりこの能力は恐ろしい程。

ゴブリモン達はその力を目の当たりにして簡単に退いた。度胸も実力もないクズ。あんな奴等にアウトローは名乗って欲しくないね。だから少し腹立って本当にぶっ殺してやろうかとも思った。勿論そうするつもりは無かったぜ、でもヤシャモンが勝手に色々やりやがったんだよ。全く、少なくとも僕は彼より分別あるぜ。勘弁して欲しいよ。


「今宵の寝床は如何致す?」

「如何するか僕が決められるならもう其処に向かってるよ」

「それ故如何致すのかと」

「五月蝿ぇな、そんなに言うんだったらここで寝ろ。僕は寝る」


 僕は路上に転がった。折角街についたってのにろくな寝床がないってのは如何いうことさ。着いたのが夜だから仕方ないとしても、野宿すら出来ないってのは想定外だ。


「どうにかなるだろう。寝るぞ」


 僕は投げやりに路上に転がった。呆れた表情、かは分からないけれどそういった雰囲気でヤシャモンが僕を真上から見下ろしていた。


「なんだよ」


 ヤシャモンは何も言わずにこっちを見続けた。


「なんだって」


 ヤシャモンは何も言わずにこっちを見続けた。強い酒を飲んだ生理反応で充血した目が滲みヤシャモンの姿を認識しにくくなってきた。僕は言った。


「暴れようとして、悪かったよ」

「いや、偶にはそういった事もあるだろう」


 ヤシャモンが僕の横に座った。それっきり僕には朝になるまでの記憶がない。











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 逆らう事こそロックンロールの本来だと誰かが言ったのを覚えている。名前は憶えてないけどね。君だったら知ってるかな。

僕も従うって事が何よりも嫌いだ。純粋なヒネクレ者で生粋の反逆者、多分僕はそうだ。だからここにいる間ずっと漠然とした気分の悪さを感じていたんだ。その感じさえなければここはいい場所だったんだ。何しろギターが弾き放題だったから。

ギターもアンプもいいものは何でも揃える事が出来る。素晴らしかったね。それに何より君の、魂が聞けた。なんて言うとまたウザいって言われるかもね。それでもいいけど。そういう声も好きだし。まぁ何より一番好きなのはベッドの上での声か。…オーライ。もう言わない。

僕は血も魂もない人間だった。人間?いや生き物だった。もはや単なる生き物だった。ろくな知性も理性もない。ただ戦って殺して壊すだけの無価値な生き物。彼に繋がる奴等に命令されるままに全て破壊した。目の前に現れたら屈強なデジモンだって脆弱な子供だって。

ただ、そうした。それが全てだと思ってた。前までの僕と君だったら少しもそれが間違いだなんて考えることも出来なかったよな。今の僕と君の違いはそれを確信したかそうでないか、ただそれだけ。君に悪いことなんて何もない。というか、君がいるから僕はここを出るんだよ。

君がいてくれたお陰でやらなきゃいけないことに気付いて、それで僕は行くんだ。心配しなくても、僕は死なないし情報ならあのミスターベィビーフェイスから貰うから大丈夫さ。ただ、その場合彼に殺されない様に気をつけなきゃね。あの顔で、ふざけるのは止めたまえ、とか言うんだから笑い死にさせられないように気をつけなきゃ。

…だから、そこで待っててよ。君を危険に晒したくはないし、それに僕の戦う姿をもう一度見せるのも嫌だし。そこならクイーンにあれこれ小言を言われなければ、少なくとも君の安全は保たれる。でもクイーンが小言言わない日はないか。




なぁ、リリィ





 PDPタウン。セントラルパレスという高く美しく穢れたタワーを中心とした円形に形造られた街で、ノースディヴィジョン、イーストディヴィジョン、ウエストディヴィジョン、サウスディヴィジョンと東西南北四つの区画に分けられている。それもきっちり高く、しかも上空からも越えられない様にバリアを張って綺麗に四等分。徹底的に空間を管理している。当然その周りも壁に覆われ侵入は通常なら出来ない。

四つの区画はそれぞれ特徴と役割が違う。ノースディヴィジョンは完全なる機械支配が残っているクソッタレの街。建設中じゃないのかと思うくらいパイプやメカが揃ってて狭くてゴミゴミしてる。呼ぶ人によってはデジタルワールドでもっとも進んだ技術を持つ国とも言うけどな。十年と少し前まではこのPDPタウンそのものがそんな状態だったからもっと最悪だった。そういう全く持ってファックな場所だ。

イーストディヴィジョンは娯楽の街。カジノもレースも闘技場もゲームセンターもそういったものは全て揃ってる。僕もこの場所はかなり好きだ。何しろライブハウスがそこら中にごろごろしてるんだからね、これ以上最高なところは女の体の上以外には在り得ないね。

ウエストディヴィジョンは酒と刺激の街。良く言えばそう。実質は暴力と混乱とだけで成り立っていてそこらの酒場はクズやらアウトローやらで蔓延っていて、招かれざる客は全てこの街からPDPタウンに入り込む。かく言う僕もある方法でこの街に侵入しているんだけどな。大体の場合人は人に対して偉そうな事は言えないようになってるんだ。

サウスディヴィジョンはありきたりな街。ノーマルって言葉が好きな人は行った方がいいね。ここには当たり前ってのが当たり前に揃っている。つまり機械も娯楽も酒も混乱も全部適度に入っている。何か事情が無ければ僕は行きたくない。ノーマル程イージーでデンジャラスな物は無いから。

PDPタウンの全容を知っている生き物は存在しない。何故か、それはどんなに下の街を見て回っても上の街に行ける生き物が居ないから。そして上のセントラルパレスに住む生き物は下の存在を認識してなんかいやしないから。お互いに疎ましく思ってるんだ、繋がりが出来る筈がない。

どいつかがここを強欲の街(グリードタウン)なんて呼ぶけどそれはとんでもない間違いだ。強欲なんてのは生き物が必ず持ってる物で、理性がある奴はそれをただ誤魔化しているだけだから。どいつもこいつも全員が全員本当は満たされたいと思ってるのさ。…それに多分名前の由来は別のところから来ているとも僕は思っているし。

僕はウエストディヴィジョンにいる。何故か?当然酒と刺激があるからさ。というのはジョークとして―――まぁその二つがなけりゃ街だなんて思わないけどな―――つまり僕は其処から侵入して間もないって事。

だから今は真っ先に酒場を探しているところだ。旅人は汚れを落とすより疲れを落とせってのは良く言うだろ?言わないか?どっちにしろその意見が満場一致だから行くしかないというロジックな訳だ。まわりくどいアルゴリズムだな。二人しかいないのに満場一致もクソもない。

地上から千メートルもある岩場でも無く、陽を多く遮る森でもない、空調のシステムが存在する筈のない低俗なウエストディヴィジョンの夜のじめじめとした暑さで体力を奪われる中を歩き、そうして探すこと一時間弱。漸く落ち着けそうな場所を見つけた。

あまり設備の新しそうじゃないカビた雰囲気のある佇まい。探されたくないと思っても間違いでなさそうなくらい人の通りの少ない路地にその場所はあった。

 人気は如何ほどかなんてのはまだこうして店の前に立つだけの僕に分かる訳もないけれど、見た感じでは上客があまり入らないそういった雰囲気を持っていたその店に僕が興味をそそられた点は二つ。一つはとても懐かしい、何か一度嗅いだ事のあるような匂いを感じたこと。

もう一つははっきりとしたジャズの音が聞こえていた事。ジャズバーなんてのは今まで行った事がない。僕はそれに興味をそそられてヤシャモンを促して店の前までやってきた。それからもう一つ興味をそそられる物を発見した。

それは古いネオン灯で表記されたこの店の名前『ストレイ・キャット・ストラット』少しの情報もなくただそれだけが紫の光で店の額に浮び上がっていた。それがなんともロックンロールな気がしてイカしてやがる。早速僕はドアを開けた。

 始めに印象に受けたのが店内の雰囲気が乾いているという事だった。酒があるところなら普通はもっと湿っぽさがあってもいい筈だけれど、ここは乾いている感じがする。そんなことを僕は感じた。同時に警戒もした。特殊な雰囲気のある場所には特殊な出来事が起こると相場は決まっている。

 右手側のテーブルには三匹、顔が悪い野暮ったい雑魚の緑色した小鬼ゴブリモンが下らない会話で盛り上がっていてその奥のテーブルに案山子に良く似た姿の、脳みそはその上に乗っかっているだけのように見えるカラスにある無表情のノヘモンが、

左側のテーブルにはジャパニーズ忍者の姿をした栗の様な身体のイガモンと腹部に銃身を持ってウェスタンな格好をしたリボルモンが、カウンターの左奥には疲れた背中をこっちに向けている禿げ上がった頭に腕と足をつけただけの中途半端な体にサングラスを掛けたナニモンがいた。

店の大きさを考えれば極端に客が少ない訳でもないけれど、繁盛しているとは言いがたい程度の具合だった。

店内は一瞬で中が見渡せるほどの広さで、テーブルと椅子と壁の方にある中程度のスピーカーとカウンターの奥に酒棚が、それと左置くの辺りに小さなピアノが置いてあった。埃を被っていることから考えると飾りに近いものなんだろう。酒場に清潔感というのも変な事だけれど、妙にそれを感じた。後は年代と争いを感じる店内の傷が其処此処に見えるくらいだった。

僕は真っ直ぐカウンターの真ん中に座った。ヤシャモンは僕の横に椅子を退けて寄りかかった。ヤシャモンが座らないのは当然、椅子なんかにとんと座ったら格好がつかないから、それだけの理由だ。


「バーボンのミルク割り、それとコイツに適当な値段のウィスキー一瓶」


 それだけ言って僕はシャツの胸ポケットから煙草を取り出し一本銜えて、胸からチェーンでぶら下がったアップル手榴弾―――林檎の様に丸くへたの様なピンとレバーが付いているやつ―――に似た形、と言うよりはそっくりそのままの形のライターで火を着けた。悪い匂いと毒が肺の中を満たす。そうして肺の中にあった綺麗で腐った空気を追い出す。そして全部纏めて吐き出した。

身体の奥まで何か満たされるような感覚を感じながらそこで灰皿がないことに気付いた僕は目の前に立っているこの店の主人と思われるデジモンに声を掛けた。


「ハロー、ミズストレイキャット。僕はブライアン・セッツァー」

「あら、私はリー・ロッカーが好みだけど?それより何か御用かしら」

「灰皿、置いてあります?」

「ん~、残念だけどここではあまり灰皿を使う客がいないから無いのよね」

「それは残念。では一つ手品でも」


 僕の予想通りこの店のマスター、妖艶な人間と猫の間程の姿で神秘的に思える踊り子の衣装を身に付けたバステモンはロックンロールを知る人だった。ストレイ・キャット・ストラットとは気取った野良猫という意味で、僕の言ったブライアン・セッツァーや彼女の言ったリー・ロッカー、それにもう一人スリム・ジム・ファントムのネオ・ロカビリーバンド、ザ・ストレイキャッツが創った曲。ついでに丁度彼女も野良猫に程近い心を持っているところもその名前と関係があると今分かった。

 それはそれとして灰皿がないと知った僕は知らない人にとっては余興に成り得ると重い、デジヴァイスから灰皿をテーブルの上に出して見せた。嬉しいことに僕の理想通り彼女は驚いた。だけどそれは僕の期待していた驚きではなく別のところへの驚きだった。


「あら、貴方テイマーなの?珍しいわね、久しぶりだわ」

「へぇ、と言うと以前にも此処にテイマーが?」


 その返事には僕も驚いた。通常の場合こういった場所にテイマーは来ないというのは当たり前の事だからだ。何しろ現在デジタルワールドにいるテイマーの殆どは二十歳より下だからだ。居たとしてそういう彼らはQDCでも重要なポストに付いてこんなところに来る理由と暇がないからね。そしてこういう場所の良さなんか少しも知らない。そういう奴等だし。


「貴方よりもう少し幼い子だったわ。不思議なことを言う坊やでね、そうそう、そこのピアノを弾いたわ。技術がとても高い訳じゃなかったけどなかなか面白い音を出す坊やだったわ」

「ふ~ん、それは是非会ってみたいね」

「それにしても坊やは随分こういうところ、慣れてるみたいじゃない。テイマーってのは皆そんなものなの?」

「いえ、そうでもないと思います。僕がロックンローラーなだけ」

「…対した坊やね。カウボーイなんてそう頼む奴はいないわよ」


 マスターのバステモンは僕の前にカウボーイ、つまりバーボンのミルク割りを置いて、その横にウィスキーの瓶を並べた。ヤシャモンは早速そのウィスキーをぐっと一飲みした。僕も取り出した灰皿の上に煙草を置いてカウボーイを一口飲み込んだ。


「坊や、素敵な恋人がいるのにこんなところ入り浸ってていいのかしら?」

「…よく分かりますね」


 バステモンが意味有り気にカウンターに手を乗せ僕の方に顔を寄せてきた。女は男よりそういったことに鋭いと言うけれどやっぱりそれは事実だね。


「貴方が着けてるそのライター、如何見たって貴方の趣味じゃないでしょ。それをわざわざ身に着けてるってことは…ってことじゃない」

「ご名答です。確かに僕には凄い美人の彼女が居ますよ。でも今はワケ在りで会ってないんです。だからこういうところにも来る」

「あら、そう」


 バステモンは一瞬微笑みを浮かべてから身を引いた。そうしてから僕に出したバーボンを自分の手元に取り出したグラスに注いで飲み始めた。成る程、野暮ったく自分から人の秘密を聞き出す悪い趣味はないらしい。その代わりに、話したい時は好きに話せってことだね。気取り屋猫に相応しい対応だ。


「僕は元々、もっととても暗いところに居たんです。ダークエリア程は暗くない。しかしそれとは違った質の悪い暗さの中に。始めのうちはそれが当たり前だと思っていました。けれど、いつからかそれを疑問に思う様になった」


 話し始めてから少しだけバステモンの様子を窺った。バステモンは曲が終わったディスクを取り出して別の物と取り替えているところだった。僕はその後姿に続けた。


「そんな時僕は彼女と出会ったんです。大凡周りから見たら女らしいところなんて一つも無かったんでしょうけど、でも僕にはとても、なんだろう、美しい、かな、そういう物に見えた。それまでそんなこと感じることなんて一度もなかったんですけれどね、彼女を見て僕はそう感じたんです。自分でも笑ってしまいそうなくらい単純に見惚れました」


 グラスに口を付けた。熱さも冷たさもなく淡々と僕は続けた。


「彼女とずっといるうちに僕は変わっていった。馬鹿馬鹿しくてありきたりでまるでナンセンスな話ではありますけど。生命力に満ちた彼女と居て僕は変わりました。それで自分が色々と落としたもの、やり残したことが在る事に気付いた。

それまではなんともなかったのに気付いてみるとどうしてもそれをやらなければならない様に感じて、そして僕は彼女と居る場所を出たんです。暗いところに縛られないように、やり残す事のないように。彼女にも本当は付いて来て欲しかったんですけど、事が事だから一緒には来なかった。

全部終えて本当に僕が彼女みたいに生命力に満ちた生き物になったときになったら会いに行こうってそう決めたんです。多分彼女納得はしてなくて会った時にはヒステリックになってるんだろうと思うから、そこは少しブルーですけど。

 ロックンロールについては殆ど彼女から教わったんですよ。音楽が心から好きな奴でしたから、最初の方はもう何があろうと無理やり僕に叩き込もうってしてたくらいでね。でも後の方では僕の方が必死に何でも知りたがって彼女がうんざりしてましたね。もう勘弁してくれって。貴方みたいに中々のストレイキャットぶりでした。まぁ女は全部そんなものなのかも知れないですけど。

 後悔は、何とかしないように思ってるんです。彼女を独りにしてもやろうと決めたことだから、中途半端が一番ロックンロールじゃない。だから全部終わらすまでは会えない。そういう事情です」


 喋っているうちに身体が重たくなってしかし浮ぶような感覚が身体中に広がってきた。久しぶりの酒はやっぱり酔いの回りが早いかな。グラスを置いてから灰皿に置いていた煙草をまた再び吸い始めた。


「あら、坊や何か言ったかしら」

「いえ、全部独り言ですよ」










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いやまぁ仕事をするとこう色々あるというのは常。仕事に限らずではあるが。特によく言われるし。

仕事の人の態度やら一言やらで、あぁあ!?とか思う時はあるけど大体は流してる。大体の場合は仕事の事についてなら相手のが正しいんだろし心して拝聴。そして反省。客にも面倒な気分にさせたくはないし人の仕事邪魔して客に迷惑かかるのも嫌。仕事仲間に迷惑とかはあんま考えてねぇな。常識的にやったいかんとこはやらんしそもそも現場の人数はさして多くないから必然であっちこっちカバーしあうのは普通だし。まぁ、また仕事やられたか、とかは思うけどね。給料の1,2倍くらいは働いときたいの。

でもま向こうもむかつくことはむかつくやろしわしもむかつくことはむかつく。ミスしてそれに気付かんでると先輩がやってきてわざわざミスした状況そのままにして直させるんだけど、それって言えば済むやろ?なんでこう仕事人は手間のかかる説教をしたがるんかね?
まぁそれ自体はどうでもいいの。ちゃんと仕事分かっとる人は客に呼ばれそうにない間くらいで指摘してくれるし、そのやり方の方が明確だ(ってもそれが分からんくらい何も分かってない訳じゃないし面倒な事するなぁとか思う。どこどこで何失敗してるよとか言えばぱぱっとやってこられるし、その後で説教すりゃええやないのさ)

でも間の悪い奴がおんのな。明らかに忙しい時に声かけてこれは何これは何と。機械スイッチはいっとらん、メダルストック余し過ぎとか。指摘一つで終るやろ。おもくそ客に呼ばれてんのに「何であれしてないの?」「なんでこんなになっとんの?」と。前者ならはいで済むの。後者はわざわざせんでもええ言い訳をせりゃならんの。

仕事ってなんだか分かるか?金を稼いだり儲けたりすることやろ?その事で過去の説明はいらんやろ。それよか早々に改善せないかんやん。パチスロは一度投入した資金自体が戻っては来ないだろ?そっからどう挽回するかってのじゃん(挽回とは言わんか、既に負けが込んでる時以外)なんでその次に得る方に目を向けんのやろね。

その辺日本人の体質とかマスコミの所為とかだよな。メインで取り沙汰されるのは謝るか謝らんか。原因はなにかどうしてこうなったか。御託はいらんからはよどうにかしろとわしは思うんだが。

それでも拝聴はしますさ。貴重な指摘、意見だもの。でも忙しい時にはやんなよ。仕事わしよりやってんだから分かるだろ?この場面で二人人間が動けないって相当だってさ、とか。

しかも性質悪いのは説教が下手糞な場合ね。ってか下手糞な説教は大体の場合でただ怒ってるだけって事になるんだが。怒られて文句は言わんが本気で場合を考えろ。っていうか上手くまとめられんのやったら説教は仕事終ってからにしろ。説教されてる間は仕事とは呼べないだろ。一部って思う人はいるとは思うんだけど。仕事してない分の時間も給料を貰う意味が分からん。終わりまで待てないなら休憩時にしろ。仕事の邪魔だ。

しかもこれは今回初めてだったんだが明らかにお門違いの指摘だったんだよね。色々決まり毎のある仕事で、それからすると一見はミスの形に見える奴なんだけど、状況を考えたらそれもありえる事だから初っ端からやや怒り気味に言う事でもないんだよね。ってかそれ以前にまだミスに見えるところですらなかったものだったし。

要約すると、先輩が、ミスしてもいないのに、何でこうなってんのとひたすら聞き、その癖何が悪いかを指摘出来ないまとめられない説教の下手さで、結局先輩自身もその状況を全然改善しようとしてないで、客を待たせてまで言い続けている。と。しかもそのミスと言い張るそれも精々影響して仕事が普段より多少手順が増えるかくらいで、普通にやってりゃいたって問題なく過ごせるレベルだったし。

その指摘の前に普通のミスをしてたので若干凹んでたから関係ないのを指摘されてあぁちょっと本気でジャマだなぁと思った。しかも改善できる時間三十分くらいあったのに全然してないから軽く笑うかと思った。

だからってわざわざそれを指摘したりゃぁしないけどね。その先輩が似たようなミスをしてた時もあったし、たまにうざいくらいのミスして気付いてない時があったとしてもわざわざ指摘するほどむかっ腹立ってはいない。大体頭の中でこう言ってやろうかとか考えるだけで十分。

よく「お前には言われたくない」というのを本気で言う人がおるが、それはお前に限らず指摘されたくないだけじゃないのか?とふと思った。反論の余地があるから反論してるだけに思える。同じミスしてる奴にも指摘されて当然だと思うがね。
ただ、同じミスをしてる奴が怒り気味以上で言っているとそりゃそういいたくなるのは分かる。でも正しくは「お前に怒る権利はない」だな。

ほんとに世の中否定をしたい人間ばっかりだな。それこそわしに言われたくないとか言う奴か。まぁでも戦争をとめるのに紛争しなきゃいけないからね、そういうもんだよ。
いや、もう言う事がねぇよ、あぁマジくたばれとか思うさ。もうさ、あれだ、アラジンには触らない。目押し下手やからゲーム消化がもう能率悪い。しかも兄貴と回してやったら二人とも引き悪。なんだよ、次の人4千枚って。夢ワーDX(適当に略)でも引き戻せないよ。ってか前に打ったのがゲーセンだったから打ち方はわかっていたが…あれは酷い…。

あぁ~もうラクダ三回通りすぎたというのに。バケ、バケで兄貴曰く絶対6だったのに。な~んぞこれ。朝一のサービスとかないんか!リプ連続で夜以降して普通にスルーかよ。もうあれや、絶対相性悪いわアラジンとは。ジャグは早々に埋まるし空かんし。

夢ワーDXも天井近くまでやって漸くやんけ。行かんでどうにか引いただけましやけども。兄貴情報によると設定6三日間ばら撒きイベントだとかって嘘やろ。ギリ3箱?ってとこが限度やんけ。二つもねぇし。普通もっと早くから乗ってるとことかあるやろ。5号機も普通にはまっとる。まぁ、隣と隣の隣で2箱近くまでいってたからヤバイのかもしれんとなんとなく思ってたが(といっても正確に5号機がどういうもんだか詳しくは知らん。素人さ)

もうね、そんなもん飲むさ。コンビニのアーリータイムス不味い。ほんに糞。なんでやろね?

そってこないだ仕事帰りにリオを打ったんだが…やっぱり勝てない。いや、勝ったとは言えるんだが…2千円…目押しの成功率が低いんだよぅ…RTもループさせられんのだよぅ…チェリーが入らないのだよ。ってか打っててあれだけどそもそも最高設定7ってどんな仕組みですか。

とかまぁ、どうでもいいですな。とりあえず言える事は現在負け越しなので、働いて稼がないと。






「何やって…って一美さんまた脱いでるんすかぁ?」


 また声が聞こえた。今度は前からだたけど一美さんが影になってそいつの顔は見えなかった。でも声で分かった。この緊張感のなさ気な声はあいつだ。


「あれ、紳さんも一緒すか?お久しぶりっす」

「大輔、か?久しぶりだけど挨拶はいいから一美さんどうにかしてくれ。みりゃどうだか予想つくでしょ」

「あ、まぁ、常套犯すからね」

「言いたい意味は分かるけどそれは多分常習犯て言うと思うよ。というか早く捕まえて」


 何か間抜けな発言が飛び出た。一瞬ちょっと成長したように見えたのは単に背が伸びただけか。その辺は変わらず、か。安心したような残念なような。と感慨ぶってる場合でもなく僕は再度頼んだ。大輔の慣れてる様子から考えて結構色々な人にやっぱりやってるんだなぁと感じた。


「あ、ハイ」


 大輔は僕の言葉で慌てて僕から一美さんの両手を受け取った。それをしっかり後ろに揃えて掴む。多少荒っぽいけどこうでもしないと満足するまで暴れ続けるからなぁ。鍛えてるから力強いし。


「いや、助かった」

「いっすけど、それよか紳さんなんでここいんすか?」

「ファイル島がやられて、こっち来て、それでもう一回戻るところ。出発がお前と同じ明日だからさ、前報告に来たとこ」

「そっすか」


 やたらポケットのついたハーフパンツに青白のストライプのシャツ、その上にやっぱりポケットの大量についたベストを着て、そして頭にはゴーグルといういつみても大して変わらない格好をしている大輔はやたら大きく口を開けてやたら愛想のいい笑顔を見せた。これで馬鹿なことさえ言わなきゃ十分良い思いを出来るのにといつも思うけど、馬鹿なことを言わないとこいつっぽくないとは思う。


「お前等なんだ、二人してずるぞ、か弱い乙女に二人掛かりってのは卑怯とか思わないのか」


 じたばたと一美さんが暴れながら言った。自分から事を始めて置いてこれだもん嫌になるよ。しかもか弱い乙女なんて常套句までだして。この人本当に自由気ままだよなぁ。これでパーティを組んでPDPタウン行くって…義貴君が可哀想だ。というか誰がまとめるんだ?凄く不安だ。


「離せこの野郎、なんだ如何しようってんだ。あ、あれか流行の陵辱プレイってやつか、縛って変態なことしてビデオに撮って売るってか。この鬼畜生!どエス!人でなし~」


 あぁ、あったなぁ。これで一回周囲の人に白い目で見られたことが。ははっ、懐かしい。慌てて口塞ぐと噛んでこようとするし。かと言って根負けして離すとまたニヤ付きながら暴れ始めるし、もう誰かこの人を静かにさせてくれよ。僕は深く溜息を吐いた。


「なんだこの後仲間を集めてあたしをマワすのか?それでやくざに売ってクスリを無理やり打ってセイドにするつもりか」


 マワすにクスリにセイド。もう二十歳過ぎた女性からだって出ていい台詞じゃないものがばんばんと出ている。しかもそれを言っているのは学校から全国出場の期待をかけられている陸上部期待の星若干十七歳石目一美。何処からそんな言葉を仕入れてるんだか分からないよ。これで交際範囲は男女問わず僕の数倍なんだから世の中不公平だ。


「えーっとあとアレだ、なんだ、そう何か変なことするんだろ。離せ変態野郎ども。うわはっ!」


 そろそろ流石にネタがなくなってきた頃に急に一美さんが変な悲鳴を上げた。なんだと顔を上げてみると一美さんが首を窄めて顔を歪めていた。


「あっ、コラ、ヨッシーか。やめっちゅーの!それ駄目なんだよ」

「一美姐さんが皆困らすからいけないんじゃん。オレ、悪い事したらまたくすぐるって言ったよ」

「分かった、分かったってば!だから首に触るな。ヨッシーのマセガキ~」

「まだ足りない?」

「あぁゴメンって。やめるやめる、もう言わないからホント勘弁」


 大輔が一美さんを抑えている横から小さい手が一美さんの首に伸びてくすぐりで攻撃をしていた。それはこのパーティの最後の一人斉藤義貴君だった。だからヨッシーなのかと思った。義貴でヨッシー、一美さんがつけそうな渾名だ。

百三十と少しの身長しかない彼は百六十五センチを超える一美さんの女性としては長身に対抗すべく背伸びをして攻撃をしていた。成る程、そんなやり方があったのか。賢いなぁ。


「紳さん、おはようございます。紳さんも明日出発ですよね」

 義貴君は礼儀正しく僕に礼をした。なんか一美さんとの態度に大分違いがあった気がするけどまぁ気にしない。ちなみに一人っ子の筈の義貴君と一美さんは当然姉弟ではない。一美さんは素直そうな子を気に入ったりするから仲良くて当然かも知れない。義貴君の方が立場上みたいな感じがするのは面白いけど。


でも、それはある意味当然かもしれない。一美さんも流石に小学生に変なもの、とか言うと失礼だけど、変なことをして見せる訳にもいかないだろうし。そう考えると義貴君の方が対等でいられるのかもね。


「うん、僕も明日出るよ。それよりこれ大変じゃない?変な奴ばっかりでしょ」


 偶然にも全員僕の知り合いというのも面白いというか世間が狭いというか。そして集まってみて分かったのはまともな知り合いが全然いないということだね。


「大丈夫ですよ。慣れれば楽しいです」


 慣れれば楽しい、か。それは凄いなぁ。僕なんか慣れたつもりの今でさえ正直恐ろしいというのに。一美さんのあしらいかたもなんだか分かってるみたいだし、僕が知ってるよりずっと大人なんだと僕は感じた。それがちょっと悔しい気もする。


「一美姐さんもう暴れない?」

「暴れないよ。ホント暴れない」

「またシュンさんノビちゃってるんだからさ」


 またって、相変わらずしょっちゅうやってるのか。僕はこめかみを掻いた。と、誤解のないように言っておくけれど、シュンは別に凄く変なことがしたいと思って言っているんじゃなくて、単純に相手の―――女の子だけの、ね―――雰囲気に合わせて調子を変えるってだけで、一美さんみたいな人の言うことが嫌いな人には言わないからね。本当だよ。


「あんまりやっちゃ駄目だよ」

「分かってるってぇ」

「やるにしても加減して」

「分かってるってぇ」


 って加減するだけでいいのかい?意外とお茶目、というかなんというか。楽しそうだな義貴君。実はそういうキャラだったのか。知らなかったよ僕は。


「じゃぁ大輔さん、離して上げて下さい」

「おぉ」

「ありがとねぇ」


 義貴君の一言で漸く一美さんは解放された。その途端に一美さんはまるで猫みたいに大輔から離れて威嚇するようにぎぃっと歯をみせて眉を吊り上げた。


「ヨッシーおいで~」


 そうしてから義貴君を呼び寄せて頭を乱雑に撫で、それからがばっと抱き締めた。極普通のことをするように当たり前のように躊躇無く人に抱きつく癖もどうやら変わってないみたいだ。義貴君は特にそれを嫌がりもせずに従ってひとしきり一美さんがばたばたやり終えるのを待った。義貴君は特に嬉しそうでも嫌そうでもない顔をしていた。


「よし、野郎共、ちゃっちゃと報告済ませて飯食うぞ~、付いて来い」
 やるだけやった一美さんは満足したのか僕等を催促するとさっさと支部長室に入っていった。大輔がまだノビているシュンの腕を肩に掛け持ち上げて引き摺ってそれに続いた。僕はそれを眺めながら思った。


「一美さんに付き合ってたら変な大人になっちゃいそうな気がするなぁ」

「大丈夫です。一美姐さんは寧ろ子供みたいなものですから」

「あははっ、確かに」


 一美さんより六歳も年下の歳貴君が言っているのになんだか妙に納得した。僕と義貴君も支部長室に入った。





「義貴君が頼りになりそうだからってちょっと大丈夫かなって思ったけどやっぱりあの三人が、特に二人が何するか分からないよ」

「もう船乗ったんスから今更気にしても仕方ないっスよ」

「そりゃそうだけどさぁ」


 結局僕は自分の知り合い達がPDPタウンに向かうパーティを組むことになったという事知っただけで、それを気にしないで安心してファイル島に向かえるような要素を何一つ手に出来ないまま出発を迎えた。一乗寺君はただ大丈夫ですからと言うだけだった。勿論丁寧に、多分、という言葉をくっ付けて。出来れば心配事も少なくすっきりして行きたかったんだけど、今となってはもう無理な願いだった。

 そしてもう一つ僕には心配事があった。


「佐川さん、飲み物買って来ましたよ」


 僕は目に掛かった髪の毛を掻き上げ声のした方へやや溜息を吐きながら顔を向けた。クリーム色のチノパンに薄い青のボタンシャツの袖を折って着ている尖った唇に特徴がある可愛らしい女の子が歩いてきた。

彼女は手に二つ紙コップを持って傍らの彼女の胸辺りまでの背の、灰色の皮膚―――白と黒の丁度中間くらいの灰色で、例えるなら電柱の色に近い―――で恐竜と人の間くらいの姿をした、巨大な斧を持つアクスモンが二、三リットル程はいりそうなポリタンクを二つ担いでいた。

 葉月ちゃんは今朝突然僕のところにやってきて無理やり自分もファイル島に行くと言ってきた。何を考えて何を覚悟してきたのか分からないけど彼女はいつかのようにとても強い目をして僕に訴えてきた。

これは逆らっても無駄だなと思った僕はその旨を一乗寺君に伝えて急に定期船のチケットを用意してもらった。それに僕には葉月ちゃんが来たいといっているのを拒む理由があるわけでもなかったし。葉月ちゃんはまだテイマーの力が足りないから外出の許可は出されていないから、すこしその辺を騙くらかすのに手間取ったけど、ファイル島へ行く人もデジモンもそんなに多くないからチケット事態は全然余裕で手に入れることが出来た。

 心配事ってのは別に葉月ちゃん自身の事じゃない。寧ろちょっと一緒に行く人が出来て嬉しいくらいだ。


「佐川さんはカテキンEXジュースですよね、でも、それ美味しいんですか?」


 葉月ちゃんは眉を潜めて僕のジュースの中身を見た。それは確かに当然の興味だ。何しろ中にはまるで青汁みたいな濃い緑が並々と注がれているから。


「慣れれば、美味いよ。飲んでみる?」

「…いやいや、いいです間に合ってます」

 そりゃそうか。僕はゆっくりとそれを口に注ぎ始めた。苦くて、少し甘い。今日位身体に悪いものでも飲めばよかったかな。横ではアクスモンとブイドラモンがポリタンクを一緒に飲み合っていた。少し値段の張るフルーツジュースだ。


「あ、これお金お返しします」


 そういって葉月ちゃんは一枚のカードをポケットから取り出した。僕はそれを受け取りながらデジヴァイスを取り出してモードをスキャンにしてカードをディスプレイに近づけた。ピコピコと音がしてデータの読み込みが終わると画面を開いてカードが示す数値を見た。そして直ぐカードをジーンズの後ろのポケットから取り出した小ぶりの財布みたいな形をしたカードホルダーに入れた。


「大して、掛からなかったかな」


 僕が持つ財布はそのカードホルダーの方ではない。カードの方だ。とりあえず仮にマネーカードとそれは名づけられ多分そのまま定着しそうだ。この世界ではお金の単位をビットと呼んでいる。お金は紙幣や硬貨のように物で流通させている訳でなく、カードの中のデータでのみ存在する。まぁ早い話持ち歩く銀行口座みたいなもんだね。それをキャッシュカードのように使ってお金を支払う。取り敢えず通貨に関してはそういう形式がとられている。

 それで僕が言いたい事は、デジヴァイスでそのカードを読み込むと残りの金額が何ビットか分かるという事と、なんだかとてもごっそりその数値がさっきみたものと減っていたという事。実際の金額にすれば、大した額ではないとは思うけど、でも今の状況を考えるときつい。つまり、僕の心配事はこれ、お金の、問題。

葉月ちゃんのチケットを買う時は急場だったからQDCからお金を出す程余裕がなく、僕の財布から全額を支払った。そして更に悪い事にこの船がファイル島に辿り着くのは四日後で、僕のも葉月ちゃんのも安い部屋のチケットしか取れないから、食事は朝食しか出ない。葉月ちゃんはお金を貰える仕事をしていないからお金は一銭だって持っていない。

つまり要するに如何いう事かと言うと、今後、ご飯をどうやって満足に食べていこうかという事だ。もう、勘弁してくれ。僕はカテキンEXジュースをまた一口口に注ぎ込んだ。そして溜息を吐いた。なんでこう強がってしまうんだろうなぁ。


「はぁ…」

「佐川さん…それ溜息吐く程美味しくないんですか?」


 何も知らない葉月ちゃんが苦々しい顔で僕のジュースを見ながらそう尋ねてきた。なんだかんだで結構僕の人生女子に振り回されてる気がしてならないとその瞬間強く感じた。


「葉月ちゃん」

「何ですか」

「これ飲む?」

「いえ、間に合ってます」









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「なっ…」


 開いた口が塞がらずに鼻の穴まで思いっきり開いた、と自分では思う。目も大分開いた筈。そのくらい僕は驚いた。


「なんで…」

「なんでじゃねーって。久しぶりに会ったのに何だよその顔」


 聞きなれていた声が聞こえた。見慣れた顔が見えた。嘘、だろ?冗談でしょ?


「いやいやいや…」

「いやじゃないっての。いいんだって」

「違うよ!何でお前が此処にいるんだよ!」

「あぁ~?細かい事気にすんなって」

「細かくはないだろ!」

「うっせぇよ!声でけぇよ!」


 思わず怒鳴った僕に彼は怒鳴り返してきた。彼にとっては怒鳴っているつもりはなくても周りの人間からすると怒鳴っているようにしか聞こえない。それが原因で僕はよく後輩からは本当の意味での口うるさい人と言って苦情に近い愚痴を聞かされていた。


「お前の普段の方がデカイよ!だから何で居るんだって!」

「何でってだから此処に居る以上特別対策本部に行く以外に在り得ないだろ。大体考えろ、こんなにおいしい仕事が他にあるか、いやない。ちょろっと大輔に付いて行くだけで向こうで偉そうな態度を取れる。人に、即ち女子に注目される。

それで紛争でも起こってみろ?俺自ら出向いて敵を蹴散らし、住民も仲間も身を挺して守ってみせる。いや魅せる。するとどうだ、レオさん凄いですね、レオさん格好いい!レオさん普段は面白い事ばっかり言ってるけどいざって時は一番頼りになるのね、背も高くてスタイルもいい、オマケにバスケもやってるんですって。

キャーレオさん凄い!やめろよ、レオなんて呼び方はさ。レオで良いって。え、いいんですか?じゃぁ…レオ…。俺は人より偉い人間だなんて思わないからさん付けなんてやめてくれよ」


 百八十を超える長身をやたら動かして身振り手振り、傍目には激しいダンスにしか見えないコミュニケーションのとり方が彼のやり方だ。

だらっとしたジーンズの腰にジャラジャラとチェーンをぶら下げ、どこか外国のバンドの名前が書かれていたりするTシャツに白かチェックかストライプのボタンシャツを着てる姿と薄ら茶色に染め尖らせたように立った短い髪が人を威嚇しているようにしか見えないのに、それでもちっとも不良の様に見えないのは目及び顔が柔和な幼さを秘めているからだと僕は思っている。

そんな童顔の癖に声はどこかの引越し屋のCMに出てくる女の子が象さん程好きじゃないにしても好きな動物の名前と同じ名前のお笑い芸人二人組みの黒尽くめのスーツが渋い方の彼のように野太く低くしかしやたら大きい。それで言う事は子供みたいで撮り止めが無い。やや腹が立って僕は


「思いっきり思ってるじゃないか!」


 と言ったけど


「オーケィ、いいか細かいことは気にしない。それが男の鉄則だ。気を配るのは女の子に接する態度だけだ。そうでもしないとモテない。即ちどういうことか分かるか。そう、格好悪いってことだ」


 あっさりとスルーした。その上未だに彼女の一人すら作れてないくせにモテるモテないの講釈を始めた。


「知らないよ。大体格好良いだけで仕事を決めるなよ」

「馬鹿野郎!俺は格好良さで仕事を決めちゃねぇ」

「じゃあなんなんだよ」

「格好良い事意外は仕事じゃないと思っているだけだぜ」

「性質が悪いです!先生にチクっていいですか?」

「駄目だろ。お前は目上の人との交渉が病的に上手過ぎる。軟派同盟の仲だ、見逃してくれって」

「僕は手当たり次第声を掛けている訳じゃないんだ。一緒にするなよ」

「なぁ、止めろよ~、トモダチだろ?一緒に修学旅行の女子の部屋に潜り込んだ仲じゃないか」

「許可取らずに押し入って追い出されたやつの事を言ってるのかい?」

「馬鹿、そりゃ一年時のスキー合宿だろ。ウノやったじゃん」

「なんでも良いよ。その辺りの思い出は多すぎて語り切れない。お前は本当に今回の仕事をなんだと思ってるだよ」

「当然、ステイタスだ!」

「言い切るな!いや本当に…」


 僕はしゃがんで頭を抱えた。相変わらずやる気を出している時のコイツのパワーには太刀打ちが出来ない。なんでこんなところでコイツと顔を遭わせなきゃならないのか。というか本当に特別対策本部メンバーなのか?


「君本当に対策メンバーなの?」

「さっき言ったろ」


 本当かぁ。此処にいるって事は一乗寺君の推薦でしょ?何でこんな奴を推薦したんだろう。こいつの性格ちゃんと分かって推薦してるのかなぁ?ちらりと見ると彼は昔少しだけ習って止めた空手の型をやって遊んでいた。とても子供だ。そして心配だ。度胸だけは尊敬するけど。ちゃんとした仕事する気、在るのかな。

 彼の名前は刀山(とうやま)一瞬(しゅん)。同い年十五歳、同じ学校、同じクラス、同じバスケ部。僕とは幼稚園以来の付き合いでデジタルワールドに来た時も一緒だったくらいの腐れ縁だ。僕と一緒にテイマーになった後はそれぞれ別の所でやってきていたからあんまり会う機会がなかったけれど、まさか此処でしかもこんな形で会う事が出来るなんては思ってなかった。神様、もしいらっしゃるのでしたら聞いてください。超有り難迷惑です。

 本当に勘弁してくれよ。僕はそう思った。話を聞けば分かる通りシュンはこの時期の人間によくあるモテたいシンドロームに罹っている人だ。否、この時期というのは正しくないと思う。取り敢えず出会った時からずっと目立つ事格好良いことばかりしようとしてた気がするから。

当時はそんなこと思ってもいなかったけど今になると本当にモテたいので必死なんだなぁとか思う。はっきり言って誠実さとは程遠い人間だ。


 シュンは兎に角格好良いことだけをやる。恐ろしいくらいそれに徹底する。格好良い為に猛勉強する。格好良い為にマラソン大会は前日まで入念にトレーニングする。格好良い為にギターを弾く。実際にはどれもこれもそこまで大した事ないくせに妙にそれを凄いことのように見せる技術は大したもんなんだ。

 人に自分の事をレオと呼ばせるのもその一貫だ。シュンより格好良いからってだけだ。それに立てた髪がライオンの鬣みたいだからって理由も一応ちょっとある。まぁ勿論僕はそう呼ばないし殆どの人がシュンって呼ぶけどね。大体レオって格好悪いと僕は思うんだけど、要するに行動も発想も全部子供なんだってことだよ。


「格好良いのだけでいいから、仕事、だけはきちんとやってくれよ」

「やるよ。なんたって俺は出来る男、だからな」

「ハハッ、頼むよ、本当に」

「あらら、紳じゃん。おひさ~」


 緩い口調で後ろから声が聞こえた。またも聞き覚えのある声だった。偶然にしちゃ出来過ぎてるんじゃないかと一瞬思った。

 妙に眉間に皺の拠った眠たそうな顔で片手を顔の横でひらひらさせながら大欠伸でその人は現れた。運動をするために短くざっくばらに切られたとしか見えないなんとも女性らしくない髪形にスポーツブラの肩のところが見えてしまう程だらっとしたTシャツにスパッツを穿いている。

普段からずっとそういう格好という訳ではないけれど、寝起きはだいたいこんなもんだった。それがこの人の恐ろしいところだ。今はまだスパッツを穿いているだけましなものの偶に平然とこのスパッツが下着になって現れてくるから怖い。

顔は美人とは言わなくてもキッとしてて本当は格好良いのにちっともそれを生かすことをしないフワフワヘラヘラとした表情を浮かべて、それが逆に、所謂不良な人々をそそらせてるって事にちっとも気付こうとしない。胸は、確かにそんなに大きくはないけれど、というか貧乳なんだけど、スタイルは陸上競技で鍛えられているからかなりいいと思う。

そこにその無防備さが加わって飛んで火にいる夏の虫ではないけれどフラッと、まぁ性欲ってやつを抑えられない人が近寄っていく。するとこの人の方にそんな気はないからあっさり撃退される。酷いときは…あ~、一度見た事があるけれど、学校のエーススプリンターらしいその足で男の二本の足が分かれる中間の、つまり難しく言ってみると睾丸ってところに、鋭い、綺麗な角度で入る…というかめり込む…あ、いや、もうその話は止めよう。想像で既に痛い。


「…っとその声は一美さんで…」

「一美先輩チューッス!あれ?また髪切りました?いいッスね似合ってますよ」


 僕が返事を返そうとしたその瞬間にシュンが割り込んでおべっかを始めた。流石、素早い。シュンは出会った瞬間に相手の変化を見極めて的確にお世辞を言うのが天才的だ。どんな些細な事でも必ず女の子全員を出会った瞬間に褒める。そんな技能が欲しいわけじゃないけれど、それはそれで凄い。


「あぁ、まぁ、明日でるしな。ってかお前声デケーっつの。恐竜かーお前はー。ねぇ紳よ~、ちゃんとコイツ教育しといてくれよ」

「あ、はいすみません」


 なんで僕が謝るんだよ。と思っても僕はそれを口にださない。普段ならまだ色々言い返すかも知れないけれど寝起きの彼女はとてもわがままで手に負えないから下手に刺激しないのが正解だ。


「ったくさぁ、寝起きはどーもいけないねぇ、ぼやっとするわ~、いやマジマジ、ヘッヘッヘ」


 へらへらしながら彼女は脇腹を掻いた。シャツの上から掻けばいいものをわざわざシャツを捲ってぐっと細い普通よりは少し黒めの色をしたウエストを見せる。狙ってやってるかの様だけどこれが彼女、石目一美さんの通常なんだ。僕は呆れながら彼女の手を掴んだ。


「お腹見せすぎですよ」

「まぁ減るもんじゃないしいいでしょーや。どーせお前まだ彼女出来てないんだろうから目の保養にしとけ。な?ほら写メ撮っとくか?ん?ん?」


 また、か。既に一美さんの目には悪戯っぽい色が浮んでいる。腕を掴んで無理やり下に下ろしながら僕は目を逸らした。放って置くとシャツまで脱ぐ可能性がある。嬉しくない、とは言えないけどそういう事で人の、なんというか体を見るのはよくないと個人的にはそう思うし。

というか相変わらずこの人には貞操観念とか無く悪戯に命懸けるんだなぁとか余計な事をまた今一つ認識した。じっとしてられないんだもんこの人。

 出会った当初から一美さんはこんな感じだった。始めのうちはまだ少し抑え気味だったと思うけど、慣れてから―――こっちが、でなく一美さんのほうが勝手にそう感じてから―――は一日一回はこんな感じだった。

僕とシュンとで二人そろってQDCに入ったとき始めに色々なことを教えてくれたのは一美さんだった。それでとても恩を感じてるし実際にも凄くいい人だってことは分かってるけど何しろこの暴走が凄いから未だに直接対抗する手立てがない。そういう意味では僕が一番頭の上がらない人だ。


「紳、お前は見たくなくても俺は見たいぞ」

「知らないって、というか見たくない訳じゃ…あ~違う、今の無し、無し」

「なんだやっぱり見てぇんじゃねぇか。ほらじゃぁ遠慮せず拝んでいけ。あたしの見事なぼでーを崇拝しろ」

「勘弁してくださいよ」

「じゃぁ俺にだけ見せて下さいよ一美先輩、どーせ紳はお堅い奴なんスから」

「お前にだけってのは見せてもつまんないからやだよっつの。ティッシュ箱持って変なことしたいんなら裏でエグイの見せてやるからそれでやってろって」

「ま、た、なんて事を言うんですか。一美さん最近いっこ歳上がったんでしょ。もっと考えて行動してくださいよ」

「お?言うねぇ。じゃぁ祝いだ、あたしの腹踊りでも見ろ」

「本当に止めてくださいよ…」

「いや、俺は見ますよ、殴られても見ますよ」

「お前あんまり言うと…」


 一美さんは当然露出狂だから見せたいと言っているわけじゃない。ただ、悪戯に使えそうな事は殆ど何でもするとそれだけの事だ。だからあんまりしつこく言うと…


「お前に見せるためにやってんじゃねぇっつってんだろ!」

「うげぇ!」


 …となるんだよ。一美さんのとても鋭いキックがシュンの鳩尾にざくっと刺さって古典的な悲鳴を上げながらシュンはその場に転がった。ほら言わんこっちゃ無い。少しだけいい気味だと僕は思った。それと同時にやっぱり下手に刺激しない方が正解だとも思った。








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基本的に天変地異、あいや話が大きすぎた。まぁつまり晴れ以外の天気ってのをわしは好きである。正しくは天気ってのもだな。
なので、豪雪、台風、雹、雷、家事、親仁。なんでもござれでござる。

台風が来ると落ち着かなくなるおっさんの如くそういうのではしゃいだりするわしなのだが、仕事中に雷落ちて電源飛んだのには多少驚いた。
いや、来るかなぁ?とか来い来い来い!とかは思ってたんだが本当に電源落ちるとは思わなんだ。

お陰でサイクルカード(昔風に言うとパッキー?あのパチンコの玉貸しのカードな)が飛んで、エラーエラーで大わらわらだった。

すごい面白い場面に遭遇したとか思った。はしゃいで仕事もはりきっていた。うわー楽しいとかね。

なんか天気ってそれだけで風情あるやん?だからいいじゃんさ。RPGで言えば連動スイッチ入って村人の台詞が変わったような感じ。いちいち村中回って話し聞きにいくってばさ。

だから多分他の人に比べてこの季節は嫌いって言う事がないと思う。冬が寒いのも夏があついのも仕方ないって捉えるし、それはそれでその季節を堪能したいとも思う。

なので、梅雨前線が高気圧押上げで飛んでなくなるかもというのは若干残念。残念っていうか農家の方はかなりの打撃になりそうな気がするんだけど。後単純に水不足が。そうなったら今度は台風期待するっきゃないな。あれはれで怖いものだが、ないと困るので。メダル補充せな出てくるもんも出てこないし。(パチスロ店員な発言)

まぁ、基本どんな状況でも楽しく過ごせるので、不満やら不安ってあんまないね。それがあるとしたら人間に対して(自分含む)くらいだし。

大体どうしようもない事象なんてのは楽しむ以外に楽しみ方なんてないしな。雨で外出れねぇんだったら水遊びしようぜ。台風で家飛ばされそうだったら避難訓練だ。雷で停電したら出産率増やしゃ良い。そういう生き方まいむ@ムーン。荒らされて叩かれたら荒らして叩く男まいむ@ムーン。いや、それに意味があるときだけしかやらんけど。

ところで、流石に40度ストレートは酔うよね。なので飲む量が少量で済みます。ごめんなさい嘘です。飲もうと思った時はコップに指三本分は確実に飲んでます。まぁ抑えてる方さ。ストレートノウチェイサー。いや、追い水無しは喉が熱いのでやらないのですけど。






 自分が寝ている事と夢を見ていることに気付く時が偶にある。よっぽど疲れているときか寝つきが悪い時かのどちらかにその現象は訪れ、どちらの場合にしても寝ていて夢を見ている事がわかっているのにしかし現実に戻る気配も無ければ戻ろうという気も起きなくなったりしている。

 始めのうちは自分が寝ているのに起きることが出来ないそんな状態にもどかしさや若干の恐怖を感じている。だが、時間が経つにつれてだんだん目が覚めてしまうその状態を懼れるようになっていく。

夢の浮遊感を嫌悪しながら現実の辛さを避ける。そういう状態になる。とそれはやや受け売りだがな。俺がそんな小難しいことを思いつく訳が無い。どっかのアニメかなんかで言っていた言葉だ。だが其れが妙に自分の感覚にあっているような気がするからいつもこの状態になったときそんなことを思い出す。


「起きたべか?」



「お前が退いてくれたら完全に起きるよ」

 上から俺を照らす光を遮る影を押し退け俺は言った。意外に目覚めは悪くない。腹の上が重たい以外は何処も過度な重さは感じない。取り敢えずスムーズに身体は動いた。

 光を遮っていた影、ゴマはやっと俺の上から退き脇の方から俺にデジヴァイスを滑らせてきた。なんだ分かってるじゃねぇか、そう思いながら俺は鼻先に転がってきたそれを受け取り水を取り出して飲んだ。ついでに身体を起こした。強烈な脂っこい匂いが鼻に襲い掛かってきた。見るからに汚い俺の体に掛かっていた襤褸(ぼろ)切れみたいな毛布からそれは発せられ立ち込めていた。


「懐かしい匂いだなぁ。目ん玉飛び出そうなくらい臭ぇ。おい、兄貴は何処だ」

「外ん具合みてっからちっとしたら帰ってくるっしょや」


 そうかい。俺は頷いて毛布を足で退けた。畳む気もこれ以上手で触る気も無い。これの匂いが手に移ると食欲が無くなるから出来るだけ触らない。焼き魚もプリンもまとめて納豆になるくらいのインパクトがこれには秘められている。俺も最初の時は何かの試練かと思ったくらいだ。


 ここは兄貴の塒だ。勿論今の。景色の記憶なんざゴマの背中に乗った時点で殆ど残ってねぇんだから当然山のどの辺りのもんだかは分からねぇが、まぁ山のどの辺かなんてのは大した問題でもない。

 適当にデジヴァイスから調理なしで食えそうなものを探した。カップラーメン、くらいか。俺はやかんと共にそれを取り出した。組んだ石で周りを囲まれている焚き火の上にやかんを置いた。水は大して入れてないから直ぐに沸くだろうな。

寝起きにカップラーメンなんて美味いもんでもねぇが寝起きに料理するよりはマシだ。そこまでやってから欠伸が一つ出た。伸びをして身体を動かしたら色々な箇所の骨が鳴った。もう一度欠伸が出た。

 俺達はあるやるべきことの為に兄貴の元にやってきていた。といっても道中俺は寝ていたから絶えず所在を転々とする兄貴を探したのはゴマなんだが。

 寝たといってもべつに寝ようと思って寝た訳じゃない。多少の眠気があったとしたって寝ないと思えば眠気を飛ばすことも出来る。だが不覚にも今回はがっつり寝ちまったらしい。自分では気付かない疲労でも溜まってたのか。


「ってか紫苑、お前何でもないんでの?」


 急にゴマがそんなことを聞いてきた。何のことか分からない俺は間髪入れずに聞き返した。


「あ?何が」

「結構寝てたでや」


 山の入り口を少し過ぎた辺りでゴマの背中に乗って其処から記憶がない訳だから、山を登ったのと兄貴を探したのとで結構時間が経っている筈だ。しかしその間一回も面倒くさい輩に遭わなかったのは幸運だったな。


「結構って何時間寝てたよ」







「三日だべ」



「みっ、…そりゃ、よく寝たなぁ」


 軽い事のつもりで聞いたんだが、返ってきた内容は思った以上に大きかった。三日間、七十二時間、四千三百二十時間。まぁ正しくその時間な訳じゃねぇが。人間の平均睡眠時間は八時間。七十二割る八で九。つまり健康的な九日間の睡眠時間をおおよそまとめてとったって訳だ。じゃぁ九日間きっちり寝ないで働かなきゃな。ふざけんな。


「それも、やっぱ反動、なんだべか?」

「まぁ、多分、な。悪いな余計な心配掛けて」


 右手を握り締めた。なるほど、酷使されたからだが無理やり機能の再起動を図ったってことかね。流石は奇跡の産物だ。ちょっとやそっとの事じゃいかれねぇって訳か。在り難い。


「心配は、してねぇべよ」


 ゴマは少しふてくされた態度を取った。相変わらずガキみたいだな。俺はゴマの頭を撫でた。


「実際進化してるのはお前の体だろ。お前の方がきついんじゃねぇか?」

「オイラは、お前の力で進化してるだけで、別になんともねぇでよ」


 まぁ無理はお互い様だから今更実際はどうだなんて考えるつもりもないけどな。


「湯、沸いたでや」

「あぁ」


 やかんを持ってカップに湯を入れた。もうもうと湯気が立ち上り散らばって温度が下がり見えなくなった。水はある意味一番形の自由な物質だ。容器によって姿を変え、状態によって形を変え、どんな手を加えることも出来る。

悪意を持って放たれない限り何も傷つけることなくただ在るものを包み在るものに包まれる。時々水に甘えすぎて溺れる馬鹿も居るが、それでも水は全てにとって自由で全てから自由だ。人に言わせると俺にはスポンジの様な柔軟で吸収の良い脳みそと鉄の様な意志を持っている人間らしい。つまり俺は水の様には生きられないってことだ。


「なぁ、ゴマ。俺、さっきまでずっと夢を見てたんだよ」

「夢?何の夢だべか」


 特に何かを言うつもりでもなかったのに自然とそう口走った。別に夢を見たことが不思議な気分という訳でも三日も寝ていたことが不安という訳でもない。というかそんなことは如何とも感じない。ただ、何故だか無償に誰かに言うべきという気がした。


「それほどでもない昔の夢。俺とお前が始めて逢った時の事がそのまま出てきた。そういう夢だ」

「ふぇ~。そんで何だべさ」

「いや、それだけだ。妙にリアルだったからちょっと言ってみただけだ」

「何だつまらんべな。どうせなら飯が鱈腹ある夢でも見れや」

「…気楽な奴だな」


 ひとしきりくっくと笑った後十分な時間が経ったかも確認しないままカップラーメンの蓋を開けて口に運び始めた。兄貴が帰ってきたのとゴマが兄貴に飛びついたのとが見えて俺は手を上げた。眼鏡をかけていなかったからあまりよく見えなかったが兄貴も頭に乗ったゴマに手をやってから俺に手を上げ返した様に見えた。

そうやって極端に優しくもないし、かといって邪険にする訳でもない、その中間である普通の反応をする奴等を俺は未だに不思議に感じてしまう。やっぱり俺は水の様に生きることはできないのかもしれない。


 ちなみに、俺にはこの時既に否な事が起こる予感はしていた。何故なら昔の夢を見たから。そういう時は大体胸糞の悪い事が起こるんだ。






 声に出して言ってみよう。


「不安だ!」




 もっと大きな声で言ってみよう。




「不安だっ!」






 とても大きな声で言ってみよう。
「不安だぁ!」

「マスター、皆さんこっち見てますって。船員に怒られるっスよ」


 僕の声の大きさに周囲の人が此方を向いた。ブイドラモンが慌てて礼をして僕を甲板の先の方へ押し遣りながら小声で囁く。これくらいは大丈夫さ。それに怒られたところで別に大して問題じゃない。


「分かってるよ。でもあれはどうにも頭痛いよ」

「マスターはそう言いますけどボクは何が問題だかあんまり分からないんですよね。皆実力のある方々ばかりじゃないですか」

「僕が心配してるのはそこじゃないんだよ。特別対策本部に置くには実力は十分な四人だと思っているよ。でもね、性格と組み合わせがまずいんだって。義貴君が唯一まともだからまだいいけど他三人は絶対勝手にやるぞ」

「そう、なんですか?ボクにはよく分かりませんけど」

「猪突猛進に色呆けにザ・気まぐれさんだよ?まとまりも取り留めも全然無さ過ぎる。あぁ、やっぱあっちに行かなきゃ駄目だったかなぁ」

「大丈夫ですよ。多分、きっと」

「そうだと嬉しいけどね」


 甲板の縁の手摺に覆い被さるように凭れ掛かって脇で手摺をはさんだままずるずると船の先端の方へ身体を引き摺りながら歩く。この手の手摺はこうやって擦ると後で白いのが服についてたりするんだけど如何でもいいよそんなこと。僕の吐いた溜息がネットオーシャンに落ちて船の立てる白波に消された。

 僕が何故こんなに、って自分で言うのもあれだけど憔悴しているのかって言うと、ちょっと順を追って説明しなきゃいけないから面倒だ。昨日の事を順に思い出していこう。もう、本当に一乗寺君も在り得ないって気付いてくれよ。

 僕はファイル島の復興を進める為に旅の支度をしていた。というのも、ファイル島が破壊された際に存在していた機器は粗方破壊されてしまっていて転送装置で直接支部を行き来することが出来ず、ファイル島に一番近い支部までは転送装置で行けても、今はまだ船か飛行機でしか直接は行けない。

しかも飛行機の方は定期便がファイル島に行くものが無く結果的に海路を進む以外にファイル島への道がない。だからその長い船旅を行く為の準備をしていたんだ。

 QDCくらい大きな組織なら飛行機くらい自力でなんとかなりそうにも思えるかもしれないけど、それは絶対に在り得ない。何でかって言うと、単純にファイル島復興に上層部(うえ)は重点を置いてないから。どうでもいいと思っているからわざわざ飛行機なんか飛ばさないで、勝手に定期船で行けとそういう事だ。復興に関わる人は全部船で行く。仕様の無い事実だ。

 それに比べてPDPタウンの特別対策本部へ向かう人はバンバン機材も人も飛行機で運びもう本部設置の準備がかなり整った状態になってるらしいっていうから羨ましい。それを聞いたとき少しそっちの方が良かったかなって思ったけど、でも結局そこまで大仰だとなんだかやかましい人の下で働くみたいで嫌な気分だからまぁいいんだけど。

 本部を設置する準備はもう勝手に上層部でやっているからいいんだけど、肝心の対策本部の指揮者はそう勝手にする訳にもいかなかった。なんでかと言うと今回指揮者をまかされる人間はQDCの中ではまだちゃんとした実績が無いからだ。正確に言うと指揮者は二人居て実績がないのはその片方だけなんだけどね。

 実績が無い方は一乗寺君の推薦で就任することになった奴、そうつまり大輔の事だ。もう一人の方は、なんかあんまり知らない人で取り敢えず今は話に関係ないから置いておく。

 僕も大輔の仕事振りとかテイマーとしての実力とか知らないからなんとも言えないんだけど、上層部は実績の無い人間を認めない傾向があって、それで大輔には仕事に就く前に実績を付けて貰うという事でオリエンテーリングをさせられることになった。

勿論ただのオリエンテーリングじゃない。PDPタウンまで陸路で行き、途中の紛争は全て鎮圧するというチェックポイント通過のスタンプを血で染まった拇印するというブラックジョークの飛び出しそうな怖いオリエンテーリングだ。

まぁ要するに大輔及び一乗寺君への嫌がらせみたいなもんだ。それに上手いこと大輔がへまをしたら直ぐに解任するように準備されてるらしいから上手くいけば一石二鳥ってこと。偉い人はこれだから怖い。

 と言っても僕より偉い人には当然僕より素晴らしい人も居る訳で、一乗寺君は見事に食い下がって上層部に条件を出した。数人を大輔に同行させて、それで任務をこなせた場合は全員纏めて相応の立場に立たせること。これは実に上手いことを言ったなと僕は思う。やっぱり彼も相当頭の回る人だなって思った。相手の嫌がらせを利用してこっちに有利なようにした。こっちにといっても単純に治安を良くする為の策なんだろうけどね。

 何はともあれ大輔は他三名と共にPDPタウンを陸路で行く事になった。僕が無理言って入れて貰った斉藤義貴君も。

 それで偶然にも僕とその四人の出発の日取りが同じだったから出発前報告に一緒になって具合がどうかを聞こうと考えた。そして支部長室の前で世にも恐ろしい事実を知った。







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 如何、なった?生きているのか?―――――否、生きている。少なくとも俺の開いた目からはハッキリと雪山の景色が見えている。だが、さっきまでの光も空飛ぶ…あ、いや面倒臭いなこの言い回し。レオモンの技も目の前から消え失せて換わりに小さな―――と言ってもゆうに10mはありそうなデカさだが―――雪の山が聳えていた。それと目に残る眩しさの余韻で景色は殆どが白い色で覆われていた。

 技の反動でかずっと宙に浮いていたレオモンはいつの間にか地面に着地していた。時間的にはそれ程経っていないのか?小僧から放たれた閃光で意識がホワイトアウトしたみたいに感じたが記憶は失っていない筈だ。ってことはやっぱりそれ程時間は経っていない。というか小僧は如何なった?

 確実に小僧は俺の目の前に立っていた筈だ。しかし居ない。まさかあれで消滅…?否そんな訳ねぇ。小僧が消滅するくらいだったんなら俺が生きていられる訳が無い。それにこの雪山、どうやって出来た。レオモンの技の衝撃で出来たのか?


「驚いたなぁ。本当に進化するとはなぁ。お前の読みも当たる時は当たるもんだな」


 いやに気さくそうな気の良さそうなそんな印象を受ける声が聞こえた。あまりに口調が軽く明るくありがちな近所の親仁みたいな匂いを漂わせる質を持っていたからそれがレオモンの口から放たれた言葉だと感じ認識し信じるのに少し時間が掛かった。それも兄貴が同じく軽い口調でレオモンに答えなければ到底理解なんて出来なかっただろうと思われるくらい、極普通の感じでレオモンは言葉を発した。


「馬鹿言うなやぁ、読みが外れぇる時の方が少ねぇってんでぇや」

「ノーブルコロシアムで戦って儲けて賭けて失うお前が何を言うんだよ」

「ありゃぁ…期待通りに戦わねぇ奴等が悪ぃいんだよ」

「よく言うよ」


 何が何だか分からず取り残された気分だった。何で極普通に会話してんだあの二人。そりゃ、旧知の因縁ありそうな感じはしてたけど普通に会話する仲なのか?それが何で説明もなしに戦い(やり)合ってしかも普通に、っつーか兄貴腹抉られたんじゃねぇのか?傷は如何なった。血の出方から考えたって尋常じゃない傷の筈なのに…


「兄貴、腹の傷は…ってか何普通に井戸端会議だ、如何なってんだよ」

「おっ、悪ぃい悪ぃい。何も言って無かったけな」


 悪いと言うわりに悪びれた態度もない兄貴の腹を見ると、確かに血はどっと出ているが、肝心の傷の部分にはもう何の痕も残っていなかった。ただ、その上にこの寒さに凍った血がくっ付いてぱきぱきと剥がれるところは剥がれていた。

「皮一枚裂けたからってぇ驚く程の事じゃねぇよぉ。元々そういう予定だったしよぉ」

 あんなに深く入ったように見えて皮一枚だけしか斬れてないってのか?確かにやられた時一瞬身を引いたように見えたけど俺の目には深くやられたようにしか見えなかったぞ。というか予定?予定ってなんだよ――――

 唐突に俺の頭にしっかりと辻褄の合う仮説が浮んだ。ってか現状を見るにそれしかない感じの答えが浮かんだ。


「芝居…打ってたんか?俺と小僧を試す為に、あ、小僧は如何なった」


 不思議と小僧の方が芝居を打っているという気はしなかった。なんとなく小僧のさっきの雰囲気が本気のように俺は思えたからだ。というかそもそも俺だけで何かが出来るような能力なんてのはねぇんだから小僧と一緒にでもやらなきゃ話にならねぇ筈だし。


「お前ぇ何言ってんだぁ?ゴマモンなら目の前にいるだるぉうがよぉ」


 目、の、前?何をふざけてんだ。目の前に居ないからこうして聞いてんだろ。それとも何か、小僧がこの雪山に埋まってるとでも言うのか?なんだこりゃ小僧がやったのか?

 既に俺はかなり混乱というかこの今の状態を飲み込めて無かったが訳の分からん話でより事が理解出来なかった。だが、直ぐに兄貴の言う言葉の意味と小僧の所在が分かった。


「オイラは此処だでや」


 小僧の声が聞こえた。視力が悪い分俺は耳にはそれなりの自信がある。楽器の音の質やら音程の高さやらその辺のことは大体きちんと聞いて理解出来る。俺は小僧の声が上から降ってきたように感じた。高いところから放たれた小僧の北国訛りの曇った質の声が聞こえた。

それは幾らか低く太い音も混じっていたが小僧の声だと直ぐに分かった。どんなに声の色が様変わりしても元々の部分ってのは変わらないらしいし、小僧の声もその雰囲気もこの数十日でしっかり耳に記憶されていた。それにこの北国の訛りを聞き間違える筈がねぇ。


「オイラもびっくりしたべさ。気が付いたらこうなってたでや」


 俺は上を見上げた。雪山がのっそりと動いた。雪山の頂上には黒い細長い円錐のポールみたいなものが立っていて、その少し下の辺りには小僧の浮かべるような常に表情の定まらない不安定に変化する顔があった。上から順に下まで雪山を眺めそして下から上まで見上げた。雪山なんかじゃない。白い毛皮を纏った生き物だった。そしてそれは小僧だと理解した。


「何か気付いたら進化しでた」


 俺を見下ろしながら驚いたような含み笑いをした。


「これでお前は小僧って呼べんっしょや」

「む、無駄にでかくなりやがって…ちったぁ地球の事も考えろ」


 口を突いた言葉は何かの物語で聞いた台詞だった。正直、普通にビビッた。俺の足元に居た奴が俺を足元に見てるんだぞ、ビビるだろ普通。何だこれって思うだろ。兄貴よりでけぇよ。つくづく普通の生き物じゃねぇ、デジモン。恐るべし。慣れたつもりだったがやっぱり如何考えたってこの世界は尋常じゃねぇ。


「理解したか、少年。この進化という現象はこの世界では当たり前の事だ。慣れないと先に進めないぞ」


 ガハハハとレオモンのやかましい笑い声が聞こえた。やや種類が違うがコイツ兄貴と同じタイプだな。やっぱり親仁の匂いを感じるその笑い声を聞きながら俺は思った。クソ、さっきまで滅茶苦茶なハイパワーで遣り合ってた奴等が普通に肩組みあってんじゃねぇよ。

まぁ、でも取り敢えずコイツは味方、少なくとも敵じゃないんだな。信じるも信じないもどっちにしたって兄貴の時同様こっちにその選択権はなく敵であるなら何をしようとやられる訳だしそんなことを考えるのは無意味でもあるが、取り敢えず自分の中で解決しておかないと色々な事が同時にありすぎて分からなくなる。

ってか兄貴も一緒になって笑ってないでちゃんと状況を説明しろよ。阿呆か。否、それを考えるのも無駄だ。どうせいつものように大して何も考えてねぇんだろうから。


「兄貴、それにアンタ、レオモン、か。いい加減いいか?」

「何だぁ?」

「一体何が如何なのか説明してくれ。よく分からねぇ」


 二人が顔を見合わせた。それは多分俺がそう質問してきたことが以外だってことでは当然なく、多分その緩慢な動きから考えてどっちが言うか何から言うかって事を思ったんだと思う。どうでもいいが、本当にこのレオモンってのは歳いったおっさんの雰囲気が満載だな。デジモンはこんなのばっかりなのか?


「出来れば、兄貴でなくてそっちのレオモンのおっさんが言ってくれ。先ず二人の関係からだ。分からないことがありゃその都度聞くから。先ずどういうことか説明しろ」


 俺の提案に二人はまた顔を見合わせた。多分兄貴の方は何故俺でなくておっさんの方に言わせるのかって事なんだろうが、おっさんの方は多分俺の意図が伝わっているだろう様子で兄貴の顔を見て笑った。そうだよ、兄貴はいつも話しが飛びすぎて主に何を言いたいのか分からないんだよ。


「分かった。じゃあ俺が話すとしよう」


 そうとう古い付き合いなんだな。俺はそう思った。態度一つで殆どの意向が伝わっている。見た目は化け物だが人間よりよっぽど人間だなこの生き物は。

 おっさんは予想通り兄貴よりはずっと分かり易い口調と話のまとめ方で説明してくれた。兄貴とおっさんは俺の予想した通りかなり長い付き合いで所謂悪友みたいなものだったらしい。酒場でいがみ合って喧嘩したのが始まりで、喧嘩の決着はいつも二人とも負けを認めないから今も着かないままだという如何でもいい話も聞かせてもらった。途中兄貴が全部俺の勝ちだと言ったがまぁそれも如何でもいいことだった。

 その辺のパンチと金で雇った小間使い―――今にして思うと戦った相手とこそこそ何かをやってたのが多分それなんだろうな―――を使って時々連絡を取り合っていた兄貴達はどうやら俺達街に出すつもりだったらしく、そのための実力があるか試す為に今日落ち合ったんだと。

兄貴は小僧がでかく姿を変える、進化、ってのをすることを予測していたみたいだけど特別な根拠がない辺り単なるあてずっぽうのような気がした。俺は進化しなかったら俺等二人とも死んでたぞと悪態を吐いたが、まぁ大丈夫だろうと二人して言った。駄目だったらどうしてくれんだよこの野郎共。そう思ったが流石に口に出すことはしなかったが。

 ここまできても何故兄貴が、それにおっさんが俺にこんなに色々してくれるのかさっぱり理由が分からなかった。デジモンが人間を食うことはないにしても殺すことはよくあるとも聞いているからやっぱりその理由が想像できないしそれに聞いても答えてはくれなかった。だがこうは言った。俺達には戦う素質がある、と。そしてこうも言った。テイマーになれ、と。

 この世界は俺達の暮らしている場所から考えたら、ずっと野生で原始的な部分がある。科学の面で考えれば寧ろ此処の方が進んでいると思うが、環境としてはやはりこちらの方が野蛮であると言わざるを得ない。

 そもそもデジモンという存在がいくら人間味を帯びているとしても、野生の動物であることに変わりはなく、あらゆる事柄は武力戦力で決定付けられる。どんなに正しい事を言おうと弱ければ意味を成さない。尤も、それは俺の世界でも同じことで、ただこの世界では知力や権力といった余計なところが無く純粋な暴力の強さだけでそこが決まるというだけだ。

 俺の世界でもそうであるように生きるためには力が必要だ。俺の世界ではいかに人と平均的な付き合いが出来、人に気に入られることが出来るかといったそう言った下らない類の能力が無ければまっとうに、奴等、の言う人間らしい暮らしは出来ない。

この世界では相手の吐き出す炎を防ぐ力と相手に炎を出されない為の力を持っていないと生きること自体が出来ない。つまりは極端に治安の悪い暴力で満ちた世界だと言うことだ。

 アナログ、と呼ばれている人間にはデジモンに対抗するための力が殆どない。しかしデジモンの暴力に対抗する為の力も在る。それがテイマーの存在だ。

 テイマーとは文字通り猛獣使いを表す言葉で、要するにデジモンに対して同等の力を持つ猛獣をぶつけようとそういう話だ。つまりそれがどういうことかと言うと、デジモンに対してこっちもデジモンをぶつけようとそういう話な訳だ。実に単純。

 さっき言ったことと逆の言い方になるが、野生動物とは言えデジモンは人間性のある、しっかりとした感情のある生き物だ。だから仲良くならないこともない。そうやってデジモンと密接な関係を結ぶ、つまりデジモンのパートナーとなった人間をテイマーと呼ぶ。

 テイマーは必ずあるものを持っている。それは、俺も持っていたあのデジヴァイスという物だ。そのデジヴァイスはデジモンには使うことが出来ない道具で、かなり多様な機能を持っている。その中でも特に重要だとされているのは、パートナーのデジモンを進化させる、という機能だ。それを目当てで人間のパートナーになるデジモンもいるくらいその機能は重要だと言う。

 デジモンとパートナーになるとテイマーの元には何処からとも無くデジヴァイスが現れるらしい。どうしてどうやってそういうことが起こるのかは流石におっさんも知らず、だがもう今更どうやってとかそういうことなんぞ聞いても意味が無いことは知っているからそこはスルーした。

大体俺はそのテイマーとやらになっていないのにデジヴァイスを持っているんだからそもそもデジモンとパートナーになると云々って話もやや嘘臭い。でもおっさんや兄貴に言わせると、パートナーを持つ前にデジヴァイスを持っていたということはテイマーとしての素質があるんだと言うことなんだと。ったく、財布があっても金がなきゃ意味ねぇと思うんだがね俺は。

 が、更に余計なお節介な事に兄貴達は俺を小僧のテイマーにしようと目論んでいた、とおっさんは言った。本当にクソみたいに余計なお世話だ。結果的に今回は小僧に守られる形になったが普段は大した訳に立たないあの野郎と一緒に何かするのは御免だ。

ああいったガキみたいな奴は何度も言うように嫌いだ。等と色々悪態を吐こうと小僧の方を向いたら何時の間にか小僧はまた元の小僧に戻っていて、ちっこい姿で俺に飛び掛りそれで暫く話しが中断された。当然その喧嘩は俺が勝った。少なくとも負けてはいない。

 話を再開させて俺は聞いた。今後俺は如何するんだと。おっさんは言った。街に出てQDCという組織に入るんだと。

 QDCってのはまぁ大雑把に聞かされたところによると、警察みたいなもんで、おっさんは其処に所属している偉いデジモンなんだとさ。そんで、おっさんは新人テイマーとして俺を其処に所属させて、もっとちゃんとしたこの世界で生きるための力を付けさせようって腹らしい。

小僧を押し付け組織に所属させて、まるでやくざみたいな遣り口だったが、ムカつきはしたが今更腹を立てるつもりはなかった。大体既に兄貴がやくざだし、それに相変わらずこの強引なやくざ達相手に俺のわがままが通用する気配なんかは少しもない感じだったし。

おっさんの説明を受けるに大方そんな具合だ。兎も角そういうもんなんだなと無理やり自分に納得させながら俺達はそのQDCという組織のある街へと降り始めた。しかし兄貴は俺達とは一緒に行かなかった。

おっさんの方は組織の人間でも兄貴はそうでないから行く気がなく、元々そういう予定だったらしい。女がいる街はこれから行くQDCのある街とは違うところで、とどのつまり俺達の先行きよりは女の膝元に行く方が大事だという訳だ。それでも、別れ際のしなだれた背中を見ると、案外兄貴も気まぐれでない事情があるんだなという事を感じた。
多分また泣いてるな。鬼の目にも涙とはやや言い難いな。泣き過ぎだし。

精神的には宙ぶらりんなまま俺はおっさんの後に付いて行った。小僧の方もややそんな風にも見えた。ふと、何故兄貴は俺達をパートナーにしようと考えたのかと思った。考えてみればそう決断するにはあまりにも早すぎるように思えるし、それに何故俺に知識を教えるのと同時にそれまでただ一緒に居ただけの小僧を鍛えるようになったのかそれもいまいちよく分からない。単に俺が現れたからいい切っ掛けだと感じたんだろうか?まるで予め俺が現れることも決めていたかのようなこの動きはなんなのか。


答えの見えぬまま俺は黙ってレオモンの背中を追った。










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 それから自分の時間感覚から想像するにおよそ大体多分恐らくきっとざっと数日後、俺達の生活に変化が訪れた。兄貴が突然山を一度降りると言い始めたからだ。特にこれといった理由を兄貴は話さなかったが女に会いに行くのだなと薄々は感づいていた。

それに小僧は街に出るときはウィンリィ姐さんに会いに行く時だと言っていた。それもそこそこ定期的に会いに行くらしいと小僧は付け加え俺はどの位の周期で行くのかと聞いたところ、前回はずっと前、前々回はずっとのずっと前だと言った。役に立たない奴だと俺が呟くとまた喧嘩になった。

 兎も角俺達は山を降り始めた。ここ暫くは幾分か雪が降らずいつもよりは移動が困難じゃなかった。陽気が良いからかデジモンの数も少なかった。居たとしてこの山では数少ない友好的な、というよりは単純に頭の弱い奴等くらいで特別心配することもなく山を降りることが出来た。

 山を降りる、と言われた時不思議なことに一番初めに浮んだ事は自分の家に帰れるかも知れないということだった。諦めでなく打算として帰る考えを捨てていただけだからそれはある意味当然の事なのかもしれないが、真っ先に思い浮かんだのが家に帰りたいということだったのは俺には以外だった。以外過ぎて思わず驚きの声を漏らし、小僧に馬鹿にされまた喧嘩になった。

 学校に行きたい気持ちは一ミリも無かったし、ましてや周囲の人間に会うということもしたくなかった。これだけの期間行方不明だったからといって変な同情で声を掛けてもらいたくも無かったしその手の同情にはうんざりするほど付き合った記憶もある。

それに何より家族の反応が嫌だった。金づる兼居候には彼是と心配され質問されるのは構わないし仕方ないと思っているが未来と葉月に泣きつかれるのだけは勘弁だった。普段はやたらはしゃいで騒がしいくせにこういう時ばかりは妙に声を殺して泣く。

そういう時の雰囲気や表情やら声やら全てが気に障って心臓を針で突かれた様な気になる。人の泣いている姿ほど苦手なモンはねぇしそれに俺はそういう人間への接し方など知らない。

 そういやアイツと初めて会った時も泣いてたっけな。ふと如何でもいいことを思い出した。俺とアイツが今こんなにも長く付き合えているのはアイツが俺と似た境遇だからだ。抜け出せない過酷な現実を知っているから近くに拠っても痛みを感じないですむ。しかし違うのは俺はその現実に反発し、アイツは受け入れたというところだ。なんて何にせよ今には関係のない如何でもいいことか。

 山を降りる際には色々な事が浮んだ。単純にこのまま兄貴の世話になり続ける訳にもいかんし、一度は元の世界にも連絡を取る術を知りたいし、デジモンの世界でも生き抜けるだけの実戦ようの力も何か欲しいし、やるべきことは色々とあった。

このまま現実感の伴わない生活をしても訳が分からなくなるだけ。俺として生きるために必要なものが色々と欲しかった。それにいい加減小僧といちいち喧嘩をするのも面倒だ。

 どうしたらいいかなんてのはさっぱり分からなかったが、少なくとも街であるとなれば色々とやりようはある。このファンタジックな世界をもっと自分の中でリアルなものとして受け止めるにはどうして俺がこんなところに呼び込まれたのかその理由を知らなけりゃならん。そのための面倒やら苦労やらなら望むところだ。大体元々俺は人の保護の中でぬくぬくと生きていられる程退屈が好きじゃない方だ。

 別に哲学やら妄想やらであまり生きるつもりはないから自分が何をすべき生き物でこれから如何するなんて事は考えない。ただやりたいようにやる。世間や世界が何を俺に期待していようともやりたくなきゃどんな人助けも悪巧みもしないし、やりたきゃどんな自己犠牲も悪行もするつもりだ。

今はただ知りたい。俺がこの世界で何を出来るのか、何故この世界にいるのか、というか何処のどいつが俺をこの世界に引き摺り込むなんてことをしやがったのか。降りかかった面倒を全部ぶっとばしたい。それだけだ。


「おい新入り、止まるべさ」


 色々思考をめぐらせていると急に後ろから力が掛かって雪の上に倒された。


「何すんだよ」


 ベルトにへばりついた小僧の平たい手を振り払うと身体を起こして小僧の方を向こうとした。その時小僧は既に前に回っていて、俺の頭に飛び掛って地面に押し付けた。


「伏せでろ」

「だから何だって…」


 ゴウッっとホームを通過したような音と共に何かが俺達の頭の上を越えて通り過ぎた。厚い風の塊も一緒に俺の上を通り過ぎる。顔面が空を向いているから真上を通り過ぎたその何かの姿を俺は見た。何だかとても圧力のある力の塊みたいな気がした。触れたらどうなるか分かったもんじゃない。

今までの炎やら電気やら水やらの攻撃とはやや種類の違う、そしてその破壊力も違う別格の物の気がした。これまで戦ったどのデジモンよりも恐らく強い。兄貴の言っていたデジモンの成長強度って奴の、これまで戦ってきた兄貴と同じ成熟期ってののもう一つ上の段階、完全体って奴なのか?

 俺は直ぐに起き上がった。と言っても攻撃が来た時に避けられる程度に中腰で低い姿勢だったが。小僧の方は元が小さいから普段と変わらない。そして相変わらず勝ち目も無いくせに頭の赤い鶏冠だけは怒らせている。


「兄貴、コイツは如何する?」

「如何するぅ?決まってんだろぉ、戦うんだよ!」


 普段の機嫌の良さそうな笑顔に禍々しさと嬉しさをまとめて混ぜ込んでモンタージュしたみたいな表情が見てとれた。危険な事を告げた筈の俺の質問に大した意味もないかの様に答えると低く構えて其処から相手に飛び掛った。

 今まで言っていたこととはまるで違う行動に俺も小僧も面食らった。こういう時は逃げろと言っていたのに何故わざわざ飛びかかる。戦いの始めは必ず距離を取って様子を窺えと言っていた筈なのに何故飛び掛る。生き残るのが最優先の筈なのに何故此方から攻めている。全く訳が分からなかった。小僧の表情も大体俺と同じことを考えている感じだった。

 兄貴は相手に飛び掛った。相手は同じく人間に近い二足歩行の二本腕で体格は同等。相手は兄貴と同じくらい大きな腕で兄貴を受け止めると直ぐに振り払った。

 見たところ相手は特殊な技を使わず身体能力の高さで素早く重い攻撃をするバランス型。基本的な戦いに向き、腰の鉈のような幅の広い剣を使って人間のように戦うタイプだろう。現段階では必殺技と思えるのは先程の力の塊みたいな衝撃波を放つものと考えられる。

とすると大方が兄貴と同じ戦闘方法だと推測される。多分違いは兄貴の方の装備が剣でなく骨で出来た棍棒だというところか。けど今兄貴は棍棒を俺のデジヴァイスに収納していて持っていない。何故武器を持たずにあんな奴に飛び掛る。我を忘れている筈もないってのに。


「オラァ!」


 跳んで空中からの右フック、相手はそれを空手の受けのように弾くと極端に動きの制限される空中の兄貴に左アッパーを繰り出す。かなり戦い慣れているのがその動きで想像がつく。兄貴はそれを左手で受け止めるとそこで身体を支え左足で上段に蹴りを放った。相手は肘を畳んで腕を顔の横に持ち上げそれで受け止める。そして受け止めるだけではない。蹴りの勢いが止まった後腕を引いて兄貴の腹に拳をぶち込んだ。

 兄貴は一度雪の上をバウンドすると直ぐに地面に手を付いて体勢を戻し着地した。かなり強烈そうに拳が入ったように見えたがそれ程ダメージがあるようには見えなかった。どんな身体してやがんだ。

 両手を地面に付く体勢のまま再び兄貴は飛び上がり今度は両足でのキックを放った。相手は一歩飛び退くと正拳突きの構えの様に右腕を引き左腕を前に出して力を溜める素振りをした。すると相手の右腕が光始めその圧力で周りの空気が震え始め、それは俺達にも伝わった。相手のライオンそのものの立派な鬣が拳の圧力で揺れた。


「フンッ」
「甘~ぃい!」


 相手が正拳突きを放つとその光る拳から先程のと同じ強固な力の塊が飛び出した。それは何だか金色で眩しく、どういった理論か波動の前面は相手のライオン面そのものを象っていた。兄貴はキックを外した後にまた地面にしゃがみ込むと更に再び飛び上がりその力の塊を避けた。そしてそのまま空中で前転し浴びせ蹴り。相手は其れをまた腕で受け今度こそ本当に退いた。


「舐めんなぁレオモン!」

「五月蝿い」


 兄貴が何故に強そうな相手にも関わらず立ち向かったのかその理由が分かった。いや元々兄貴は相手が自分より強いだとは少しも思っていなかったのだ。今までみたどの敵よりも相手は強かったが兄貴はそれと同格の力を発揮していた。つまり兄貴は今まで三味線弾いてやがったって事か。

 兄貴と相手はかなり因縁めいた様子に見えた。元々実力も拮抗しているし相手の手の内も知っているだから退かなかった。しかし何故今まで自分の力を俺達に隠ししかも今ここでそれを明かすのか。よく分からんが取り敢えず簡単に兄貴が負けるということもないようだ。しかしそれでも注意を怠る訳にはいかない。兄貴の狙いが何であれ俺は必ず生き残る道を探せと兄貴に教えられているからだ。

 兄貴の頭突きが相手の眉間近くに入った。そしてボディに一発。僅かに相手がよろめく。そこにもう一発兄貴は膝を放った。ややしっかりとした足取りでのよろめき方に何か一端引くべきと感じたその時に男の右拳が兄貴の膝の横に入った。そしてあっと思っている間に拳を振るった反動で反転し逆の手の裏拳が兄貴の頬に入った。

兄貴の頭が揺れているのが分かるとこれはもう一発やられるなと感じた。その通り相手は兄貴の膝を払った右拳を引き寄せてボディに叩き込んだ。かなり強烈そうだ。兄貴は数十メートル弾き飛ばされた。


「なまらおっかないパンチだべな」


 俺が考えていることを小僧が口にした。しかしおっかないと言う割りに小僧の顔はやや興奮しているように見えた。多分俺の顔もそうだろう。自分でもやや姿勢が前のめりになっているのが分かる。かなり楽しそうな喧嘩に思えた。筋金入りの喧嘩野郎としてはそう感じざるを得ない程の激しい殴り合いだった。


 携帯、ではなかった。デジヴァイスがポケットの中で震えた。こんな風な反応をするのは始めてだった。なんだかよくは分からないが俺はそれを取り出して板をスライドさせて画面を開いた。ホログラムのディスプレイが空中に浮ぶ。そして其処には見たことの無い画面と画像が展開されていた。


「レオモン…レオモン、か」


 一目でそれが相手のデジモンの情報を表示しているのだと分かった。そういった類のアニメにはよくある光景でそれが現実の目の前に存在していた。今までは少しも知らなかったがそういう機能がコイツにはあるのか。

相手の名前を復唱し、反芻した。レオモン。それが兄貴同様に凶悪そうなあのデジモンの名前か。そういえば兄貴がさっきそんな風に奴のことを呼んでいたかもしれない。


「あ、アイツ武器とったでや」


 小僧の声に視線を戦いの方へ向けるとレオモンが腰から刀を抜き放ったところだった。お楽しみのところの無粋な邪魔にも思えたがよく考えると元々兄貴の持ち物であるものを単純に今返すだけで別に下手な助太刀をする訳じゃない。俺はデジヴァイスの画面を切り替えデータフォルダから兄貴の骨棍棒を取り出した。


「兄貴使え!」


 光が兄貴の方に放たれると其れが形となって兄貴の方に現れた。兄貴はそれを受け取るとそれを手首でグルグルと回し楽しそうに言った。


「これがねぇと危なかったぜぇ」


 実際には微塵もそんなこと思ってはいないだろうなと思いつつも、兎も角第二ラウンドのスタートだった。

 兄貴は棍棒を思い切り振り上げ振り下ろした。レオモンは見事な体捌きでそれを避ける。その後素早く薙ぎ払いに振るわれたのも後方へのステップで避ける。すると兄貴は折角手にした棍棒を素早くレオモンの方にぶん投げた。横に飛んでそれも避けたレオモンに追撃とばかりのローリングソバットが襲い掛かった。

相手が鋭い剣を持っているという恐怖心は一切ない速度でに肩に一撃加えると直ぐに退いて棍棒を掴み反撃に振り下ろされた剣をするっと避けた。兄貴は下から棍棒を振り上げた。前のめりになっていたレオモンはスウェイバックしてそれを避けるとそのまま横に身体を倒し横払いに剣を振った。兄貴は下半身を引いてかわした。

 ふと俺は両者がお互いの攻撃を受けないように留意して動いていることに気付いた。戦う上で攻撃を受けないようにするってのは当然の事だが、武器での対戦になってから急にお互いの身体が衝突することが少なくなった。

お互い武器による攻撃は一度も受けていなかった。しかしそこは問題ではないが避けることに苦心して攻撃がなかなか繰り出せていないのも事実だった。お互い武器で相手の攻撃を受け止めて反撃する手もあるのに、と考えたが俺は直ぐにそれが大きな勘違いだということに気付いた。

 お互いの武器の大きさや腕力の強さから考えて武器を受け止めるなんてことが無謀だというのが分かった。そもそも棍棒と剣では力の向かう向きや力の入り方が違う。強度は多少違う可能性もあるだろうが、恐らくそこに大した意味はないと思う。よっぽど差がなければ剣の一撃を受けりゃ棍棒の方はスッパリいきそうだし、かといって棍棒の方を剣が受ければへし折られる可能性もある。武器の種類が違うと安易に接触するのは危険だ。多分そういうことの筈。

 その事に気付いてみると両者の実力の高さがよく分かった。一撃でも受けると一気に戦況が傾くというのにお互い少しも攻撃の手を緩める気配がなかった。きちんと避けている辺りも単純な命知らずとも違う。昔かなり喧嘩なれをしている奴とやりあった事があるが、そいつもかなり俺の動きを見ながら攻撃してくるやつでかなりその時は危なかった。勿論金的一撃で沈めてやったが。


「兄貴それは駄目だでや!」


 実際の重さはどちらが上か分からんが重心が手元に近い剣の方が当然扱いやすく素早く動かせる。その理論を踏まえれば長期戦で有利なのがどちらであるかは簡単に想像が付く。大きく攻撃を外した棍棒を素早く引き戻すのは難しく、その隙をついて逆手に持ち替えたレオモンの一撃が兄貴の脇腹に入った。バッと吹き出した血が雪を赤く染めた。さらにレオモンの蹴りが入り兄貴は地面にケツを着いた。その体勢はまずい。追撃を喰らう―――――。


「兄貴!」


 がっと総毛立つのを感じながら走りだした俺の横で青やら赤やらの何かの斑な列が一直線に兄貴達の所へ向かって飛んで行った。何だとその鎖のような列の元を辿ると、小僧の方からその列は伸びていた。それが魚であると認識した時に小僧がその魚の列に引っ張られているのが見えた。小僧の能力なのか?何が如何と考える暇もなく小僧が一直線に兄貴達の所へ向かおうとしていた。瞬間小僧と目があった。

 来るなら掴まれ。そう言いたげな目はもしかしたら本当は来るなと訴えていたのかも知れないが、そんな幻聴を耳にした俺は迷い無く小僧の体を掴んだ。一気に体が小僧の方に引き寄せられひいては兄貴達の所へ向かった。

 うろたえて兎に角助けに行かなきゃならねぇと無謀な本能に身を任せながら一方で何も出来ない上に単なる足手纏いになるだけだと考える冷静な思考も残っていた。力の在る奴はぶつける。力の無い奴は考える。両方在る奴は考えてぶつけろ。兄貴の言葉が思い出される。何はともあれ先ず考えろ。如何したら俺が力になれる?


「兄貴避けれ!」


 レオモンの足元近くまで飛び込めた小僧は魚の鎖を今度はレオモンの顔面に放った。さしてダメージが期待出来そうにない技だったが取り敢えず何もしないよりはましか。少なくとも兄貴がレオモンの剣を避けられるだけの隙は作れた。

 次にレオモンの振り上げた剣は兄貴ではなく此方の方に向いた。剣の向きとしては小僧に一直線に向いている。とここは考えてもどちらにせよ取れる選択肢が一つしかない。俺は小僧を抱えてレオモンの足元に飛び込んだ。間一髪で剣が小僧の足跡に一直線の軌道の跡を重ねた。鉈の幅から考えてこの場合は骨が切られる前に砕かれるかもしれないと思った。どっちにしろ触れたらお終いだ。

 いつまでも足元にもぐりこんでる訳にもいかない。何の攻撃も致命傷の筈。俺はかなりのろのろと大急ぎで其処から走って逃げた。こりゃ確実に小僧の鎖が必要だ。


「小僧、さっきの魚だせ」

「なんだべさ」

「いいからさっきの魚をこいつの肩の辺りに飛ばせって」

「これでいいんでの?」


 切羽詰まっている状況を分かっているからか小僧は意外と素直に俺の提案的命令に従った。魚を一匹肩の辺りに体当たりさせ、当然ダメージはなかった。

「一匹でどうするよおい!」

「んだら何匹飛ばすだべさ」

「数の問題じゃねぇんだよ!」


 低レベルな遣り取りをしている間にレオモンの肩に動きが見えた。剣を持っているほうではないほうが動いたとすると次はパンチか。くそっ、攻撃が届かなくなるまで逃げるにゃ速度が足んねぇ!


「こりゃゆるくないべさ」


 グッとまた体が引き寄せられたかと思うと少し離れたところの雪の中に頭から突っ込んだ。さっきの魚の鎖が見えた。そうそれだよ馬鹿野郎。雪が邪魔で瞬間的には声が出なかった。


「くそっ、それだっての。それを奴の肩にくっ付けて跳べってんだよ」

「そうならそうて言えよ」

「言ってんだろうが!」


 如何にか次の攻撃が来る前に小僧の鎖がレオモンの肩に向かって伸びた。が、レオモンに手の甲で弾かれた。


「あ」

「何やってんだこの野郎!」

「いや、まだだべ!」


 弾かれた鎖に小僧が捻りを加えると鎖は蛇のように反対側の肩へと襲い掛かった。


「ナイス!」


 鎖が縮まり俺と小僧は一気に肩目掛けて飛んだ。小僧の手の中からどうやって魚が出てどうやって魚が収納されているのかその辺のことはもう考えないようにした。

 縮まっていく間にレオモンの腕がこっちに向かっているのが見えた。一瞬叩き落とされることを俺は想像したが、小僧が先程のように上手く鎖を捌いてその腕を交わしその反動でレオモンの背中に飛びついた。あの平べったい手でどうやって鎖を操ってるのかももう気にしないことにした。


「新入り、こっから如何するんだべさ」

「…悪いが何も考えてねぇ。ただ安全そうだったから来ただけだ」


 あんぐりと小僧が口を開けた。そりゃそうだよな。なんとなく安全というだけで動いて後は何もないなんて、キーパー自ら飛び出してカウンターの対策なんか何もしないのと同じようなもんか。案の定直ぐにレオモンの手が背中に迫って来た。やばいなこりゃ。


「避けろ!」


 言われなくてもと言った風に小僧は頭の方へ避難した。垂直の場所で身体を支えるための爪を持っていない俺は直ぐに体をよじ登れず手を避ける術が無く飛び降りた。そして直ぐに走ってその場を離れようとした。そもそも身体にへばりつこうと考えたのは剣も拳もどれも受ける範囲に居たく無かったからだ。それで身体に纏わりついて駄目なら次はまたもう一度離れるしかない。

 レオモンはバッとこっちを見た。雪に反射した陽の光がその目を金色に輝かせた。ちらっと兄貴の方を見ると、傷がなかなか深いのか脇腹を押さえて倒れていた。小僧は揺れる頭の上で注意を引こうとしているのかガシガシとレオモンの頭を殴っていた。しかし直ぐに摘まれて横に投げ捨てられた。やばい。これは間違いなく次が来る。雪に足を取られ走りながら振り向いて見た光景に俺は笑った。


「それを俺にやるか」


 レオモンは左手を前に右手を引き重心を低く肩をどの方向にも回るように構えて右拳を固めていた。剣はいつの間にか腰に収められ構えた右拳は光っている。あの野郎、空飛ぶ金色獅子顔正拳突きを放つつもりか。そんなんでなくても死ぬぞこの野郎。

 レオモンは空高く飛び上がった。そして糸で繋がっているかのように左腕を引くと右腕を突き出した。何の余興か知らんがこれなら幾らか避けられる確率が上がる。線で俺と奴を結べば当然避ける方向は左右だけに限られる。上からならほぼ点での攻撃になり、軌道が読めれば前後左右どちらにも避けられる。俺は振り向き避ける体勢をつくった。

 等とこの世界では通用しないような理論で喜んだ俺が阿呆だった。レオモンの放った空飛ぶ金色獅子顔正拳突きは拳から飛び出した、直後にまるで閉じていた傘でも開くかのように半径四、五十は在りそうな幅の塊になった。均等に拡大されているのか顔の形は崩れていない。

いやそんなデブが着た小さ目の兎でもプリントされたシャツがその体の幅でいやおう無く兎の顔が引き伸ばされたみたいな状態になったら格好悪いよなとかそういう事を考えている場合でなく兎に角縦横百メートル近くの力巨大な塊がこっちに迫って来る。

幾らか小さい時よりもスピードは遅いかも知れない。破壊力もやや低い可能性もある。だが何にせよ、これは、避けきれねぇ!

 まだ大分距離はあるというのに既に風がここまで届いていた。空気がアレの圧力に耐え切れずにこっちの方まで逃げてきているんだ。脳の中が真っ赤に染まっている感じがする。ぶっ飛ぶくらいのアドレナリンがばかばか垂れ流しになっている。皮膚は焼ける様に熱く感じている気がするのに体の中は凍える程冷たくなっている気がした。

 獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすというがアレは嘘だ。猫科の動物はそもそも持久力が無い故に一瞬での勝負に拘るしかない。大体狩りをするときは気配を絶って群れに近づく時間の方が長いんだ。それでも全力を注いでいるように見えるのは要所要所で力を入れることを分かっているから。相手が気付く前に牙を向く。その瞬発力が全力に見えるだけだ。だから獅子は力の加減を分からないという訳じゃない。

 だがこれは力の加減を分かってないんじゃないのか?単純に防ぎようがねぇ。雪の中に潜り込んでも無駄、走っても無駄、泣き叫んだって無駄だ。もう力の塊は眼前に迫ってやがる。クソッ、犬死かよ。


「諦めてんでねべさ!」


 ぐるぐると脳みその方が既に挫けそうになっていたところに小僧の声が聞こえた。どこから聞こえてきたんだと周りを見ると足元にこの数週間の見慣れた赤い鶏冠が見えた。こいつがちっこいのと周りを見えていなかったので全く持って気付かなかった。いや、もしかしたら鎖で飛んできたのかもしれない。其れにも気付いてなかっただろうが。


「な、いたのかお前」

「お前がとろいからだで」

「お前まで無駄死にして如何すんだよ!」

「死にゃしねべさ」

「あれ喰らって生き残れる自信は何処にあるんだよ!」

「どうにかなるっしょ」

「ならねぇよ!」


 助けに来たと見える海豹は何のことは無い単なる阿呆だった。もう鎖でやっても逃げ切れる時間がない。何の為にここに来やがった。どいつもコイツも役に立たない庇い立てをしに来るのはいい加減に止めろ。大体震えてびびってんじゃねぇか。そんなら来るんじゃねぇよ。下手な演技うってんじゃねぇよ。


「何とか出来るっつーなら何とかしてみせろや!」

「してみせる。だからオイラを信じろ」


 小僧が俺の前に回った。小さい上に威厳も威圧かんも少しも感じないのに何故か父さんの姿とダブって見えた。小僧は光を放った。










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「新入り、飯はまだなんだべか。オイラ腹減ったでや」

「五月蝿いよ」

「腹減ったでや」

「五月蝿いよ」

「腹減ったでや、腹減ったでや」

「五月蝿ぇって」

「腹~減った~でや~」

「五月蝿ぇっつってんだろ。大して役に立たない癖に何偉そうにしてんだよ海豹小僧」

「んな。そったらこと言わんてもいいっしょや」

「知らねぇよ。実際今んとこ俺の目にはただの大飯喰らいにしか見えないんだよお前は」

「お前ぇだって同じようなもんだべや」

「飯一つ作れない癖に何言ってんだよこの役立たずが」

「…なまらはらんばい悪くなったでや。今度はわやにしてやるぞ!」

「うっせぇ、纏わり付くな海豹小僧」


 赤い鶏冠をびっと立てて海豹の小僧が飛び掛ってきた。俺は海豹小僧の平たい前足を掴むとねぐらよりも向こうの方に放り投げて俺も直にそっち側に飛び出した。ねぐらで暴れると折角の飯が小僧の言うところの『わや』になる。つまり滅茶苦茶の駄目になるってこった。

 俺は小僧に向かって蹴りを放った。小僧は転がってそれを避けると壁に飛んで其処から俺の頭に飛び乗ってきた。くそっ、すばしっこさだけは一人前なんだからよ。


「離れろこの小僧」

「お前ぇがのろまだからいかんのよ」

「うっせ、って痛たたたた、後ろ足で髪引っ張んな」


 俺は力任せに小僧頭から引き剥がすと地面に叩き付けるつもりで投げた。実際俺の望んだ通りにならないのはやっぱりで、小僧は猫みたいにくるっと回って綺麗に着地した。けど、今日はそれだけで済まさないぜ。俺は続けて小僧に蹴りを噛ました。そいつは見事にヒットして小僧はごろごろ地面を転がった。


「やっり。どうだおい。いい加減諦めるか?」

「まだだで」


 吹っ飛んだ距離の割りに小僧は直ぐに置きあがってまた飛び掛ってきた。同い年相手なら涎吐いて倒れる蹴りもデジモンには然程通用するもんではないらしいことをこの数週間で学んだ。まぁでも小僧は頭が悪いから何回やっても必ず俺の蹴りを貰うけど。

 この世界に誘い込まれてから多分三週間。元々日にち曜日の感覚なんて適当にして生きていたから始めの辺りから結構どうでもいいと思って一週間たった辺りから毎日数えるのをやめた。その多分三週間の間俺は兄貴の下で一緒に暮らしていた。

 兄貴というのはこの世界で俺が始めて出会ったデジモン。緑色の鬼の姿をしたオーガモンというデジモンだ。初めて出会った瞬間には取って食われるかと思っていたが、想像していたよりも鬼は律儀で義理堅く騒々しく暑苦しくやかましく情に厚く無駄に涙脆かった。

俺の身の上話を無理やり話させては涙し、酒が入ってはウィンリィ、ウィンリィと何だか女の名前らしいもんを呟きながら泣いて、何故持っているのか絶対に俺達には触らせてくれない絵本を読んでは泣いてとやかましいか泣いているかどっちかなんじゃないかって位感情の起伏の激しい奴だ。

そして理由は分からないが俺達に自分を兄貴と呼ばせてる。そういった変なところを除けば実際気のいい兄貴みたいなものだからそこは気にしないが。兄貴なんてやくざみたいな呼ばさせ方をしてる割に俺は敬語なんて一切使っていないが。

 兄貴は出会った時には気付かなかったが、背中に傷を多く背負っている。背面に近い棘も尽く折れていてなんだかそういったものを潜り抜けているらしい事を俺は感じている。何故その兄貴が兄貴からしたら木っ端にも等しい俺をこうして手元に置いてくれるのかは未だによく分からないが。同じく海豹の小僧を置いていることもよくわからん。

 自分でも驚くくらい反発心なく俺は兄貴に従っていた。まぁ逆らおうとしても無理だと分かっているが。だがそれ以前に極平然に兄貴達とは会話出来ているのが不思議だった。元の世界では必要意外殆ど喋らない人間だったと思う。いや今も戻ったらそうなのだろうけど。

でも此処では不思議と俺は当たり前の様に話をしている。多分相手が人間じゃないからだろうな。そういうことにしておこう。相手が人間じゃないから薄ら心地良い空気感を感じているんだ。

 ただ、腹の立つことは沢山あった。と言ってもその原因はただ一つ。兄貴と共に生きているゴマモンという海豹の小僧がいることだ。こいつは荷運びも見張りも薪や水集めのどれにも大した役に立たないのに態度だけはでかく飯も人の倍以上食う。その上怒りの許容範囲も狭く直ぐ俺に喧嘩を吹っかけてきてしかし強くないから俺にやられる。

俺はこういう内実の伴わない奴やら単なるうすのろで努力も出来ない様な奴が嫌いだ。俺は人に何やら手を掛けたり世話をしたりとかしないから自分で何か出来ない奴ってのは目障りに感じる。優しい心なんてのはあるつもりがない。兄貴の許可が出たらいつかどっかに捨てていってやろうと本気で思う。まぁ兎も角俺達は三人、というべきなのか一人と2匹というべきなのか、面倒なので三人にする。それで生活している。

 俺達は日々このヨーツンマウンテンと言うらしい山の中に点在している洞窟を転々としながら生活している。一つの洞窟には長く滞在せず、精々三、四日。洞窟の数がそれほど多い訳でもなく一つ一つの間隔もまちまちで探すのも困難なのにも関わらず兄貴は俺等を連れまわして次々に洞窟を回った。

 このヨーツンマウンテンという山はこの電脳(デジタル)世界(ワールド)って世界の中でも屈指の危険地帯らしくて長く同じ場所に滞在していると屈強なる他のデジモン達に襲われるらしい。俺の目からすれば兄貴ですら十分恐ろし気なのにそんな兄貴でさえこの場所ではかなり下の方の実力らしい。

この山は住処とする標高の高さが高いほど実力があると言うらしいが、兄貴からは現時点で標高千二百前後と言われている。十分に高そうな気がしないでもないがそれでもまだ奴等の感覚ではここは殆ど麓だと思われているんだとか。頂上が一万メートルだという馬鹿げた噂を聞くからもしその通りだとするなら納得はいく。無論俺から言わせて貰えば十分頭のおかしい山の厳しさとデジモンどもの強さを身に沁み込ませられたが。

 強いデジモンから目を付けられぬ様に動いてはいたが当然全くデジモンとかち合わないこともある訳が無く、既にこれまでの生活で二十近くの戦闘を行っていた。明らかに此方の実力で敵わないような敵や複数の敵がいたにも関わらずこれまで大した負傷もなく生きてこられたのはひとえに兄貴の逞しさというか狡猾さというかそういうところのお陰だった。

 兄貴は実力が並ぶ奴かもしくはそれ以下の奴以外とは戦わなかった。戦った後には、何よりも生き残れと兄貴は必ず言う。ここでは生き残る以外に戦う意味はない。路上の喧嘩ではないサバイバル。故に逃げられるなら逃げておいた方が安全だ。強い相手には戦力を見極め準備を整え勝てるところにくるまでは戦うなとも言った。生き残る為以外に兄貴は戦わなかった。俺はややその理論が嫌いだった。

 デジモンに哲学的な思想があるのかは分からないが、俺は少なくともひれ伏して逃げるなら戦う方を選びたかった。実際今までも人に屈服して逃げ回るなんてことはしなかった。兄貴に言わせりゃそれは単なる安全の中の粋がりなのかも知れないが俺は命を懸けているつもりだ。人間の歴史はそのまま戦争や犠牲の歴史だ。どんな形態にせよ人間は戦うことで物を勝ち得てきた。だから生きてりゃいいなんて弱い生き方は嫌いだ。

 兄貴にそう話すと兄貴は笑って、ガキだなと言った。小僧は力もないくせにと言った。その時俺は何か言い返そうとしたが、何も思いつかなかった。後から考えて、実際その言葉が実に的を射てる事に気付いて自分に腹が立った。確かにいつだって俺は世間に敵う力を持ってすらいないのに反抗心ばかりむき出しにしていた。軽んじられての罵倒や皮肉よりも腹が立った。がしかしそいつが今の現実だった。俺は兄貴に付いて戦えもせずに逃げるだけだ。

 しかし、一方で兄貴は俺達に戦い方を教えたりもしてくれた。身体の鍛え方、相手の動きの観察の仕方、実力差の計り方、攻撃の為の理論、防御の為の理論、事のタイミングの見極め、身体の動きや調子の確認等様々な事を戦いの中で気楽な遊びでもする様に実演してみたり口頭で言ってみたりとしてくれた。俺は人間だから実際にデジモンと戦う事は出来ないがそれでも十分にデジモンに相対して生き残れるだけの知識は叩き込まれた。それにこの世界で生きる為の常識的な知識も教えてくれた。

 兄貴が何故此処まで俺達に様々な知識を教えてくれるのかその意図は良く分からない。単に手下であるからとか一緒に暮らしているからとかそういう域を超えたオーバーペースでの教育に近い。しかも小僧が言うにはそういう風になったのは俺が兄貴と出会った辺りからだそうだ。それまでは小僧も俺と同じくこの世界に大した知識も持っていなかったらしい。とは言っても小僧の方はお頭(つむ)の出来が悪く未だにろくに物事を覚えてやしないが。

どんな理由で俺を気に入り小僧にも急に物事を教えるようになったのかは分からない。だがその厚意には感謝し甘えておくべきだった。俺はこの世界では何も出来ない小僧なのだから。


「許さんでや」

「うっせ」


 俺と小僧の取っ組み合いは続いた。小僧の方は散々地面に叩き付けられて白い毛並みが斑に茶色く汚れ、俺の方は小僧の容赦ない爪攻撃での切り傷が顔面に幾つも付いていた。始めの方に来ていた俺の服も既に結構ぼろぼろにされ、上着は携帯に似た形をしたデジヴァイスと言うらしい機械に収納されていたほかの物に切り替えるしかない状態にされ、ジーンズもかなりいい感じにダメージやらクラッシュやらの加工が施された状態になった。

しかしぼろぼろの方がジーンズは売れるってのはやっぱり感覚的によく分からん。そんなセンスだから葉月には服装がおっさん趣味とか言われるんだろうか。俺の持っている服の大方は葉月によって選ばれた物だった。そしてそっちの方が人へのウケは良かった。絵やカメラをやるだけにその辺のセンスはやっぱり優れているんだろうかね。


「お前ぇら早く飯作れや」


 地面を転げまわっていた俺達はそろそろ来るかと予想していたがその通り兄貴に摘みあげられてその場に立たされた。俺は歯を食いしばり小僧は両手で頭を庇った。兄貴の馬鹿でかい手による強烈なでこピンが弾かれた。俺も小僧も共に数メートル吹っ飛んで転がった。


「あんまし待たせんじゃねぇよぉ」


 喧嘩の後は必ずこうやって制裁される。俺も小僧も分かっているがそれでも毎回俺達はこうやって喧嘩をしていた。アイツもそう思っているのだろうが、俺も俺の方がアイツより強いと思っているから自然と喧嘩の回数は出会ってからの日数の数倍になった。

その度のでこピン―――とまぁ腹を目掛けての、だが―――はかなりきつく、始めの一週間はやられる度にゲロした覚えがある。小僧は既にもう何回もやられていた雰囲気で少し悶える程度だったが最近でようやく同じくらいのダメージに抑えることが出来るようになった。受けなれたのもあるし実際からだが強くなったのもあった。結局最近ではそれが単なるトレーニングの一貫になっていた。兄貴も恐らくそのつもりだと思う。

 なんだかんだで此処に来てからの俺の心は以外に落ち着いているように思う。小僧とは一向にそりが合う気はしなかったし、兄貴も常に笑いながらでこピンを仕掛けてくるので油断はならなかったが、それでも要らぬ恐れを抱いて俺を避けるように動く馬鹿な同学年の奴等に比べたら数倍マシだった。結局良いように転ぶのも悪いように転ぶのも大した差はねぇ様に思えた。

 既に俺はこの時どうにかしてでも自分の世界に帰ろうとなんて考えていなかった。俺の今を知らない未来には俺が生きていることを如何にか伝えてやりたかったが、結局携帯の形をしているくせにデジヴァイスは俺の家と連絡を取ることは出来なかったし、他の連絡手段もなくそれを探すために山を降りることも出来ないのだから幾らどう考えても無駄だとわかっていたからだ。

それを表情に出さなかったのはなんとなく兄貴達にそういったことを気取られるのが嫌だったから。しかし気付くとそれは単純に心配を掛けまいとする人間の気遣いに行動が似ていた。つくづく自分のおかしな部分に気付かされる世界だ此処は。









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立ち上が~れ~勇者は~。とか懐かしいネタ。語尾がえ段の時にいぇいいぇい言ってターゲットとかね。昔言ってたんだよ。

とかは抜かして脱力系作品のらきすたを見たのさ。相変わらず女子メインで男子がほぼ出てこないようなアニメでは本当に女子はこういう会話をしてるんだろうかと何か思う部分がある。まぁでもこれ系に言える事はキャラの中身が完全に現実の人ではほぼあり得ないだろうと。純粋にアニメ(それ以前に原作もだが)という事を楽しむアニメであると。苺ましまろ然りハルヒ然り。ある意味混ぜこぜ過ぎて混ざりっけがないように感じるよ。

まぁ所謂一つの京都アニメーションという奴が出張ってきてやってる訳だが、相変わらずアニメーションクオリティが高い。(動きがリアルっぽいとかでなく単純にアニメとしてのね)正しく言うとクオリティを高い様に見せる技術と発想が良いと。そしてやっぱり京アニダンスも炸裂ですわ。そしてBGMやらOPEDがキャッチー。あ、ちなみにOPEDがキャッチーってのはメロディが耳に残るとか名曲とかでなく色々な意味で顧客キャッチーだということです。作曲家も作詞家も変態なんじゃないかなと個人的に思っております。確か両方ともハルヒでも曲を書いていたような・・・よく覚えてないが。

ストーリー性がないのに妙なストーリー部分があるから基本的にはお話なのかコントなのか。まぁ脱力系だからなんも考えず(精々詳しい人は元ネタ探しするくらいか)適当にほわーんと見るに限る。


http://www.nicovideo.jp/watch/sm217826
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プロフィール

まいむ@ムーン

Author:まいむ@ムーン
現在21歳雄。偏屈で批判家のジョーカー。
性格、マメで粗雑。短気で気長。本人すら把握できず。身長、服屋のついたて鏡に入らない程度。体重、焼肉で米を大盛り2杯と普通一杯程度。
実写よりアニメ、特撮を見る。バラエティは情報系の方が好き。朝Φ新聞が嫌い。エノラゲイが嫌い。
音楽家、作詩家、小説家。いずれも毒々しい部分を持つ。最近の口癖は「ってな訳」「いやいや」「成る程」「1ミリもないわ」「鬱陶しい」
格好良くて優しい人を期待する方にはオススメできない商品。
宣伝鬱陶しい。

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