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社会不適合なまいむちゃんのそれっぽいブログ。
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 それから自分の時間感覚から想像するにおよそ大体多分恐らくきっとざっと数日後、俺達の生活に変化が訪れた。兄貴が突然山を一度降りると言い始めたからだ。特にこれといった理由を兄貴は話さなかったが女に会いに行くのだなと薄々は感づいていた。

それに小僧は街に出るときはウィンリィ姐さんに会いに行く時だと言っていた。それもそこそこ定期的に会いに行くらしいと小僧は付け加え俺はどの位の周期で行くのかと聞いたところ、前回はずっと前、前々回はずっとのずっと前だと言った。役に立たない奴だと俺が呟くとまた喧嘩になった。

 兎も角俺達は山を降り始めた。ここ暫くは幾分か雪が降らずいつもよりは移動が困難じゃなかった。陽気が良いからかデジモンの数も少なかった。居たとしてこの山では数少ない友好的な、というよりは単純に頭の弱い奴等くらいで特別心配することもなく山を降りることが出来た。

 山を降りる、と言われた時不思議なことに一番初めに浮んだ事は自分の家に帰れるかも知れないということだった。諦めでなく打算として帰る考えを捨てていただけだからそれはある意味当然の事なのかもしれないが、真っ先に思い浮かんだのが家に帰りたいということだったのは俺には以外だった。以外過ぎて思わず驚きの声を漏らし、小僧に馬鹿にされまた喧嘩になった。

 学校に行きたい気持ちは一ミリも無かったし、ましてや周囲の人間に会うということもしたくなかった。これだけの期間行方不明だったからといって変な同情で声を掛けてもらいたくも無かったしその手の同情にはうんざりするほど付き合った記憶もある。

それに何より家族の反応が嫌だった。金づる兼居候には彼是と心配され質問されるのは構わないし仕方ないと思っているが未来と葉月に泣きつかれるのだけは勘弁だった。普段はやたらはしゃいで騒がしいくせにこういう時ばかりは妙に声を殺して泣く。

そういう時の雰囲気や表情やら声やら全てが気に障って心臓を針で突かれた様な気になる。人の泣いている姿ほど苦手なモンはねぇしそれに俺はそういう人間への接し方など知らない。

 そういやアイツと初めて会った時も泣いてたっけな。ふと如何でもいいことを思い出した。俺とアイツが今こんなにも長く付き合えているのはアイツが俺と似た境遇だからだ。抜け出せない過酷な現実を知っているから近くに拠っても痛みを感じないですむ。しかし違うのは俺はその現実に反発し、アイツは受け入れたというところだ。なんて何にせよ今には関係のない如何でもいいことか。

 山を降りる際には色々な事が浮んだ。単純にこのまま兄貴の世話になり続ける訳にもいかんし、一度は元の世界にも連絡を取る術を知りたいし、デジモンの世界でも生き抜けるだけの実戦ようの力も何か欲しいし、やるべきことは色々とあった。

このまま現実感の伴わない生活をしても訳が分からなくなるだけ。俺として生きるために必要なものが色々と欲しかった。それにいい加減小僧といちいち喧嘩をするのも面倒だ。

 どうしたらいいかなんてのはさっぱり分からなかったが、少なくとも街であるとなれば色々とやりようはある。このファンタジックな世界をもっと自分の中でリアルなものとして受け止めるにはどうして俺がこんなところに呼び込まれたのかその理由を知らなけりゃならん。そのための面倒やら苦労やらなら望むところだ。大体元々俺は人の保護の中でぬくぬくと生きていられる程退屈が好きじゃない方だ。

 別に哲学やら妄想やらであまり生きるつもりはないから自分が何をすべき生き物でこれから如何するなんて事は考えない。ただやりたいようにやる。世間や世界が何を俺に期待していようともやりたくなきゃどんな人助けも悪巧みもしないし、やりたきゃどんな自己犠牲も悪行もするつもりだ。

今はただ知りたい。俺がこの世界で何を出来るのか、何故この世界にいるのか、というか何処のどいつが俺をこの世界に引き摺り込むなんてことをしやがったのか。降りかかった面倒を全部ぶっとばしたい。それだけだ。


「おい新入り、止まるべさ」


 色々思考をめぐらせていると急に後ろから力が掛かって雪の上に倒された。


「何すんだよ」


 ベルトにへばりついた小僧の平たい手を振り払うと身体を起こして小僧の方を向こうとした。その時小僧は既に前に回っていて、俺の頭に飛び掛って地面に押し付けた。


「伏せでろ」

「だから何だって…」


 ゴウッっとホームを通過したような音と共に何かが俺達の頭の上を越えて通り過ぎた。厚い風の塊も一緒に俺の上を通り過ぎる。顔面が空を向いているから真上を通り過ぎたその何かの姿を俺は見た。何だかとても圧力のある力の塊みたいな気がした。触れたらどうなるか分かったもんじゃない。

今までの炎やら電気やら水やらの攻撃とはやや種類の違う、そしてその破壊力も違う別格の物の気がした。これまで戦ったどのデジモンよりも恐らく強い。兄貴の言っていたデジモンの成長強度って奴の、これまで戦ってきた兄貴と同じ成熟期ってののもう一つ上の段階、完全体って奴なのか?

 俺は直ぐに起き上がった。と言っても攻撃が来た時に避けられる程度に中腰で低い姿勢だったが。小僧の方は元が小さいから普段と変わらない。そして相変わらず勝ち目も無いくせに頭の赤い鶏冠だけは怒らせている。


「兄貴、コイツは如何する?」

「如何するぅ?決まってんだろぉ、戦うんだよ!」


 普段の機嫌の良さそうな笑顔に禍々しさと嬉しさをまとめて混ぜ込んでモンタージュしたみたいな表情が見てとれた。危険な事を告げた筈の俺の質問に大した意味もないかの様に答えると低く構えて其処から相手に飛び掛った。

 今まで言っていたこととはまるで違う行動に俺も小僧も面食らった。こういう時は逃げろと言っていたのに何故わざわざ飛びかかる。戦いの始めは必ず距離を取って様子を窺えと言っていた筈なのに何故飛び掛る。生き残るのが最優先の筈なのに何故此方から攻めている。全く訳が分からなかった。小僧の表情も大体俺と同じことを考えている感じだった。

 兄貴は相手に飛び掛った。相手は同じく人間に近い二足歩行の二本腕で体格は同等。相手は兄貴と同じくらい大きな腕で兄貴を受け止めると直ぐに振り払った。

 見たところ相手は特殊な技を使わず身体能力の高さで素早く重い攻撃をするバランス型。基本的な戦いに向き、腰の鉈のような幅の広い剣を使って人間のように戦うタイプだろう。現段階では必殺技と思えるのは先程の力の塊みたいな衝撃波を放つものと考えられる。

とすると大方が兄貴と同じ戦闘方法だと推測される。多分違いは兄貴の方の装備が剣でなく骨で出来た棍棒だというところか。けど今兄貴は棍棒を俺のデジヴァイスに収納していて持っていない。何故武器を持たずにあんな奴に飛び掛る。我を忘れている筈もないってのに。


「オラァ!」


 跳んで空中からの右フック、相手はそれを空手の受けのように弾くと極端に動きの制限される空中の兄貴に左アッパーを繰り出す。かなり戦い慣れているのがその動きで想像がつく。兄貴はそれを左手で受け止めるとそこで身体を支え左足で上段に蹴りを放った。相手は肘を畳んで腕を顔の横に持ち上げそれで受け止める。そして受け止めるだけではない。蹴りの勢いが止まった後腕を引いて兄貴の腹に拳をぶち込んだ。

 兄貴は一度雪の上をバウンドすると直ぐに地面に手を付いて体勢を戻し着地した。かなり強烈そうに拳が入ったように見えたがそれ程ダメージがあるようには見えなかった。どんな身体してやがんだ。

 両手を地面に付く体勢のまま再び兄貴は飛び上がり今度は両足でのキックを放った。相手は一歩飛び退くと正拳突きの構えの様に右腕を引き左腕を前に出して力を溜める素振りをした。すると相手の右腕が光始めその圧力で周りの空気が震え始め、それは俺達にも伝わった。相手のライオンそのものの立派な鬣が拳の圧力で揺れた。


「フンッ」
「甘~ぃい!」


 相手が正拳突きを放つとその光る拳から先程のと同じ強固な力の塊が飛び出した。それは何だか金色で眩しく、どういった理論か波動の前面は相手のライオン面そのものを象っていた。兄貴はキックを外した後にまた地面にしゃがみ込むと更に再び飛び上がりその力の塊を避けた。そしてそのまま空中で前転し浴びせ蹴り。相手は其れをまた腕で受け今度こそ本当に退いた。


「舐めんなぁレオモン!」

「五月蝿い」


 兄貴が何故に強そうな相手にも関わらず立ち向かったのかその理由が分かった。いや元々兄貴は相手が自分より強いだとは少しも思っていなかったのだ。今までみたどの敵よりも相手は強かったが兄貴はそれと同格の力を発揮していた。つまり兄貴は今まで三味線弾いてやがったって事か。

 兄貴と相手はかなり因縁めいた様子に見えた。元々実力も拮抗しているし相手の手の内も知っているだから退かなかった。しかし何故今まで自分の力を俺達に隠ししかも今ここでそれを明かすのか。よく分からんが取り敢えず簡単に兄貴が負けるということもないようだ。しかしそれでも注意を怠る訳にはいかない。兄貴の狙いが何であれ俺は必ず生き残る道を探せと兄貴に教えられているからだ。

 兄貴の頭突きが相手の眉間近くに入った。そしてボディに一発。僅かに相手がよろめく。そこにもう一発兄貴は膝を放った。ややしっかりとした足取りでのよろめき方に何か一端引くべきと感じたその時に男の右拳が兄貴の膝の横に入った。そしてあっと思っている間に拳を振るった反動で反転し逆の手の裏拳が兄貴の頬に入った。

兄貴の頭が揺れているのが分かるとこれはもう一発やられるなと感じた。その通り相手は兄貴の膝を払った右拳を引き寄せてボディに叩き込んだ。かなり強烈そうだ。兄貴は数十メートル弾き飛ばされた。


「なまらおっかないパンチだべな」


 俺が考えていることを小僧が口にした。しかしおっかないと言う割りに小僧の顔はやや興奮しているように見えた。多分俺の顔もそうだろう。自分でもやや姿勢が前のめりになっているのが分かる。かなり楽しそうな喧嘩に思えた。筋金入りの喧嘩野郎としてはそう感じざるを得ない程の激しい殴り合いだった。


 携帯、ではなかった。デジヴァイスがポケットの中で震えた。こんな風な反応をするのは始めてだった。なんだかよくは分からないが俺はそれを取り出して板をスライドさせて画面を開いた。ホログラムのディスプレイが空中に浮ぶ。そして其処には見たことの無い画面と画像が展開されていた。


「レオモン…レオモン、か」


 一目でそれが相手のデジモンの情報を表示しているのだと分かった。そういった類のアニメにはよくある光景でそれが現実の目の前に存在していた。今までは少しも知らなかったがそういう機能がコイツにはあるのか。

相手の名前を復唱し、反芻した。レオモン。それが兄貴同様に凶悪そうなあのデジモンの名前か。そういえば兄貴がさっきそんな風に奴のことを呼んでいたかもしれない。


「あ、アイツ武器とったでや」


 小僧の声に視線を戦いの方へ向けるとレオモンが腰から刀を抜き放ったところだった。お楽しみのところの無粋な邪魔にも思えたがよく考えると元々兄貴の持ち物であるものを単純に今返すだけで別に下手な助太刀をする訳じゃない。俺はデジヴァイスの画面を切り替えデータフォルダから兄貴の骨棍棒を取り出した。


「兄貴使え!」


 光が兄貴の方に放たれると其れが形となって兄貴の方に現れた。兄貴はそれを受け取るとそれを手首でグルグルと回し楽しそうに言った。


「これがねぇと危なかったぜぇ」


 実際には微塵もそんなこと思ってはいないだろうなと思いつつも、兎も角第二ラウンドのスタートだった。

 兄貴は棍棒を思い切り振り上げ振り下ろした。レオモンは見事な体捌きでそれを避ける。その後素早く薙ぎ払いに振るわれたのも後方へのステップで避ける。すると兄貴は折角手にした棍棒を素早くレオモンの方にぶん投げた。横に飛んでそれも避けたレオモンに追撃とばかりのローリングソバットが襲い掛かった。

相手が鋭い剣を持っているという恐怖心は一切ない速度でに肩に一撃加えると直ぐに退いて棍棒を掴み反撃に振り下ろされた剣をするっと避けた。兄貴は下から棍棒を振り上げた。前のめりになっていたレオモンはスウェイバックしてそれを避けるとそのまま横に身体を倒し横払いに剣を振った。兄貴は下半身を引いてかわした。

 ふと俺は両者がお互いの攻撃を受けないように留意して動いていることに気付いた。戦う上で攻撃を受けないようにするってのは当然の事だが、武器での対戦になってから急にお互いの身体が衝突することが少なくなった。

お互い武器による攻撃は一度も受けていなかった。しかしそこは問題ではないが避けることに苦心して攻撃がなかなか繰り出せていないのも事実だった。お互い武器で相手の攻撃を受け止めて反撃する手もあるのに、と考えたが俺は直ぐにそれが大きな勘違いだということに気付いた。

 お互いの武器の大きさや腕力の強さから考えて武器を受け止めるなんてことが無謀だというのが分かった。そもそも棍棒と剣では力の向かう向きや力の入り方が違う。強度は多少違う可能性もあるだろうが、恐らくそこに大した意味はないと思う。よっぽど差がなければ剣の一撃を受けりゃ棍棒の方はスッパリいきそうだし、かといって棍棒の方を剣が受ければへし折られる可能性もある。武器の種類が違うと安易に接触するのは危険だ。多分そういうことの筈。

 その事に気付いてみると両者の実力の高さがよく分かった。一撃でも受けると一気に戦況が傾くというのにお互い少しも攻撃の手を緩める気配がなかった。きちんと避けている辺りも単純な命知らずとも違う。昔かなり喧嘩なれをしている奴とやりあった事があるが、そいつもかなり俺の動きを見ながら攻撃してくるやつでかなりその時は危なかった。勿論金的一撃で沈めてやったが。


「兄貴それは駄目だでや!」


 実際の重さはどちらが上か分からんが重心が手元に近い剣の方が当然扱いやすく素早く動かせる。その理論を踏まえれば長期戦で有利なのがどちらであるかは簡単に想像が付く。大きく攻撃を外した棍棒を素早く引き戻すのは難しく、その隙をついて逆手に持ち替えたレオモンの一撃が兄貴の脇腹に入った。バッと吹き出した血が雪を赤く染めた。さらにレオモンの蹴りが入り兄貴は地面にケツを着いた。その体勢はまずい。追撃を喰らう―――――。


「兄貴!」


 がっと総毛立つのを感じながら走りだした俺の横で青やら赤やらの何かの斑な列が一直線に兄貴達の所へ向かって飛んで行った。何だとその鎖のような列の元を辿ると、小僧の方からその列は伸びていた。それが魚であると認識した時に小僧がその魚の列に引っ張られているのが見えた。小僧の能力なのか?何が如何と考える暇もなく小僧が一直線に兄貴達の所へ向かおうとしていた。瞬間小僧と目があった。

 来るなら掴まれ。そう言いたげな目はもしかしたら本当は来るなと訴えていたのかも知れないが、そんな幻聴を耳にした俺は迷い無く小僧の体を掴んだ。一気に体が小僧の方に引き寄せられひいては兄貴達の所へ向かった。

 うろたえて兎に角助けに行かなきゃならねぇと無謀な本能に身を任せながら一方で何も出来ない上に単なる足手纏いになるだけだと考える冷静な思考も残っていた。力の在る奴はぶつける。力の無い奴は考える。両方在る奴は考えてぶつけろ。兄貴の言葉が思い出される。何はともあれ先ず考えろ。如何したら俺が力になれる?


「兄貴避けれ!」


 レオモンの足元近くまで飛び込めた小僧は魚の鎖を今度はレオモンの顔面に放った。さしてダメージが期待出来そうにない技だったが取り敢えず何もしないよりはましか。少なくとも兄貴がレオモンの剣を避けられるだけの隙は作れた。

 次にレオモンの振り上げた剣は兄貴ではなく此方の方に向いた。剣の向きとしては小僧に一直線に向いている。とここは考えてもどちらにせよ取れる選択肢が一つしかない。俺は小僧を抱えてレオモンの足元に飛び込んだ。間一髪で剣が小僧の足跡に一直線の軌道の跡を重ねた。鉈の幅から考えてこの場合は骨が切られる前に砕かれるかもしれないと思った。どっちにしろ触れたらお終いだ。

 いつまでも足元にもぐりこんでる訳にもいかない。何の攻撃も致命傷の筈。俺はかなりのろのろと大急ぎで其処から走って逃げた。こりゃ確実に小僧の鎖が必要だ。


「小僧、さっきの魚だせ」

「なんだべさ」

「いいからさっきの魚をこいつの肩の辺りに飛ばせって」

「これでいいんでの?」


 切羽詰まっている状況を分かっているからか小僧は意外と素直に俺の提案的命令に従った。魚を一匹肩の辺りに体当たりさせ、当然ダメージはなかった。

「一匹でどうするよおい!」

「んだら何匹飛ばすだべさ」

「数の問題じゃねぇんだよ!」


 低レベルな遣り取りをしている間にレオモンの肩に動きが見えた。剣を持っているほうではないほうが動いたとすると次はパンチか。くそっ、攻撃が届かなくなるまで逃げるにゃ速度が足んねぇ!


「こりゃゆるくないべさ」


 グッとまた体が引き寄せられたかと思うと少し離れたところの雪の中に頭から突っ込んだ。さっきの魚の鎖が見えた。そうそれだよ馬鹿野郎。雪が邪魔で瞬間的には声が出なかった。


「くそっ、それだっての。それを奴の肩にくっ付けて跳べってんだよ」

「そうならそうて言えよ」

「言ってんだろうが!」


 如何にか次の攻撃が来る前に小僧の鎖がレオモンの肩に向かって伸びた。が、レオモンに手の甲で弾かれた。


「あ」

「何やってんだこの野郎!」

「いや、まだだべ!」


 弾かれた鎖に小僧が捻りを加えると鎖は蛇のように反対側の肩へと襲い掛かった。


「ナイス!」


 鎖が縮まり俺と小僧は一気に肩目掛けて飛んだ。小僧の手の中からどうやって魚が出てどうやって魚が収納されているのかその辺のことはもう考えないようにした。

 縮まっていく間にレオモンの腕がこっちに向かっているのが見えた。一瞬叩き落とされることを俺は想像したが、小僧が先程のように上手く鎖を捌いてその腕を交わしその反動でレオモンの背中に飛びついた。あの平べったい手でどうやって鎖を操ってるのかももう気にしないことにした。


「新入り、こっから如何するんだべさ」

「…悪いが何も考えてねぇ。ただ安全そうだったから来ただけだ」


 あんぐりと小僧が口を開けた。そりゃそうだよな。なんとなく安全というだけで動いて後は何もないなんて、キーパー自ら飛び出してカウンターの対策なんか何もしないのと同じようなもんか。案の定直ぐにレオモンの手が背中に迫って来た。やばいなこりゃ。


「避けろ!」


 言われなくてもと言った風に小僧は頭の方へ避難した。垂直の場所で身体を支えるための爪を持っていない俺は直ぐに体をよじ登れず手を避ける術が無く飛び降りた。そして直ぐに走ってその場を離れようとした。そもそも身体にへばりつこうと考えたのは剣も拳もどれも受ける範囲に居たく無かったからだ。それで身体に纏わりついて駄目なら次はまたもう一度離れるしかない。

 レオモンはバッとこっちを見た。雪に反射した陽の光がその目を金色に輝かせた。ちらっと兄貴の方を見ると、傷がなかなか深いのか脇腹を押さえて倒れていた。小僧は揺れる頭の上で注意を引こうとしているのかガシガシとレオモンの頭を殴っていた。しかし直ぐに摘まれて横に投げ捨てられた。やばい。これは間違いなく次が来る。雪に足を取られ走りながら振り向いて見た光景に俺は笑った。


「それを俺にやるか」


 レオモンは左手を前に右手を引き重心を低く肩をどの方向にも回るように構えて右拳を固めていた。剣はいつの間にか腰に収められ構えた右拳は光っている。あの野郎、空飛ぶ金色獅子顔正拳突きを放つつもりか。そんなんでなくても死ぬぞこの野郎。

 レオモンは空高く飛び上がった。そして糸で繋がっているかのように左腕を引くと右腕を突き出した。何の余興か知らんがこれなら幾らか避けられる確率が上がる。線で俺と奴を結べば当然避ける方向は左右だけに限られる。上からならほぼ点での攻撃になり、軌道が読めれば前後左右どちらにも避けられる。俺は振り向き避ける体勢をつくった。

 等とこの世界では通用しないような理論で喜んだ俺が阿呆だった。レオモンの放った空飛ぶ金色獅子顔正拳突きは拳から飛び出した、直後にまるで閉じていた傘でも開くかのように半径四、五十は在りそうな幅の塊になった。均等に拡大されているのか顔の形は崩れていない。

いやそんなデブが着た小さ目の兎でもプリントされたシャツがその体の幅でいやおう無く兎の顔が引き伸ばされたみたいな状態になったら格好悪いよなとかそういう事を考えている場合でなく兎に角縦横百メートル近くの力巨大な塊がこっちに迫って来る。

幾らか小さい時よりもスピードは遅いかも知れない。破壊力もやや低い可能性もある。だが何にせよ、これは、避けきれねぇ!

 まだ大分距離はあるというのに既に風がここまで届いていた。空気がアレの圧力に耐え切れずにこっちの方まで逃げてきているんだ。脳の中が真っ赤に染まっている感じがする。ぶっ飛ぶくらいのアドレナリンがばかばか垂れ流しになっている。皮膚は焼ける様に熱く感じている気がするのに体の中は凍える程冷たくなっている気がした。

 獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすというがアレは嘘だ。猫科の動物はそもそも持久力が無い故に一瞬での勝負に拘るしかない。大体狩りをするときは気配を絶って群れに近づく時間の方が長いんだ。それでも全力を注いでいるように見えるのは要所要所で力を入れることを分かっているから。相手が気付く前に牙を向く。その瞬発力が全力に見えるだけだ。だから獅子は力の加減を分からないという訳じゃない。

 だがこれは力の加減を分かってないんじゃないのか?単純に防ぎようがねぇ。雪の中に潜り込んでも無駄、走っても無駄、泣き叫んだって無駄だ。もう力の塊は眼前に迫ってやがる。クソッ、犬死かよ。


「諦めてんでねべさ!」


 ぐるぐると脳みその方が既に挫けそうになっていたところに小僧の声が聞こえた。どこから聞こえてきたんだと周りを見ると足元にこの数週間の見慣れた赤い鶏冠が見えた。こいつがちっこいのと周りを見えていなかったので全く持って気付かなかった。いや、もしかしたら鎖で飛んできたのかもしれない。其れにも気付いてなかっただろうが。


「な、いたのかお前」

「お前がとろいからだで」

「お前まで無駄死にして如何すんだよ!」

「死にゃしねべさ」

「あれ喰らって生き残れる自信は何処にあるんだよ!」

「どうにかなるっしょ」

「ならねぇよ!」


 助けに来たと見える海豹は何のことは無い単なる阿呆だった。もう鎖でやっても逃げ切れる時間がない。何の為にここに来やがった。どいつもコイツも役に立たない庇い立てをしに来るのはいい加減に止めろ。大体震えてびびってんじゃねぇか。そんなら来るんじゃねぇよ。下手な演技うってんじゃねぇよ。


「何とか出来るっつーなら何とかしてみせろや!」

「してみせる。だからオイラを信じろ」


 小僧が俺の前に回った。小さい上に威厳も威圧かんも少しも感じないのに何故か父さんの姿とダブって見えた。小僧は光を放った。

















今書いてる部分の進みが遅くてやってられません。描くべき要素がありすぎてもう何がなにやら~。そして久々に40P越えっぽい。

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プロフィール

まいむ@ムーン

Author:まいむ@ムーン
現在21歳雄。偏屈で批判家のジョーカー。
性格、マメで粗雑。短気で気長。本人すら把握できず。身長、服屋のついたて鏡に入らない程度。体重、焼肉で米を大盛り2杯と普通一杯程度。
実写よりアニメ、特撮を見る。バラエティは情報系の方が好き。朝Φ新聞が嫌い。エノラゲイが嫌い。
音楽家、作詩家、小説家。いずれも毒々しい部分を持つ。最近の口癖は「ってな訳」「いやいや」「成る程」「1ミリもないわ」「鬱陶しい」
格好良くて優しい人を期待する方にはオススメできない商品。
宣伝鬱陶しい。

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