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社会不適合なまいむちゃんのそれっぽいブログ。
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「ファングモン、ステップアウト!オーバーハーフライト、アタックファースト!」


 モスモンの尾に付いているガトリング砲から放たれた弾丸を細かく刻んで後ろに下がりながら避け口からモスモンに向けて衝撃波を放った。モスモンは旋回してそれを避けると入り組んだ木の間をすり抜けファングモンの視界から消える様に生い茂る葉の中へ姿を消した。そしてその葉の陰から再び銃弾は撃ち下ろされた。ファングモンは義貴の指示を待たず前方に進んでそれを避けた。


「レフトターン!」


 行き着く暇もなくファングモンの後方からはサンドヤンマモンが鉤爪を振りかざし飛び掛って来た。直ぐに出された義貴の指示通りファングモンは左回りにぐるっと回って飛び掛って来たサンドヤンマモンをかわした。


「アタックファースト!」


 ファングモンは攻撃をかわされた為一度上空に退避しようとしたサンドヤンマモンの後ろに回りこみ先程の衝撃波を放った。サンドヤンマモンはその衝撃波に飲み込まれもがきながらも風の渦に押し流されるように木の幹へと強かに身体を打ち付けた。


「ファングモン、バック!避けろ!」


 義貴は叫んだ。それとほぼ同時にファングモンの脇腹に二匹目のサンドヤンマモンが襲い掛かった。鋭い爪が義貴の声とサンドヤンマモンの風を切る僅かな音に反応して伏せたファングモンの脇腹を裂いた。一匹を仕留めた隙を狙われた。迂闊だった。

しかしそれにしてもこの状況は異常だった。義貴とファングモンのコンビは雑魚なら既にこれまでに銃数匹は凌いでいた。しかし一向に状況は変わらない。先程から常にファングモンの近くには四、五匹の虫デジモンが群がっていた。逃げても追い払っても虫デジモン達は纏わりついていた。

 ファングモンは脇腹の痛みでよろめきそうになるのを堪え、サンドヤンマモンの逆から少し遅れて放たれたヤンマモンの雷の閃光を高く飛んで避けると木にしがみ付いた。


「ゴゥ、ファングモン」


 ファングモンはそのまま爪を立てて木の登った。ヤンマモンもサンドヤンマモンも木を登り始めたファングモンには追撃を仕掛け無かった。ファングモンは丁度ヤンマモン達の死角となる木の裏側にしがみ付いた為だった。

それにしてもデジモン達の行動はお粗末なものだった。先程からこういったちょっとした事でファングモンの姿を認識出来なくなったり攻撃をしなくなったりしていた。だからこそこれだけの敵の数でもこれまで如何にか切り抜けてこられたのだ。

義貴には現状が全く理解不能、という事もなかった。実際に経験したことは無かったがこのような状態が如何いう事かは知っていた。突然地域全体のデジモン達が暴走して虚ろな目で襲い掛かってくる。

その行動は単調で通常時とは明らかに繊細さに欠く攻撃や、無謀としか思えない突進など、ただ此方に攻撃をすることを目的としているとしか思えないそういった特徴のある単調な行動をする。つまり単純に言い換えると操られたような状態になるという事だ。QDCの面子ではそれをバグに侵されたと言う。

通称バグと呼ばれているデジモンを混乱に導くデジモン。その正式名称はコンフューズドバグモン。正式名称と言ってもそれは中核(カーネル)から正式に提案された名称でなく、あくまでQDCが仮に設定した名称である。故に安直且つ単純なネーミングだったが、それは現状では問題ではない。問題であるのは何故それが仮なのか。だが答えは至ってシンプルで、それは過去に存在しなかったデジモンであり、尚且つカーネルとは関係なく製造された人造デジモンだからである。

コンフューズドバグモンはQDCと敵対するデジドラモンの持つ組織によって作られたデジモンである。全長一センチ程の超小型デジモンで全身を機械で造られた虫の様なデジモンだ。殺傷能力は一切持たない代わりに、現在確認している限りでは、一匹のコンフューズドバグモンで一体の成熟期までの成長強度を持つデジモンを操ることが出来ることが分かっている。

コンフューズドバグモンは身体のデジタルデータを分解し自分の侵入経路として作りかえる事が出来、その力で体内のデジコアまで侵入し自分の身体をそのデジコアのデータに紛れ込ませ操る。成熟期までのデジモンは抗いようもなく意識を奪われ、身体の行動権利も奪われる。そう、紫苑に課せられた主なる仕事であったファイル島のバグの駆除。そのバグと全く同じものである。

更に加えて説明しなければならない事が一つ。それは、何故これだけのデジモンがバグに侵される中、義貴のパートナーファングモンはバグに侵されていないのかということ。完全体以上の成長強度を持つデジモンを操ることが出来ないのは単純に成熟期よりもデータ量が多くコンフューズドバグモンがデジモンを混乱させる能力に耐えてしまうからで、数匹程度の付加には堪えられるからこそ、コンフューズドバグモンが地域に広がる際の拠点とする、QDCの中ではその巣と呼ばれている大量のコンフューズドバグモンの集合体を完全体の身体に根ざすことが出来る。

その大量の力を以ってすれば完全体も征服することが出来る筈のコンフューズドバグモンが何故ファングモンを操る事が出来ないのか。それはファングモンの体内に侵入出来ないからだ。では、何故侵入出来ないか、それはテイマーのパートナーとなるデジモンがアナログの力をテイマーから得ているからである。それは特別な事でなくテイマーのパートナーとなっているデジモン、或いは過去そうであったデジモンであれば必ずコンフューズドバグモンを回避できる。

デジモンにはあらゆる進化の方法がある。即ち、極当たり前にデジモンに起こる通常進化、特定の条件下にのみ起こる特殊進化、法則性のない突然変異、そして人間のパートナーの持つアナログの力に触れる事によって起こる感応進化の四通りである。

細かく言えば感応進化の中にはデジメンタルと呼ばれる特殊なアイテムによって進化するものがあったり、通常の逆の道を辿る退化等というものもあり未だ幾らか細分化するが、基本はその四つである。そしてコンフューズドバグモンの力がファングモンに及ばない理由はその感応進化に関係がある。

感応進化は他の進化とは明らかに一線を画す進化だ。それはアナログの力が其処に働いているからである。アナログの力はデジタルワールドにはない力で通常ではありえない力をテイマーからデジモンは受け取りそれにより進化する。

その通常にはない力がコンフューズドバグモンの侵入を拒んでいるのではないかと考えられている。またコンフューズドバグモンはデジタルデータ分解して体内に侵入するするという実験結果がQDCにより証明され、一部の研究者の中ではデジモンに人間のアナログなデータが取り込まれた事により、コンフューズドバグモンが分解することの出来ないアナログなデータがあるがゆえに侵入出来ないのではないかとも言われている。

その恩恵を受けているファングモンは鼻と耳を頼りに仕留め損なっていたモスモンを見つけ出していた。幸いにもモスモンは一端離れた事でファングモンを見失い上空の茂る葉の中を彷徨っていた。

ファングモンはすぐさま木からモスモンに飛び移り前足の爪を頭部に叩き付けた。続けて二度三度爪を打ち付けた。モスモンがそれで気絶した後ファングモンはモスモンの身体を離れ地面に衝撃波を放った。ファングモンは衝撃波で落下の速度を減少させ緩やかに地面に着地した。


「ファングモン、フロント、アタックセカンド!」


 ファングモンは身を屈めグッと脚に力を込めた。前方には先程のヤンマモンとサンドヤンマモン、それに何処から紛れたか新しいモスモンが居た。三匹ともやや攻撃するには高い位置を飛んでいたがファングモンの脚にはそれ程関係のない事実だった。ファングモンは雷の如く三匹の側をすり抜けた。そのすり抜けざまの高速な一撃で三匹はまさしく虫の如く地面へポトリと落ちた。先輩テイマー佐川紳とブイドラモンには通用しない攻撃も操られた雑兵相手ならこれだけの力を発揮することは出来た。


「ファングモン、カモン」


 義貴は木の陰からファングモンを呼び寄せた。漸く周囲にデジモンが居なくなった。義貴は少し溜息を吐きデジヴァイスから二本ペットボトルを取り出し一本に口を付けた。


「ファングモン、疲れてない?」


 側にやってきたファングモンは義貴の太ももに頭を摺り寄せた。グルルと低く喉を唸らせ自分の頭を撫でる義貴の手を舐めた。義貴はペットボトルを開けファングモンに飲ませてやった。それ程長い休憩時間は取れない。ファングモンに水分を与えながら義貴はデジヴァイスのデジモン反応を見てそう思った。


「グルルゥ…」

「何だよ、別に大丈夫だって」


 知らぬ間に義貴の手は震えていた。ファングモンは義貴を見つめて唸った。初めての本当の意味での実戦。これまでのように守られているだけではない実戦。少しばかり望んでもいたそれに義貴は震えていた。興奮もあり緊張もあり恐れもあった。夕暮れがそろそろ過ぎようとしていて暗い森が暗さを増していた。


「早く皆見つけなきゃ」


 義貴はペットボトルをデジヴァイスに仕舞って呟いた。ちらっとだけファングモンの腹部を見る。傷はもう消えていたがそれが在った証拠として毛並みの赤さとは違う赤い色がファングモンの腹部にこびり付いていた。ファングモンは高速戦闘を得意とするデジモンでその為防御が通常よりも弱い。

得意の高速攻撃、スナイプスティールもそう何度も連発出来る技ではない。はっきりと持久戦に向かないタイプだと分かっている。兎も角早く誰かと合流しなければならない。そしてそれとは関係なく出来れば一美を真っ先に見つけたい。そうも思っていた。


 義貴はデジヴァイスのデータを見た。其処に新たに追加された赤い茸の映像がなんとも心苦しかった。自分のミスだとその事実が義貴の頭の中をずっと駆け巡っていた。そのミスが状況を酷くしたというその思いが指先の震えをもっと促していた。


 事の起こりは二時間程前。この森の代理ではなく本当の村長というデジモンの家を訪ねていたその最中に始まった。





 久々に快適なベッドで眠ることの出来た一行が起きた時間は予定よりも二時間も遅い九時半の事だった。普段は時間通りの行動する義貴でさえ一時間遅れての起床だっただけに一同は自分の非をお互いに誤魔化しながら朝を迎えた。

 朝食をそこそこに済ませると元々の予定だった今後の旅の為の食材を買い出し班の一美と大輔が驚異的な速度で済ませ、その間に義貴と昨日顔を見せなかったシュンと祐梨がジュエルビーモンのところへ挨拶に向かった。昨日アレだけ大暴れして見えたオオクワモンは今朝は落ち着いたのかジュエルビーモンと共に義貴達と挨拶を交わした。そして改めて詳しくこの森で起こった出来事を聞いた。

 一行がこの集落に辿り着く前夜、生み出されたデジタマを保管する保育用倉庫に侵入者があった。二人の見張りをほぼまずくびり殺し風の速さでデジタマを持ち去っていった。果敢に向かっていった仲間達は愚か無抵抗の者も逃走の邪魔となるものは須らく殺された。犯行グループは四体のデジモンで、こちらの攻撃を一切受け付けぬ速度で逃げ去った。

そのうちの一体には如何にか攻撃を浴びせる事が出来たが、それもまた一瞬のうちに助け出され逃走したということらしい。


 他にもその倉庫にはデジタマが在ったが、犯行グループは迷わずそのデジタマを奪い他には目もくれずに逃走した。そのデジタマのみが目的のかなり計画された犯行である。とすると一つ疑問が残る。義貴は質問した、どうしてそのデジタマが狙われたのかと。

 その質問にジュエルビーモンが口籠ると横から祐梨が言った。恐らくそれはこの集落にとってとても特別で大事なデジタマなんだろうと。義貴が続いてジュエルビーモンに確認を取ると、まだデジタマの段階で確実ではないが恐らくそうなるだろうと少し曖昧な答えを返した。更に義貴はそれが如何特別なのかという事を尋ねたが祐梨がそこは大した問題じゃないと制した事でその話は打ち切られることになった。

 話は今日の予定についての事に移行した。ジュエルビーモンは森の出来得る限りの者に協力を仰いで犯行グループを探すつもりだと言った。それは一昨日の夜中に犯行が行われその際に一体が負傷しているのだとしても機敏性に優れる虫デジモン達が森の中で撒かれる程の移動能力を持った者達が逃走に二日も三日も掛かるとは考えにくい。

監視を森の外へ逃さぬように立たせているので外へ脱出はしていない筈だが、突破されるのは時間の問題で此方には猶予がない。それが主な理由だ。

 その為にとジュエルビーモンは一行QDCメンバーに遣いを頼んだ。それはこの森の奥にいる本当の村長に森の中のデジモン達に犯行グループを捉えるように動けと命令して貰う為だ。ジュエルビーモンは未だ犯行グループは誰の目にも付かずに逃げているといった体で表現したが、実際には相当膨大な数のデジモンが居る訳でその数多くの複眼が一度も彼らの姿を捉えないというのはあまりに不自然である。

しかしそれが何故現実に起こっているか、答えは二つである。彼らの姿を見たものが全員殺されているか、彼の姿を見てなお見なかったふりをしているかどちらかである。

 この森の住人に個別のまとまりはあっても全体の統率はない。それで何故いざという機器が在った時に揃って集落の指示を聞き入れるのか。それは早い話が褒賞金が集落から出されているからだ。要するに自衛団以外のデジモン達は利益の為に誰もが動いているのだ。だから別に利益を得る話があれば集落の要求を飲み込む理由がない。

それを犯行グループが知っているとするなら、否おそらくは知った上で犯行を行っている事が推測され、今犯行グループはこの森の虫デジモン達を買収か脅すかして匿われている事も想像に難くない。

 その中から犯行グループを引き摺りだすには自衛団が直接出向いて武力で脅すか褒賞金を上乗せするか以外にこの森ではやりようがない。しかしそれをするためには今圧倒的に足りないものがある。それは人手である。

 脅すにも上乗せするにも大っぴらにやれば犯行されたり調子に乗って集団で褒賞金を吊り上げようとしてきたり場合によっては偽の情報を流してきたりもする。故にそうするためには個別にまとまりの中へ訪れ犯行グループの情報を奪い取るしかない。

そうするとこの膨大な森の中である全部を調べつくすのに一体どのくらい掛かるか分からないし、所在を転々と移られてしまえば一つ一つを調べる意味事態なくなってしまう。数十人程度しかいない自衛団だ、隙を見て一度調べられた場所へ移り変われば二度三度と同じところをかちあたるまで調べなければならないことになる。それは不毛もいいとこだ。

 だから本来の村長に願い出るのだ。ジュエルビーモンが言うには本来の村長はその実力も権力もジュエルビーモンより遥かに上のもので、人望と強制力がかなりあるのだそうだ。そうまで説明すれば大方頭が良いように見せるため授業内容はしっかり覚えるが決してキレるというほど賢くないシュンにも何が言いたいのか分かった。虎の威を借る狐とはまさにこのこと。権力者の村長という虎の力で森のデジモンを牽制する狐になるとジュエルビーモンは言っているのだ。

 それを直に村長に伝えるなり身内に伝令を出すなり出来ないのはそういった事情があるからである。仮にもジュエルビーモンは村長から集落の村長の代理を任されている訳で、自衛団は森全体の治安を良くするために立ち上げられた組織で、其れが通用しない等と直接自分の口から言える訳がない。

人手が足りないのは事実だがこれは何より優先されることでそれを人手が足りないと言ったりQDCメンバーと村長を引き合わせるいい機会だと言ったりするのは全て建前である。尤も当のQDCメンバーはその事実に全く以って気付いていない様子だったが。

 兎も角義貴達一行はジュエルビーモンの要求を受け入れ本日の予定は今後のあと少しとなった旅の準備を進めることと本当の村長に会いに行くという事と、その際に祐梨の目的であるベニデジタケを探すこととなった。

 一行は買い物を済ませた大輔、一美と合流し早速森の奥の村長の元へ向かう事になった。道案内には自衛団の中でも屈指の腕と言われているシェイドラモンとクワガーモンが宛がわれた。シェイドラモンは初めてジュエルビーモンを訪ねた時に一行の応対に当たってくれたデジモンでジュエルビーモンの教えを身体に見事に沁み込ませている感じだった。一方でクワガーモンはそれよりも荒々しい態度で相当腕に覚えがあると言った風だった。

 この場合印象はクワガーモンの方が悪かったが注意すべきはシェイドラモンだと言えた。道案内と言いつつそれなりの実力があるQDCの一行に護衛と称する腕利きを付ける以上それはQDCの動向を見張り場合によっては抑制、攻撃をする為の人材配置であるだろう。そうでなければ見ただけで他の面々と実力が違うこの二人がただの道案内をするにはあまりに役不足だ。

 裏の思惑も知らぬまま一行は村長の居るという森の奥へと向かうことになった。




 目の端をちらつく小虫を見つけた。しかしサイクロモンはそれを無視した。相手の数は膨大だ、いちいち構っている暇等一つもない。木の間隔はあまり広くなくサイクロモンは時々それに接触しているため身体の側面にはかなりの擦り傷があった。それに無視していた小虫がサイクロモンの背中にひたすら電撃を放ち切り付けてきていたのでもう背中は殆ど赤く染まっていた。


「悪いねぇ、サイクロモン」

「気にするんでねぇわ。こんなん屁でもねぇ」


 サイクロモンは豪気に笑い飛ばして言った。しかしその言葉は決して強がりなどでなく、実際その様子に少しも堪えたところはない。成熟期の中でもかなりの巨体を誇るサイクロモンだ、それも当然の事である。


「あぁ、虫の反応が多すぎて何処なんだかわからないねぇ。そろそろだと思うんだけど」

 デジヴァイスを眺め足元に広がる景色を見比べながら一美は言った。デジヴァイスの画面は周辺のデジモン反応を示していたが中心の自分たちを表す緑の点をも埋め尽くすほど赤い点が一面に分布していた。その所為で一美は求める青い点を見つけられずにいた。仲間を示す青い点を。


「もう結構時間経ってるしそろそろやべぇんじゃねぇの?」

「如何すんじゃい」

「しゃらくせぇ、一旦周りの全部ぶっ飛ばせ!」

「一網打尽とか言うやつじゃな」

「いいから早くぶっとばせって」


 サイクロモンは大きな右腕でブレーキをかけ、一気に反転した。サイクロモンの肩の辺りに乗っている一美は勢いで振り落とされぬ様にしがみ付く。


「じゃははっ、喰らえいわしのストレングスアーム!」


 サイクロモンは大きく腕を振り上げた。急な反転にも関わらずかなりの数の虫デジモン達が攻撃を仕掛けようとしてきたところを見ると恐らくは反撃前に攻撃出来ると考えたのだろう。確かにパワータイプのサイクロモンは攻撃も防御もそれに素早く対応し行動することは出来ない。スピードタイプの敵には圧倒的に弱い。しかしそれは実に安直過ぎる考えだった。

 それまで虫デジモン達がしてきた攻撃は雷を放ったり銃弾を撃ったりと遠距離の攻撃だけだ。それは急な反撃でも触れるとほぼ一撃でやられることがその巨体からもう予測できてしまうからだ。そしてもう一つの理由は攻撃の反動で減速せざるを得ない状況では直接攻撃するために近づくには多少の時間が掛かるという事。それは容易に追いつく程の脚が遅い訳ではないという事だ。

 そもそも巨体のデジモンはそれだけで動きが鈍いと考えられがちだが、それはあくまで巨体のデジモンが攻撃する場合は身体の大きさ分モーションが大きい為に小さいデジモンの数倍の距離があるからであり、攻撃される場合は例えば一メートル被弾地点に誤りがあってもそのくらいは身体の範囲内であるから当然喰らってしまうというだけであって、

考えてみれば普通に歩く一歩の大きさは明らかに何十倍もあり、移動速度も相応の早さを持っている。それが巨体であるから遅く見えるだけだ。怪獣映画で走って怪獣を追い越す人間などいるわけがない。

 それなりに距離があり巨体にかかる惰性で上手く身体を反転させオマケに反転の前から攻撃の準備をしているため直後にもう腕を振り上げているの出来、そこからは重力の力を借りるのだから腕を振り下ろすスピードは相当速い。サイクロモンは地面に自分の腕を叩き付けた。

其れと同時に大地の崩れる音が響き前方の大地は手前が沈む反動で隆起し木は軒並み倒されデジモン達は勢いで地面に叩き付けられたり吹き飛ばされたりした。丁度それは綺麗に扇型に立てられたドミノの様に惨状が広がっていた。一美とサイクロモンの見る目の前の景色には綺麗な扇状地と小虫の居なくなった景色が出来上がった。


「雑魚は散るのみ。ガハハハ」

「こういうところでやるとお前にゃ破壊力があると良く分かるわ。何匹かは死んでそうで怖いねぇ」


 一美は眼下に広がる景色を眺めて思った。しかし実際にはそうなってはいないだろうと彼女は予測していた。相手は羽を持った昆虫型のデジモンだ。吹き飛ばされた程度で死ぬほど柔ではないだろうし、何匹か運悪いデジモンが叩き付けた腕の真下に居ようと羽を持ち軽い身体の昆虫デジモンなら風圧で散って踏み潰されることはなかっただろうと。かなり荒っぽい方法だったがこれがデジモンを殺さず散らす最善の方法だと一美は考えていた。

 他の技は広範囲に効くものがなく、在ったとしてハイパーヒートという鉄火面で覆われていない片目での熱線攻撃だが、QDCとしてバグに侵されたデジモンを殺す訳にはいかず、また殺したくはなく、一点集中のその技ではその危険性が高い故現状では最も放ってはいけないのが事実だ。またこうも森に囲まれていてはあっという間に火の海である。そしてそれが今サイクロモンが苦戦を強いられている理由である。

 サイクロモンは葉月のアクスモンと同じく、一美と組む前から戦いを重ね生き抜いてきたいわばベテランの兵士で、この程度の事ではほぼ問題は無いに等しいくらいだ。しかしその戦場を生き抜いてきた時からの最大の必殺技、ハイパーヒートが事実上で封じられたとなると後はもう直接攻撃しか戦う手段がなく遠距離攻撃の多い虫デジモン達をまともに相手にするのは困難であるそれ故の逃走作戦であり先程の奇襲じみた攻撃なのだ。

 サイクロモンはあまり気にしていなかったが一美は焦っていた。そもそもこれだけのデジモンの中に一組だけでいるのは正気の沙汰ではない。一美はそれを自分達に思っているのではない。もう一組、先に隊形から離れたテイマーズに対して思っていた。


「ヨッシーの反応見えた。このままやや東よりに進むよ」


 顔には焦りを出さずに言った。サイクロモンの立てた大きな衝撃音で標的を見つけた虫デジモン達が先ほどのようにサイクロモンの近くに赤い反応を示すようになってきたが、お陰で少し遠くに位置する青い点が見えるようになった。それはここから北北東方向に存在しやはり赤い光で囲まれていた。

音が聞こえてこっちの方へ来てくれるとありがたいと思ったがそれが出来ない事が容易に予測される程赤い光は青い光に群がっていた。義貴のパートナーが長期戦に向かないのを分かっている以上、一時間も一人で戦わせている今に猶予などまるで残されていない。

 賢いくせに律儀だから人の為に無理をする。一美は義貴の事をそう思っていた。義貴が産まれてから小学4年生の頃までならその殆どの時間を一美は知っていた。特別幸せでも特別不幸でもない普通の家の子で、栃木の実家の隣に住んでいて、陸上で推薦され都内の高校に行くまではよく一緒に居て連れまわしていた子。

その頃には足を踏み入れていたデジタルワールドに八ヵ月程前に迷いこみ、その一ヶ月後に再会を果たした子。生意気だけど物事をちゃんと理解出来る賢い奴に育っていた子。だから普通より少し早く実戦に投入されることになって、でも実戦にはまだ及ばないレベルだったことを知って、少し無理なやり方でそうなることを阻止して戦場に行かすのを遅らせた子。それでも今回相当な任務に就くと聞いて、自分にチーム参加を決心させた子。自分の弟みたいな子。

 一美は自嘲気味に笑った。なんだかんだ心に浮かべて何もこんな場面で無理しなくてもいいのに、と思ってみてもそれ以上に自分が無理をしている事に気付けば当たり前に出る溜息が出た。隊形から飛び出しその巨体で敵を曳きつけながら仲間を探しているなんて、そんな無茶をしている。そしてさせている。

 少し思い出に浸っていたからか緊張が緩み集中力が切れていた。そして気付いた時にはもうそれは直ぐ近くに存在していた。はじめに気付いたのはサイクロモンが皮一枚を切られ、何かいるぞと言った時だった。周囲にそれらしき陰は見えない。しかしデジモン反応は出ていた。周りに群がっている虫デジモンの気配ごと赤い光が途絶え、一つの赤い光がまるで一美達の危機を示すように激しく画面の中で揺れていた。

 一美は途切れていた集中を再び繋ぎ直してデジモンの動きを追い始めた。目では捉えきれないが確かに周辺でヒュッヒュと風を切る音が聞こえていた。サイクロモンは大きく後ろに下がった。ダスンという大きな足音が響く。

 目の前に一人のデジモンが現れた。丁寧に此方がその姿を認識出来るようにサイクロモンの顔の目の前に腕を組んで飛んでいた。殆ど人間のような姿でメッセンジャーのヘルメットの後方部分を伸ばしてその先端を大量の針のように尖らせた頭部に両腕の肘に雷のような形をした鋭い突起が飛び出し脚の裏にはスケート靴のようになったナイフを装着している。

頭部、胸部、腕、足に装着されたラバー製のアーマーの様なモノは青い色をして身体に着ているスーツは白く首に巻いた長いスカーフも白い。それは有名なサイボーグの戦士をそのままモチーフに進化したと言われているデジモン、リンクモンだった。


「時間がないってのにまた性質の悪い…」


 一美は拳で掌を叩き渋い顔で呟いた。相手はサイクロモンにとってこの上なく不利な敵だった。リンクモンは超高速戦闘を得意とするデジモンで、その速さは究極体でも及ばない者が殆どだというくらいだった。

 一美はデジヴァイスを覗いた。義貴を示す青い点は直ぐ側と思える程近くにあった。実際はそれでも相当の距離があったがそれだけが一美の救いだった為にそのイメージについては完全に無視を決め込んだ。そういう気構えでいかなければやってられない気がした。時間も体力も現状を満足に動くにはもうそれほど余裕は残っていなかった。












いやぁ、確かこの辺も結構苦心した記憶があるなぁ。なかなか難しいんですよ多数の場面を扱うの。
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プロフィール

まいむ@ムーン

Author:まいむ@ムーン
現在21歳雄。偏屈で批判家のジョーカー。
性格、マメで粗雑。短気で気長。本人すら把握できず。身長、服屋のついたて鏡に入らない程度。体重、焼肉で米を大盛り2杯と普通一杯程度。
実写よりアニメ、特撮を見る。バラエティは情報系の方が好き。朝Φ新聞が嫌い。エノラゲイが嫌い。
音楽家、作詩家、小説家。いずれも毒々しい部分を持つ。最近の口癖は「ってな訳」「いやいや」「成る程」「1ミリもないわ」「鬱陶しい」
格好良くて優しい人を期待する方にはオススメできない商品。
宣伝鬱陶しい。

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